SARAスコアと歩行自立|独歩・杖・歩行器の目安

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SARAスコアと歩行自立|8・11.5・12.25点の目安

結論からいうと、SARAの総得点だけで独歩・杖・歩行器を決めることはできません。一方、脳卒中性運動失調では、独歩8点以下、Q-cane(四点杖)歩行11.5点以下、歩行器歩行12.25点以下という歩行自立の参考カットオフが報告されています。

大切なのは、この数値をそのまま補助具の判定値にするのではなく、実際の歩行、方向転換、補助具、介助量、環境、疲労後の変化と組み合わせて使うことです。本記事では、PT・OT・ST向けに、SARAの点数を歩行ゴールへどう落とすかを整理します。

SARAそのものの採点方法を確認したい方は、先にSARAの評価方法・採点・読み方をご確認ください。

SARAの歩行自立カットオフ|8・11.5・12.25点

脳卒中性運動失調を対象としたKimらの研究では、SARA総得点と歩行状態の関係をROC解析し、独歩、Q-cane歩行、歩行器歩行について参考となるカットオフが示されています。

脳卒中性運動失調で報告されたSARAと歩行状態の参考カットオフ
歩行状態 SARA 臨床での読み方
独歩 8点以下 独歩自立の可能性を考える参考値
Q-cane(四点杖)歩行 11.5点以下 四点杖歩行自立の可能性を考える参考値
歩行器歩行 12.25点以下 歩行器歩行自立の可能性を考える参考値

ただし、この研究は初回の脳卒中後に運動失調を呈した54例を対象とした後方視的研究です。脊髄小脳変性症など、原因の異なる運動失調へ同じ数値をそのまま適用することはできません。

また、「8点を超えたら四点杖」「11.5点を超えたら歩行器」という連続した補助具の判定基準が設定されたわけではありません。それぞれの歩行状態についてROC解析から求めた参考値なので、補助具を選ぶための絶対的な境界値ではないと理解することが重要です。

※Kimらの原著では、結果本文および考察で歩行器歩行のカットオフを12.25点と記載していますが、Fig.3のキャプションには11.25点という表記があります。本記事では結果本文・考察の記載に従い12.25点としています。

8点以下でも「歩行自立」と即断しない

SARAが8点以下でも、病棟内や屋外を含めた歩行自立が保証されるわけではありません。研究上の参考カットオフと、実際の生活場面で求められる安全性は分けて考えます。

特に確認したいのは、次の4点です。

  • 歩行そのもの:直線でふらつくか、支持を必要とするか
  • 方向転換:停止や回旋でバランスを崩さないか
  • 条件:補助具、介助量、床面、靴などの条件を変えたときも安全か
  • 持続性:距離延長や疲労によって歩行の安全性が低下しないか

SARAの歩行項目自体にも、通常歩行だけでなく方向転換やタンデム歩行が含まれています。そのため、総得点を見るだけでなく、どの歩行条件で失調が表面化しているかを確認すると、ゴール設定へつなげやすくなります。

SARA総得点から実際の歩行を確認し条件付きゴールを設定する3ステップ図
SARAの数値を参考に、実際の歩行を確認してから条件付きゴールへ落とす3ステップです。

SARAから歩行ゴールを決める3ステップ

SARAを歩行ゴールへ使う場合は、点数から補助具を直接選ぶのではなく、参考値を確認する → 実際の歩行を確認する → 条件付きゴールを設定するの順で考えます。

1.SARA総得点から歩行能力の仮説を立てる

まず、8点、11.5点、12.25点という研究上の参考値と現在のSARA総得点を照らし合わせ、歩行能力について仮説を立てます。

たとえばSARAが7点であれば、「独歩自立の可能性がある」という仮説は立てられます。しかし、この時点で「独歩自立」と決定するわけではありません。

同様に、SARAが10点だから四点杖、12点だから歩行器と機械的に決めるのではなく、次の実歩行評価へつなげるための目安として使います。

2.実際の歩行条件を確認する

次に、実際の歩行で安全性と再現性を確認します。直線歩行だけでなく、方向転換、補助具、介助量、環境、疲労後まで見ることが重要です。

SARA総得点と合わせて確認したい歩行条件
確認項目 見るポイント
直線歩行 ふらつき、歩隔、支持の必要性、介助量
方向転換 停止・回旋・再開時にバランスを崩さないか
補助具 補助具によって安全性と再現性が改善するか
介助量 見守り、接触介助、部分介助など、どこまで人的支援が必要か
環境 病室、廊下、段差、屋外などで条件が変わっても安全か
疲労 距離延長や反復後に歩容・停止・方向転換が崩れないか

