胸鎖関節の触診ポイント【結論】
胸鎖関節の触診は、鎖骨内側端と胸骨柄の境目を確認し、首元から前胸部上方の痛みを整理するための評価です。結論からいうと、鎖骨を外側から内側へたどり、内側端のすぐ内側にある「骨の切り替わり」を確認すると再現しやすくなります。
この記事では、新人セラピストが迷いやすい胸鎖関節、鎖骨内側端、胸骨柄の見分け方を中心に、触診手順、よくある失敗、赤旗、記録例まで整理します。圧痛の有無だけで判断するのではなく、「どこに近い痛みか」を分けて記録できることを目標にします。
胸鎖関節はどこを触ればよいか
胸鎖関節は、鎖骨内側端と胸骨柄の間にある関節です。触診では「鎖骨を外側から内側へたどった終点の、すぐ内側にある境目」と捉えると分かりやすくなります。
首元のくぼみ周辺を何となく押すと、胸鎖乳突筋、胸骨柄、鎖骨内側端を混同しやすくなります。まず鎖骨を線として追い、終点を確認してから、その内側の切り替わりを探す流れに固定します。

胸鎖関節を触診する目的
胸鎖関節を触診する目的は、鎖骨内側部や前胸部上方の痛みを、位置関係で整理することです。
胸鎖関節周囲の痛みは、関節そのもの、鎖骨内側端、胸骨柄、胸鎖乳突筋などが近接しているため、圧痛だけでは判断がぶれやすいです。胸鎖関節を基準点にすると、「関節上の痛みか」「少し外側の鎖骨内側端か」「少し内側の胸骨柄か」を分けて考えやすくなります。
触診前に整えること
胸鎖関節は、座位で肩の力を抜いた状態にすると触れやすくなります。
上肢は体側に軽く下垂させ、肩甲帯に余計な力が入らないようにします。疼痛が強い場合や外傷後は、いきなり押し込まず、見た目の変形、腫脹、呼吸苦、嚥下困難、しびれ、循環異常を先に確認します。
胸鎖関節の触診手順
胸鎖関節の触診は、「鎖骨をたどる → 内側端を取る → 胸骨柄との境目を確認する」の3ステップで進めます。
1.鎖骨を外側から内側へたどる
まず鎖骨を外側から内側へゆっくりたどります。鎖骨は表在で触れやすいため、いきなり胸鎖関節を探すより、鎖骨のラインを追う方が再現しやすいです。
2.鎖骨内側端を確認する
鎖骨の内側端に到達したら、骨の丸みや終点を確認します。ここを胸鎖関節そのものと決めつけず、「鎖骨側の基準点」として扱います。
3.そのすぐ内側の境目を確認する
鎖骨内側端のすぐ内側へ指を進め、胸骨柄へ切り替わる狭い境目を確認します。この境目が胸鎖関節です。左右差、圧痛の限局性、段差、腫脹の有無を軽く確認します。
胸鎖関節・鎖骨内側端・胸骨柄の見分け方
見分けのコツは、胸鎖関節を「点」ではなく、周囲ランドマークとの位置関係で確認することです。
| 部位 | 触れ方の特徴 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 鎖骨内側端 | 鎖骨をたどった終点として触れやすい | 胸鎖関節よりやや外側にある |
| 胸鎖関節 | 鎖骨内側端と胸骨柄の境目として触れる | 狭い切り替わりとして確認する |
| 胸骨柄 | 正中寄りの広い面として触れる | 胸鎖関節より内側にある |
よくある失敗と修正ポイント
胸鎖関節の触診で多い失敗は、痛い場所をそのまま胸鎖関節と決めてしまうことです。
| 失敗 | 起きていること | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 首元を何となく押す | 胸鎖乳突筋や胸骨柄を拾っている | 先に鎖骨のラインをたどる |
| 鎖骨内側端を関節と誤認する | やや外側を触っている | 内側端のすぐ内側の境目を探す |
| 胸骨柄を関節と誤認する | やや内側を触っている | 広い面ではなく狭い切り替わりを見る |
| 外傷後に強く押す | 赤旗確認より触診を優先している | 変形・呼吸苦・嚥下困難を先に確認する |
赤旗として先に確認したいこと
外傷後の胸鎖関節周囲痛では、後方脱臼や後方転位を見逃さないことが重要です。
