FSS-ICU の使い方|課題別に追える ICU 機能評価

評価
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FSS-ICU は「課題別にボトルネックを残す」ための ICU 機能評価です

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評価や記録は、やり方より「運用の揃え方」でブレが減ります。全体像を 1 ページで整理できます。

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ICU では、毎日「どこまで動けたか(到達)」だけでなく、「どの課題が詰まっているか(原因)」も同時に共有したい場面が増えます。FSS-ICU( Functional Status Score for the ICU )は、寝返り〜歩行までの 5 課題を “別々に” 点数化し、合計点としてまとめる指標です。

結論として、FSS-ICU は「合計点」よりも低い課題(=ボトルネック)を拾って、翌日以降の介入目標を 1 つに絞る運用と相性が良いです。FSS-ICU の位置づけ(IMS/Perme/FSS-ICU の役割分担)は、既存の基本動作評価ハブの ICU 枠とも接続できます。

FSS-ICU とは| 5 課題を 0〜7 点、合計 0〜35 点でまとめます

FSS-ICU は、ICU の患者さんの身体機能を、寝返り・起き上がり・端座位保持・立ち上がり・歩行の 5 課題で評価し、各課題を 0〜7 点の 8 段階で採点します。合計点は 0〜35 点です。

ポイントは、課題ごとの点数が “次の一手” を直接示すことです。たとえば合計点が同じでも、寝返りが詰まっている人と、歩行が詰まっている人では、優先順位も介助の工夫も変わります(詳細な採点ルールは公式マニュアルを参照してください)。

FSS-ICU の 5 課題(何を見て、次に何を変えるか)
課題 見たいこと 詰まりの例 次に変える 1 点
寝返り 体幹・肩甲帯の出力と協調 上肢の押しが弱い/体幹が遅れる 支持面と介助位置を固定
起き上がり 体幹屈曲+上肢支持の組み立て 途中で止まる/呼吸苦で中断 角度と休息ポイントを先に決める
端座位保持 支持の量と持続 手支持が外せない/頭部保持が崩れる 支持物と時間を固定して Δ を追う
立ち上がり 下肢出力と重心移動 前方移動が足りない/膝折れ 座面高・足位置・介助位置を固定
歩行 移動の可否と介助量 立位は良いが 1 歩目が出ない 距離・介助者数・休息基準を固定

いつ使う?|「課題を分解して追う」場面で強いです

FSS-ICU は、日々の到達レベルを 1 つで残す運用より、課題ごとの介助量を追い、短いスパンで “どこが変わったか” を共有したい場面に向きます。

逆に、「今日の最高到達を最短で残したい」だけなら IMS が速く、「動けない理由を障壁込みで整理したい」なら Perme のほうが噛み合います。FSS-ICU は “課題別の原因整理” を担う、という役割分担が実務的です。

FSS-ICU が向く場面/向きにくい場面(目的で決める)
目的 向く 向きにくい 代替の考え方
課題別に詰まりを共有 FSS-ICU 低い課題を 1 つ選び、条件固定で追う
日々の最高到達を共有 FSS-ICU だけ IMS を併用して “今日の到達” を残す
障壁(ライン・意識など)を整理 FSS-ICU だけ Perme で “動けない理由” を分解する

採点のコツ|点数は「介助量」と「条件」をセットにするとブレが減ります

FSS-ICU の採点は、課題ごとの介助量・監視・自立度を段階で表す設計です。点数の上下を “変化” として読むためには、同じ条件(体位・支持・介助位置・距離など)で再現できることが重要です。

また、ICU では機器や制限で “課題そのものが実施できない日” が出ます。そういう日は無理に埋めず、「未実施」として理由を残し、翌日に再開できる形にしておくほうが運用が止まりません(詳細は公式マニュアル参照)。

採点がブレやすい 3 点(現場で揃えるポイント)
ブレる所 起きやすい理由 揃えるルール(最小) 記録に残す一言
介助量の解釈 介助位置・タイミングが人で違う 介助者の立ち位置を固定 介助:体幹/骨盤/膝(どこを触ったか)
端座位の「保持」 支持物・時間が曖昧 支持物と時間(秒)を固定 支持:手支持あり/なし、保持:○○ 秒
歩行の扱い 距離や休息基準が日替わり 距離( m )と休息基準を固定 歩行:○○ m、介助者数、休息条件

