GLIM基準で筋肉量が測れなくても診断は進められる
GLIM基準では、BIAやDXAで筋肉量を測定できなくても、それだけで低栄養の診断ができなくなるわけではありません。表現型基準は「体重減少・低BMI・筋肉量減少」のうち1項目以上、病因基準は「食事摂取量低下または吸収不良・炎症または疾患負荷」のうち1項目以上を確認します。この記事では、筋肉量測定機器がない療養病院や施設に向けて、下腿周囲長の位置づけ、測定不能時の記録、5分で確認できる実務フローをPT視点で整理します。
先に結論
筋肉量を直接測れない場合は、①体重減少とBMIを先に確認する、②必要に応じて下腿周囲長などの代理指標を用いる、③測定方法・浮腫・測定不能理由を記録する、④表現型基準と病因基準を多職種で確認する、という順で対応します。
GLIM基準全体の診断フローや重症度判定は、GLIM基準の使い方|診断フロー・重症度・記録シートで確認できます。本記事では、筋肉量を直接測定できない場合の対応に絞ります。
筋肉量減少は重要だが必須項目ではない
GLIM基準では筋肉量減少も重要な表現型基準ですが、すべての患者で必ず筋肉量減少を証明しなければならないわけではありません。
GLIM基準では、栄養スクリーニングでリスクを確認したあと、表現型基準から1項目以上、病因基準から1項目以上を満たすかを確認します。したがって、筋肉量を測定できなくても、体重減少または低BMIを確認でき、病因基準にも該当すれば診断を進められます。
| 確認状況 | 判断 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 体重減少または低BMIを確認できる | 筋肉量を測定できなくても、表現型基準を確認できる | 病因基準を確認し、GLIM診断を進める |
| 体重減少も低BMIも確認できない | 筋肉量減少の評価が診断上重要になる | BIA・DXA・既存CT画像・超音波・身体計測の可否を検討する |
| 筋肉量を直接測定できない | 測定不能であり、「筋肉量減少なし」ではない | 下腿周囲長などの代理指標と身体所見を検討する |
| 代理指標も評価困難 | 筋肉量項目は判定保留または評価困難とする | 理由と再評価条件を記録し、多職種で判断する |
記録上の注意
筋肉量を測れなかった場合に「減少なし」と記録してはいけません。「未測定」「測定機器なし」「浮腫により評価困難」など、判定できなかった理由を残します。
筋肉量を評価する方法には優先順位がある
筋肉量は、施設で使用できる妥当な方法を選び、同じ方法と条件で評価することが基本です。
代表的な方法にはDXA、BIA、CT、MRI、超音波などがあります。ただし、療養病院や介護施設では、栄養評価を目的として日常的に実施できない方法も少なくありません。
| 方法 | 位置づけ | 現場での注意点 |
|---|---|---|
| DXA | 体組成を客観的に評価できる | 装置を保有する施設が限られる |
| BIA | 比較的簡便に体組成を測定できる | 浮腫、脱水、測定機器、測定条件の影響を考慮する |
| CT・MRI | 骨格筋断面積などを評価できる | 栄養評価だけを目的に新たに撮影する方法ではない |
| 超音波 | 筋厚などをベッドサイドで確認できる | 機器、測定技術、測定部位の標準化が必要になる |
| 下腿周囲長 | 筋肉量減少を疑うための代理指標として使いやすい | 浮腫、肥満、肢位、麻痺、測定者差の影響を受ける |
CTやMRIの画像がすでに存在していても、誰がどの部位をどの方法で評価するかを院内で決めていなければ、日常運用にはつながりません。利用可能な機器の有無だけでなく、測定技術、基準値、担当職種、記録場所まで決める必要があります。
筋肉量を測れない施設での5分判断フロー
筋肉量測定機器がない場合は、体重減少とBMIを先に確認し、筋肉量評価が診断に必要かを整理すると実務が止まりにくくなります。

| 手順 | 確認すること | 判断と対応 |
|---|---|---|
