装具選定の基本|評価→設定→再評価の流れ

臨床手技・プロトコル
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リハで使う装具選定の基本|評価→選定→再評価の型

装具選定は、種類名から考えるよりも、先に何を安全にしたいかを決めると迷いが減ります。つまずき、膝折れ、反張膝、内反不安定のどれを優先して下げるのかを決めることで、評価・設定・練習・記録がつながります。

本記事では、短下肢装具( AFO )を中心に、装具選定を評価→目的設定→初期設定→再評価の順で整理します。装具の種類を網羅する記事ではなく、臨床で「どこを見て、どう選び、どう記録するか」を決めるための総論です。

装具選定の前に、歩行評価の全体像をそろえておきましょう。
評価ハブで全体像を見る

関連:
歩行評価の標準手順

下垂足 AFO の実装

装具選定は「目的を 1 つに絞る」と決めやすい

装具選定で最初に決めるのは、装具の種類ではなく優先して下げたいリスクです。つまずき、膝折れ、反張膝、内反不安定を同時にすべて解決しようとすると、設定も訓練も記録もぼやけやすくなります。

まずは「どの場面で危ないか」「どの相で崩れるか」「何が改善すれば成功といえるか」を言語化します。目的が 1 つに絞れると、底屈制動、背屈補助、接地安定、靴の調整などの優先順位が揃いやすくなります。

装具選定で最初に決める目的と優先場面
目的 典型所見 設定の方向性 優先して見る場面
つまずき低減 遊脚期のつま先落ち、クリアランス不足 背屈補助、底屈制動 屋内歩行、方向転換
膝折れ低減 荷重応答期で膝が抜ける 初期接地から荷重応答の安定化 立ち上がり後、歩き出し
反張膝低減 立脚中期で膝が反る、膝痛が出る 底屈過多の抑制、脛骨前傾の誘導 速度を上げた歩行、疲労時
内反不安定低減 外側荷重、足部のぐらつき 接地安定、内反制御、靴の適合 段差、屋外、方向転換

評価の最小セットは「相・足関節・膝・前額面・運用条件」

装具選定前の評価は、すべてを細かく測るよりも、まず 5 分で目的と設定の当たりを付けることが重要です。歩行動画とベッドサイド所見をそろえると、装具士やチーム内で共有しやすくなります。

歩行評価の詳細は 歩行評価の標準手順 で確認しつつ、本記事では装具選定に必要な最小セットに絞ります。

装具選定前に確認する 5 分評価の最小セット
確認項目 見るポイント 選定に使う判断
歩行相 遊脚期、初期接地、荷重応答期、立脚中期のどこで崩れるか 背屈補助、底屈制動、接地安定の優先度を決める
足関節 底屈が強すぎるか、背屈が出るか、出るならいつ出るか 底屈を許す、制動する、固定する方向を決める
膝折れ、反張膝、疼痛の出現条件 AFO で足りるか、介助条件や装具変更が必要かを考える
前額面 内反・外反、外側荷重、接地時のぐらつき 足部支持、靴、内反制御の必要性を判断する
運用条件 靴、着脱、皮膚、活動量、生活場面 継続できる設定か、家族・スタッフが扱えるかを確認する

AFO 選定は「目的→底屈→背屈→短距離試行→再評価」で回す

AFO 選定は、種類名を先に決めるよりも、目的から逆算して初期設定を作ると共有しやすくなります。特に脳卒中後の歩行では、AFO が歩行速度や歩行パラメータに影響する可能性があるため、導入後の再評価までセットで考えることが大切です。

AFO 選定の 5 ステップを示した図版
図:AFO 選定は「目的→観察→設定→試行→再評価」の順で整理すると共有しやすくなります。

臨床では、最初から完璧な設定を狙うより、短距離で試して、崩れる相・疼痛・疲労・皮膚を確認しながら小さく修正します。1 回の調整で複数要素を変えすぎると、何が効いたのか分からなくなります。

  1. 目的を決める:つまずき、膝折れ、反張膝、内反不安定のどれを優先するかを決める。
  2. 底屈の扱いを決める:許す、制動する、固定するのどれが目的に合うかを考える。
  3. 背屈の扱いを決める:遊脚期のクリアランスと立脚期の安定性の両方を見る。
  4. 短距離で試す:前方・側方動画で崩れる相が減ったかを確認する。
  5. 1 要素だけ修正する:硬さ、角度、靴、当たり、課題のいずれか 1 つを調整する。
  6. 再評価する:速度、転倒ヒヤリ、疼痛、疲労、活動量、皮膚で判断する。

膝折れが強く、AFO だけでは安全が担保できない場合は、介助条件、長下肢装具、練習環境の見直しを先に検討します。装具で対応できる範囲を超えている状態で歩行量だけを増やすと、転倒や疼痛につながりやすくなります。

導入後は「当日・72 時間・1〜2 週・3〜4 週」で見直す

装具は導入して終わりではなく、導入後の再評価で効果と副作用を確認します。とくに初期は、歩容の改善だけでなく、皮膚トラブル、疲労、疼痛、着脱のしやすさを同時に見る必要があります。

再評価では「目的の所見が減ったか」と「生活上続けられるか」を分けて記録します。歩行は良く見えても、皮膚トラブルや着脱困難で継続できなければ、実用上は再調整が必要です。

装具導入後の再評価タイミングと修正ポイント
タイミング 見るもの OK の目安 次の調整
当日 崩れる相、歩容の代償、介助量 目的の所見が少しでも減る 底屈制動、背屈誘導、靴を 1 つだけ調整
24〜72 時間 皮膚、疼痛、疲労、着脱の可否 中断せず継続できる 当たり、装着時間、靴を見直す
1〜2 週 歩行量、転倒ヒヤリ、速度、生活場面での使用 活動量が落ちず、危険場面が減る 段差、方向転換、屋外など課題を段階化する
3〜4 週 目的の変化、機能変化、装具の適合 現在の目的と設定が一致している 目的を再設定し、必要なら装具設定を見直す

