CRTとは?測り方・正常値|2秒と3秒の違い

臨床手技・プロトコル
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CRTとは?まず測り方と2秒・3秒の考え方

CRT(Capillary Refill Time:毛細血管再充満時間)は、皮膚を圧迫して一時的に蒼白化させ、圧迫を解除してから元の色へ戻るまでの時間を測る簡便な末梢循環評価です。特別な機器を必要とせず、ベッドサイドで短時間に確認できるため、ショックや循環不全などで末梢灌流を評価する際に用いられます。

CRTでは「2秒以内が正常」と覚えている方も多いと思いますが、2秒をすべての成人に当てはめるのは単純化しすぎです。健康成人を対象とした研究では中央値1.9秒、95パーセンタイル3.5秒で、年齢・性別・室温などによって値が変動しました。一方、敗血症性ショックの臨床試験では標準化した測定方法を用い、3秒超を異常として扱っています。

CRTの結論を先に

2秒:古くから広く使われてきた簡便な目安
3秒:近年の標準化された敗血症性ショック研究で用いられる境界
実務:数字だけでなく、測定方法・室温・患者背景・経時変化を確認する

CRTは単独でショックや脱水を診断する検査ではありません。血圧、心拍数、意識状態、皮膚温、尿量、乳酸値など、ほかの循環・灌流所見と合わせて評価します。

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CRTの測り方|測定方法をそろえることが最重要

CRTは簡単な評価ですが、押す場所・圧迫時間・圧力・室温・照明・測定者によって値が変化します。そのため「何秒だったか」だけでなく、できるだけ同じ方法で測定することが重要です。

敗血症性ショックを対象としたANDROMEDA-SHOCKおよびANDROMEDA-SHOCK-2では、測定方法を標準化してCRTを評価しています。

標準化されたCRT測定の一例

1. 指の末節腹側を観察する
2. 皮膚が白くなるまで一定の圧を加える
3. その状態を10秒間保持する
4. 圧迫を解除する
5. 元の皮膚色へ戻るまでをストップウォッチで測る

ANDROMEDA-SHOCK-2では、指末節の腹側へ顕微鏡用スライドガラスを使用して圧迫し、皮膚が蒼白になるまで圧を高めたうえで10秒保持しています。その後、元の皮膚色に戻るまでをクロノメーターで測定し、3秒超を異常としました。

日常臨床で必ずスライドガラスを使用しなければならないという意味ではありません。重要なのは、経時的に比較するのであれば測定部位・圧迫時間・観察条件をできるだけそろえることです。

ストップウォッチを使う

「1、2、3」と頭の中で数える方法では測定者による差が大きくなります。スマートフォンや時計などのストップウォッチを使い、秒数を記録できるようにすると再評価しやすくなります。

爪だけでなく指腹側の皮膚を見る方法もある

CRTは爪床で測定されることもありますが、近年の敗血症性ショック研究では指末節の腹側が用いられています。経時評価では「前回は爪床、今回は指腹」のように測定部位を変えず、同じ場所で比較することが重要です。

CRTの正常値は2秒?3秒?固定値だけで判断しない

CRTの正常値について最も重要なのは、「2秒以内だけが正常」と固定して考えないことです。CRTには患者側・環境側の変動要因があり、測定方法によって基準も異なります。

健康成人1,000人を対象とした2008年の前向き研究では、CRT中央値は1.9秒、正常上限として用いた95パーセンタイルは3.5秒でした。また、年齢が10歳増えるごとにCRTは平均3.3%延長し、男性は女性より平均7%短いという結果でした。

CRTの正常値は2秒か3秒かを比較した図。2秒は古くから使われる簡便な目安、3秒は標準化された敗血症性ショック研究で用いられる基準で、年齢・室温・体温なども考慮する
CRTは「2秒か3秒か」だけでなく、測定方法・環境・患者背景・経時変化を含めて解釈する
CRTの2秒・3秒をどう考えるか
基準 位置づけ 実務上の考え方
2秒 古くから広く使われる簡便な目安 2秒を超えた=即異常とはしない
3秒 標準化された敗血症性ショック研究で使用 ANDROMEDAでは3秒超を異常と定義
3秒前後 境界域 室温・年齢・測定方法・他所見を確認

覚え方:「2秒か3秒か」だけを争うのではなく、どの方法・どの患者・どの目的で使われた基準なのかを確認します。経時評価では、同じ方法でCRTが延長したか短縮したかを見ることも重要です。

CRTに影響する要因|室温・年齢・体温・照明を確認する

CRTが延長していても、すべてが循環不全によるとは限りません。特に末梢で測定するCRTは温度の影響を受けやすいため、寒い部屋や冷たい手で測定した場合は解釈に注意します。

室温

成人1,000人を対象とした研究では、室温が1℃高くなるごとにCRTは平均1.2%短縮しました。寒冷環境では末梢血管が収縮するため、循環状態が安定していてもCRTが長くなる可能性があります。

