CPAxとは?ICU機能評価の方法と解釈

評価
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CPAx は「呼吸も含めて ICU の全身機能をそろえる」評価です

評価は「実施 → 記録 → 解釈 → 次の一手」までそろうと、ICU でも運用しやすくなります。

ICU の評価で迷うときは、「到達を残すのか」「課題別にみるのか」「呼吸も含めて総合機能をみるのか」を分けると、尺度選びがぶれにくくなります。

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CPAx( Chelsea Critical Care Physical Assessment Tool ) は、ICU 患者の身体機能に加えて、呼吸機能や咳嗽 も含めて評価しやすい尺度です。離床や移乗だけではなく、「そもそも呼吸・咳嗽・支持性がどこまで整っているか」を 1 本で見やすいため、早期離床の見立てや経過共有に向いています。

一方で、CPAx は「今日どこまで動けたか」を最短で共有する尺度ではありません。役割は、ICU の全身機能を呼吸も含めて横断的にそろえること にあります。日々の最高到達を短く残したい場合は IMS( ICU Mobility Scale )の使い方と記録テンプレ、課題別の介助量をみたい場合は FSS-ICU の使い方|課題別に追える ICU 機能評価 もあわせて使うと、役割が整理しやすくなります。

CPAx の使いどころ 3 つをまとめた図版
CPAx は、呼吸も含めて ICU の総合機能を整理し、IMS・FSS-ICU と役割を分けて使いやすい評価です。

CPAx とは

CPAx は、ICU 患者の physical morbidity を評価するために開発された観察ベースの尺度です。特徴は、起き上がりや移乗などの機能課題だけでなく、呼吸機能と咳嗽 も含めてみられる点にあります。つまり、「動ける / 動けない」だけでなく、「呼吸も含めてどこがボトルネックか」を整理しやすいのが強みです。

採点は 10 項目・各 0〜5 点・合計 50 点 です。一般的な ICU mobility 尺度より少し広い視点で、呼吸・支持性・機能課題をまとめてみたいときに向いています。ICU では状態や機器の影響で機能が揺れやすいため、呼吸を含めた総合機能評価として置くと価値が出やすいです。

CPAx が向く場面

CPAx が向くのは、呼吸状態も含めて ICU の全身機能をまとめて把握したい場面 です。たとえば、人工呼吸器離脱前後、離床を進めたいが呼吸や咳嗽の弱さも気になる症例、ベッド上動作と立位準備をあわせて見たい症例では、単純な mobility 尺度より情報がそろいやすいです。

また、CPAx は「なぜ動けないのか」を呼吸・機能の両面から捉えやすいのも利点です。IMS が最高到達、FSS-ICU が課題別介助量に強いのに対して、CPAx は 呼吸も含めた ICU の総合機能評価 として使うと、役割が重なりにくくなります。

表 1.CPAx が向く場面と、先に確認したいポイント
場面 CPAx が役立つ理由 先に確認したいこと 記録で残したい一言
人工呼吸管理中〜離脱前後 呼吸と機能を同時にみやすい 酸素化、呼吸仕事量、咳嗽の強さ 呼吸負荷で立位前に休息を要す
離床初期 ベッド上動作から立位準備まで追いやすい 循環反応、支持物、ライン類 起き上がりは可、立位前で疲労増強
経過共有 呼吸・機能の両面を 1 本で示しやすい 前回条件、補助具、介助者数 前回より咳嗽と移乗が改善
退室前の見立て 総合機能の到達度を整理しやすい 病棟で必要な介助量、呼吸管理 病棟移行は可、立位保持に見守り要

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CPAx でみる 10 領域

CPAx は、呼吸・咳嗽に加えて、ベッド上動作、起き上がり、動的座位、立ち上がり、立位バランス、ベッドから椅子への移乗、ステップ動作、握力といった領域を観察します。つまり、呼吸から移動準備までを縦につないでみる 尺度と考えると分かりやすいです。

実務では、10 領域をすべて同じ重みで眺めるより、低い領域がどこか をまず把握する方が役立ちます。たとえば、呼吸・咳嗽が低いのか、起き上がりや立ち上がりが低いのかで、介入の優先順位は変わります。CPAx の強みは、この「低い領域の見つけやすさ」にあります。

表 2.CPAx の 10 領域を実務でどう読むか
領域 主にみたいこと 低いときの解釈例
呼吸機能 呼吸負荷、会話や活動での反応 離床前に呼吸負荷が大きい
咳嗽 排痰に必要な咳の有効性 体位変換や離床で分泌物管理に課題
ベッド上動作 寝返りや体位調整の自力性 ベッド上で介助依存が強い
起き上がり 臥位から端座位への移行 離床の前段階がボトルネック
動的座位 座位での安定性と耐久性 端座位でふらつき・疲労が出やすい
立ち上がり 下肢支持性と立位準備 下肢・体幹の出力不足が強い
立位バランス 立位保持と重心制御 立位保持に見守り以上を要す
移乗 ベッドから椅子への移動 病棟移行後の介助量が大きい
ステップ その場足踏みや歩行準備 歩行前段階で制限が残る
握力 全身機能低下の一端としての筋力 上肢出力や全身衰弱が目立つ

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採点の見方と解釈

CPAx は、各領域を 0〜5 点 で評価し、合計 0〜50 点 で示します。点数が高いほど機能が高い方向で読みますが、臨床では合計点だけより、どの領域が低いか を見る方が実用的です。とくに ICU では、呼吸と移動のどちらが主な制限かで介入の組み立てが大きく変わります。

