PT の求人票は「数字」より先に「運用」を読むとミスマッチが減ります
理学療法士の転職ミスマッチは、給与そのものよりも、単位の回し方/記録文化/教育体制/急変対応などの “運用差” で起きやすいです。求人票の情報だけで判断すると、入職後に「想像と違う」を回避しにくくなります。
本記事では、求人票で見落としやすいポイントを 12 項目に分け、OK/NG の見分け方と、見学・面接で回収できる質問テンプレまで “型” にしてまとめます。
現場の詰まりどころ:求人票だけだと「運用差」が読めずに詰みます
求人票は、どうしても良い面が前に出る形式です。ミスマッチを減らすコツは、求人票の情報を運用の質問に翻訳し、見学・面接で回収して “確度” を上げることです。
このあとすぐ使えるように、まずは 12 項目の早見表 を見て、次に 質問テンプレ をそのまま使ってください。給与の細かい見分けは別ページに分けたほうが混ざらずに判断できます(関連:固定残業代の見極め)。
求人票で見落とす 12 項目:OK/NG の早見表
下の表は「求人票に書いてある言葉」を、現場運用のチェックに翻訳したものです。NG が 2〜3 個あれば、見学か面接で必ず追加確認しましょう。
| 項目 | 求人票の “よくある書き方” | OK の目安 | NG サイン | 確認のしかた(見学・面接) |
|---|---|---|---|---|
| 1. 配属と比率 | 回復期/急性期/外来/訪問など | 配属が明確、比率の目安が言える | 「状況次第」「人が足りない所へ」 | 1 週間の動き(病棟・外来・訪問)の割合を聞く |
| 2. 1 日単位の目標 | 生産性重視、単位充足 など | 目標の根拠と “例外” がある | 未達が評価に直結、罰則的な運用 | 平均単位・未達時の扱い・記録時間の確保を聞く |
| 3. 疾患構成 | 整形中心/脳血管中心 など | 疾患構成が説明でき、学べる導線がある | 説明が曖昧、担当が毎日変わる | 担当患者の典型例(週の症例)を聞く |
| 4. 記録文化 | 記録は電子/紙 など | テンプレがあり、締め切りと責任が明確 | 個人任せ、残業前提、差し戻しが多い | どの画面(様式)に何を書くかの “型” を聞く |
| 5. 教育体制 | 教育充実、研修あり | 担当者・期間・内容が決まっている | OJT のみ、担当が固定されない | 入職 1〜3 か月の “チェック項目” を聞く |
| 6. カンファ頻度 | 多職種連携 | 週次/月次の定例があり、記録先が決まっている | 随時のみ、共有が口頭中心 | カンファの頻度・参加職種・決定事項の残し方を聞く |
| 7. 急変・中止基準 | 安全管理徹底 | 判断の順番(誰に報告)が固定 | 個人裁量が大きい、責任が曖昧 | 離床中止の合図/連絡ルート/医師への繋ぎ方を聞く |
| 8. 人員配置 | PT 多数在籍 | PT/OT/ST 比や経験年数が見える | 常に欠員、離職が続く | 新人比率・指導者の稼働・欠員時の回し方を聞く |
| 9. 休暇の実態 | 週休 2 日、有休あり | 有休取得率の目安、連休の取り方が説明できる | 「忙しい時期は無理」だけで終わる | 直近 3 か月の取得例(匿名で OK)を聞く |
| 10. 評価・昇給の条件 | 昇給あり、評価制度 | 評価項目が言語化され、面談が定期 | 上司の主観、基準が不明 | 昇給の条件(症例・役割・研修)を聞く |
| 11. 異動・兼務 | 法人内異動あり | 異動のルールと希望の反映がある | 突然の兼務、訪問兼務が常態 | 異動の頻度・条件・兼務時の単位の扱いを聞く |
| 12. 離職理由の構造 | 定着率高い | 退職理由を “構造” で説明できる | 質問を避ける、話が噛み合わない | 退職理由の多いパターンと改善策を聞く |
そのまま使える:見学・面接で回収する質問テンプレ
質問は “聞き方” より、何を判定したいかを先に決めると刺さります。下のテンプレは、相手が答えやすく、かつ運用差が見える形にしてあります。
| 判定したいこと | 質問(そのまま読める) | 期待回答 | NG サイン | 次の掘り方 |
|---|---|---|---|---|
| 単位と記録の両立 | 「平均で 1 日何単位くらいで、記録はどの時間帯で書く方が多いですか?」 | 単位の目安+記録の “確保ルール” がある | 「各自で頑張る」 | 「残業が増える場面はどこですか?」 |
| 教育の再現性 | 「入職後 1〜3 か月の到達目標(できるようになること)は決まっていますか?」 | 担当・期間・チェック項目が具体的 | 「見て覚える」 | 「評価のタイミングとフィードバックは誰がしますか?」 |
| 急変時の安全網 | 「離床中に中止が必要な時、最初に誰へ連絡する運用ですか?」 | 順番が固定、報告先が明確 | 「ケースによる」だけ | 「夜間・休日はどうなりますか?」 |
| カンファの実効性 | 「定例のカンファは週次ですか?決定事項はどこに残しますか?」 | 頻度+記録先が具体的 | 口頭中心、残らない | 「不在者への共有はどうしていますか?」 |
| 離職の理由と改善 | 「最近 1〜2 年で退職が多かった理由は何で、どう改善しましたか?」 | 理由が構造で語られ、対策がある | 質問を避ける | 「定着のために変えたルールはありますか?」 |
