脳卒中のAFO選定|歩行所見から必要機能を考える

臨床手技・プロトコル
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短下肢装具(AFO)は「装具名」ではなく必要な機能から考える

脳卒中患者の短下肢装具(AFO)を検討するときは、「どのAFOを選ぶか」から始めるのではなく、歩行のどこで何が崩れ、どの機能を補いたいのかを先に整理します。歩行所見だけでなく、足関節可動域、随意運動、筋緊張、感覚、膝・股関節の支持性、靴や生活環境まで確認し、必要な機能を仮定して試用します。本記事では、PTがAFOの必要性を評価し、医師・義肢装具士などと共有するための「評価→必要機能→試用比較→再調整」の考え方を整理します。

この記事の結論:AFO選定では、足関節だけを見て装具名を決めるのではなく、歩行で起きている問題を必要な制御・支持へ変換し、試用後に目的所見と他の歩行相への影響を比較することが重要です。

AFO選定では「どの機能が必要か」を多職種で共有する

AFOの選定は、PTが歩行を見て装具名を単独で決める作業ではありません。PTは実際の立位・歩行と身体機能を評価し、「どの場面で何が問題となり、装具にどのような機能を求めるのか」を具体化します。

その情報を医師・義肢装具士などと共有し、候補となるAFOを試したあとの歩行を再評価します。重要なのは、「下垂足だからこの装具」「反張膝だからこの設定」と所見と装具を一対一で結び付けるのではなく、患者ごとの反応を確認することです。

AFO検討時に整理して共有したい情報
整理すること 具体例 共有する目的
歩行上の問題 足尖接触、急速な底屈、反張膝、膝折れ、内反・外側荷重 どの歩行相へ介入したいかをそろえる
身体機能 ROM、随意運動、筋緊張、感覚、足部変形、膝・股関節の支持性 装具で許容・制御したい運動を考える
使用条件 靴、歩行補助具、介助量、屋内外、段差、着脱方法 生活場面で継続できるかを考える
試用後の変化 目的所見、介助量、代償、疼痛、皮膚、本人の使用感 採用・再調整・別案の判断材料にする

AFOを選ぶ前に「歩行・身体機能・使用条件」を確認する

AFOの必要機能は、歩行動画だけでも、徒手筋力検査だけでも決まりません。まず歩行で起きている現象を確認し、その背景となる身体機能と、実際に装具を使う条件を照合します。

歩行では「どの相で何が起きているか」を確認する

歩行では、遊脚期だけでなく、初期接地、荷重応答、立脚中期から立脚後半まで確認します。足尖が引っかかっている患者でも、遊脚期のクリアランスだけが問題なのか、接地後の急速な底屈や膝の不安定性まで伴うのかによって、求めるAFO機能は変わります。

歩行観察そのものの手順は、歩行観察のコツ|見る順番と記録方法で詳しく整理しています。本記事では、観察した所見をAFOの必要機能へつなげる部分に絞ります。

身体機能では「動かせるか」だけでなく制御可能な範囲を見る

足関節背屈筋力だけでAFOを選ばず、関節可動域、随意運動、筋緊張、感覚、足部アライメントや変形を確認します。さらに、AFOによる足関節の制御は膝や股関節の運動にも影響するため、膝・股関節の支持性や歩行中の運動制御も合わせて評価します。

たとえば、他動的にも足関節背屈が得にくい場合、強い内反や変形を伴う場合、感覚障害が強い場合では、同じ「足尖が下がる」という所見でも必要な支持や適合上の注意点は異なります。

使用条件では「歩けるか」だけでなく「使い続けられるか」を見る

装具は訓練室だけで使用するとは限りません。屋内・屋外、段差、移乗、トイレ、使用する靴、歩行補助具、本人や家族による着脱など、実際の生活場面を確認します。

歩容が改善しても、靴に収まりにくい、着脱できない、皮膚トラブルが生じる、装具の使用によってかえって活動量が落ちる場合は、実用面から再検討が必要です。歩行上の効果と生活上の使いやすさを分けて確認します。

脳卒中患者のAFO選定の流れ。歩行・身体機能・使用条件を評価し、主な問題を整理して必要なAFO機能を仮定し、試用後に装着前後を比較して採用・再調整を決めるフロー
図:脳卒中患者のAFO選定は、装具名から決めるのではなく、評価した所見から必要な機能を仮定し、試用後の変化を比較して調整します。

