- SARA スコア別の歩行ゴール|自立の目安と早見表
- まず押さえる:SARA の点数は「歩行自立の目安」であって決定ではない
- 現場の詰まりどころ:止まりやすいポイントを “ 解決の三段 ” で抜ける
- スコア帯 × 崩れる場面|「次の一手」が決まる 2 軸マトリクス
- SARA スコア帯別:歩行ゴールと介入(早見表)
- ゴール設定の “ 型 ”:距離より先に「条件」を決める
- コピペで使える|歩行ゴール文テンプレ 3 パターン
- 配布物ダウンロード|SARA 歩行ゴール記録シート
- よくある失敗と修正(スコア帯別に “ 優先順位を 1 つ ” に戻す)
- 回避の手順:安全・支持・疲労を “ チェックしてから ” 進める
- ケースで理解:同じ点数でも “ 崩れる場面 ” が違えば次の一手は変わる
- よくある質問
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
SARA スコア別の歩行ゴール|自立の目安と早見表
結論からいうと、 SARA の点数だけで歩行自立は決めません。ただし、点数で重症度の目安を置きつつ、「直線」「方向転換」「屋外」「疲労後」のどこで崩れるかをセットで見ると、歩行ゴールはかなり決めやすくなります。
本記事は、 SARA を採点できても「この点数なら何を目標にする?」「独歩・杖・歩行器の目安は?」で止まりやすい PT / OT / ST 向けに、スコア帯 → 自立の目安 → 条件付きゴール → 介入の優先順位までを 1 本で整理します。距離だけでなく、補助具・介助・環境まで言葉にできる形に落とします。
同ジャンル回遊:運動失調の記事は “ ハブ → 親 → 子 ” で読むと、評価と介入のつながりがブレません。
まず押さえる:SARA の点数は「歩行自立の目安」であって決定ではない
先に押さえたいのは、数値目安は使うが、そのまま当てはめないという姿勢です。脳卒中性運動失調の報告では、独歩自立は 8 点以下、 Q-cane 歩行自立は 11.5 点以下、歩行器歩行自立は 12.25 点以下が目安として示されています。ただし、これは ataxic stroke のデータなので、すべての失調症例にそのまま一般化せず、臨床の参考値として使います。
運用のコツはシンプルです。 SARA の歩行項目自体に方向転換とつぎ足歩行が含まれるので、歩行ゴールでも「何 m 歩けるか」だけでなく、どの場面で崩れるかをセットで残します。同じ靴・同じ補助具・同じ距離・同じ環境で短時間に観察し、直線・方向転換・屋外・疲労後のどこで崩れるかを 1 行で書くと、次の一手がぶれません。
現場の詰まりどころ:止まりやすいポイントを “ 解決の三段 ” で抜ける
このページ内だけで解決まで到達できるよう、まずは導線を固定します(ここは原則ボタン無し)。
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方や手順だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の “ 型 ” をまとめて整理したい方は、 PT キャリアガイドも参考になります。
スコア帯 × 崩れる場面|「次の一手」が決まる 2 軸マトリクス
※表は横にスクロールできます。スコア帯に加えて「どの場面で崩れるか」を当てはめると、優先順位が 1 つに絞れます。
| スコア帯 | 直線で崩れる | 方向転換で崩れる | 屋外で崩れる | 疲労後に崩れる |
|---|---|---|---|---|
| 0–5 点(軽症) | 支持・視線・足幅の “ 条件固定 ” を先に | 停止 → 回旋 → 再加速の “ ルール化 ” | 路面/人混み/段差を “ 段階づけ ” | ペース配分(分割)と翌日の反動チェック |
| 6–10 点(軽〜中等症) | 支持 + 荷重の再現性(足幅・体幹) | 方向転換を “ 小さく・ゆっくり・手順固定 ” | 補助具と環境(手すり/休憩点)の設計 | 短時間 × 複数回で “ 質の反復 ” |
| 11–20 点(中等症) | 安全確保(介助・補助具)→ 立位の質 | 転倒リスク高:介助位置と合図を固定 | 屋外は “ 目的限定 ”(練習より安全設計) | 疲労で質が落ちるなら量を切り、休息を計画 |
| 21–40 点(重症) | 歩行より生活動線(移乗・姿勢保持)優先 | 方向転換は歩行でやらず、移乗で安全確保 | 屋外は車椅子中心、転倒ゼロの運用へ | 疲労管理=安全の中核(呼吸・起立耐性も確認) |
SARA スコア帯別:歩行ゴールと介入(早見表)
※表は横にスクロールできます。
| スコア帯(目安) | 起きやすい課題 | 短期ゴール例(条件付き) | 優先順位(例) | 再評価の見方 |
|---|---|---|---|---|
| 0–5 点(軽症) | 屋外・人混み・方向転換で崩れる/二重課題に弱い | 屋内は自立、屋外は “ 条件付き ” で転倒なく移動(例:屋外 10–15 分、見守り) | 方向転換と停止動作の質 → 二重課題の段階づけ → 疲労管理 | 直線ではなく “ 方向転換・屋外・疲労後 ” の崩れ方が減るか |
