BARSとは?5テスト・30点で運動失調を評価する尺度
運動失調の評価を全体から確認したい方へ
BARS(Brief Ataxia Rating Scale)は、運動失調の重症度を歩行、膝‐脛試験、指鼻試験、構音、眼球運動の5テスト・合計0〜30点で評価する尺度です。膝‐脛試験と指鼻試験は左右を別々に採点し、得点が高いほど運動失調が重い方向で解釈します。
BARSは、ICARSをもとに臨床でより簡潔に運動失調を定量化できるよう開発されました。この記事では、5テストの配点、左右別採点の考え方、30点の読み方、BARS2との違い、再評価時の記録方法まで整理します。
BARSの評価項目と30点の内訳
BARSで最初に押さえたいのは、5テストで構成される一方、左右別採点を含むため記録上は7つのスコア欄になることです。歩行8点、膝‐脛試験左右各4点、指鼻試験左右各4点、構音4点、眼球運動2点を合計し、30点満点となります。
| テスト | 採点 | 配点 | 主に確認する内容 |
|---|---|---|---|
| 歩行 | 1項目 | 0〜8点 | 歩行の安定性や支持の必要性 |
| 膝‐脛試験 | 右・左を別々に採点 | 右0〜4点+左0〜4点 | 下肢運動の分解や協調性 |
| 指鼻試験 | 右・左を別々に採点 | 右0〜4点+左0〜4点 | 上肢運動の分解や測定障害 |
| 構音 | 1項目 | 0〜4点 | 発話の速度・リズム・明瞭性 |
| 眼球運動 | 1項目 | 0〜2点 | 追従、サッカード、眼振などの異常 |
| 合計 | 7つのスコア欄を合算 | 0〜30点 | 高得点ほど運動失調が重い方向 |

ポイント:BARSを「歩行・上肢・下肢・構音・眼球運動」とだけ覚えると、左右別採点を見落としやすくなります。実際の記録では、膝‐脛試験と指鼻試験を右・左に分けて残します。
BARSはどう評価・採点する?5テストの確認ポイント
BARSは各テストの所見を段階的に採点します。本記事では尺度の採点文を全文転載せず、それぞれのテストで何を評価しているのかを中心に整理します。実際の採点は原著に掲載されたBARSの採点基準を確認してください。
歩行|0〜8点
歩行では、自然歩行や継ぎ足歩行の状態、ふらつき、方向転換、支持や補助具・介助の必要性などから重症度を評価します。BARSの中で配点が最も大きく、0〜8点です。
歩行不能や介助が必要な場合も採点範囲に含まれるため、実施前には転倒リスクを確認し、安全を確保して評価します。
膝‐脛試験|右0〜4点・左0〜4点
膝‐脛試験では、下肢運動が滑らかに行えるか、運動が分解されていないか、軌道が逸脱していないかなどを確認します。
右下肢と左下肢をそれぞれ0〜4点で採点するため、合計では最大8点になります。左右差がある場合は、合計点だけでなく左右別スコアも残しておくと再評価しやすくなります。
指鼻試験|右0〜4点・左0〜4点
指鼻試験では、上肢の運動分解や測定障害を確認します。到達運動の軌道や終末でのずれなどを観察し、右・左を別々に評価します。
膝‐脛試験と同様に右0〜4点、左0〜4点で、両側を合わせると最大8点です。
構音|0〜4点
構音では、会話や発声から発話の速度、リズム、明瞭性などを確認します。単に「話せる・話せない」ではなく、運動失調に伴う構音の崩れを評価する項目です。
眼球運動|0〜2点
眼球運動では、追従運動、サッカードの異常、眼振などを含めて評価します。配点は0〜2点と小さいものの、BARSが眼球運動を評価項目に含むことは尺度の特徴の1つです。
BARSの点数はどう見る?0〜30点で高得点ほど重症
BARSは0〜30点で、得点が高いほど運動失調が重い方向で解釈します。ただし、「○点以下は軽症」「○点以上は重症」のような成人全般に共通する一律の重症度区分として使う尺度ではありません。
そのため、合計点だけを見るのではなく、どのテストで点数が高いのか、左右差があるのか、前回から何が変わったのかを合わせて確認することが重要です。
| 確認 | 見る内容 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 1.合計点 | 0〜30点の全体スコア | 全体として前回より増加・減少したか |
| 2.項目別スコア | 歩行・膝‐脛・指鼻・構音・眼球運動 | どの領域の変化が合計点へ影響したか |
| 3.左右差 | 膝‐脛試験・指鼻試験の右左 | 一側だけ変化していないか |
