CHDF / CRRT 中の離床プロトコル

臨床手技・プロトコル
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CHDF / CRRT 中の離床は「回路・アクセス・アラーム」で止めどきを決めます

CHDF / CRRT(持続血液浄化)中の離床で迷う原因は、「バイタルが安定しているか」だけで判断しようとすることです。実際には、ブラッドアクセスの部位、回路の張り・屈曲、脱血不良などのアラームが崩れると、端座位や立位の途中で中止判断が必要になります。

本記事では、PT が現場で使えるように、離床前チェック → 5 分フロー → 段階プロトコル → 中止基準 → SBAR → 記録テンプレの順で整理します。機器設定の解説ではなく、CHDF / CRRT 中に「どこまで進めるか」「どこで止めるか」「どう共有するか」を決めるための記事です。

ICU 離床の共通ルールも先に確認できます

CHDF / CRRT はデバイス併存の一例です。全体の中止基準や多職種共有は、ICU リハの安全 SOP と合わせて整理すると運用しやすくなります。

ICU リハ安全 SOP を見る

関連:ライン管理の離床プロトコル胸腔ドレーン中の離床プロトコル

現場の詰まりどころは「離床可否」より「崩れたときの戻し方」です

CHDF / CRRT 中は、開始時に問題がなくても、端座位・立位・方向転換で回路が張ったり、股関節屈曲で脱血条件が変わったりします。そのため、離床の可否だけでなく、アラームが出たときに何を戻すかを先に決めておくことが重要です。

詰まりやすいのは、①アクセス部位が共有されていない、②回路係が決まっていない、③アラーム時に「様子を見る」時間が長くなる、の 3 点です。対策はシンプルで、離床前チェック中止基準を同じ順番で使うことです。

評価や離床判断が属人化しているときは、学び方と環境も見直せます

判断の型がない職場では、個人の努力だけでなく、相談相手・標準手順・記録文化の不足が影響していることもあります。

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5 分フロー:アクセス確認から中止判断までを固定します

CHDF / CRRT 中の離床は、毎回同じ順番で確認すると判断が速くなります。最初にアクセス部位を確認し、次に回路の余裕を作り、最後にアラームと循環変動を見ます。

CHDF / CRRT 中の離床 5 分フロー
順番 確認すること 進める条件 止める条件
1 アクセス部位 頸部/鎖骨下/大腿の部位と固定が共有されている 部位不明、固定不安定、抜去リスクがある
2 回路の張り 屈曲・引っ張り・床への垂れがない 端座位や立位で張りが出る
3 アラーム 直前に脱血不良などが頻発していない 開始前からアラームが不安定
4 循環・症状 施設基準内で、冷汗・めまい・会話量低下がない 除水中の血圧低下傾向、症状出現がある
5 役割分担 患者係、回路係、連絡先が決まっている 単独対応になっている

A4 記録シートをダウンロードする

CHDF / CRRT 中の離床判断を、現場でそのまま書き残せる A4 記録シートにまとめました。アクセス部位、回路、アラーム、中止理由、次回の上限段階を 1 枚で整理できます。

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離床前チェック:Yes なら進む、No なら整えてから再判断します

離床前チェックは、細かくしすぎると使われません。最低限、アクセス・回路・アラーム・循環・役割分担の 5 点に絞ると、短時間で共有できます。

CHDF / CRRT 中の離床前チェックリスト
項目 見るポイント No / 変化あり の対応
アクセス部位 頸部/鎖骨下/大腿、固定、皮膚トラブル、抜去リスク 開始しない。固定・体位・実施範囲を看護師 / CE と確認する
回路の余裕 屈曲、引っ張り、床への垂れ、ベッド柵への接触 回路の形を作り直し、再チェック後に進める
アラーム 脱血不良、静脈圧、流量低下などが頻発していないか 原因を先に切り分け、開始しない
循環・症状 血圧低下傾向、冷汗、めまい、会話量低下、不穏 安静化し、施設基準に沿って再評価する
役割分担 患者係、回路係、アラーム時の連絡先 決まるまで開始しない

段階プロトコル:ベッド上から端座位、立位へ小さく進めます

CHDF / CRRT 中は、歩行まで進めることを目標にしすぎず、段階ごとに「回路条件が保てるか」を確認します。次へ進む前に、アクセス部位、回路の張り、アラームを再チェックします。

ベッド上活動

まずはベッド上で、関節運動、寝返り、ヘッドアップ時に回路が張らない範囲を確認します。大腿静脈アプローチでは、股関節屈曲で脱血条件が変わりやすいため、角度を小さく刻みます。

端座位

端座位では、回路が床へ垂れたり、ベッド柵に引っ掛かったりしやすくなります。座位姿勢を作ったら、回路の余裕を作り直し、アラームが出ないかを短時間確認します。

立位

立位では、回路の張りと抜去リスクが上がります。患者係と回路係を分け、立位保持中も回路の余裕を確認します。アラームが出たら、立位を継続せず、一旦戻して原因を切り分けます。

歩行

歩行は、施設プロトコルとチーム体制が整っている場合に限定します。実施する場合も、短距離で止まり、回路の張り・アラーム・症状を再チェックしながら進めます。

中止基準:アラーム・回路・症状の順で止めます

中止基準は、バイタルだけでなく、CHDF / CRRT 特有のトラブルを先に入れると実用的です。特に、脱血不良アラーム、回路の張り・屈曲、アクセス部位の固定不良は、離床を止める明確なトリガーにします。