| 1.スクリーニング | 検証された栄養スクリーニングでリスクがあるか | リスクがあればGLIM評価へ進む |
| 2.体重減少 | 何か月で何%減少したか | 該当すれば表現型基準の根拠として記録する |
| 3.BMI | 年齢や対象集団に応じた基準を下回るか | 該当すれば表現型基準の根拠として記録する |
| 4.筋肉量 | 直接測定、既存画像、超音波、身体計測を利用できるか | 利用可能な方法を選び、方法と条件を明記する |
| 5.病因基準 | 摂取量低下、吸収不良、炎症、疾患負荷があるか | 表現型1項目以上と病因1項目以上を多職種で確認する |
現場での考え方
「筋肉量を測れないからGLIM評価を中止する」のではなく、まず体重減少とBMIで表現型基準を確認します。そのうえで筋肉量評価が必要な症例を絞り、施設で実施可能な方法を選びます。
下腿周囲長は代理指標として活用する
下腿周囲長は、BIAやDXAを使用できない施設で筋肉量減少の可能性を確認する、実用的な代理指標のひとつです。
非伸縮性メジャーがあればベッドサイドで繰り返し測定できるため、療養病院、慢性期病棟、介護施設でも導入しやすい利点があります。ただし、筋肉そのものだけを測定しているわけではないため、単独値で筋肉量減少を断定しないことが重要です。
| 確認項目 | 起こり得る誤判定 | 記録する内容 |
|---|---|---|
| 浮腫 | 水分によって周径が大きくなり、筋肉量を過大評価する | 浮腫の有無、圧痕、左右差、測定時の状態 |
| 肥満 | 皮下脂肪によって周径が保たれて見える | BMIや体格と合わせて解釈したことを記録する |
| 測定位置 | 位置が変わると経時比較ができない | 最大周径部、測定側、ランドマーク |
| 肢位 | 座位と背臥位が混在すると測定値が変わる | 座位・背臥位などの測定姿勢 |
| 麻痺・拘縮 | 廃用や局所的な筋萎縮の影響を受ける | 麻痺側、非麻痺側、拘縮、活動状況 |
| 測定者差 | 巻尺の締め方や角度によって値が変化する | 院内で統一した手順と再測定条件 |
下腿周囲長の具体的な測定位置、姿勢、メジャーの当て方、記録方法は、下腿周囲長の測定方法|測定位置・基準値・記録のポイントで詳しく確認できます。
身体機能は筋肉量の代わりではなく補助情報として使う
握力、歩行速度、立ち上がり能力、ADLなどの身体機能は、筋肉量の直接的な代替値ではありませんが、栄養評価と介入方針を考えるうえで重要な補助情報です。
筋力や身体機能は、疼痛、意識障害、麻痺、関節拘縮、呼吸循環状態、認知機能などにも左右されます。そのため、「歩けないから筋肉量が少ない」「握力が低いからGLIMの筋肉量減少に該当する」と直接置き換えるのは避けます。
一方で、筋肉量減少が疑われる患者に活動量低下やADL低下も認める場合は、栄養介入だけでなく、離床、運動負荷、ポジショニング、食事場面の調整を多職種で検討する根拠になります。
療養病院では対象者と再評価条件を先に決める
療養病院で運用を継続するには、全患者へ一律に測定を追加するより、対象者、担当者、記録場所、再評価条件を先に決めることが重要です。
実際の現場では、入院時に測定しても、その後の再評価日や担当職種が決まっておらず、単発の数値だけが残ることがあります。下腿周囲長を毎月測るかどうかより、「誰を、何の目的で、どの条件で再測定するか」を統一した方が、評価結果を介入につなげやすくなります。
| 運用項目 | 決めておく内容 | 例 |
|---|---|---|
| 対象者 | 誰に筋肉量評価を行うか | 栄養スクリーニング陽性、体重減少、摂取量低下、褥瘡保有者 |
| 測定方法 | 施設で使う第一選択と代替方法 | BIAが可能ならBIA、困難なら下腿周囲長 |
| 担当職種 | 測定者と最終確認者 | 看護師またはリハ職が測定し、管理栄養士・医師と共有 |
| 測定条件 | 側、姿勢、時間帯、浮腫の記録 | 右側・背臥位・午前・浮腫の有無を併記 |
