DHI の評価方法|採点・解釈・使い方を PT 向けに解説

評価
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DHI は「めまいの生活影響」を数値でそろえる評価です

DHI( Dizziness Handicap Inventory )は、めまい・ふらつきが日常生活にどれだけ影響しているかを、患者さんの自己記入で数値化する評価です。前庭障害の場面では、眼振や頭位変換検査だけでは見えにくい「本人がどこで困っているか」を拾えるため、初回評価から再評価まで一貫して使いやすいのが強みです。

特に、客観検査では改善していても「外出が怖い」「買い物で悪化する」「振り向くと不安定」といった生活上の困りごとが残ることがあります。そんなときに DHI を入れると、症状そのものより “ 生活上の支障 ” を言語化しやすくなります。前庭リハ全体の流れは 前庭リハビリのやり方|めまい・前庭障害の評価から介入まで もあわせて確認してください。

DHI は生活の支障度を数値化し、mCTSIB や FGA と組み合わせると介入方針が立てやすいことを示した図版
DHI は主観的な生活影響を整理する評価で、mCTSIB や FGA などの客観評価と組み合わせると使いやすくなります。

評価が回る職場づくりも整理しておきたい方へ

臨床で使う評価を増やすほど、教育体制や相談しやすさの影響は大きくなります。転職を急がなくても、先に全体像を見ておくと判断しやすくなります。

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DHI とは

DHI は 25 項目の患者報告型評価で、機能面 9 項目、情緒面 9 項目、身体面 7 項目の 3 領域で構成されます。回答は「いいえ= 0 点」「ときどき= 2 点」「はい= 4 点」で、合計 0〜100 点です。点が高いほど、めまいによる自己認識上の支障が大きいと解釈します。

所要時間はおおむね 10 分前後で、紙とペンがあれば実施できます。前庭機能そのものを直接測る検査ではなく、「その症状が生活・行動・感情にどう響いているか」を把握する PROM と位置づけると運用しやすくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。
DHI の基本構造(成人・前庭障害場面の実務向け整理)
項目 内容 実務ポイント
目的 めまいによる生活上の支障を可視化する 機能検査では見えにくい “ 困りごと ” の把握に向く
構成 25 項目(機能 9 / 情緒 9 / 身体 7) 合計点だけでなく下位領域も確認する
採点 いいえ 0 / ときどき 2 / はい 4 高得点ほど支障が大きい
合計点 0〜100 点 経時比較は条件固定が前提
実施時間 約 10 分 初回面接や再評価日に組み込みやすい

採点方法

DHI の採点はシンプルですが、ブレやすいのは「説明の仕方」と「回答時点」です。まずは “ いまの生活の中で、めまいのためにどの程度困るか ” を固定した説明で導入し、必要以上に評価者が補足しすぎないことが大切です。

また、急性増悪直後と落ち着いた時期では点数が大きく変わることがあります。初回から、発症時期、直近の増悪、内服、頭位変換後かどうかなどを 1 行で残しておくと、再評価の比較精度が上がります。

DHI 採点の最小ルール
項目 ルール 残しておきたい記録
回答形式 いいえ 0 / ときどき 2 / はい 4 自己記入か聞き取りか
合計 25 項目を合計し 0〜100 点 Total と下位領域の傾向
比較条件 同じ説明文・同じ病期で比較 発症からの日数、増悪の有無、内服
欠測 未回答を推定で埋めない 理由を短く残す

解釈のコツ

DHI の合計点は便利ですが、それだけで “ 重症度 ” を断定しないことが大切です。実務では、点数を「本人が何に困っているか」を整理する入口として使う方が、介入方針につながりやすくなります。一般的には 16〜34 点を軽度、36〜52 点を中等度、54 点以上を重度のハンディキャップとして扱う資料が多い一方で、カットオフを絶対視するより、病期や併用検査と合わせてみる方が安全です。

再評価では、前後差だけでなく “ 何が変わったか ” を言語化することが重要です。たとえば合計点が少ししか下がらなくても、買い物・人混み・方向転換など生活上の詰まりが減っていれば、介入は前進している可能性があります。逆に数点の改善でも、急性期の自然軽快や説明の違いで動くことがあるため、単独で判断しないようにします。

DHI の実務的な読み方(絶対視しすぎないための早見)
見方 読み方 次に確認すること
合計点が高い 生活上の支障が大きい可能性 どの場面で悪化するか、外出や買い物の回避があるか
身体項目が目立つ 頭部運動や姿勢変化で症状が出やすい 頭位変換、視線移動、方向転換の観察
機能項目が目立つ ADL / IADL での制限が強い 買い物、外出、歩行課題の具体化
情緒項目が目立つ 不安・回避・自信低下の影響が大きい ABC や FES 系、活動量低下の確認

DHI を単独で終わらせない組み合わせ

DHI は主観尺度なので、単独では病態の切り分けができません。前庭障害をみる場面では、「 DHI で生活影響を把握 → 頭位変換検査やバランス検査で原因と破綻条件を具体化 → 介入後に再評価 」の流れに乗せると、記録がかなり安定します。