| 4.実際の機能 | 歩行、転倒、移動範囲、介助量など | 点数変化が生活上の変化と一致するか |
| 5.評価条件 | 補助具、介助、体調、時間帯など | 条件差を症状変化と混同していないか |
例えば合計点が同じでも、「歩行は改善したが指鼻試験が悪化した」という場合があります。BARSは合計点を出して終わるのではなく、内訳まで確認して変化の場所を特定すると臨床で使いやすくなります。
BARSとBARS2の違い|使用した版を記録する
文献では、原版BARSに加えてVersion 2(BARS2)が使用されている場合があります。BARS2では0.5点刻みの採点を用い、各段階をより細かく評価できるようにした形式が報告されています。
再評価で重要なのは、原版BARSとBARS2を同じものとして混在させないことです。前回と今回を比較するときは、どの版を使用したのかを記録し、可能な限り同じ版で経過を追うようにします。
再評価時の確認:記録用紙に「BARS」「BARS2」「その他・不明」の欄を設けておくと、過去記録との比較時に使用版を確認しやすくなります。
BARSの再評価|条件差→点数→項目別所見の順で見る
BARSを経時的に使う場合は、前回と今回の点数だけで改善・悪化を判断しないことが重要です。補助具、介助量、時間帯、服薬との関係、履物、疲労、体調などが異なれば、点数の変化を解釈するときの前提も変わります。
以下はBARSの公式採点基準ではなく、rehabilikunblogで再評価を整理しやすくするための実務上の記録方法です。条件を無理にすべて同一にすることが目的ではなく、前回と異なる条件があれば、その差を残して点数変化と分けて考えます。
| 条件 | 記録する内容 | 前回との差で確認すること |
|---|---|---|
| 補助具・装具 | 杖、歩行器、装具など | 種類や使用状況が変わっていないか |
| 介助量 | 見守り、接触介助、身体介助など | 前回より介助が増減していないか |
| 時間帯・服薬 | 評価時刻、服薬との時間関係 | 前回と評価タイミングが異ならないか |
| 履物・評価環境 | 履物、床面、評価場所など | 歩行条件に大きな違いがないか |
| 疲労・体調 | 疲労、眠気、疼痛、めまいなど | 一時的な状態変化が影響していないか |
再評価では、①使用版と条件差を確認する→②合計点を見る→③各テストと左右差を見る→④所見・生活上の変化を照合するという順番にすると、点数の変化を整理しやすくなります。
BARSの記録方法|点数・条件・所見をセットで残す
BARSは短くまとめられる尺度だからこそ、合計点だけを記録すると「なぜ点数が変わったのか」が後から分からなくなることがあります。記録では、合計点+使用版+評価条件+変化したテストの所見をセットにしておくと再評価につながります。
記録例
原版BARS合計12点。T字杖・見守り、午前10時、病棟廊下で評価。歩行では方向転換時に追加歩あり。指鼻試験は右で前回より到達時のずれが目立った。次回も使用版と歩行条件を確認して再評価する。
記録例はBARSの公式記載様式ではありません。臨床記録では、施設の記録方法に合わせながら、後から前回との差を説明できる情報を残してください。
BARS再評価・比較記録シート|Excel・PDF
BARSの前回値と今回値を比較しやすいように、「BARS 再評価・比較記録シート v2」を用意しています。歩行、膝‐脛試験の右・左、指鼻試験の右・左、構音、眼球運動を分けて記録し、使用版、評価条件、項目別の変化、生活上の変化まで1枚で整理できます。
重要:本シートはBARSの公式採点票ではありません。正式な採点は原著等に掲載された採点基準を確認してください。本シートは、公式評価後の前回値・今回値・条件差・所見を整理するための補助記録用紙です。
Excel版|入力・保存して使いたい場合
PDF版|A4で印刷して使いたい場合
BARS・SARA・ICARSは目的に応じて選ぶ
BARS、SARA、ICARSは、単純に「どれが優れているか」で選ぶ尺度ではありません。BARSは5テストで簡潔に運動失調を評価でき、眼球運動も含みます。一方、SARAやICARSでは評価項目や構成が異なるため、知りたい内容や継続して使用する尺度に応じて選択します。
この記事ではBARSを選んだ後の評価・記録に焦点を当てています。3尺度の詳細な比較は、記事末の比較記事で確認してください。
BARSでよくある質問
採点や再評価で迷いやすい点をまとめます。
Q1.BARSは何項目・何点満点ですか?