よくある失敗:新人〜中堅がハマる 5 パターン
求人票の “言葉” を信じすぎると、入職後にズレが出ます。次の 5 パターンは頻出なので、先に回避策まで固定しておくと安全です。
| 失敗パターン | 起きる原因 | 入職後に出る症状 | 回避策(今日やること) |
|---|---|---|---|
| 単位は多いのに記録時間がない | 生産性と記録の “運用” を確認していない | 残業が常態、差し戻し増 | 「記録はいつ書くか」「未達時の扱い」を必ず質問する |
| 教育が属人的 | 「研修あり」を鵜呑みにした | 成長のばらつき、孤立 | 到達目標・担当・期間の 3 点セットで回収する |
| 症例が想定と違う | 疾患構成を “週の典型例” で聞いていない | やりたい領域ができない | 担当患者の典型例を 2〜3 例で聞く |
| 急変時の判断が怖い | 連絡ルートが不明確 | 中止判断がブレる | 「誰に/どの順番で」報告するかを具体化して聞く |
| 休みが取りづらい | 制度と実態を混同した | 疲弊、継続困難 | 直近 3 か月の取得例(匿名で OK)を聞く |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
求人票だけで “やめた方がいい求人” は判断できますか?
求人票だけで断定は難しいです。代わりに、この記事の 12 項目でNG が複数出たら「見学・面接で追加回収する」に切り替えるのが安全です。質問に答えられない、または説明が噛み合わない場合は “運用が未整備” の可能性が上がります。
単位目標が高い職場は、全部ブラックですか?
単位数そのものより、記録時間の確保と例外運用(急変・カンファ・家族対応など)があるかで変わります。平均単位に加えて「記録はいつ書くか」「未達の扱い」をセットで確認してください。
「教育体制がある」の見分け方は?
担当者・期間・到達目標の 3 点が言えるかで見分けやすいです。特に “入職 1〜3 か月で何ができるようになるか” が具体的だと、教育が属人化しにくい傾向があります。
見学で何を見ればいいですか?
おすすめは 3 つです。①スタッフが記録を書いている場所と時間帯(訓練と記録の両立が見える)②カンファや共有の “形”(口頭だけか、残るか)③急変時の連絡ルートの掲示や合図(安全網が見える)です。
離職理由を聞くのが気まずいです…
「最近 1〜2 年で退職が多かった理由は何で、どう改善しましたか?」のように改善までセットで聞くと、攻撃的になりにくいです。答えが “構造” で返ってくる職場は、問題の見える化が進んでいることが多いです。
次の一手:判断を固める(同ジャンル 2 本)→ 環境を整える
ここまで読んだら、次は “判断材料を増やす” か “条件を詰める” のどちらかに進むと迷いません。
あわせて、転職活動の全体像(比較・選び方)をまとめておくと、判断が速くなります。PT 転職の比較(エージェントの使い分け)
参考文献
- Matsumoto S, et al. Turnover tendency and related factors among rehabilitation professionals in Japan. J Occup Health. 2025. PubMed: 40395269. [oai_citation:0‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40395269/?utm_source=chatgpt.com)
- Campo MA, et al. Job strain in physical therapists. Phys Ther. 2009. PMC: PMC2737052. [oai_citation:1‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2737052/?utm_source=chatgpt.com)
- Lee BK, et al. Impact of work environment and work-related stress on turnover intention. J Phys Ther Sci. 2016. PubMed: 27630432. [oai_citation:2‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27630432/?utm_source=chatgpt.com)
- Schwartz-Dillard J, et al. Electronic documentation burden among outpatient rehabilitation therapists. 2024. PMC: PMC11413440. [oai_citation:3‡PMC](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11413440/?utm_source=chatgpt.com)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