初回の最小セットとしては、BPPV が疑わしければ Dix-Hallpike、立位での感覚依存をみたいなら mCTSIB、歩行時の実用性までみたいなら FGA を組み合わせると実務向きです。DHI は “ どれだけ困っているか ”、他の検査は “ どこで崩れるか ” を補う関係として整理すると迷いません。

DHI と併用しやすい評価の組み合わせ
評価 主にみるもの DHI と組み合わせる理由
Dix-Hallpike BPPV の誘発所見 病態の切り分けを補う
mCTSIB 視覚 / 体性感覚 / 前庭覚の依存 静的立位の破綻条件を具体化できる
FGA 歩行中のバランスと頭部運動 生活場面での不安定さを機能面で裏づけやすい
ABC できる自信 支障の大きさと自信低下のズレを拾える

現場の詰まりどころ

DHI が回らなくなるのは、尺度そのものより “ 標準化不足 ” が原因のことが多いです。たとえば、初回は急性増悪直後、再評価はかなり落ち着いた時期、さらに評価者ごとに導入文が違うとなると、点数差の意味が読み取りにくくなります。

まずは 3 点だけ固定すると運用が安定します。① 導入文を固定する、② 記入時点の状態を 1 行残す、③ 合計点だけでなく困る場面を 1 つ書く。この 3 点で、申し送りやカンファレンスでも使いやすい記録になります。

よくある失敗

DHI 運用でよくある失敗と回避策
失敗 起こりやすい理由 回避策
合計点だけで終わる 申し送りを急いでいる 低かった場面や困る活動を 1 行で残す
再評価条件がそろわない 病期や増悪タイミングを記録していない 発症日数、増悪、内服、頭位変換後かを固定記録する
病態判断まで DHI だけで進める 主観尺度を万能視してしまう 頭位変換検査や歩行評価を必ず併用する
聞き取りで誘導してしまう 評価者が補足しすぎる 説明文を短く固定し、補足は最小限にする

記録の残し方

DHI の記録は、合計点だけでは次の介入につながりにくくなります。おすすめは「 Total 」「 目立つ領域 」「 困る活動 1 つ 」「 併用検査 」「 次回の確認課題 」までを 1 セットで残す形です。

記録例としては、「 DHI 42 / 100。機能項目優位。買い物時の方向転換で増悪訴えあり。mCTSIB 条件 4 で保持短縮、FGA で頭部運動課題に低下。次回は方向転換と視線安定の再評価を実施 」 のように、主観と客観をつないで書くと介入へ直結しやすくなります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. DHI は BPPV の患者さんにも使えますか?

使えます。ただし、DHI は病態を確定する検査ではなく、めまいが生活に与える影響をみる主観尺度です。BPPV を疑う場面では、Dix-Hallpike などの頭位変換検査で病態を確認したうえで、DHI を生活影響の把握や再評価に使うと整理しやすくなります。

Q2. 点数の何点差を改善とみてよいですか?

実務では 18 点以上の変化が “ 意味のある変化 ” の目安としてよく参照されますが、個々の患者さんでは病期や増悪タイミングの影響も受けます。数点差だけで判断せず、困る場面の変化や FGA、mCTSIB などの客観所見も合わせてみるのが安全です。

Q3. DHI だけで前庭リハの効果判定はできますか?

DHI だけでは不十分です。DHI は “ 本人の困りごと ” を拾うのに強い一方、どの条件で崩れるかや病態の切り分けは苦手です。主観尺度 1 本と、歩行または静的バランスの客観評価 1 本を組み合わせるのが回しやすいです。

Q4. 項目文を記事に全文掲載してもよいですか?

おすすめしません。記事では目的、採点、解釈、使い方、入手先を中心に整理し、実際の用紙は配布元や信頼できるデータベースから確認する運用が安全です。本記事でも全文掲示ではなく、臨床での使い方に絞って解説しています。

次の一手

DHI を入れると、めまい評価は “ 病態 ” と “ 生活影響 ” を分けて整理しやすくなります。次は、評価の入口と再評価の流れを以下の記事でつないでください。


参考文献

  1. Jacobson GP, Newman CW. The development of the Dizziness Handicap Inventory. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1990;116(4):424-427. PubMed / DOI
  2. Hall CD, Herdman SJ, Whitney SL, et al. Vestibular Rehabilitation for Peripheral Vestibular Hypofunction: An Updated Clinical Practice Guideline From the Academy of Neurologic Physical Therapy of the American Physical Therapy Association. J Neurol Phys Ther. 2022;46(2):118-177. PubMed / DOI
  3. Tamber AL, Wilhelmsen KT, Strand LI. Measurement properties of the Dizziness Handicap Inventory by cross-sectional and longitudinal designs. Health Qual Life Outcomes. 2009;7:101. PubMed / DOI
  4. Eijsden K, Schermer T, Bruins Slot R, et al. Measurement Properties of the Dizziness Handicap Inventory: A Systematic Review. Otol Neurotol. 2022;43(3):e282-e297. DOI
  5. Shirley Ryan AbilityLab. Dizziness Handicap Inventory. Rehabilitation Measures Database. Last updated May 5, 2025. 公式ページ

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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