歩行所見を「必要なAFO機能」へ変換する

AFO選定の中心となるのは、歩行所見から装具名を直接決めることではなく、「どの運動を許容し、どの運動を制御し、どこを支持したいのか」を仮説として整理することです。

歩行所見からAFOの必要機能を考えるときの整理
主な所見 検討する機能 試用時に確認すること 注意する変化
遊脚期の足尖クリアランス不足 背屈位の保持、過度な底屈の抑制 足尖接触や代償運動が減るか 立脚期の足関節・膝運動を妨げていないか
初期接地後の急速な底屈 底屈方向への制動・制限 接地から荷重応答がどう変化するか 膝屈曲が増えすぎないか、歩きにくくならないか
立脚中の反張膝 足関節アライメント、底屈側の抵抗・制限の調整 下腿前傾と膝過伸展がどう変わるか 膝折れや過度な下腿前傾へ変化していないか
荷重時の膝折れ 足関節設定と下肢全体の支持性を再検討 膝運動や介助量がどう変わるか AFOだけで安全性を確保できる状態か
内反・外側荷重 内外反方向の支持、足部アライメント 足底接地と荷重位置がどう変わるか 内外果や足部への圧迫、靴との適合

この表は「所見ごとの処方表」ではありません。同じ反張膝や足尖接触でも、その背景となる身体機能や歩行戦略によってAFOへの反応は異なります。試用する機能を考えるための仮説として使い、実際の歩行反応で検証します。

矢状面では足関節だけでなく膝の変化まで確認する

AFOの底背屈方向の設定は、足関節だけで完結しません。底屈抵抗や足関節アライメントが変われば、下腿の前方移動や膝関節運動にも影響します。

たとえば、初期接地から荷重応答にかけて急速な底屈を認める場合、底屈方向への制動によって接地後の運動が変化する可能性があります。一方で、底屈抵抗を強めると初期立脚期の膝屈曲が増加する患者も報告されており、「底屈を強く止めれば安全になる」とは限りません。

反張膝でも同様です。底屈抵抗の調整によって膝過伸展が軽減する例がありますが、反応には個人差があります。反張膝という所見だけで設定を決めず、下腿前傾や膝運動が実際にどう変化したかを確認します。

内反・外側荷重では前額面と靴の適合まで確認する

脳卒中患者のAFOを考えるときは、矢状面の底屈・背屈だけでなく、内反・外反や荷重位置も確認します。内反を認める場合は、足部が装具と靴の中でどの位置に収まり、立脚時に足底のどこへ荷重しているかを観察します。

装具によって足部を支持できても、靴との組み合わせによって圧迫が生じたり、踵が浮いたりすれば、歩行や皮膚に新たな問題が生じます。特に感覚障害を伴う場合は、本人から疼痛の訴えがなくても皮膚状態を確認します。

試用では「目的所見」と「他の歩行相への影響」を比較する

AFOを試したときは、「歩きやすそう」という全体印象だけで決めず、事前に決めた項目を試用前後で比較します。安全に実施できる場合は、靴、歩行補助具、介助条件、課題などをできるだけそろえると、装具による変化を解釈しやすくなります。

ただし、AFOなしでは転倒リスクが高い患者に、比較のためだけに危険な歩行を行わせる必要はありません。現在使用している装具や安全な介助条件を基準として、候補間の違いを確認します。

AFO試用時に比較したい4つの視点
視点 確認例 判断すること
目的所見 足尖接触、急速な底屈、反張膝、内反、膝折れ 狙った問題が改善したか
歩行全体 介助量、歩幅、体幹・骨盤の代償、他の歩行相 別の問題を増やしていないか
身体への負担 疼痛、疲労、圧迫感、皮膚発赤 継続して使用できるか
生活上の実用性 靴、着脱、屋内外、段差、本人の使用感 実際の生活場面で使えるか

脳卒中後のAFO装着では、歩行速度、ケイデンス、歩幅などの歩行指標が改善することがメタ解析でも報告されています。一方、すべての患者に同じAFO機能が適するわけではありません。候補を実際に試し、その患者に生じた変化をもとに選択します。

