CHDF・CRRT中でも離床・リハビリは可能です
CHDF・CRRT(持続腎代替療法)を施行していることだけを理由に、離床やリハビリを一律に中止する必要はありません。重要なのは、患者の呼吸・循環などが離床に耐えられる状態か、バスキュラーアクセスが安全に保たれているか、体位変換によってCRRT回路やアラームに変化が生じないかを分けて確認することです。
本記事では、CHDF・CRRT中の患者を担当するPT・OTなどの医療従事者向けに、離床前に見るポイント、大腿静脈アクセスの考え方、アラーム発生時の一旦停止・再開・終了判断、記録までを整理します。機器設定そのものではなく、「CRRT中にどこまで動かせるか」を判断するための記事です。
この記事の結論
- CHDF・CRRT施行中という理由だけでは、離床の絶対的禁忌にはなりません。
- 開始前は「患者状態」「バスキュラーアクセス」「CRRT回路」の3層で確認します。
- アラーム発生時は動作を一旦止め、原因と患者状態を確認してから再開・段階変更・終了を判断します。
なお、CHDFは持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration)であり、CRRTとして行われる血液浄化法の一つです。本記事では、臨床でCHDFと呼ばれる場合を含め、CRRT施行中の離床としてまとめて解説します。
離床前は「患者状態・アクセス・CRRT回路」の3層で確認します
最初に見るのはCRRT機器だけではなく、患者が離床に耐えられる状態かどうかです。そのうえで、バスキュラーアクセスとCRRT回路が体位変換に耐えられる条件かを確認します。
日本版重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023(J-ReCIP 2023)では、重症患者の離床・運動療法について統一された開始基準は確立しておらず、病態の改善または安定化を確認し、チームで総合的に判断することが示されています。CRRT中でも、この一般的な安全判断を土台にCRRT特有の確認を追加します。[1]
| 確認する層 | 主な確認内容 | PTが判断につなげるポイント |
|---|---|---|
| 患者状態 | 呼吸、循環、意識、症状、血圧の推移、昇圧薬、除水状況など | CRRTの有無とは別に、現在の患者状態が離床に耐えられるかを見る |
| バスキュラーアクセス | 内頸・鎖骨下・大腿などの留置部位、固定、出血、牽引される方向 | 予定する姿勢や動作でカテーテルが引かれたり圧迫されたりしないか確認する |
| CRRT回路 | 回路の走行、余裕、屈曲、接続部、直前のアラームや治療状況 | ベッドアップ、端座位、立位などで回路条件が変化しないかを予測する |

特に重要なのは、CRRTを行っている理由と現在の治療状況です。急性腎障害だけでなく、循環不全や体液管理などを目的としてCRRTが必要になっている患者もいます。機器が安定していても、循環状態そのものが離床に適していなければ進めません。
反対に、CRRTが接続されているという一点だけでベッド上安静とするのも適切ではありません。CRRT患者を対象とした系統的レビューでは、ベッド上運動、端座位、立位、移乗などのリハビリが報告されており、CRRT中のリハビリは一定の条件下で実施可能とされています。[2]
CRRTのアラームが出たら、まず動作を一旦停止して原因を確認します
離床中にCRRTのアラームが鳴った場合、「アラーム=その日のリハビリ終了」と機械的に決めるのではなく、まず動作を止めて患者と回路を安全な状態にします。
体位変換や股関節屈曲、回路の牽引・屈曲などに伴ってアクセス圧が変化し、アラームが発生する場合があります。一方で、アラームの原因は患者の動作だけとは限りません。PTがアラーム内容だけから原因を断定したり、CRRTの設定を独自に変更したりせず、看護師・臨床工学技士などCRRT管理を担当するスタッフと確認します。[6]
| 段階 | 確認すること | 判断 |
|---|---|---|
| 1. 動作を止める | 立ち上がり・移乗・歩行などを一旦止め、安全な姿勢を確保する | 患者転倒やカテーテル牽引を防ぐ |
| 2. 患者を確認する | 意識、症状、血圧、心拍、SpO2などに新たな変化がないか | 患者側の不安定化があれば離床を終了・相談する |
| 3. アクセス・回路を確認する | 牽引、屈曲、圧迫、出血、固定状態、体位との関連 | 動作に伴う変化かを多職種で確認する |