患者の体温

同じ研究では、患者の体温が1℃高くなるごとにCRTが平均5%短縮しました。発熱・低体温を含め、体温の違いも経時比較の際に考慮します。

年齢

CRTは加齢によって変化します。そのため高齢者のCRTが若年者より長いからといって、数字だけで末梢循環不全と断定することはできません。

照明

CRTは皮膚色が戻る瞬間を目で判断するため、暗い場所や色調を確認しにくい照明では測定誤差が増えます。可能な範囲で明るさを確保し、前後比較では同じ環境で評価します。

測定部位と圧迫方法

指、爪床、胸骨など測定部位が変われば値も同じとは限りません。また、圧迫時間や強さの違いも結果へ影響します。経時的な変化を見る場合は、測定方法そのものを記録しておくと比較しやすくなります。

CRTが延長していたら最初に確認

手が冷たくないか / 室温は低くないか / 測定部位は同じか / 圧迫時間は同じか / 照明は十分か

CRT延長は何を意味する?末梢灌流低下の手掛かりとして使う

CRTが明らかに延長している場合は、末梢への血流が低下している可能性を考えます。ただし、CRT延長の原因は1つではなく、循環血液量低下、心拍出量低下、末梢血管収縮、低体温などさまざまです。

そのため「CRT 4秒=脱水」「CRT 5秒=ショック」と疾患名へ直接置き換えるのではなく、末梢灌流が低下している可能性を示す所見として次の評価へつなげます。

CRT延長時に合わせて確認したい所見
項目 確認ポイント
意識 傾眠・不穏・反応低下など
血圧 低下だけでなく推移も確認
心拍数 頻脈・徐脈・不整脈
皮膚 冷感、湿潤、網状皮斑など
尿量 減少していないか
血液検査 乳酸値などを病態に応じて確認

血圧が保たれていても末梢灌流が十分とは限らず、逆にCRTだけが延長していても循環不全とは限りません。マクロな循環指標と末梢灌流所見を組み合わせて判断します。

敗血症・ショックでのCRT|2026年ガイドラインでは補助指標として使用

CRTは近年、敗血症性ショックの蘇生評価で重要性が高まっています。2026年のSurviving Sepsis Campaignでは、成人の敗血症または敗血症性ショックにおいて、CRTを他の灌流指標に追加して蘇生を評価することが提案されています。

ここで重要なのは、CRTだけを治療目標にすればよいという意味ではありません。血圧、乳酸値、尿量、意識、心拍出量や輸液反応性など、患者ごとの循環評価と組み合わせます。

ANDROMEDA-SHOCK-2でCRTが使われた方法

2025年に公表されたANDROMEDA-SHOCK-2では、早期敗血症性ショック患者1,467人を対象に、CRTを中心とした個別化血行動態蘇生戦略と通常診療が比較されました。

この試験では、標準化して測定したCRTが3秒を超える場合を異常とし、CRT正常化を目標とした段階的な循環評価・介入が行われました。主要評価項目は死亡、生命維持治療期間、入院期間を組み合わせた階層的複合評価で、CRTを用いた個別化戦略が通常診療より良好でした。

重要:ANDROMEDA-SHOCK-2は「CRTが3秒を超えたら輸液する」という単純なプロトコルではありません。血行動態の表現型、輸液反応性、血圧などを組み合わせた個別化戦略です。CRTだけを根拠に輸液や昇圧薬を変更しないでください。

CRTは1回より経時変化を見る|再評価で測定条件をそろえる

CRTの強みは、採血を必要とせず短時間で繰り返し評価できることです。そのため1回の値だけを見るより、患者の状態や治療・介入の前後でどう変化したかを見る使い方が適しています。

たとえば「CRT 4.2秒」という数字だけでは、患者固有の値なのか、寒冷による影響なのか、末梢灌流が悪化しているのかを判断しにくい場合があります。

一方で、同じ患者を同じ部位・同じ方法で測定し、

4.2秒 → 3.5秒 → 2.7秒

のように推移していれば、ほかの循環所見と合わせて末梢灌流の改善を評価する材料になります。

CRT再評価の4点

1. 同じ測定部位
2. 同じ圧迫方法・時間
3. 室温・皮膚温を確認
4. 血圧・心拍・意識などと同時に評価

ケースで確認|CRTをどう解釈する?

CRTは「何秒なら何の病気」という評価ではありません。実際の場面では、秒数とほかの所見を組み合わせて解釈します。

ケース1|CRT 1.8秒、循環動態も安定

CRT 1.8秒、血圧・心拍数・意識状態に大きな変化がなく、皮膚冷感もない場合です。

整理:CRTからは明らかな末梢灌流遅延を認めません。ただしCRT正常だけで循環不全を完全に除外できるわけではないため、病態に応じてほかの所見も確認します。

ケース2|CRT 2.6秒、手指が冷たい

CRTは2秒を超えていますが、病室が寒く手指に明らかな冷感があります。

整理:「2秒を超えたからショック」と判断しません。環境温・皮膚温の影響を考え、必要に応じて条件を整えて再測定します。

ケース3|CRT 4.5秒、血圧低下・頻脈・冷感

CRTが明らかに延長し、血圧低下、頻脈、四肢冷感を伴っています。

整理:末梢灌流低下を疑う重要な組み合わせです。CRTだけで原因を決めず、循環血液量、心機能、感染、出血など病態を評価し、速やかに医療チームで対応します。

ケース4|CRT 4.0秒から2.5秒へ短縮

治療・循環管理後に、同じ測定条件でCRTが4.0秒から2.5秒へ短縮しました。

整理:ほかの循環指標も改善していれば、末梢灌流改善を示す所見の1つとして評価できます。CRT単独ではなく、患者全体の変化を確認します。

CRTの記録例|秒数+測定条件+他の循環所見を残す

CRTを記録する場合は、「CRT延長」とだけ書くより、秒数と測定条件を残すほうが再評価に役立ちます。特に経時変化を追う場合は、測定部位を記録しておくと比較しやすくなります。