点数の読み方|合計より「低い課題」を見て、目標を 1 つに絞ります

FSS-ICU は合計点も使えますが、現場で効くのは “低い課題” を明確にする使い方です。低い課題は、その日の介入ターゲット(練習の中心)になり、チームで同じ方針を取りやすくなります。

研究では、FSS-ICU が転帰(自宅退院など)と関連したり、ICU 退室時点の目安(例: 16 点、20 点など)が報告されていますが、対象や制度で値は動きます。臨床では「目安の数字」よりも、課題別の変化(どれが上がったか)を継続的に追うほうが実務に直結します。

研究で報告された ICU 退室時 FSS-ICU の目安(対象で値は変わる)
研究 対象(要約) 報告された目安 使いどころ
日集中医誌 2021 自宅から ICU 入室、人工呼吸管理 48 h 以上など カットオフ 16 点 退院調整の “早めの見立て” の材料
理学療法学 2026 ICU 入室 48 h 以上でリハ実施例など カットオフ 20 点 ICU 退室までに獲得したい到達目標の参考

IMS/Perme/FSS-ICU の使い分け|同じ ICU でも “役割” が違います

ICU の評価は “どれが正しいか” ではなく、何を共有したいかで選ぶほうが回ります。IMS は最短で「到達」を、Perme は「障壁」を、FSS-ICU は「課題別の介助量」を残すのが得意です。

3 つを併用する場合は、毎日 IMS、週 2〜 3 回(または節目)で FSS-ICU、障壁整理が必要なときだけ Perme、という設計が噛み合いやすいです。

ICU 活動度評価の役割分担(目的で選ぶ早見)
目的 向く評価 残すと強い情報 次回に効く一言
今日の到達を共有 IMS 介助者数、距離( m )、症状 明日の目標を 1 つだけ書く
動けない理由を整理 Perme 障壁(意識、ライン、機器など)の内訳 障壁を 1 つ減らす作戦に落とす
課題別の変化を追う FSS-ICU 低い課題、条件、介助量 低い課題を “練習の主役” にする

評価が成立するかを先に判定|「できない理由」を残すと翌日につながります

ICU では、状態や薬剤の影響で “評価が成立しにくい日” が出ます。無理に点数を埋めるよりも、成立しない理由を 1 つに絞って残し、翌日に同条件で再開できる形を作るほうがチーム連携が整います。

この「成立チェック」を先に固定すると、FSS-ICU の点数が “状態変化” なのか “条件の違い” なのかが読みやすくなります。

FSS-ICU 実施前チェック(最小)
チェック OK(実施) 見送り(理由を残す) 記録の一言
覚醒・理解 短い指示が通る 反応が不安定/指示が通らない 本日未実施:指示理解が不安定
疼痛・苦痛 拒否や防御が強くない 拒否・防御が強い 本日未実施:苦痛が優位
循環・呼吸の反応 負荷を上げられる余地がある 反応が強く出やすい 本日未実施:反応が強い

記録の型|「点数+条件+次回の条件」を 1 行で固定します

FSS-ICU は、課題ごとの点数に加えて “条件” を残すほど価値が上がります。条件が揃っていれば、点数の差が介助量の差としてそのままチームに伝わります。

おすすめは、合計点よりも「低い課題」と「次回の固定条件」を明示することです。これだけで翌日の練習が迷いにくくなります。

FSS-ICU 記録の 1 行テンプレ(最小)
項目 書く内容 次回に効くコツ
点数 合計/低い課題 FSS-ICU: 14/35(低:起き上がり) 低い課題を 1 つに絞る
条件 体位、支持、介助位置 背上げ 30°、手支持あり、介助は骨盤 体位と介助位置だけは固定
次回 再検の条件 翌日同条件で再検、練習は起き上がり中心 再検条件を文章化する

現場の詰まりどころ|点が伸びない原因が「条件」だった

FSS-ICU が伸びないとき、原因は “患者の変化がない” ではなく、座面高・支持物・介助位置などの条件が日替わりで、比較できなくなっていることが多いです。まず条件を減らして固定すると、点数の変化が読みやすくなります。

