CPOT と BPS の使い分け(比較)

評価
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CPOT と BPS は「自己申告できない ICU 患者の疼痛」を行動から評価するスケールです

挿管中や意識障害で自己申告が難しいと、疼痛は「不穏」「拒否動作」「同調不良」に見えて、鎮静で覆い隠されがちです。結論として、CPOT か BPS のどちらかを院内の共通言語にし、測定タイミングと記録を揃えると、鎮痛・鎮静・離床の判断がブレにくくなります。

本記事では「どっちが正解?」ではなく、自施設で採用しやすい方を選ぶための早見表と、運用・記録テンプレよくある失敗の回避まで整理します。関連:評価の全体像は 評価ハブ にまとめています。

評価を体系的に整理したい方へ

「何を、いつ、どう記録するか」を 5 分で整理できます(現場で迷うポイントから逆算)。

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先に結論:迷ったら「院内で揃う方」を採用するのが勝ちです

CPOT と BPS はどちらも行動から疼痛を推定でき、文献でも有用性が示されています。現場で大事なのは、スケールの優劣よりも導入コスト(教育・記録・監査)です。まずは、測定タイミングを固定し、記録の最小セットを決めるところから始めると失敗しません。

すでに CPOT を運用できている施設は CPOT を深掘り、これから標準化するなら「教育しやすい方」を選ぶのが実務的です。

CPOT と BPS の違い 早見表(運用で差が出るポイント)

「横並びで理解が速い」ポイントを運用目線でまとめます。設問の丸写しではなく、現場で迷う差分だけを比較しています。

CPOT と BPS の比較(成人・ICU想定/運用目線)
観点 CPOT BPS 現場メモ(選び方)
主な用途 自己申告できない患者の疼痛を行動で推定 同上 どちらでも「揃えば」強い
観察の軸 表情・身体反応・呼吸(/発声)などを総合 表情・上肢/体動・人工呼吸器同調など 呼吸要因と混ざりやすい環境ほど「補助所見」をセット化
教育のしやすさ 観察点が多く、慣れるまでブレやすい 比較的シンプルで「揃えやすい」 導入期は BPS、運用成熟なら CPOT でも安定
“測るタイミング”の重要度 非常に重要(点数より先にタイミング固定) 安静→刺激→介入後 を標準にすると回る
弱点(共通) 深鎮静・神経筋遮断などで反応が乏しいと過小評価 鎮静深度・呼吸状態の併記が必須

採用判断:CPOT と BPS をどう決める?(3 つの質問)

「どちらが優秀か」ではなく、運用が揃うかで決めます。次の 3 つに答えると選びやすいです。

採用判断の 3 問(Yes が多い方を採用しやすい)
質問 CPOT が向く BPS が向く
教育(OJT/研修)を月 1 回以上回せる? Yes
記録監査(ばらつき確認)を運用できる? Yes
まずは「最小の型」で標準化したい? Yes
人工呼吸器同調不良が多く“混ざり”が問題? どちらでも可(呼吸所見の併記ルールが必要)

運用フロー:安静→刺激→介入後(5 分後)の 3 点セットで揃えます

比較記事で最も重要なのはここです。スケールが何であっても、測定タイミングを揃えないと比較も改善もできません。おすすめの固定は次の通りです。

  • 安静時:介入前の基準値
  • 刺激(処置・体位変換・ROM など)中:疼痛が顕在化しやすい
  • 介入後(例:5 分後):鎮痛・環境調整の反応を見る

この 3 点が揃うと、リハの現場で「継続するか/刺激を下げるか/一旦整えるか」の判断が速くなります。

記録テンプレ:どちらを採用しても「条件」を残します

カルテで点数だけが独り歩きすると、改善につながりません。最低限、刺激・介入・鎮静/呼吸の条件を残します。

疼痛評価(CPOT/BPS)共通の記録テンプレ(最小セット)
時点 スケール(合計) 刺激・介入 鎮静/呼吸(要点) 判断
安静 CPOT __ / BPS __ 介入前 RASS __ /同調 __ /SpO2 __ 観察継続
刺激中 CPOT __ / BPS __ 体位変換/吸引/ROM など 努力呼吸 __ /表情 __ 刺激調整/鎮痛相談
5 分後 CPOT __ / BPS __ 鎮痛/環境調整/休息 落ち着き __ /同調 __ 継続 or 中断

よくある失敗:疼痛を「不穏」や「呼吸苦」と混同する

CPOT/BPS が高いとき、最初にやりたいのは鎮静追加ではなく、疼痛・呼吸苦・恐怖のどれが主因かを切り分けることです。特に人工呼吸器同調不良が強い場合、疼痛だけでなく換気条件や体位、分泌物などの要因が混ざります。

現場では「点数」よりも、何で上がったか(刺激)/何で下がったか(介入)の情報が価値になります。

導入手順:最短 2 週間で“揃う”状態にする

導入は複雑にしない方が成功します。最短の形は次の通りです。

  1. 採用スケールを 1 つ決める(まずは CPOT か BPS のどちらか)
  2. 測定タイミングを固定(安静→刺激→5 分後)
  3. 記録テンプレを統一(刺激・鎮静/呼吸の併記)
  4. ケース 5 例で振り返り(ブレやすい場面を共有)

ここまでで「点数が運用に使える」状態になります。精度の追求はその後で十分です。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. どちらが「より正確」ですか?

単純な優劣よりも、運用が揃うかが重要です。どちらも行動から疼痛を推定する有用なスケールですが、深鎮静や呼吸要因の影響は共通して受けます。まずはタイミング固定と記録の条件付けを徹底し、チームで同じ前提で評価できる状態を作るのが近道です。

Q2. “点数が高い=中止”でよいですか?

点数だけで中止を決めると過剰中止になりやすいです。刺激を小さくする、順序を変える、休息を入れるなど調整しながら再評価し、呼吸・循環の変化も合わせて判断します。

Q3. 呼吸苦と疼痛の区別がつきません

同調不良や努力呼吸が強い場合は混ざりやすいです。「刺激は何か」「同調・努力呼吸はどうか」「介入後に何が改善したか」を記録に残し、呼吸要因(体位・換気・分泌物)も並行して調整します。

Q4. 抜管後はどうしますか?

自己申告が可能になったら、原則は NRS など自己申告の尺度へ移行します。行動尺度は「補助」として使う位置づけに戻し、評価の主役を切り替えると運用が整理できます。

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参考文献

  1. Gélinas C, Fillion L, Puntillo KA, et al. Validation of the Critical-Care Pain Observation Tool in adult patients. Am J Crit Care. 2006;15(4):420-427. PubMed: 16823020.
  2. Payen JF, Bru O, Bosson JL, et al. Assessing pain in critically ill sedated patients by using a behavioral pain scale. Crit Care Med. 2001;29(12):2258-2263. DOI: 10.1097/00003246-200112000-00004.
  3. Devlin JW, Skrobik Y, Gélinas C, et al. Clinical Practice Guidelines for the Prevention and Management of Pain, Agitation/Sedation, Delirium, Immobility, and Sleep Disruption in Adult Patients in the ICU. Crit Care Med. 2018;46(9):e825-e873. DOI: 10.1097/CCM.0000000000003299.
  4. de Queiróz Pinheiro ARP, et al. Behavioral Pain Scale and Critical Care Pain Observation Tool: A systematic review. Rev Bras Ter Intensiva. 2019. PMCID: PMC7008990.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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