身体障害者手帳の強直肢位とは?関節可動域(ROM)記載で迷う他動運動との違いを解説

臨床手技・プロトコル
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結論:強直肢位と他動運動による関節可動域は、必ずしも同じではありません

身体障害者手帳や障害年金の診断書では、関節可動域を記載するときに「強直肢位」と「他動運動による関節可動域」を分けて考える場面があります。

結論からいうと、強直肢位は「関節が固定されている、または実用上ほぼ固定されている角度」他動運動による関節可動域は「検者が動かしたときに到達できる最大可動域」として整理すると理解しやすくなります。

そのため、両者は同じ数値になることもありますが、必ずしも一致するわけではありません。

この記事のポイント

  • 強直肢位は「固定されている肢位」を表す
  • 他動運動による関節可動域は「検者が動かして到達できる範囲」を表す
  • 足関節背屈で、強直肢位が−20°、他動で−15°という記載は考え方として自然
  • 痙縮だけで動かしにくい状態は、強直と同じ意味ではない

なお、身体障害者手帳や障害年金の最終的な診断書記載は医師が行います。リハ職は、測定値・測定条件・制限因子を整理し、医師が判断しやすい形で情報提供することが重要です。

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強直肢位(ごうちょくしい)とは何か

強直肢位とは、簡単にいうと関節がどの角度で固まっているかを示す考え方です。

たとえば、足関節が底屈位でほとんど動かず、背屈方向へ動かせない場合、その固定されている角度を強直肢位として考えます。

強直肢位で考えやすい状態

  • 関節包の短縮
  • 筋・腱の短縮
  • 癒着
  • 骨性強直
  • 長期不動による高度拘縮

ポイントは、単に「動かしにくい」ではなく、構造的に可動性が失われ、一定の肢位で固定されている状態として捉えることです。

他動運動による関節可動域とは

他動運動による関節可動域とは、検者が外力を加えて関節を動かしたときに、どこまで動くかを測定した値です。

障害年金の肢体の障害関係の測定方法では、関節可動域は自動運動でも他動運動でも測定できますが、原則として他動運動による測定値を表記するとされています。

つまり、他動可動域は「本人が自分で動かせる範囲」ではなく、検者が動かしたときに到達できる最大範囲です。

強直肢位と他動運動の違い

強直肢位と他動運動による関節可動域の違いは、次のように整理できます。

強直肢位と他動運動による関節可動域の違いを整理した図版
強直肢位は固定された角度、他動運動は検者が動かして到達できる角度として整理します。
強直肢位と他動運動による関節可動域の違い
項目 意味 見ているもの
強直肢位 関節が固定されている角度 どの肢位で固まっているか
他動運動による関節可動域 検者が動かしたときに到達できる角度 外力でどこまで動かせるか

強直肢位が「固定されている位置」に近い概念だとすると、他動可動域は「検者が動かして到達できる範囲」に近い概念です。

足関節背屈の例で考える

たとえば、足関節背屈で次のような状態を考えます。

例:足関節背屈制限

  • 安静時または固定肢位:背屈 −20°
  • 検者が他動で動かすと:背屈 −15°まで可能

この場合、記載の考え方としては次のようになります。

足関節背屈制限における記載例
記載欄 記載例 意味
強直肢位 背屈 −20° 固定されている、または実用上ほぼ固定されている肢位
他動運動 背屈 −15° 検者が動かして到達できる最大背屈角度

このように、強直肢位が背屈 −20°で、他動運動では背屈 −15°まで動くという記載は、概念としては自然です。

強直肢位より他動運動のほうが悪い角度になることはある?

原則として、強直肢位よりも他動運動による可動域のほうが悪い角度になることは通常ありません

たとえば、足関節背屈で考えると、次のような記載は自然です。

  • 強直肢位:背屈 −20°
  • 他動運動:背屈 −15°

一方で、次のような記載は違和感があります。

  • 強直肢位:背屈 −20°
  • 他動運動:背屈 −25°

なぜなら、他動運動は検者が外力を加えて動かしたときの可動域であり、通常は固定肢位から改善方向へ動くか、まったく動かなければ同じ角度になるためです。

現場での整理

  • 完全に動かない場合:強直肢位と他動可動域は同じになりやすい
  • 少しでも動く場合:他動可動域は強直肢位より改善方向の角度になりやすい
  • 他動のほうが悪い角度になる場合:測定条件や記載方法を再確認する