3.補助具・介助・環境まで含めてゴールを書く

最後に、歩行距離だけでなく、補助具・介助・環境・安全性まで含めてゴールを設定します。

「屋内20m歩行」だけでは、独歩なのか、杖なのか、見守りが必要なのか、方向転換まで安全なのかが分かりません。

たとえば、次のように書きます。

屋内20mをT字杖・見守りで歩行し、方向転換を含めてバランスを崩さず完遂できる。

この形なら、次回評価で「杖が不要になった」「見守りが不要になった」「方向転換が安定した」など、何が改善したのかを比較できます。

点数だけで決めない|境界で迷う2つの考え方

カットオフ付近では、点数から歩行方法を決めるのではなく、「この点数なら何ができるはずか」という仮説と、実際の歩行が一致するかを確認します。

例1:SARA 7点でも屋外独歩まで自立とは限らない

たとえばSARAが7点で、病棟の直線歩行は独歩できても、方向転換や疲労後に大きくふらつく場合を考えます。

研究上は8点以下という独歩の参考値に入りますが、そこから「すべての環境で独歩自立」と判断することはできません。

この場合は、屋内直線は独歩、方向転換は見守り、屋外では補助具を使用するなど、実際の評価結果に応じて場面ごとの条件を分けます。

例2:SARA 10点だから四点杖と決めない

SARAが10点であれば、11.5点以下というQ-cane歩行の参考値には入ります。しかし、四点杖を使えば必ず安全になるという意味ではありません。

四点杖より歩行器のほうが歩行の再現性が高い場合や、筋力低下、感覚障害、注意機能、疼痛など、失調以外の要因が歩行を制限している場合もあります。

点数から補助具を選ぶのではなく、実際に使用したときの安全性、歩容、介助量から選ぶことが基本です。

歩行ゴールの書き方|距離だけで終わらせない

歩行ゴールは、「距離+補助具+介助+環境・課題+安全性」が分かる形にすると再評価しやすくなります。

独歩・杖歩行の自立を目指す場合

(期間:○週)
屋内○mを【独歩/○○杖】で歩行し、方向転換を含めて【介助:見守り/自立】で安全に完遂できる。

介助量の軽減を目指す場合

(期間:○週)
屋内○mを【補助具:○○】で歩行し、介助量を【軽介助→見守り】へ軽減する。
方向転換時も同じ介助量で再現できる。

生活動線の安全を優先する場合

(期間:○週)
トイレ・洗面までの移動を【歩行器/車椅子併用】で統一し、必要な介助量と移動方法をスタッフ間で共有する。
立位・歩行は安全に実施できる場面と条件を明確にする。

重症度が高い場合も、SARAの点数だけから「歩行を続ける」「車椅子中心にする」と決めるのではありません。生活場面で必要な移動、安全性、介助者、環境を含めて移動方法を選びます。

再評価は同じ条件で比較する

SARAと歩行能力の変化を追うときは、できるだけ同じ条件で比較します。補助具、介助条件、距離、歩行環境などが毎回大きく異なると、何が変化したのか判断しにくくなります。

たとえばSARA総得点が変わらなくても、以前は方向転換で介助が必要だった症例が、同じ補助具で見守りまで改善していれば、歩行能力として重要な変化です。

記録では、SARAの点数だけでなく、次のように歩行条件を一緒に残すと再評価しやすくなります。

SARA:○点
屋内20m:T字杖・見守り
直線は安定、右方向転換でふらつきあり
疲労後は見守り→接触介助へ増加

また、SARA総得点そのものの変化量については、2026年に亜急性テント下脳卒中患者80例を対象とした多施設前向き研究が報告されています。Berg Balance Scale(BBS)の改善を外的基準とした場合、SARAの最小重要変化(MIC)は2週間で−2.75点、4週間で−4.75点でした。