採用・再調整は「目的所見が改善したか」だけで決めない

AFOを採用するか、設定を再調整するかを考えるときは、目的所見の改善だけでなく、他の歩行相、身体への負担、生活上の実用性まで含めて判断します。

AFO試用後に確認する4点

  1. 狙っていた歩行上の問題は改善したか
  2. 膝・股関節・体幹などに新しい代償が増えていないか
  3. 疼痛・疲労・皮膚トラブルなく使用できるか
  4. 靴・着脱・生活環境を含めて継続できるか

一部の所見が改善しても、新しい膝折れや疼痛が生じた場合は、その設定をそのまま採用するとは限りません。反対に、歩容の見た目が完全には変わらなくても、足尖接触や介助量が減り、必要な生活場面を安全に移動できるのであれば、その変化が重要な場合もあります。

AFOだけで支持が足りないときは選定の前提を見直す

強い膝折れ、立位保持困難、著明な変形、強い疼痛などがあり、AFOを試しても十分な支持が得られない場合は、AFOの種類だけを変更し続けるのではなく、評価の前提を見直します。

確認するのは、膝・股関節の支持性、感覚、筋緊張、関節可動域、介助方法、歩行補助具、練習環境などです。必要な支持範囲によってはAFO以外の装具を含めて検討する場面もあるため、医師・義肢装具士などと情報を共有します。

反張膝が主な問題の場合は、装具だけで原因を決めず、膝反張(膝過伸展)歩行の原因と評価で足関節・膝・感覚・骨盤・股関節・体幹まで含めて整理してください。

再評価は固定した日数ではなく「条件や状態が変わったとき」に行う

AFOは、一度選定した設定をそのまま使い続ければよいとは限りません。脳卒中後は身体機能や歩行能力が変化する可能性があり、その時点で必要な装具機能も変わることがあります。

再評価を「72時間後」「2週間後」など一律の日数だけで決めるのではなく、次のような変化を契機に確認します。

  • 新しいAFOや異なる設定を試用したとき
  • 装着時間や歩行量を増やしたとき
  • 屋外、段差、長距離など使用場面が変わったとき
  • 筋力、筋緊張、ROM、歩行パターンが変化したとき
  • 靴や歩行補助具を変更したとき
  • 疼痛、発赤、水疱、圧迫感などが出現したとき
  • 装具の変形、摩耗、破損、ベルトなどの不具合を認めたとき

再評価では初回と同じ視点に戻り、「現在の歩行上の問題」と「現在のAFO機能」が一致しているかを確認します。

記録は「問題→必要機能→試用条件→変化→次の方針」で残す

AFOの記録では、装具名だけを書いても選定理由は伝わりません。次回の再評価や多職種共有につなげるには、何を問題とし、どの機能を期待して試したのかを残します。

AFO試用時の記録例
項目 記録例
問題 麻痺側遊脚期の足尖接触と、初期接地後の急速な底屈を認める。
必要機能の仮説 遊脚期の過度な底屈を抑えつつ、初期接地から荷重応答で底屈を制動する機能を検討。
試用条件 同一の靴・杖・介助条件でAFO装着時の歩行を確認。
変化 足尖接触と急速な底屈は減少。荷重応答で膝屈曲が増加したため、底屈抵抗を含む設定の再確認が必要。
次の方針 膝運動、皮膚状態、歩行時の安定性を再確認し、装具設定について多職種で共有する。

「AFO使用で歩行改善」とだけ記録するより、何が改善し、何が残り、次に何を確認するのかまで残すことで、再評価時に判断を引き継ぎやすくなります。

本記事は、脳卒中患者でAFOを検討するときの臨床推論を扱う総論です。下垂足が主な問題で、遊脚期・初期接地・立脚期から具体的な必要機能を絞りたい場合は、下垂足の装具(AFO)の選び方で詳しく整理しています。

AFO選定では、装具の種類を覚えることよりも、歩行上の問題を評価し、必要な機能を仮定し、試用後の反応から修正することが重要です。狙った所見が改善しても、別の歩行相、疼痛、皮膚、生活上の使いやすさまで確認し、現在の患者に合った選択かを判断します。


参考文献

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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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