意識障害とは?失神との違いと意識レベル評価( JCS / GCS )

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JCS と GCS の違いは「速報性」と「要素分解」:迷わない評価フロー

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意識レベルの評価は、「点数を付けること」より「同じ条件で再評価できる形に残すこと」が本質です。本記事では、 JCS / GCS の違い換算の目安(層別化)観察→刺激→スコア化→記録の手順を、現場で使える順番に整理します。

さらに、失神意識障害の見分けで迷いやすいポイント(誘因・前兆・回復のしかた・追加所見)も実務寄りにまとめます。挿管・鎮静・失語・麻痺があるときは「評価不能」なのか「低下」なのかが混ざりやすいため、注記ルールまで含めてブレを減らします。

配布| JCS / GCS 評価シート

配布物は「そのまま貼って使える」前提で用意しています(リンクを増やさない運用のため、テキスト表記です)。

  • A4・自動合計付き JCS / GCS 評価シート( HTML ):/wp-content/uploads/2025/10/jcs_gcs_autoscore_a4_v1_20251024.html
  • JCS / GCS バッチ記録シート( Excel ):/wp-content/uploads/2025/10/jcs_gcs_batchsheet_v1_20251024.xlsx

A4 はベッドサイドの最小記録、 Excel はチーム共有と「悪化トリガー」の見える化に向きます。便利なのは「 1 回の採点」より、経時でズレを減らす仕組みです。

JCS と GCS の違い(使う場面・強み/限界)

JCS は覚醒レベル(主に開眼反応)を 3-3-9 度で簡潔に表すため、救急・病棟の申し送りで短く・速く共有しやすいのが強みです。一方、 GCS E(開眼)・ V(言語)・ M(運動)の 3 要素を分けて残せるため、どの要素が落ちたかが追跡しやすく、重症度の層別化にも向きます。

ただし、挿管・鎮静・失語・麻痺があると、同じ合計点でも意味が変わる(もしくは「評価不能」が混ざる)ことが起きます。実務のコツは、点数に加えて条件(何ができないのか)刺激方法を一言で残し、再評価の軸をそろえることです。

深掘り(小記事予定)

小記事は、親記事(本稿)から「迷いの原因」を分離して厚く扱う設計にします。まず作るなら、記載ブレが最も出やすい GCS の注記ルールがおすすめです。

  • 推奨:/gcs-e-v-m-recording/
  • /jcs-assessment-protocol/
  • /jcs-gcs-conversion-guide/
  • /syncope-differential-pt/

JCS ↔ GCS の換算目安(早見)

JCS と GCS は設計思想が違うため、厳密な 1 対 1 の換算はできません。ただし研究・データ連携などでは、「おおまかな層別化」が必要になります。ここでは成人(鎮静なし)を想定した目安として提示します。

JCS ↔ GCS の換算目安(成人・鎮静なしの層別化)
JCS 状態の目安 GCS 合計(目安) 運用の要点
0 清明 15 以後の比較は「同じ環境・同じ質問」でそろえる
1 桁( 1–3 ) 刺激なしで開眼/応答(軽い見当識のズレなど) 13–15 「眠気」と「見当識のズレ」を分けて書く
2 桁( 10–30 ) 呼びかけ・軽い刺激で開眼/応答 9–12 刺激の強さを標準化(誰がやっても同じ)
3 桁( 100–300 ) 痛み刺激で反応〜反応なし 3–8 合計より E / V / M のどれが落ちたかを見る

換算はあくまで重症度の目安にとどめ、病型・年齢・鎮静の有無・麻痺や失語の有無を優先して解釈してください。現場では合計点よりも、 E / V / M の変化の方が次の対応に直結します。

評価の手順(観察→刺激→スコア化→記録)

評価の質は、順番刺激の標準化で決まります。最初に観察(自発開眼・呼吸様式・自発運動・瞳孔)を押さえ、次に声かけ、最後に必要最小限の刺激で反応を確認します。無目的に刺激を強めると、再評価の再現性が落ちます。

  1. 観察:呼吸様式、自発開眼、発語、自発運動、瞳孔(左右差)、バイタル、 SpO2 、血糖
  2. 声かけ:氏名/場所/時間(見当識)、単純指示(握手・開閉眼・舌出し など)
  3. 刺激(必要時):刺激部位を固定(例:爪床、上腕二頭筋、僧帽筋 など)し、ばらつきや皮膚トラブルの原因になりやすい方法は避ける
  4. スコア化: JCS または GCS( E / V / M )で数値化し、時刻と条件(挿管、鎮静、失語、麻痺 など)を注記
  5. 共有:悪化トリガー(例: GCS 2 点低下、 JCS の桁上がり)をチームで事前にそろえる

補正の原則:挿管で発語不可なら V は「低下」ではなく評価不能として扱い、V1t のように条件を明示します。鎮静は薬剤名・用量・投与時刻(可能なら鎮静深度)を併記し、同程度の条件で比較します。麻痺や失語はスコアに影響するため、左右差・理解の可否をセットで残します。

失神と意識障害の違い(鑑別の考え方)

失神は「一過性の意識消失で自然回復」が特徴で、誘因(立位・排尿・咳嗽・疼痛 など)と前兆(悪心・冷汗・視野の狭さ など)を手がかりにします。一方、回復が遅い、局在所見がある、外傷がある、けいれんが疑わしい、強い頭痛や呼吸循環の異常を伴う場合は、失神よりも意識障害として精査が必要です。

初期対応は ABC を崩さず、同時に血糖、 SpO2 、体温をすみやかに確認します。意識レベルだけで完結させず、原因に直結する所見(低酸素、低血糖、ショック、発熱、局在所見)を同じタイミングでそろえると、判断が速くなります。