よくある失敗は「目的不明・一括調整・再評価不足」で起きる

装具選定で詰まりやすい場面は、装具そのものの問題だけではありません。目的が曖昧なまま調整したり、複数要素を同時に変えたり、導入後の再評価が抜けたりすると、チーム内で判断がずれやすくなります。

失敗を減らすには、先に「何を改善したいのか」「何を見て成功とするのか」「いつ再評価するのか」を決めておくことが重要です。

装具選定で起きやすい失敗と回避策
失敗 起きる理由 回避策 記録ポイント
つまずきは減ったが歩容が崩れた 遊脚期だけを見て、立脚期の代償を見落とした 前方・側方動画で相ごとに確認する 改善した相、悪化した相、介助量
膝折れが改善しない 荷重応答期の制動や支持性が不足している 底屈制動と荷重練習をセットで見直す 初期接地、荷重応答期の膝挙動
反張膝が悪化した 脛骨前傾が出る条件が不足している 底屈過多を抑え、速度と課題を段階化する 立脚中期の膝角度、膝痛、疲労
内反不安定が残る 接地が不安定で荷重線が外側に逃げる 足部支持、靴、当たりをセットで調整する 正面動画、外側荷重、段差での崩れ
皮膚トラブルで中断する 装着時間、靴、当たりの確認が不足している 短時間導入から始め、発赤部位を共有する 発赤部位、残存時間、疼痛の有無

記録は「目的・設定・反応・次回確認」を残す

装具選定の記録では、装具名だけでなく、なぜその設定にしたのかを残すことが重要です。記録の軸がそろうと、装具士、医師、看護師、介護職、家族との共有もしやすくなります。

以下の型で書くと、導入後に「何を見て再評価するか」まで明確になります。

装具選定後の記録例
項目 記録例
目的 遊脚期のつま先接触と立脚初期の膝折れリスク低減を目的に AFO を試行。
設定 底屈制動を優先し、短距離歩行で初期接地から荷重応答期の膝挙動を確認。
反応 つま先接触は減少。立脚初期の膝折れは軽減したが、速度上昇時に反張膝傾向あり。
次回確認 24〜72 時間以内に皮膚発赤、疼痛、疲労、装着継続可否を確認。速度課題は段階的に実施。

症状別の実装は子記事で確認する

本記事は、装具選定の総論です。症状別の具体的な調整や介入は、子記事で深掘りすると検索意図が整理されます。

現場の詰まりどころは「判断の共有」で解消する

装具選定で詰まる原因は、知識不足だけではなく、目的・設定・再評価の共有不足であることが多いです。まずは、よくある失敗を確認し、選定フローに戻り、記録の型をそろえる順で修正します。

評価や装具選定を学びにくい背景には、相談できる環境や記録の型が不足している場合もあります。

PT キャリアガイドを見る

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 装具は早く導入したほうがよいですか?

転倒リスクや歩行量低下がある場合は、早期に試行する価値があります。ただし、導入して終わりではなく、目的を決めたうえで短距離試行し、皮膚・疼痛・疲労・歩容を再評価することが重要です。

Q2. AFO の種類はどう選べばよいですか?

種類名から選ぶのではなく、先に目的を決めます。つまずき対策、膝折れ対策、反張膝対策、内反不安定対策のどれを優先するかで、底屈制動や背屈補助の考え方が変わります。

Q3. 反張膝がある場合、AFO だけで対応できますか?

反張膝の程度、筋力、感覚、歩行速度、疼痛、立脚期の制御によって判断します。AFO だけで十分とは限らないため、歩行課題、介助条件、装具設定、必要に応じて装具変更を含めて検討します。

Q4. 皮膚トラブルを防ぐには何を見ればよいですか?

初期は短時間装着から始め、発赤部位、残存時間、疼痛、靴との相性を確認します。発赤が消えにくい、痛みがある、装着で歩行量が落ちる場合は、当たりや装着時間の再調整が必要です。

Q5. 装具の再評価はいつ行うべきですか?

初回当日、24〜72 時間、1〜2 週、3〜4 週を目安に見直します。歩行速度だけでなく、転倒ヒヤリ、疼痛、疲労、活動量、皮膚、生活場面での使用状況を合わせて確認します。

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続けて読む:


参考文献

  1. Johnston TE, Keller S, Denzer-Weiler C, Brown L. A Clinical Practice Guideline for the Use of Ankle-Foot Orthoses and Functional Electrical Stimulation Post-Stroke. J Neurol Phys Ther. 2021;45(2):112-196. doi: 10.1097/NPT.0000000000000347
  2. Tyson SF, Kent RM. Effects of an Ankle-Foot Orthosis on Balance and Walking After Stroke: A Systematic Review and Pooled Meta-Analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2013;94(7):1377-1385. doi: 10.1016/j.apmr.2012.12.025
  3. Tyson SF, Sadeghi-Demneh E, Nester CJ. A systematic review and meta-analysis of the effect of an ankle-foot orthosis on gait biomechanics after stroke. Clin Rehabil. 2013;27(10):879-891. doi: 10.1177/0269215513486497
  4. Choo YJ, Chang MC. Effectiveness of an ankle–foot orthosis on walking in patients with stroke: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2021;11:15879. doi: 10.1038/s41598-021-95449-x
  5. Choo YJ, Chang MC. Commonly Used Types and Recent Development of Ankle-Foot Orthosis: A Narrative Review. Healthcare (Basel). 2021;9(8):1046. doi: 10.3390/healthcare9081046

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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