肘頭の触診ポイント|内側上顆との見分け方と評価の進め方
「肘頭ってどこを触ればいい?」
肘頭は、肘関節後方にある比較的触れやすい骨性ランドマークです。
肘関節の可動域評価、圧痛評価、腫脹の確認、外傷後のアライメント確認などで触診する機会があります。
一方で、内側上顆や尺骨神経溝と近いため、「どこが肘頭なのか」「神経を押してしまわないか」と迷う方もいます。
この記事では、肘頭の位置、触診方法、内側上顆との見分け方、尺骨神経溝との違い、圧痛所見の見方を新人PT・OT向けに整理します。
この記事でわかること
- 肘頭の位置
- 肘頭の触診方法
- 内側上顆との見分け方
- 尺骨神経溝との違い
- 圧痛所見と記録例
肘頭とは?
肘頭は、尺骨近位端の後方にある骨性ランドマークです。
肘を曲げたときに後方へ大きく突出するため、肘周囲の中でも比較的触診しやすい部位です。
臨床では、肘関節の可動域評価、圧痛確認、腫脹の有無、外傷後の状態確認などで使います。
また、肘頭の近くには内側上顆、外側上顆、尺骨神経溝などの重要な構造があります。
そのため、肘頭だけでなく、周囲ランドマークとの位置関係をセットで理解することが大切です。
肘頭の位置と解剖
肘頭は、肘関節後方の中央にあります。
解剖学的には尺骨の近位端に位置し、上腕骨遠位端とともに肘関節を構成します。
位置関係を整理すると、以下のようになります。
- 後方中央:肘頭
- 内側:上腕骨内側上顆
- 外側:上腕骨外側上顆
- 内側上顆後方:尺骨神経溝
肘関節を伸展すると肘後方はやや平坦になりますが、肘を90°程度曲げると肘頭が後方へ突出しやすくなります。
触診では、この特徴を利用すると確認しやすくなります。
肘頭の触診方法
肘頭は、肘を曲げて後方中央の骨性隆起を確認すると触診しやすくなります。

STEP1:肘関節を90°程度屈曲する
まず、対象者に肘を90°程度曲げてもらいます。
この姿勢にすると、肘頭が後方へ突出しやすくなります。
力が入っていると上腕三頭筋の緊張で触れにくくなるため、できるだけリラックスしてもらいます。
STEP2:肘後方中央を触れる
次に、肘の後方中央に指を当てます。
硬く大きく触れる骨性隆起が肘頭です。
皮下組織が比較的少ない部位のため、多くの場合は確認しやすいランドマークです。
STEP3:周囲ランドマークと比較する
肘頭を確認したら、内側上顆、外側上顆とあわせて位置関係を確認します。
- 後方中央:肘頭
- 内側:内側上顆
- 外側:外側上顆
この3点を触診すると、肘周囲の位置関係が整理しやすくなります。
触診のコツ
- 肘を90°程度曲げる
- 後方中央の骨突出を探す
- 内側上顆・外側上顆と比較する
肘頭が触れにくいときの修正方法
肘頭は比較的触れやすい部位ですが、浮腫、筋緊張、疼痛などでわかりにくいことがあります。
1.肘の角度を調整する
肘伸展位では肘後方が平坦に感じることがあります。
90°前後に屈曲すると、肘頭が後方へ突出しやすくなります。
2.上腕三頭筋の緊張を抜く
上腕三頭筋に力が入ると、骨性隆起との区別がしにくくなることがあります。
肩や肘の力を抜いてもらい、肘後方中央をゆっくり確認します。
3.広く触れてから一点に絞る
最初から一点を強く押すよりも、肘後方全体を広く触れてから、最も硬く突出する部位を探すと確認しやすくなります。
痛みがある場合は、強く押しすぎないよう注意します。
内側上顆との見分け方
肘頭と混同しやすいランドマークのひとつが、上腕骨内側上顆です。
肘頭は肘後方中央にあり、内側上顆は肘の内側にあります。
| 比較項目 | 肘頭 | 内側上顆 |
|---|---|---|
| 位置 | 肘後方中央 | 肘内側 |
| 所属する骨 | 尺骨 | 上腕骨 |
| 触れ方 | 後方へ大きく突出 | 内側の骨性隆起 |
| 関連構造 | 上腕三頭筋腱、肘頭滑液包 | 尺骨神経溝、前腕屈筋群 |
まず肘後方中央の肘頭を確認し、そこから内側へ移動して内側上顆を確認すると、位置関係を理解しやすくなります。