| 再評価 | 定期評価と状態変化時の条件 | 栄養計画の見直し時、体重減少、摂取量低下、浮腫変化時 |
測定できない場合の記録例
筋肉量を測定できないときは、空欄にせず、測定不能理由、使用した代替情報、判断、再評価予定を分けて記録します。
記録例
BIA・DXAは院内設備がなく未実施。過去6か月の体重減少率7%、BMI 17.8。右下腿周囲長は28.5cmだが、両下腿に圧痕性浮腫を認めるため単独での筋肉量判定は困難。食事摂取量は必要量の約50%が1週間以上継続している。体重減少を表現型基準、摂取量低下を病因基準の候補として管理栄養士・医師へ共有。浮腫と摂取量の変化を確認し、栄養計画見直し時に再評価する。
この記録では、下腿周囲長の数値だけで筋肉量減少を断定していません。体重減少という別の表現型基準、摂取量低下という病因基準、測定値の限界、次の行動を一続きで残している点が重要です。
よくある失敗は未測定と非該当を混同すること
筋肉量測定機器がない施設では、「測定できない」「減少していない」「判定できない」が混同されると、GLIM評価の根拠が不明確になります。
| よくある失敗 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 筋肉量を測れないためGLIM評価を中止する | 体重減少や低BMIで表現型基準を確認できる可能性を見落とす | 体重減少とBMIを先に確認する |
| 未測定を「減少なし」と記録する | 評価していない項目が陰性として扱われる | 未測定、評価困難、測定不能理由を明記する |
| 下腿周囲長だけで確定する | 浮腫や肥満による誤判定が起こる | 体重、BMI、浮腫、摂取量、活動量と合わせて解釈する |
| 毎回異なる条件で測定する | 前回値との変化が測定誤差か判断できない | 側、肢位、位置、時間帯、巻尺の当て方を統一する |
| 毎月測ることだけが目的になる | 測定値が介入や栄養計画の見直しにつながらない | 再評価条件と測定後の行動を先に決める |
PTは測定値と生活機能をつなぐ
PTの役割は低栄養を単独で診断することではなく、筋肉量に関する情報と活動量、移動能力、ADL、浮腫、皮膚状態をつなぎ、多職種の判断材料として共有することです。
療養病棟では、食事摂取量の低下、長期臥床、拘縮、浮腫、褥瘡、活動量低下が重なっている患者も少なくありません。下腿周囲長が保たれていても浮腫が強ければ筋肉量を過大評価する可能性があり、反対に麻痺側の細さだけで全身の筋肉量減少を判断するのも適切ではありません。
- 測定可能な筋肉量評価方法を確認する
- 測定不能時は理由を記録する
- 下腿周囲長では浮腫、麻痺、拘縮、測定条件を併記する
- 体重、BMI、摂取量、活動量、ADLを時系列で共有する
- 栄養計画やリハビリ計画の見直しにつなげる
褥瘡リスクがある患者では栄養と活動を同時に確認する
褥瘡リスクが高い患者では、筋肉量だけでなく、低栄養、摂取量低下、浮腫、活動量、除圧能力、皮膚状態を同時に確認する必要があります。
筋肉量減少や活動量低下が疑われる患者では、自力での体位変換が難しくなり、骨突出部への荷重が続きやすくなります。さらに、浮腫があると下腿周囲長を過大評価しやすい一方、皮膚の脆弱性や創傷治癒への影響も考慮しなければなりません。
PTは、姿勢、体位変換能力、座位保持、移乗、離床時間、浮腫、下腿周囲長などを確認し、管理栄養士、看護師、医師と共有します。GLIM評価の結果を記録するだけでなく、除圧、離床、食事姿勢、活動量の調整へつなげることが重要です。
GLIM評価確認チェックシートをダウンロード
GLIM基準の確認項目を現場で整理できるように、A4 1枚の「GLIM評価確認チェックシート」を用意しています。体重減少、BMI、筋肉量減少、疾患負荷・炎症、判定、備考を一枚で確認できます。
チェックシートをプレビューする
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
GLIM基準では筋肉量の測定が必須ですか?