| 4. アラームの経過を確認する | 姿勢変更後に解消したか、持続・反復するか | 原因が整理できなければ同じ動作を繰り返さない |
| 5. 再開を判断する | 患者状態とCRRT治療が再び安定しているか | 再開、負荷を下げる、終了のいずれかをチームで判断する |
たとえば端座位へ移行した直後にアクセス圧関連のアラームが出て、臥位または元の姿勢へ戻すことで速やかに解消した場合は、体位との関連を疑う材料になります。ただし、再び同じ姿勢を取れば安全とは限りません。アクセス部位、回路の位置、カテーテル固定、CRRTの状態を確認し、必要に応じて離床段階を下げます。
一方、姿勢を戻してもアラームが解消しない場合、繰り返し発生する場合、アクセス部に出血・抜去・固定不良を疑う所見がある場合は、離床を継続せずCRRT管理担当者へ共有します。
大腿静脈アクセスでも、それだけで離床不可とは判断しません
大腿静脈にCRRTカテーテルが留置されていても、「大腿だから離床できない」と一律には判断しません。ただし、股関節屈曲によってカテーテルや血流条件が変化し、アクセス圧関連のアラームが生じる可能性があるため、内頸静脈アクセスなどと同じ条件では考えないことが重要です。
Wangらは、CRRT中の33例を対象に、ベッド上運動、端座位、立位・足踏みなどを実施し、大腿・鎖骨下・内頸静脈アクセスを含む患者でカテーテル抜去、血腫、出血などの有害事象を認めなかったと報告しています。ただし、立位など高い活動レベルまで実施できた大腿アクセス症例は少なく、小規模研究である点には注意が必要です。[4]
国内では、大腿静脈の非カフ型カテーテルからCHDFを行った5例に対し、股関節を0°・30°・60°・90°と段階的に屈曲して脱血圧・静脈圧などを確認した報告があります。10回のROM練習中、圧の有意な変動は認めず、脱血不良アラームは1回でした。ただし症例数は少なく、この結果だけからすべての患者で90°まで安全と判断することはできません。[5]
「股関節90°」を絶対基準にしない
2026年のCRRT早期リハに関するエビデンスサマリーでは、大腿カテーテル留置時に股関節屈曲90°を超えないという項目も採用されていますが、その根拠レベルは高くありません。したがって本記事では、90°を全患者共通の中止基準にはせず、カテーテル位置、固定、体位、CRRT圧・アラームの変化を見ながら施設基準に従うことを優先します。[7]
実際の離床では、「大腿アクセスだから端座位不可」と決めるのではなく、予定する股関節屈曲角度でアクセスや回路に変化がないかを確認し、必要に応じて看護師・臨床工学技士と体位を調整します。
端座位・立位・歩行は「CRRT中だから」ではなく実施条件で決めます
CRRT中でも端座位や立位は報告されていますが、歩行まで全員が進めるわけではありません。患者状態、アクセス部位、CRRT装置・回路の条件、人員配置などを踏まえ、実施できる範囲を個別に決めます。
2020年の系統的レビューでは、CRRT中の成人437例、840回の活動・リハビリセッションが報告されました。重大な有害事象は2件、軽微な有害事象は13件でしたが、椅子への移乗、足踏み、歩行など高い活動レベルまで到達した割合は低く、エビデンスの質や報告方法にもばらつきがあります。したがって、CRRT中の離床を「安全」と一般化しすぎず、特に高い活動レベルでは慎重な個別判断が必要です。[2]
| 活動 | CRRT中に追加で確認すること |
|---|---|
| ベッド上運動・体位変換 | 股関節や頸部の動きでアクセス圧・回路に変化がないか、接続部が牽引されないか |
| 端座位 | ベッド端への移動で回路が張らないか、アクセス部が圧迫されないか、循環変動がないか |
| 立位・移乗 | 立ち上がり動作中の牽引、アクセス固定、CRRTアラーム、血圧・症状の変化 |
| 歩行 | 装置を含めた移動方法、回路長・電源等の機器条件、人員配置、緊急時に安全に停止できる体制 |
CRRT患者67例を対象とした早期リハビリの質改善研究でも、112回のリハビリセッションが実施され、主要な有害事象は報告されませんでした。一方で、CRRT中の離床研究は観察研究や単施設研究が中心であり、患者選択された結果である点を踏まえる必要があります。[3]
したがって、「今日は歩行まで行く」とあらかじめ固定するより、一段階進めたときの患者状態とCRRTの反応を確認し、その反応を次の段階へ進む材料にする方が実務的です。
「一旦停止」と「その日の離床終了」を分けて考えます