CHDF / CRRT 中の離床中止トリガー
トリガー 疑うこと 対応の順番
脱血不良などのアラーム出現 体位、関節角度、回路の張り、屈曲、固定不良 中止 → 姿勢を戻す → 張り・屈曲を解除 → 改善しなければ共有
回路が張る、屈曲する、引っ掛かる 離床段階に対して回路の余裕が不足している 中止 → 回路の形を作り直す → 再チェック後に再開判断
アクセス固定の不安定化 抜去、出血、閉塞、固定不良 中止 → 固定確認 → 看護師 / CE へ共有
冷汗、めまい、会話量低下、不穏 循環変動、除水影響、負荷過多 中止 → 安静化 → バイタル再評価 → 共有
施設のバイタル中止基準に抵触 循環・呼吸負荷の増大 中止 → 施設基準で判断 → 医師・看護師へ共有

よくある失敗:アラーム後に「続ける理由」を探さないことが重要です

CHDF / CRRT 中の離床では、知識不足よりも運用の穴で止まることが多くあります。特に、アラーム後に姿勢を戻さず様子を見る、回路係がいない、記録に次回条件が残らない、という失敗は再発しやすいです。

CHDF / CRRT 中の離床で起きやすい失敗と回避策
場面 NG OK 記録・共有ポイント
開始前 アクセス部位を確認せずに起こす 頸部/鎖骨下/大腿と固定を先に共有する 部位、固定、崩れやすい動作
端座位 回路が床へ垂れたまま進める 座位後に回路の余裕を作り直す 引っ掛かりやすい場所
アラーム発生 アラームのまま様子を見る 即中止し、姿勢を戻して張り・屈曲を解除する 段階、体位、アラーム内容
再開判断 原因不明のまま同じ段階を繰り返す 原因を体位・角度・回路・固定に分けて再判断する 次回の上限段階

SBAR:アラームと体位変化を短く共有します

報告は、アラーム名だけでなく「どの体位・どの段階で起きたか」を添えると伝わりやすくなります。以下は口頭報告やカルテに転用しやすい最小テンプレです。

  • S(状況):CHDF / CRRT 中。離床(ベッド上/端座位/立位/歩行)中にアラームが出現し、中止しました。
  • B(背景):アクセス部位は(頸部/鎖骨下/大腿)。開始前のアラームは(なし/時々あり/頻発)でした。
  • A(評価):体位( )で(脱血不良/静脈圧/流量低下など)のアラームが出現。回路の張り(あり/なし)、屈曲(あり/なし)、症状( )、血圧( )。
  • R(提案):姿勢を戻し、張り・屈曲を解除して再評価しました。固定・設定・次回実施範囲の確認をお願いします。

記録テンプレ:次回の上限段階まで残します

記録は、実施内容だけでなく「次にどこまで進めてよいか」が分かる形にします。開始前、離床中、終了後の 3 タイミングで固定すると、チーム内で再現しやすくなります。

CHDF / CRRT 中の離床記録テンプレ
タイミング 必須記録 記録例
開始前 アクセス部位、固定、回路の張り、直前アラーム、役割分担 右内頸静脈アクセス。固定良好。直前アラームなし。患者係 PT、回路確認は看護師と共有。
離床中 段階、体位、回路の張り・屈曲、アラーム、症状 端座位 3 分で回路張りなし。脱血不良アラームなし。めまいなし。
中止時 中止理由、戻した操作、改善の有無、共有先 立位時に脱血不良アラーム出現。臥位へ戻し回路屈曲解除後に改善。看護師へ共有。
終了後 終了後の症状、主要バイタル、次回の上限段階 終了後症状なし。次回は端座位まで実施し、立位は看護師同席で再評価。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

CHDF / CRRT 中に最初に確認することは何ですか?

最初はアクセス部位です。頸部、鎖骨下、大腿のどこから入っているか、固定が安定しているか、離床動作で張りや屈曲が出ないかを確認します。

アラームが出たら、まず何をしますか?

まず離床を中止し、姿勢を戻します。そのうえで回路の張り・屈曲を解除します。改善しない場合は、看護師や臨床工学技士へ SBAR で共有します。

大腿静脈アプローチでは何に注意しますか?

股関節屈曲や下肢の大きな動きで脱血条件が変わりやすくなります。端座位や立位へ進む前に、股関節角度と回路の張りを小さく確認しながら進めます。

歩行まで進めてもよいですか?

歩行は施設プロトコルとチーム体制が整っている場合に限定します。実施する場合も、短距離で止まり、アラーム・回路の張り・症状を再チェックしながら進めます。

離床を中止した日は何を記録すればよいですか?

中止理由、どの段階で起きたか、アラーム内容、体位や回路をどう戻したか、改善したか、次回の上限段階を記録します。単に「中止」と書くより、次回判断につながります。

次の一手


参考文献

  1. 日本離床学会. Q&A Vol.59 CHDF 施行下での離床の注意点. https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-59
  2. Trumble DE, et al. Optimizing MObility for critically ill patiEnts undergoing Continuous Renal Replacement Therapy (MOvE-CRRT). Can J Respir Crit Care Sleep Med. 2021. PDF
  3. Mayer KP, Hornsby AR, Soriano VO, Lin TC, Cunningham JT, Yuan H, et al. Safety, feasibility, and efficacy of early rehabilitation in patients requiring continuous renal replacement: a quality improvement study. Kidney Int Rep. 2019;5:39-47. doi:10.1016/j.ekir.2019.10.003 https://doi.org/10.1016/j.ekir.2019.10.003
  4. Zou Y, Tang T, Wang C, Gao J, Wang C. Summary of the best evidence for early rehabilitation in ICU patients receiving continuous renal replacement therapy. Front Med. 2026;13:1730618. doi:10.3389/fmed.2026.1730618 https://doi.org/10.3389/fmed.2026.1730618
  5. 日本集中治療医学会. 集中治療における早期リハビリテーション エキスパートコンセンサス. https://www.jsicm.org/pdf/soki_riha_1805.pdf

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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