筋肉量減少は3つある表現型基準のひとつであり、すべての患者で必須となる項目ではありません。体重減少または低BMIを確認でき、病因基準からも1項目以上を満たせば、筋肉量を直接測定できない場合でもGLIM診断を進められます。ただし、筋肉量の情報が不要になるわけではなく、可能な範囲で評価し、未測定の場合は理由を記録します。
BIAやDXAがない場合は下腿周囲長だけでよいですか?
下腿周囲長は利用しやすい代理指標ですが、単独で筋肉量減少を断定する方法ではありません。浮腫、肥満、肢位、麻痺、拘縮、測定位置などの影響を確認し、体重、BMI、食事摂取量、身体所見と合わせて解釈します。
筋肉量を測定できなかった場合はどう記録しますか?
「減少なし」ではなく、「BIA・DXA設備がなく未測定」「浮腫が強く下腿周囲長による判定困難」など、測定できなかった理由を記載します。使用した代替情報、体重減少やBMIの該当状況、再評価条件も残します。
毎月すべての患者で下腿周囲長を測る必要がありますか?
GLIM基準だけを理由に、全患者へ一律の月次測定が必要とは限りません。施設の栄養管理体制や対象患者に合わせ、栄養リスク、体重減少、摂取量低下、褥瘡、状態変化などから対象者と再評価条件を決めます。診療報酬や施設基準に関する運用は、最新の通知と院内規程も確認してください。
握力や歩行速度を筋肉量の代わりにできますか?
握力や歩行速度は筋肉量そのものではなく、筋力・身体機能の指標です。そのため、GLIMの筋肉量減少へ直接置き換えるのは避けます。ただし、包括的な栄養評価、介入方針、経過観察を行うための重要な補助情報になります。
まとめ
GLIM基準では、筋肉量を直接測定できないからといって診断を中止する必要はありません。まず体重減少とBMIを確認し、いずれかが表現型基準に該当する場合は、摂取量低下や炎症・疾患負荷などの病因基準と組み合わせて判断します。
筋肉量評価が必要な場合は、施設で使用できる妥当な方法を検討し、BIAやDXAがなければ下腿周囲長などの代理指標を活用します。ただし、浮腫、肥満、麻痺、拘縮、測定条件による誤差を確認し、単独値で断定しないことが重要です。
現場では、「測定できない」と「筋肉量減少なし」を区別し、測定不能理由、代替情報、再評価条件を記録してください。PTは筋肉量の数値だけでなく、活動量、ADL、移動能力、浮腫、褥瘡リスクをつなぎ、多職種の介入へ反映する役割を担います。
次の一手
GLIM基準全体の診断手順、重症度、記録方法を整理する場合は、GLIM基準の使い方|診断フロー・重症度・記録シートへ進んでください。
実際に下腿周囲長を測定する場合は、下腿周囲長の測定方法|測定位置・基準値・記録のポイントで測定条件を確認してください。
参考文献
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition: A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi:10.1016/j.clnu.2018.08.002
- Barazzoni R, Jensen GL, Correia MITD, et al. Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the Global Leadership Initiative on Malnutrition diagnosis of malnutrition. Clin Nutr. 2022;41(6):1425-1433. doi:10.1016/j.clnu.2022.02.001
- Jensen GL, Cederholm T, Correia MITD, et al. The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. Clin Nutr. 2025;44:13-21. doi:10.1016/j.clnu.2024.12.002
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 consensus update on sarcopenia diagnosis and treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi:10.1016/j.jamda.2019.12.012
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