尺骨神経溝との違い
内側上顆のすぐ後方には、尺骨神経が通る尺骨神経溝があります。
この部位を強く圧迫すると、しびれや痛みを誘発することがあります。
肘頭、内側上顆、尺骨神経溝の違いは以下のように整理できます。
- 肘頭:肘後方中央の骨突出
- 内側上顆:肘内側の骨性隆起
- 尺骨神経溝:内側上顆の後方にある溝
触診練習では、尺骨神経溝を強く押しすぎないことが大切です。
注意したいポイント
- 尺骨神経溝は強圧しない
- しびれが出たら刺激を中止する
- 骨性ランドマークと神経の位置を区別する
肘頭周囲に圧痛がある場合
肘頭周囲に圧痛がある場合は、圧痛の位置、腫脹、発赤、熱感、外傷歴などを確認します。
臨床で確認することがある状態には、以下があります。
- 肘頭滑液包炎
- 転倒後の打撲
- 尺骨近位部骨折
- 炎症による腫脹
- 長時間の肘つきによる局所刺激
発赤や熱感、明らかな腫脹がある場合は、炎症所見として整理します。
外傷後に強い疼痛や変形がある場合は、無理に触診を続けず、医師の評価につなげることが大切です。
カルテ記録例
肘頭周囲を確認した場合は、圧痛、腫脹、発赤、熱感、疼痛誘発動作などを簡潔に記録します。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 所見なし | 右肘頭部に圧痛なし。腫脹なし。 |
| 軽度圧痛 | 左肘頭周囲に軽度圧痛あり。発赤・熱感なし。 |
| 腫脹あり | 右肘頭部に腫脹あり。圧痛陽性。肘伸展時に疼痛増悪。 |
| 神経症状に注意 | 内側上顆後方の圧迫で尺側手指にしびれ訴えあり。強圧は避けて評価継続。 |
記録では「どこに」「どの程度」「何で増悪するか」を分けて書くと、後から見返しやすくなります。
新人が間違えやすいポイント
肘頭の触診では、以下のような間違いが起こりやすいです。
- 内側上顆を肘頭と誤認する
- 尺骨神経溝を強く圧迫する
- 肘伸展位のまま無理に探す
- 上腕三頭筋腱を骨性隆起と勘違いする
- 圧痛確認で強く押しすぎる
- 左右差を確認していない
まずは肘90°屈曲位で、後方中央の骨性隆起を確認することが基本です。
関連して確認したいランドマーク
肘頭は、肘関節周囲のランドマークとあわせて確認すると理解しやすくなります。
- 内側上顆:肘内側の骨性隆起
- 外側上顆:肘外側の骨性隆起
- 尺骨神経溝:内側上顆後方の溝
- 橈骨頭:前腕回内外で確認しやすい外側のランドマーク
これらをセットで触診できると、肘関節周囲の位置関係を立体的に捉えやすくなります。
FAQ
肘頭はどこにありますか?
肘頭は、肘関節後方中央にある尺骨近位端の骨性隆起です。肘を90°程度曲げると後方へ突出し、触れやすくなります。
肘頭と内側上顆はどう見分けますか?
肘頭は肘後方中央にあり、内側上顆は肘の内側にあります。まず後方中央の肘頭を確認し、そこから内側へ移動して内側上顆を触れると位置関係を整理しやすくなります。
尺骨神経溝は強く押してもよいですか?
強く押すのは避けます。尺骨神経溝を強圧すると、しびれや痛みを誘発することがあります。位置確認は軽く行い、症状が出る場合は刺激を中止します。
肘頭に圧痛がある場合は何を確認しますか?
圧痛の位置、腫脹、発赤、熱感、外傷歴、肘関節運動時の痛みを確認します。強い痛みや変形、明らかな腫脹がある場合は、医師の評価につなげることが大切です。
まとめ
肘頭は、肘関節後方中央にある重要な骨性ランドマークです。
- 尺骨近位端の後方にある
- 肘90°屈曲で触れやすくなる
- 肘後方中央の骨突出として確認する
- 内側上顆や尺骨神経溝と区別する
- 圧痛、腫脹、発赤、熱感をあわせて確認する
肘頭は比較的触れやすい部位ですが、周囲には内側上顆や尺骨神経溝など重要な構造があります。
新人PT・OTの方は、肘90°屈曲位で肘頭を確認し、内側上顆・外側上顆と比較しながら触診してみてください。