CRRT中の離床では、小さな変化すべてを「リハビリ終了」とするのではなく、一旦停止して確認できる変化と、その日の離床を終了して報告すべき変化を分けます。
ただし、以下は全国共通の絶対基準ではありません。患者の疾患、循環・呼吸状態、医師の指示、施設プロトコルを優先してください。J-ReCIP 2023でも、重症患者の離床中止基準について統一された科学的基準は確立しておらず、施設体制や疾患・生理的状態に合わせて使用することが示されています。[1]
| 状況 | 考え方 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 体位変換直後に単発のアラーム | 体位、カテーテル、回路との関連を確認するため一旦停止 | 患者・アクセス・回路を再確認し、原因が整理できれば再開可否を判断 |
| 姿勢を戻すとアラームが解消 | その体位がアクセス条件に影響している可能性がある | 同じ動作を無条件に繰り返さず、角度・方法・離床段階を見直す |
| アラームが持続・反復する | CRRT治療を安定して継続できない可能性がある | 離床を継続せず、看護師・臨床工学技士などへ共有する |
| アクセス部の出血・固定異常・抜去疑い | デバイス関連有害事象を優先する | 離床を終了し、安全確保と速やかな報告を行う |
| 意識・呼吸・循環が不安定化 | CRRT以前に患者側の中止条件として扱う | 離床を終了し、施設の急変対応・中止基準に従う |
特に、冷汗、強いめまい、呼吸困難、意識レベル低下、急激な血圧変化など患者側の異常がある場合は、「CRRT回路に問題がないから続けられる」と考えません。患者状態を最優先します。
除水を行っている患者では、体液量や循環動態の変化も考慮します。開始前の血圧だけではなく、直近の推移、除水状況、昇圧薬など治療条件と症状を合わせて確認することが重要です。日本離床学会のCHDFに関するQ&Aでも、離床時には起立性低血圧とバスキュラーアクセスの閉塞に注意することが示されています。[8]
CRRT中の離床は役割分担を決めてから動かします
PTだけで患者・回路・CRRT装置のすべてを管理しようとせず、誰が患者を介助し、誰が回路・装置を見るのかを開始前に共有します。
必要な人数は患者の介助量、人工呼吸器など他デバイス、活動レベル、施設体制によって異なるため、一律に「何人必要」と固定する必要はありません。ただし、端座位から立位・移乗へ進むほど、患者介助とCRRT回路管理を同じ人が同時に行うことは難しくなります。
PTが確認したいのは、CRRT装置の詳細な設定値そのものよりも、現在の治療が安定しているか、動作に伴って治療条件が変化していないか、異常時に誰へ共有するかです。機器操作や設定変更は、自施設の役割分担と権限に従います。
記録は「到達段階」より条件と反応を残します
CHDF・CRRT中のリハビリ記録では、「端座位まで実施」のような結果だけでなく、どの条件で実施し、患者とCRRTがどう反応したかを残すと次回判断に使いやすくなります。
記録例
CHDF施行中。右内頸静脈よりバスキュラーアクセス留置。開始前は循環・呼吸状態に著変なく、アクセス固定および回路走行を看護師と確認。端座位へ移行し、患者症状・バイタルおよびCRRTアラームに変化なし。立位移行時にアクセス圧関連アラームを認めたため動作を一旦停止し、座位へ戻した。患者状態に変化なし。看護師・臨床工学技士へ共有し、原因確認後、本日は端座位までとして終了した。
記録する内容は、少なくとも「アクセス部位」「実施した活動」「患者の反応」「CRRTの変化」「中断した場合の対応」「誰と共有したか」が分かる形にします。
「次回は必ず立位まで」など上限を固定するのではなく、次回もその時点の患者状態・アクセス・CRRT回路を再評価して活動レベルを決めます。
CHDF・CRRT中の離床で避けたい4つの判断
CRRT中の離床で避けたいのは、デバイスの有無だけで可否を決めたり、反対に患者状態を見ずに離床を進めたりすることです。
- 「CHDF中だから離床できない」と決める:CRRT施行そのものは一律の離床禁忌ではありません。
- 「バイタルが安定しているから大丈夫」と判断する:アクセス部位、固定、回路、アラームの変化も確認します。
- アラームが鳴っても動作を続ける:まず動作を止め、患者・アクセス・回路を確認します。
- アラームが1回鳴っただけで「今後も離床不可」と固定する:体位との関連や原因を整理し、条件を変えた再評価につなげます。
よくある質問
CHDF・CRRT中というだけでリハビリは中止ですか?