印刷して使える・簡易記録欄( JCS / GCS )

ベッドサイドでの最小記録は「再評価できる形」にすることが目的です。数値だけでなく、条件(挿管・鎮静・失語・麻痺)と時刻、刺激方法をセットで残すと、担当交代後もズレが減ります。

意識レベル評価・臨床記録( A4 印刷向け簡易版)
項目 記録欄 補足
JCS ______(例: 20 ) 刺激の種類(声かけ/疼痛)を一言で残す
GCS E:__ / V:__ / M:__ 合計:__(例: E3 V1t M5 ) 合計より E / V / M の変化を重視
条件(注記) 挿管/鎮静/失語/麻痺/けいれん後/低血糖 など:________________ 「できない理由」を明確に(評価不能か低下か)
時刻(経時) ___:___ (経時: ____ → ____ → ____ ) 同条件・同刺激で比較
同時所見 呼吸:____  SpO2:____ 血糖:____ 瞳孔:____ バイタル:____ 原因評価とセットで残す

この簡易版は「点数の正確さ」より「ブレない再評価」が狙いです。迷ったら、刺激の方法と条件を先にそろえてから数値化します。

現場の詰まりどころ(よくある失敗と回避策)

JCS / GCS は「点数を付けられる」だけだと、申し送りや経時フォローでズレます。詰まりどころは、刺激のばらつき、条件(挿管・鎮静・失語・麻痺)の扱い、合計点だけで判断してしまう点に集約されます。

JCS / GCS の詰まりどころ:原因・対策・記録例
詰まりどころ 起きる理由 回避策(実務) 記録例(短く)
刺激が人で変わる 疼痛刺激の部位・強さが統一されない 刺激部位を固定し、同じ順番で評価する 「爪床刺激で開眼」
挿管で V が付けられない V 低下と評価不能が混在する V は評価不能として明示( t など)し、条件をそろえる 「 E3 V1t M5 」
鎮静下の変化を誤解する 鎮静深度が違うのに点数だけ比較する 薬剤・投与時刻(可能なら鎮静深度)を併記して比較する 「鎮静中(同条件)」
麻痺で M が低く見える 片麻痺で反応が出せない側がある 原則「最良反応」を採用し、左右差を注記する 「右片麻痺、左で最良」
合計点だけで判断する E / V / M のどれが落ちたかが見えない 合計より E / V / M の変化を優先して共有する 「 V 低下が主」

条件と刺激がそろっていれば、点数はチームの共通言語になります。逆に、条件と刺激がそろっていない点数は情報量が落ちます。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

挿管中で発語不可のときの GCS 記録は?

言語は「低下」ではなく「評価不能」として扱い、 V を明示して条件をそろえます。実務では E◯ V1t M◯ のように表記し、コミュニケーションの可否は運動反応(指示に従うか)や表情・ジェスチャーなどで補足します。

鎮静・鎮痛の影響はどう扱う?

点数だけを横並びにせず、薬剤名・用量・投与時刻(可能なら鎮静深度)を併記し、同程度の条件で比較します。「同条件での再評価」を優先すると、変化の解釈がブレにくくなります。

JCS と GCS 、どちらを優先して書けばいい?

運用ルールがある職場はそれに合わせつつ、迷うなら JCS で短く共有し、 GCS は E / V / M を分けて残すのが実務的です。申し送りは JCS 、経時の変化は GCS(要素)という役割分担にすると整理しやすくなります。

痛み刺激はどこで、どのくらい?

ばらつきを減らすため、刺激部位を固定し(例:爪床、上腕二頭筋、僧帽筋 など)、同じ順番で評価します。刺激は必要最小限にし、皮膚トラブルや不快感が強い方法は避けます。大切なのは「強さ」より「再現性」です。

失神っぽいとき、何を最優先でそろえる?

意識レベルだけで完結させず、 ABC と、血糖、 SpO2 、体温を同時にそろえます。誘因(立位・排尿・咳嗽・疼痛)と前兆(悪心・冷汗・視野の狭さ)も、回復のしかたとセットで確認すると整理しやすいです。

おわりに

意識レベルの記録は、観察→段階刺激→スコア記録→同条件で再評価のリズムを作るほど、申し送りのズレが減ります。面談準備チェックと職場評価シートもまとめて整えたい方は、/mynavi-medical/#download もあわせて活用してください。

参考文献

  1. Teasdale G, Jennett B. Assessment of coma and impaired consciousness. A practical scale. Lancet. 1974;2(7872):81-84. doi:10.1016/S0140-6736(74)91639-0. PubMed
  2. Nakajima M, Okada Y, et al. Development and Validation of a Novel Method for Converting the Japan Coma Scale to the Glasgow Coma Scale. J Epidemiol. 2023. PMID:35851565. PubMed
  3. Okada Y, et al. Association between the Japan Coma Scale scores at the scene of injury and in-hospital outcomes in trauma patients. BMJ Open. 2019;9:e029706. PMID:31366660. PubMed
  4. Brignole M, et al. 2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope. Eur Heart J. 2018;39(21):1883-1948. doi:10.1093/eurheartj/ehy037. PMID:29562304. PubMed
  5. Shen WK, et al. 2017 ACC/AHA/HRS Guideline for the Evaluation and Management of Patients With Syncope. Circulation. 2017. PMID:28280231. PubMed
  6. Teasdale G, et al. The Glasgow Coma Scale at 40 years: standing the test of time. Lancet Neurol. 2014. PMID:25030516. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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