痙性麻痺の場合は強直肢位になるのか

ここで迷いやすいのが、脳卒中後の痙性麻痺や尖足です。

痙性麻痺では、下腿三頭筋の筋緊張が高く、足関節が底屈位になりやすいことがあります。この状態を見ると「強直肢位」と考えたくなるかもしれません。

しかし、痙縮によって動かしにくい状態と、関節や筋腱が構造的に短縮して固定されている状態は分けて考える必要があります。

痙縮主体の例

  • 安静時は足関節底屈位に見える
  • 速く動かすと抵抗が強い
  • ゆっくり他動すると背屈方向へある程度動く

この場合は、強直というよりも神経性の筋緊張亢進による可動域制限として整理したほうが実態に近いことがあります。

拘縮を伴う例

  • ゆっくり動かしても背屈方向へほとんど動かない
  • 筋・腱・関節包の短縮が疑われる
  • 長期的に同じ肢位で固定されている

この場合は、強直肢位として記載を検討する場面があります。

診断書記載でリハ職が整理しておきたいポイント

身体障害者手帳や障害年金の診断書を最終的に記載するのは医師です。ただし、リハ職が評価依頼を受ける場面では、医師が判断しやすいように測定情報を整理して返すことが重要です。

1. 測定値だけでなく測定条件を書く

関節可動域は、測定肢位や速度、疼痛、筋緊張の影響を受けます。特に痙縮がある場合は、速く動かしたときとゆっくり動かしたときで結果が変わることがあります。

記載例

右足関節背屈は安静時 −20°程度。膝屈曲位でゆっくり他動すると −15°まで可能。下腿三頭筋の筋緊張亢進あり。疼痛訴えなし。

2. 強直なのか、痙縮主体なのかを分ける

「動かしにくい」だけでは、強直とは限りません。痙縮、疼痛、防御性収縮、筋短縮、関節包制限など、制限因子を分けて整理します。

3. 医師へ返すときは断定しすぎない

リハ職が医師へ返す場合は、「強直です」と断定するよりも、測定値と所見を整理して伝えるほうが安全です。

返答例

右足関節は底屈位で固定傾向があり、安静時背屈 −20°、他動背屈 −15°でした。痙縮の影響もありますが、背屈方向の可動域制限を認めます。強直肢位として扱うかは診断書記載時にご判断ください。

よくある記載パターン

強直肢位と他動可動域のよくある考え方
状態 強直肢位 他動可動域 考え方
完全固定 −20° −20° 両者が同じになりやすい
固定傾向だが少し動く −20° −15° 他動で改善方向へ動く
痙縮主体 該当判断は慎重 測定可能な範囲を記載 神経性要因と拘縮を分ける
疼痛で制限 通常は強直とは別 疼痛出現角度を含めて整理 疼痛・防御性収縮の影響を明記

この記事では、強直肢位と他動運動による関節可動域の違いに絞って整理しました。

身体障害者手帳におけるROM・ADL評価全体の流れや、医師へ返すときの整理方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

身体障害者手帳(肢体)のROM・ADL評価|医師へ返すポイント

参考資料

まとめ:強直肢位は固定された角度、他動運動は動かして到達できる角度

強直肢位と他動運動による関節可動域は、似ているようで見ているものが違います。

強直肢位は、関節が固定されている、または実用上ほぼ固定されている角度です。一方、他動運動による関節可動域は、検者が動かしたときに到達できる最大可動域です。

足関節背屈であれば、強直肢位が −20°、他動運動で −15°まで動くという記載は、考え方として自然です。

ただし、痙縮によって動かしにくい状態と、構造的に固定された強直・拘縮は同じではありません。リハ職は、測定値だけでなく、測定肢位、動かし方、疼痛、痙縮、制限因子を整理して医師へ返すことが大切です。

強直肢位と他動可動域は同じ数値になりますか?

完全に固定されている場合は同じ数値になることがあります。ただし、固定傾向があっても他動で少し動く場合は、強直肢位と他動可動域が異なる数値になることがあります。

強直肢位より他動可動域のほうが悪い角度になることはありますか?

通常はありません。他動可動域は検者が動かして到達できる角度なので、固定肢位と同じか、改善方向の角度になるのが自然です。逆転している場合は、測定条件や記載方法を再確認します。

痙性麻痺による尖足は強直肢位ですか?

痙縮だけで動かしにくい状態は、強直と同じ意味ではありません。ゆっくり他動すると動く場合は、神経性の筋緊張亢進による制限として整理します。構造的な筋短縮や関節拘縮を伴う場合は、強直肢位としての記載を検討する場面があります。

リハ職は診断書に強直肢位を断定してよいですか?

診断書を最終的に記載するのは医師です。リハ職は、ROM測定値、測定条件、痙縮や疼痛などの制限因子を整理し、医師が判断しやすい形で情報提供するのが安全です。