また、CPAx は経時変化を追うのに向く一方で、前回との比較には 条件固定 が欠かせません。酸素投与条件、補助具、介助者数、実施時間帯、鎮静や疲労の影響が違えば、同じ点数でも意味が変わります。合計点だけで一喜一憂するより、前回と比べて「どの領域が 1 段階上がったか」を追うと使いやすいです。

IMS・FSS-ICU との違い

ICU の評価は、どれが優れているかより、何を共有したいかで選ぶ 方が運用しやすくなります。IMS は「今日どこまで動けたか」を最短で共有する尺度、FSS-ICU は課題別の介助量を追いやすい尺度です。これに対して CPAx は、呼吸も含めた総合機能評価 に強みがあります。

つまり、日々の申し送りは IMS、課題別のボトルネックは FSS-ICU、呼吸を含めた総合機能の経過は CPAx と整理すると、3 つを併用しても役割がぶれにくくなります。毎日すべてを取るより、目的に応じて主役を決める方が ICU では現実的です。

表 3.IMS / FSS-ICU / CPAx の使い分け
尺度 主な目的 強み 向く記録
IMS その日の最高到達を共有 短時間・共通言語・日々の進捗管理 到達レベル、距離、介助者数
FSS-ICU 課題別の介助量を追う どの動作が低いかを分けやすい 低い課題、介助量、条件
CPAx 呼吸も含めた総合機能評価 呼吸・咳嗽・機能課題を一体でみやすい 低い領域、呼吸反応、総合機能の経過

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現場の詰まりどころ

CPAx でよくある失敗は、合計点だけを見て終わること です。CPAx の価値は、低い領域を見つけて、その日の介入を problem-oriented に組める点にあります。合計点だけでは、「呼吸が低いのか」「立位バランスが低いのか」が埋もれやすくなります。

もう 1 つは、IMS や FSS-ICU と役割が混ざること です。毎日の到達共有に CPAx を主役にすると重くなり、課題別の介助量を細かく追いたい日に CPAx だけで済ませると情報が足りなくなることがあります。迷った日は、「今日は何を共有したいか」を 1 つ決めると運用が崩れにくいです。

表 4.CPAx でよくある失敗と回避策
よくある失敗 なぜ困るか 回避策 記録例
合計点だけ残す 介入ターゲットが見えにくい 低い領域を 1〜2 個書き添える 低値:咳嗽、立位バランス
条件をそろえない 前回比較がぶれる 酸素条件・補助具・介助者数を固定する HFNC、歩行器、1 名介助で実施
IMS と役割が混ざる 日々の申し送りが長くなる 日々は IMS、節目で CPAx と分ける 本日は節目評価として CPAx 実施
退室先を点数だけで考える 生活背景や病棟要件が抜ける 呼吸管理と介助量も併記する 病棟移行は可、酸素条件に留意

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よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

CPAx はどんな患者に向いていますか?

呼吸と身体機能をあわせてみたい ICU 患者に向いています。人工呼吸器離脱前後、離床初期、呼吸負荷が mobility に影響しやすい症例で使いやすいです。

IMS や FSS-ICU があれば CPAx は不要ですか?

不要とは言い切れません。IMS は最高到達、FSS-ICU は課題別介助量、CPAx は呼吸も含めた総合機能評価に強みがあります。目的が違うため、節目で使い分けると便利です。

CPAx は毎日取るべきですか?

毎日必須ではありません。日々の申し送りは IMS、節目や総合機能の見直しで CPAx、課題別の変化を追いたいときは FSS-ICU という分け方の方が運用しやすいです。

点数はどう読めばいいですか?

合計点だけでなく、低い領域を見るのがコツです。呼吸・咳嗽が低いのか、起き上がりや立位が低いのかで、介入の優先順位が変わります。

CPAx は退室先や転帰の参考になりますか?

研究では予測的妥当性が報告されていますが、臨床では単独判断は避けます。呼吸管理、介助量、病棟要件、家族支援もあわせて解釈してください。

次の一手

CPAx を “ 測って終わり ” にしないためには、主役を決める → 条件を固定する → 低い領域を 1 行で残す の順番が大切です。ICU の評価で迷うときは、まず役割を整理してから各尺度を使い分けると、チーム内の言葉がそろいやすくなります。


参考文献

  1. American Physical Therapy Association. Chelsea Critical Care Physical Assessment Tool. 公式ページ
  2. Corner EJ, Soni N, Handy JM, Brett SJ. Construct validity of the Chelsea Critical Care Physical Assessment tool: an observational study of recovery from critical illness. Crit Care. 2014;18(2):R55. DOI: 10.1186/cc13839
  3. Eggmann S, Verra ML, Stefanicki V, et al. Predictive validity of the Chelsea Critical Care Physical Assessment tool (CPAx) in critically ill, mechanically ventilated adults: a prospective clinimetric study. Disabil Rehabil. 2023;45(1):111-116. DOI: 10.1080/09638288.2021.2022785
  4. Eggmann S, Paton M. Clinimetrics: The Chelsea Critical Care Physical Assessment tool (CPAx). J Physiother. 2025;71(3):204-205.
  5. Eggmann S, Kindler A, Hilfiker R, Nydahl P. Reliability, validity and practicability of the Chelsea Critical Care Physical Assessment tool (CPAx) following an e-learning programme: a clinimetric study. Intensive Crit Care Nurs. 2025;87:103959.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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