記録例

右示指末節腹側でCRT測定。10秒圧迫後、皮膚色回復まで4.1秒。両手指に冷感あり。BP 88/54mmHg、HR 112回/分、意識清明。30分後、同部位・同方法でCRT 3.2秒。血圧・心拍数・皮膚所見と合わせて継続評価する。

最低限記録したい項目

  • CRTの秒数
  • 測定部位
  • 必要に応じて圧迫方法・時間
  • 皮膚冷感・体温など測定条件
  • 血圧・心拍数・意識などの関連所見
  • 再評価時の変化

CRTでよくある間違い|2秒だけを判定基準にしない

CRTは簡便だからこそ、測定方法や解釈がばらつきやすい評価です。「2秒」を絶対的な正常値として扱うことや、環境条件を無視することを避けます。

CRTで避けたい測定・解釈
よくある間違い 問題 修正
2秒超=異常と即断 個人差・方法差を無視 3秒基準や背景も確認
寒い手のまま判定 末梢血管収縮の影響 室温・皮膚温を確認
毎回違う場所で測る 経時比較しにくい 同じ部位で測定
頭の中だけで秒数を数える 測定者差が増える ストップウォッチを使用
CRTだけでショック判定 原因・重症度を決められない 他の灌流所見と統合

CRTのFAQ

CRTで特に迷いやすい「正常値は2秒か3秒か」「何秒押すのか」「冷たい手で測ってよいか」「ショックを診断できるか」を整理します。

Q. CRTの正常値は2秒以内ですか?

2秒は古くから広く使われている目安ですが、すべての成人に共通する絶対的な正常上限ではありません。健康成人の研究でも年齢・性別・室温などによる変動が確認されています。近年のANDROMEDA-SHOCKでは標準化した測定方法を用い、3秒超を異常として評価しています。

Q. CRTは何秒押せばよいですか?

測定法にはばらつきがあります。敗血症性ショック研究のANDROMEDA-SHOCKおよびANDROMEDA-SHOCK-2では、指末節腹側を皮膚が蒼白になるまで圧迫し、10秒間保持してから解除する方法が使用されています。経時評価では同じ方法に統一することが重要です。

Q. CRT 3秒なら異常ですか?

3秒ちょうどという数字だけで異常とは断定できません。ANDROMEDA-SHOCK-2では「3秒を超える」場合を異常と定義していますが、一般臨床では測定方法、室温、年齢、皮膚温なども確認し、ほかの循環所見と合わせて評価します。

Q. 手が冷たい患者でもCRTを測れますか?

測定自体はできますが、末梢冷感や低い室温によってCRTが延長する可能性があります。数字だけで循環不全と判断せず、環境条件を確認したうえで血圧、心拍数、意識、皮膚所見などを合わせて評価します。

Q. CRTで脱水やショックを診断できますか?

CRT単独で脱水やショックを診断することはできません。CRTは末梢灌流を評価する所見の1つです。2026年Surviving Sepsis Campaignでも、他の灌流指標に追加して用いることが提案されています。

まとめ|CRTは「何秒か」より測定条件と経時変化まで見る

CRT(毛細血管再充満時間)は、皮膚を圧迫して蒼白化させ、圧迫解除後に元の色へ戻るまでの時間から末梢灌流を評価する簡便な指標です。

「2秒以内が正常」と広く覚えられていますが、正常値は年齢、性別、室温、体温、測定方法などの影響を受けます。近年の敗血症性ショック研究では、指末節腹側を10秒間圧迫する標準化法を用い、3秒超を異常としています。

したがってCRTでは、2秒・3秒という数字だけで判定するのではなく、測定条件をそろえ、血圧・心拍数・意識・皮膚温・尿量・乳酸などと組み合わせ、経時変化を評価することが重要です。

CRTを使う3つのポイント

1. 同じ方法で測定する
2. 2秒・3秒だけで異常を決めない
3. 他の循環所見と経時変化を合わせて判断する

参考文献

CRTの正常値、測定条件、敗血症性ショックでの使用について、原著論文および最新の国際ガイドラインを中心に参照しました。

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  6. Society of Critical Care Medicine. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2026.
    SCCM

著者情報

rehabilikun(理学療法士)です。rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。本記事ではCRTを「2秒以内なら正常」という暗記だけで扱わず、測定方法、環境条件、経時変化、他の循環所見との組み合わせまで実務で使える形に整理しました。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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