結論:初回は注意課題から始め、安定後に遂行速度を重ねます
認知症 OT の紙面課題で迷いやすいのは、「注意課題」と「遂行速度ドリル」のどちらを先に使うかです。結論からいうと、初回は注意課題で見落とし・再指示・手順理解を確認し、正答が安定してから遂行速度を重ねる流れが安全です。
この記事では、両者の違いを「開始基準・進級基準・戻し基準」で整理します。注意課題そのものの作り方や遂行速度ドリルの詳細手順ではなく、現場でどちらを選び、いつ切り替えるかを決めるための記事です。
注意課題と遂行速度ドリルの違いは、見るポイントで決めます
見落としやルール混乱が目立つ段階では注意課題、正答は保てるが時間がかかる段階では遂行速度ドリルを選びます。先に速度を求めると、焦り・誤反応・拒否が増えやすくなります。
| 比較項目 | 注意課題ドリル | 遂行速度ドリル |
|---|---|---|
| 主目的 | 見落とし、選択的注意、ルール理解を確認する | 正確性を保ったまま処理時間を短縮する |
| 向く状態 | 見落とし偏り、再指示が多い、手順が混乱する | 正答は保てるが、完了までに時間がかかる |
| 開始目安 | 初回または不安定な時期 | 注意課題で正答と手順が安定した後 |
| 進級目安 | 手がかり最小で 7〜8 割程度できる | 正答を保ったまま所要時間が短縮する |
| 戻し基準 | 見落とし、疲労、拒否が増える | 誤反応、焦り、中断が増える |
5 分で決める開始判断は、正答率・支援量・疲労で見ます
開始判断では、点数だけでなく支援量と疲労を同時に確認します。正答率が高くても、再指示が多い場合や疲労が強い場合は、速度条件を加えず注意課題を継続します。

- 見落としや探索の偏りがある:注意課題から開始する。
- 手順理解が不安定で再指示が多い:ルールを固定して注意課題を継続する。
- 正答は安定しているが時間がかかる:遂行速度ドリルを追加する。
- 誤反応・焦り・拒否が増える:条件を 1 段階戻す。
評価や記録の全体像をそろえる場合は、認知症 OT 紙面課題の運用プロトコルに合わせると、チーム内で共有しやすくなります。
同日に行うなら、注意課題から速度課題へ進めます
同日に両方を行う場合は、注意課題で基礎の安定を確認してから遂行速度へ進みます。逆順にすると、焦りが先に出て本来の注意機能や手順理解を評価しにくくなります。
| 順番 | 実施内容 | 観察ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 注意課題を短時間で実施 | 見落とし位置、再指示回数、手がかり量 |
| 2 | 30〜60 秒程度の休憩 | 疲労、不安、拒否の有無 |
| 3 | 遂行速度ドリルを追加 | 正答維持、所要時間、誤反応の増減 |
記録は「正答・支援量・時間・疲労」を 1 行で残します
次回設定をぶらさないためには、できたかどうかだけでなく、どれくらい支援が必要だったかを残します。注意課題は支援量、遂行速度は正答を保ったまま時間が短縮したかを重視します。
| 項目 | 記録例 | 次回設定への使い方 |
|---|---|---|
| 課題名・レベル | 注意 L2 / 速度 L1 | 同じ条件で比較する |
| 正答 | 8 / 10 | 進級の前提を確認する |
| 支援量 | 再指示 3 回、手がかり 1 回 | 支援が減るかを見る |
| 所要時間 | 4 分 20 秒 | 速度課題で短縮傾向を見る |
| 疲労・拒否 | 疲労軽度、拒否なし | 増える場合は条件を戻す |
現場の詰まりどころは、速度を急ぎすぎることです
よくある失敗は、初回から速度を求めること、同日に複数条件を変えること、点数だけを記録することです。これらは、改善したのか、課題条件が変わっただけなのかを判断しにくくします。
迷う場合は、課題量・時間条件・ルールのうち変える要素を 1 つに絞ります。今の職場で記録や評価の見本が少なく、毎回判断に迷う場合は、学び方や相談環境を見直すことも選択肢になります。
評価・記録の型を学び直したい方へ
失敗回避の型:変える条件は 1 つだけにします
- 量:枚数や設問数を調整する。
- 時間:時間条件を付ける、または外す。
- ルール:原則固定し、比較不能になる変更を避ける。
| よくある失敗 | 起きる理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 速度課題から始める | 基礎が不安定なまま負荷が上がる | 注意課題を先行し、安定後に速度を追加する |
| 同日に条件を複数変更する | 改善・悪化の理由が分からない | 変更は 1 要素のみにする |
| 正答率だけ記録する | 支援量や疲労が見えない | 再指示、手がかり、疲労徴候を一緒に残す |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
初回は注意課題と遂行速度ドリルのどちらから始めますか?
初回は注意課題から始めるのが基本です。見落とし、再指示、手がかり量を確認し、正答と手順が安定してから遂行速度ドリルを追加します。
同日に両方実施してもよいですか?
可能です。ただし順番は「注意課題→短い休憩→遂行速度ドリル」を推奨します。同日の変更条件は 1 つに絞り、比較しやすい状態を保ちます。
遂行速度ドリルへ進める基準は何ですか?
注意課題で手順理解が安定し、手がかり最小で 7〜8 割程度できることを目安にします。正答が不安定な段階では、速度条件を加えない方が安全です。
途中で誤反応や拒否が増えたらどうしますか?
1 段階戻します。課題量を減らす、時間条件を外す、ルールを簡単にするなど、変更は 1 要素だけにして再評価します。
次の一手
まずは 2 週間、同じ条件で注意課題を実施し、正答・支援量・疲労を記録します。全体の流れは 運用プロトコル、すぐに課題を使う場合は 認知症 OT ドリル集 を確認してください。
参考文献
- Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30367-6
- World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. 2019. PubMed
- 豊倉穣. 汎性注意障害の評価・診断とリハビリテーション. Jpn J Rehabil Med. 2020;57(6):530-535. J-STAGE
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