BARSは歩行、膝‐脛試験、指鼻試験、構音、眼球運動の5テストで、合計0〜30点です。膝‐脛試験と指鼻試験は左右別に採点するため、記録上は7つのスコア欄になります。
Q2.BARSは何点なら軽症・中等症・重症ですか?
BARSは高得点ほど運動失調が重い方向で解釈しますが、成人全般に共通する一律の軽症・中等症・重症区分として合計点だけを使うことは避けます。合計点、項目別スコア、左右差、実際の機能、前回からの変化を合わせて確認します。
Q3.BARSはどのくらいの時間で評価できますか?
BARSは臨床で迅速に実施できる尺度として開発されています。ただし、必要な時間は運動失調の程度、歩行能力、安全管理、介助の必要性などによって変わるため、固定した所要時間よりも正確な採点と安全確保を優先します。
Q4.BARSとBARS2を前回・今回で比較してもよいですか?
BARS2では0.5点刻みの採点が用いられるため、原版BARSと同じ条件のスコアとして単純比較しない方が安全です。再評価では使用した版を記録し、可能な限り同じ版で経過を追います。
次の一手
運動失調がある患者を初めて評価するときの流れを整理したい場合は、運動失調の評価|初回評価の進め方をご覧ください。
BARS・SARA・ICARSのどれを選ぶかで迷っている場合は、ICARS・SARA・BARSの違いと使い分けで、評価目的ごとの役割を確認できます。
参考文献
- Schmahmann JD, Gardner R, MacMore J, Vangel MG. Development of a brief ataxia rating scale based on a modified form of the ICARS. Mov Disord. 2009;24(12):1820-1828. doi:10.1002/mds.22681 / PubMed
- Camargos S, Cardoso F, Maciel R, Huebra L, Silva TR, Campos VG, et al. Brief Ataxia Rating Scale: a reliable tool to rate ataxia in a short timeframe. Mov Disord Clin Pract. 2016;3(6):621-623. doi:10.1002/mdc3.12364 / PubMed
- Potashman MH, Mize ML, Beiner MW, et al. Ataxia rating scales reflect patient experience: an examination of the relationship between clinician assessments of cerebellar ataxia and patient-reported outcomes. Cerebellum. 2023;22:1257-1273. doi:10.1007/s12311-022-01494-1
- Schmitz-Hübsch T, du Montcel ST, Baliko L, et al. Scale for the assessment and rating of ataxia: development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. doi:10.1212/01.WNL.0000219042.60538.92 / PubMed
- Trouillas P, Takayanagi T, Hallett M, et al. International Cooperative Ataxia Rating Scale for pharmacological assessment of the cerebellar syndrome. J Neurol Sci. 1997;145(2):205-211. doi:10.1016/S0022-510X(96)00231-6 / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