呼吸苦、嚥下困難、嗄声、しびれ、上肢の冷感や色調変化、強い腫脹、明らかな変形がある場合は、通常の触診を続けず、医師評価や画像評価につなげる視点が必要です。胸鎖関節は縦隔の重要構造に近いため、痛みの再現より安全確認を優先します。
記録例
記録では、胸鎖関節だけでなく、鎖骨内側端・胸骨柄との位置関係を残すと再評価しやすくなります。
記録例
右胸鎖関節周囲に圧痛あり。最圧痛部位は鎖骨内側端のすぐ内側で、胸骨柄より外側に限局。明らかな変形・腫脹なし。肩挙上時に同部位の違和感あり。呼吸苦、嚥下困難、上肢しびれなし。
触診後に次にみる評価
胸鎖関節を触診した後は、肩関節ROM、肩甲帯の前後運動、鎖骨全体のライン、頸部・胸郭運動との関連を確認します。
胸鎖関節の圧痛だけで診断を決めるのではなく、動作で症状が再現するか、左右差があるか、鎖骨内側端や胸骨柄との位置関係が一貫しているかを確認します。
現場の詰まりどころ
胸鎖関節の触診で詰まりやすいのは、位置のイメージが曖昧なまま「このあたり」と触ってしまう場面です。迷ったときは、よくある失敗を確認し、3ステップの手順に戻ると修正しやすくなります。
評価のばらつきが続く場合は、個人の努力不足だけでなく、見本・記録形式・相談できる環境が不足していることもあります。評価の学び方や環境の整え方を見直したい方は、PT向けの総合ガイドも参考にしてください。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
胸鎖関節がどうしても分からないときはどうしますか?
鎖骨を外側から内側へたどり、まず鎖骨内側端を確認します。そのすぐ内側にある胸骨柄との境目を探すと、胸鎖関節を捉えやすくなります。
胸鎖関節と鎖骨内側端はどう見分けますか?
鎖骨内側端は鎖骨の終点で、胸鎖関節はそのすぐ内側の境目です。外側すぎると鎖骨内側端、内側すぎると胸骨柄を触りやすくなります。
外傷後に強く触れてもよいですか?
強い痛み、変形、呼吸苦、嚥下困難、しびれ、循環異常がある場合は、強い触診を避け、赤旗確認を優先します。胸鎖関節では後方転位に注意が必要です。
胸鎖関節の圧痛だけで原因を判断できますか?
圧痛だけで断定はできません。鎖骨内側端、胸骨柄、肩関節運動、胸郭運動、外傷歴などと合わせて評価します。
次の一手
胸鎖関節の触診を練習するなら、まず健側で「鎖骨を外側から内側へたどる → 鎖骨内側端を取る → その内側の境目を確認する」を3回繰り返してください。
鎖骨まわりを続けて整理するなら、鎖骨外側端の触診ポイント、AC関節の触診ポイントへ進むと、肩周囲の骨性ランドマークをつなげて理解しやすくなります。
参考文献
- Dhawan R, Spiegl UJA, Müller LP. Sternoclavicular joint. Injury. 2018;49 Suppl 1:S19-S24. PubMed: 30214497
- Kiel J, Kaiser K. Sternoclavicular Joint Injury. StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023. NCBI Bookshelf
- Groh GI, Wirth MA. Management of traumatic sternoclavicular joint injuries. J Am Acad Orthop Surg. 2011;19(1):1-7. PubMed: 21205762
- Garcia JA, Kubat O, Seeley M, et al. Sternoclavicular Joint Instability: Symptoms, Diagnosis And Management. Cureus. 2020;12(7):e9299. PMC7395708
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下


