下腿周囲長は筋肉量低下を見逃さないための実用的な評価
下腿周囲長は、下腿の周径をメジャーで測定するシンプルな評価です。特別な機器を使わずにベッドサイドで実施できるため、病院、施設、訪問リハなど幅広い場面で活用しやすい指標です。
近年は、GLIM基準やサルコペニア評価との関係から、筋肉量減少を確認する方法として下腿周囲長に注目が集まっています。ただし、測定位置や姿勢が毎回ずれると、経時変化を正しく判断しにくくなります。
この記事では、下腿周囲長の測定方法、測定位置、基準値の目安、浮腫がある場合の注意点、記録のポイントを整理します。
下腿周囲長とは
下腿周囲長は、下腿の最も太い部位の周径を測定する方法です。英語では calf circumference と表記され、CC と略されることもあります。
筋肉量を直接測定する方法ではありませんが、筋肉量減少やサルコペニアのスクリーニングとして使いやすい評価です。BIAやDXAなどの体組成評価機器が使えない施設でも導入しやすい点が特徴です。
| 項目 | 内容 | 臨床での使い方 |
|---|---|---|
| 目的 | 筋肉量低下のスクリーニング | 低栄養やサルコペニアの確認に使う |
| 準備物 | 非伸縮性メジャー | ベッドサイドで実施しやすい |
| 強み | 簡便で反復測定しやすい | 経時変化を追いやすい |
| 注意点 | 浮腫や測定条件の影響を受ける | 単独で断定せず総合判断する |
下腿周囲長の測定方法
下腿周囲長は、同じ条件で測定することが重要です。測定姿勢、測定位置、メジャーの当て方が毎回変わると、前回値との比較が難しくなります。

準備するもの
- 非伸縮性メジャー
- 記録用紙または電子カルテ
- 必要に応じてマーキング用ペン
測定姿勢
可能であれば、座位で膝関節90度屈曲位にして測定します。座位が難しい場合は、背臥位で膝を軽く曲げるなど、施設内で実施しやすい姿勢を統一します。
重要なのは、毎回同じ姿勢で測定することです。座位と背臥位が混在すると、値の比較が難しくなる場合があります。
測定位置
下腿で最も太い部分を確認し、その周径を水平に測定します。メジャーが斜めにならないように注意し、皮膚に軽く接触させます。
強く締め付けると値が小さくなり、ゆるすぎると値が大きくなります。メジャーの張り方もできるだけ統一することが大切です。
| 確認項目 | ポイント | 記録のコツ |
|---|---|---|
| 測定部位 | 下腿の最も太い部位 | 左右どちらか、または両側を記録する |
| メジャー | 水平に巻く | 斜めにならないよう確認する |
| 締め付け | 強く締めすぎない | 皮膚に軽く接触する程度にする |
| 姿勢 | 座位または背臥位 | 毎回同じ姿勢で測定する |
| 左右差 | 浮腫や麻痺で差が出る | 必要に応じて両側測定する |
下腿周囲長の基準値の目安
AWGS 2019では、下腿周囲長のカットオフ値として、男性34cm未満、女性33cm未満が示されています。カットオフ値未満の場合、筋肉量減少の可能性を考慮します。
ただし、下腿周囲長のみでサルコペニアや低栄養を診断するわけではありません。握力、歩行速度、身体機能、栄養状態、疾患背景などと合わせて判断することが重要です。
| 性別 | カットオフ値 | 解釈のポイント |
|---|---|---|
| 男性 | 34cm未満 | 筋肉量減少の可能性を考慮する |
| 女性 | 33cm未満 | 筋肉量減少の可能性を考慮する |
GLIM基準との関係
GLIM基準では、低栄養の診断において筋肉量減少が重要な表現型基準のひとつになります。本来はBIA、DXA、CT、MRIなどで筋肉量を評価できると望ましいですが、すべての施設で実施できるわけではありません。
そのため、BIAやDXAがない施設では、下腿周囲長、身体所見、ADL、活動量、体重変化、BMI、食事摂取量などを組み合わせて、筋肉量減少の可能性を評価することが現実的です。
GLIM基準で筋肉量が測れない場合の対応については、GLIM基準で筋肉量が測れないときの実務対応でも整理しています。
浮腫がある場合の注意点
下腿周囲長は浮腫の影響を受けやすい評価です。浮腫がある場合、周径が大きく出るため、筋肉量が保たれているように見えることがあります。
そのため、浮腫がある患者では、下腿周囲長だけで判断せず、圧痕、左右差、体重変化、皮膚状態、食事摂取量、ADLなどを合わせて確認します。
| 注意点 | 起こりやすい問題 | 確認すること |
|---|---|---|
| 周径が大きく出る | 筋肉量が保たれているように見える | 圧痕や皮膚の張りも確認する |
| 左右差が出る | 片側だけ値が変化する | 両側測定して差を記録する |
| 体重変化と混同する | 浮腫増減で周径が変化する | 体重、食事量、浮腫所見を合わせる |
| 単回値で判断する | 変化を見誤る | 同じ条件で経時変化を見る |
記録時のポイント
下腿周囲長は、測定値だけを記録するよりも、測定条件も一緒に残すと再評価しやすくなります。特に、姿勢、左右、浮腫の有無、測定者、前回値との差は重要です。
| 記録項目 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 測定日 | いつ測定したか | 2026年6月11日 |
| 測定姿勢 | 座位、背臥位など | 座位、膝90度屈曲 |
| 左右値 | 右下腿、左下腿の値 | 右32.5cm、左31.8cm |
| 浮腫 | 圧痕、左右差、皮膚状態 | 右下腿に圧痕あり |
| 前回差 | 前回値からの変化 | 右 -0.8cm |
よくある質問
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下腿周囲長はどこを測りますか?
下腿の最も太い部位を測定します。メジャーを水平に巻き、強く締め付けず、皮膚に軽く接触させて測定します。
下腿周囲長の基準値はありますか?
AWGS 2019では、男性34cm未満、女性33cm未満がカットオフ値として示されています。ただし、単独で診断するのではなく、身体機能や栄養状態と合わせて判断します。
浮腫がある場合も測定してよいですか?
測定は可能ですが、浮腫があると周径が大きく出ることがあります。圧痕、左右差、体重変化、皮膚状態も合わせて記録し、単回値だけで判断しないことが重要です。
GLIM基準では下腿周囲長だけでよいですか?
下腿周囲長は実用的な代替指標ですが、それだけで判断するのは避けます。体重減少、BMI、食事摂取量、疾患負荷、身体所見、ADLなどと合わせて総合的に評価します。
まとめ
下腿周囲長は、特別な機器がなくても実施できる筋肉量評価のひとつです。GLIM基準やサルコペニア評価の場面でも活用しやすく、BIAやDXAが使えない施設では重要な代替指標になります。
ただし、測定位置、測定姿勢、メジャーの当て方をそろえないと、経時変化を正しく判断しにくくなります。また、浮腫がある場合は値が大きく出る可能性があるため、圧痕や左右差、体重変化、ADLなどと合わせて解釈することが重要です。
下腿周囲長は「単回値で判断する評価」ではなく、同じ条件で継続測定し、変化を追う評価として活用しましょう。
参考文献
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2.
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9.
- 日本サルコペニア・フレイル学会.サルコペニア診療ガイドライン2017年版 一部改訂.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下