迷ったときは、①低い課題を 1 つに絞る、②条件を 2 つだけ固定する(体位と介助位置)、③翌日に同条件で再検する。この 3 点で運用が回ります。

よくある失敗と対策(条件固定で整える)
失敗 起きやすい理由 対策(最小) 記録で防ぐ一言
毎回「どこが低いか」変わる 練習課題が日替わり 低い課題を 1 つ固定して反復 本日の主役:○○
端座位だけ点が動く 支持物・時間が曖昧 支持物と時間(秒)を固定 端座位:支持○○、保持○○ 秒
歩行が評価できない日が続く 前提課題が詰まっている 寝返り〜立ち上がりの底上げに寄せる 歩行は未実施、前提課題を優先

公式資料の入手先|詳細な採点ルールは配布元の PDF を参照します

FSS-ICU の詳細な採点ルールは、配布元の資料で確認してください。本文では、採点表の転載ではなく、臨床で迷いやすい「運用の型」に絞って整理しています。

FSS-ICU 日本語版 PDF を開く(配布元)

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. FSS-ICU は「毎日」取るべきですか?

毎日 “課題別の点数” を揃えるより、日々は IMS で到達を残し、週 2〜 3 回や節目で FSS-ICU を取る運用が回りやすいです。FSS-ICU は低い課題(ボトルネック)を拾う用途で強く、毎日の目標設定にもつながります。

Q2. 合計点だけ見れば十分ですか?

合計点は経過を示すのに便利ですが、臨床で効くのは「低い課題」です。低い課題を 1 つに絞って条件固定で追うと、翌日の介入が迷いにくくなります。

Q3. ICU 退室時の目安( 16 点、20 点など)は使えますか?

研究では ICU 退室時 FSS-ICU と自宅退院が関連し、目安となる値(例: 16 点、20 点)が報告されています。ただし対象や制度で変わるため、数字は “参考” として扱い、課題別の変化と合わせて解釈するのが実務的です。

Q4. どのくらいの変化を「意味のある変化」と見ますか?

国際データの分析では、最小重要差( MID )が 2.0〜5.0 点程度と推定されています。個人の臨床では、点数だけでなく、同条件で介助量が減ったか、低い課題が入れ替わったかまで一緒に見ると判断しやすいです。

Q5. FSS-ICU が取りにくい日が続きます

取りにくい日は「未実施」として理由を 1 つに絞って残し、翌日に同条件で再開できる形を優先します。無理に埋めるより、条件が揃った日に再現性のある点数を取るほうが、チームで使える情報になります。

次の一手|同ジャンルをまとめて整える

FSS-ICU は単独で完結させるより、到達( IMS )と障壁( Perme )と役割分担させると運用が止まりにくくなります。関連ページも合わせて使うと、判断が揃いやすいです。

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参考文献

  1. Needham DM, Zanni JM. Functional Status Score for the ICU(FSS-ICU)日本語版(配布元). PDF.
  2. Thrush A, Rozek M, Dekerlegand JL. The clinical utility of the functional status score for the intensive care unit (FSS-ICU) at a long-term acute care hospital: a prospective cohort study. Phys Ther. 2012;92(12):1536-1545. doi: 10.2522/ptj.20110412. PMID: 22956427.
  3. 相川 駿, 松嶋 真哉, 横山 仁志, 武市 梨絵, 堅田 紘頌, 渡邉 陽介, 中田 秀一, 中茎 篤. ICU の重症患者における急性期病院から直接自宅退院が可能か否かを予測する functional status score for the ICU(FSS-ICU)のカットオフ値の検討. 日集中医誌. 2021;28(2):99-104. doi: 10.3918/jsicm.28_99.
  4. (著者名は原著参照)集中治療室入室患者における自宅退院の可否に影響を与える因子の検討( ICU 退室時 FSS-ICU の目安に言及). 理学療法学. 2026;53(1):29-35. doi: 10.15063/rigaku.25-12639.
  5. Huang M, Chan KS, Zanni JM, et al. Functional Status Score for the ICU: An International Clinimetric Analysis of Validity, Responsiveness, and Minimal Important Difference. Crit Care Med. 2016;44(12):e1155-e1164. doi: 10.1097/CCM.0000000000001949. PMID: 27488220.
  6. Katayama S, et al. Reliability and Validity of the Japanese Perme ICU Mobility Score: An Initial Psychometric Evaluation. Progress in Rehabilitation Medicine. 2025;10:20250037. doi: 10.2490/prm.20250037.
  7. Functional Status Score for the Intensive Care Unit(FSS-ICU). Shirley Ryan AbilityLab Rehabilitation Measures. Web.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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