いいえ。CHDF・CRRT施行中という理由だけでは一律の離床禁忌にはなりません。患者の病態が安定しているか、バスキュラーアクセスとCRRT回路を安全に維持できるかを確認し、個別に判断します。
大腿静脈からCHDFを行っている患者は端座位にできますか?
大腿静脈アクセスだけを理由に端座位を一律に禁止する根拠は十分ではありません。ただし、股関節屈曲によってアクセス圧やアラームに変化が生じる場合があるため、固定状態、股関節角度、CRRTの反応を確認します。施設で体位制限が定められている場合は、その基準を優先します。
離床中にCRRTのアラームが鳴ったら、その日のリハビリは終了ですか?
必ずしもその時点で終了とは限りません。まず動作を一旦停止して患者を安全な姿勢にし、患者状態、アクセス、回路を確認します。原因が整理され、CRRTと患者状態が安定している場合は、看護師・臨床工学技士などと再開可否を判断します。アラームが持続・反復する場合やアクセス異常、患者状態の悪化がある場合は継続しません。
歩行まで実施してもよいですか?
CRRT接続中の歩行例は報告されていますが、ベッド上活動や端座位・立位に比べてエビデンスは限られます。患者状態だけでなく、アクセス部位、装置の移動条件、回路、電源、人員配置など施設側の条件も必要です。歩行をCRRT患者の標準的な到達目標として固定せず、個別に判断します。
次に確認したい記事
A|ICU全体の開始・中止・再開判断を確認する
呼吸・循環・意識など、CRRTに限らない重症患者の離床判断は別記事で整理しています。
B|離床記事全体から必要な各論を探す
ライン・ドレーン、循環、呼吸など、離床時に併せて確認したいテーマを一覧から探せます。
参考文献
- Unoki T, Hayashida K, Kawai Y, et al. Japanese Clinical Practice Guidelines for Rehabilitation in Critically Ill Patients 2023 (J-ReCIP 2023). J Intensive Care. 2023;11:47. doi:10.1186/s40560-023-00697-w. PubMed
- Mayer KP, Joseph-Isang E, Robinson LE, Parry SM, Morris PE, Neyra JA. Safety and Feasibility of Physical Rehabilitation and Active Mobilization in Patients Requiring Continuous Renal Replacement Therapy: A Systematic Review. Crit Care Med. 2020;48:e1112-e1120. doi:10.1097/CCM.0000000000004526. PubMed
- Mayer KP, Hornsby AR, Ortiz Soriano V, et al. Safety, Feasibility, and Efficacy of Early Rehabilitation in Patients Requiring Continuous Renal Replacement: A Quality Improvement Study. Kidney Int Rep. 2020;5:39-47. doi:10.1016/j.ekir.2019.10.003. PubMed
- Wang YT, Haines TP, Ritchie P, et al. Early mobilization on continuous renal replacement therapy is safe and may improve filter life. Crit Care. 2014;18:R161. doi:10.1186/cc14001. PubMed
- 瀧本さち, 開正宏, 都築通孝, 他. 股関節屈曲を伴うリハビリテーションが経大腿静脈アプローチによるCHDF脱返血に影響するかの検討. 日本透析医学会雑誌. 2023;56:85-89. doi:10.4009/jsdt.56.85. J-STAGE
- Kobara S, Sekine K, Uzawa Y, Sasano M, Yasuda H, Hayashi Y. A report of the occurrence of an access pressure alarm of continuous renal replacement therapy during physical therapy. Journal of Japan Society for Blood Purification in Critical Care. 2016;7:126-129. doi:10.34325/jsbpcc.7.2_126. J-STAGE
- Zou Y, Tang T, Wang C, Gao J, Wang C. Summary of the best evidence for early rehabilitation in ICU patients receiving continuous renal replacement therapy. Front Med. 2026;13:1730618. doi:10.3389/fmed.2026.1730618. DOI
- 日本離床学会. Q&A Vol.59 CHDF施行下での離床の注意点. 日本離床学会
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者が実務で判断するための情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