ただし、この値は歩行自立を判断するカットオフではありません。対象も亜急性テント下脳卒中に限られており、患者・療法士による主観的な変化を外的基準としたMICは確立されていません。あくまで再評価時の参考値の1つとして扱います。

SARAから歩行ゴールを決めるときのよくある失敗

最も避けたいのは、研究上のカットオフをそのまま個々の患者の判定基準へ置き換えることです。

SARAを歩行ゴールへ使うときのNGと修正方法
よくある判断 問題点 修正
8点以下だから独歩自立 環境、疲労、方向転換などを確認していない 独歩の可能性を考える参考値として使い、実歩行を確認する
10点だから四点杖 カットオフを補助具の処方基準として扱っている 実際に補助具を使用し、安全性と介助量を比較する
12.25点を超えたから歩行器でも不可 ROCカットオフを個人の可否判定へ置き換えている 点数にかかわらず実際の歩行器歩行を評価する
SARAだけで自立判定する 失調以外の歩行制限因子を見落とす 筋力、感覚、認知、疼痛、持久性なども確認する
歩行距離だけをゴールにする どの条件で達成したのか分からない 補助具・介助・環境・方向転換まで記録する

歩行自立を判断するときに追加で確認すること

SARAは運動失調の重症度を捉える尺度であり、歩行自立に影響するすべての要因を評価するものではありません。歩行方法や介助量を決めるときは、SARA以外の所見も合わせて確認します。

  • 筋力低下や麻痺
  • 感覚障害
  • 起立・立位バランス
  • 注意・認知機能
  • 疼痛
  • 起立耐性や全身持久性
  • 転倒歴
  • 生活環境や介助者の有無

つまり、SARAは「何点なら何で歩くか」を決める尺度ではなく、失調の程度から歩行能力の仮説を立て、実際の歩行評価につなげるための情報として使うと整理しやすくなります。

よくある質問

Q1.SARA 8点以下なら独歩自立と判断してよいですか?

いいえ。8点以下は脳卒中性運動失調で報告された独歩自立の参考カットオフです。方向転換、環境、疲労、転倒リスクなどを確認し、実際の歩行から自立度を判断します。

Q2.SARA 9〜11.5点なら四点杖を使えばよいですか?

点数だけで四点杖を選ぶことはできません。11.5点以下はQ-cane歩行自立に関する研究上の参考値であり、補助具の処方基準ではありません。実際に補助具を使用したときの安全性、歩容、介助量から判断します。

Q3.12.25点を超えたら歩行器でも自立できませんか?

そのようには判断できません。12.25点は研究対象となった脳卒中性運動失調患者における歩行器歩行自立のROCカットオフです。個々の患者で歩行器歩行が可能かどうかは、実際の歩行評価から判断します。

Q4.SARAが変わらなくても歩行能力が改善することはありますか?

あります。総得点が同じでも、方向転換が安定した、必要な介助量が減った、疲労後も安全性を保てるようになったなど、生活上重要な変化が生じることがあります。SARAと歩行条件の両方を記録して比較します。

次の一手

SARAの結果から具体的な評価・介入へつなげたい場合は、運動失調リハの進め方|評価から介入までの流れで、失調のタイプや問題点を含めて整理してください。


参考文献

  • Schmitz-Hübsch T, du Montcel ST, Baliko L, et al. Scale for the assessment and rating of ataxia: development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. doi:10.1212/01.wnl.0000219042.60538.92
  • Kim BR, Lim JH, Lee SA, et al. Usefulness of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia (SARA) in Ataxic Stroke Patients. Ann Rehabil Med. 2011;35(6):772-780. doi:10.5535/arm.2011.35.6.772
  • Yoshikawa S, Matsugi A, Fukumoto S, et al. Minimal Important Change of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia (SARA) and the Modified Functional SARA (f-SARA) in Patient with Subacute Infratentorial Stroke: A Multicenter Prospective Observational Study. Cerebellum. 2026;25(2):23. doi:10.1007/s12311-026-01962-y

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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