| 6–10 点(軽〜中等症) | 支持基底面が広い/ふらつき増加/速度を上げると崩れやすい | 屋内移動を “ 見守り〜軽介助 ” で反復し、安全に再現(方向転換は手順固定) | 支持と荷重の安定 → ステップ再現性 → 方向転換のルール化 | 介助量より “ 崩れ方のパターン ” が減るか(再現性) |
| 11–20 点(中等症) | 立位保持が不安定/歩行は補助具・介助が必要になりやすい | 安全な移動手段を先に固定(歩行は短時間 × 分割で “ 質の良い反復 ” ) | 安全確保(介助・補助具)→ 立位の質 → 短距離反復 → 休息で質維持 | 距離より、立位と 1 歩の質が保てる “ 時間 ” が伸びるか |
| 21–40 点(重症) | 立位・歩行の安全性が低い/移乗・姿勢保持の崩れが大きい | 生活動線は転倒ゼロを最優先(移動は車椅子中心、立位は目的限定) | 環境と介助の最適化 → 移乗の安全 → 短時間の立位課題 → 疲労・呼吸管理 | 歩行に固執せず、生活動線の安全性と介助量の安定を追う |
補足: ataxic stroke の報告では、独歩自立 8 点以下、 Q-cane 歩行自立 11.5 点以下、歩行器歩行自立 12.25 点以下が参考目安です。ただし、これは脳卒中性運動失調のデータです。 SARA の点数をそのまま “ 判定値 ” にせず、崩れる場面と条件を併記して使うと判断がぶれにくくなります。
図で全体像を先に整理したい方は、次の 1 枚を見ると「何点か」ではなく「どう決めるか」が頭に入りやすくなります。
ゴール設定の “ 型 ”:距離より先に「条件」を決める
歩行ゴールを「何 m 歩く」だけで置くと、再評価が曖昧になります。おすすめは、条件(補助具・介助・環境)→ 安全性(転倒ゼロ)→ 反復可能性(同条件で繰り返せる)の順に決める型です。
例:「屋内 20 m」より、「屋内 20 m を T 字杖で見守り、方向転換は声かけ 1 回で安全に」のほうが、次回の修正点がはっきりします。点数は “ 目安 ” にして、条件を言葉にして固定しましょう。
コピペで使える|歩行ゴール文テンプレ 3 パターン
距離だけでなく、補助具・介助・環境(条件)まで入れると再評価がぶれません。
テンプレ 1:安全(転倒ゼロ)を最優先にする
(期間:○週) 屋内○mを【補助具:○○】で【介助:見守り/軽介助】にて、転倒なく実施できる。 方向転換は【手順:停止→小回り→再開】を声かけ 1 回以内で再現できる。
テンプレ 2:崩れる場面を 1 つだけ改善する(最短で前進)
(期間:○週) 直線歩行は現状維持とし、【崩れる場面:方向転換/屋外/疲労後】でのふらつきを減らす。 評価は【条件:同じ靴・同じ補助具・同じ距離】で行い、崩れ方が “ 一段軽くなる ” ことを目標とする。
テンプレ 3:中等症〜重症で “ 生活動線の安定 ” を作る
(期間:○週) 移動手段を【車椅子/歩行器/介助】で固定し、生活動線での転倒ゼロを達成する。 立位・歩行は【目的:トイレ移乗/洗面】に限定し、短時間で質を保てる範囲で反復する。
配布物ダウンロード|SARA 歩行ゴール記録シート
点数だけで終わらず、同条件で比較する・崩れる場面を書く・条件付きゴールに落とすまでを 1 枚で回したい方は、配布用シートを使うと記録がそろいやすくなります。
プレビューを開く
よくある失敗と修正(スコア帯別に “ 優先順位を 1 つ ” に戻す)
※表は横にスクロールできます。
| 詰まりどころ | NG | OK | 記録の一言(例) |
|---|---|---|---|
| 点数だけで判断 | 「 SARA が○点だから自立/不可」で決める | 崩れる場面(直線/方向転換/屋外/疲労後)をセットで残す | 「直線は安定、方向転換で崩れる」 |
| 全部やろうとする | 支持・協調・耐久・環境を同時に詰める | スコア帯ごとに “ 最優先を 1 つ ” に絞る | 「今週は方向転換の手順固定を最優先」 |
| 量で押して悪化 | 歩行練習の量を増やして終盤で崩れる | 短時間 × 分割で “ 質が保てる最小単位 ” を反復 | 「疲労前に休息、質の反復へ」 |
| ゴールが抽象的 | 「歩けるように」で止まる | 条件(補助具・介助・環境)まで含めて具体化 | 「屋内 20 m: T 字杖 + 見守り、転倒ゼロ」 |
回避の手順:安全・支持・疲労を “ チェックしてから ” 進める
歩行の前進は、能力だけでなく “ 安全設計 ” が前提です。次の 3 点を毎回チェックして、ゴールの現実性を担保します。
- 安全:転倒歴、立位の崩れ方、介助者の位置(守り方が一定か)
- 支持:補助具の種類・高さ・使い方、支持基底面(足幅)と荷重の再現性
- 疲労:終盤の質低下(歩容・停止・方向転換)、休息で戻るか、翌日の反動
ケースで理解:同じ点数でも “ 崩れる場面 ” が違えば次の一手は変わる
ケース 1:SARA 6–10 点帯|直線は良いが、方向転換で崩れる
直線は見守りで安定する一方、方向転換と停止でふらつきが増えるケースです。距離を伸ばすより、止まる・向きを変える手順を固定し、足幅・視線・手の位置のルールを共有すると安全性が上がります。スコアが大きく変わらなくても、方向転換の崩れ方が減り、同条件で再現できる場面が増えれば前進です。
ケース 2:SARA 11–20 点帯|歩行に固執して疲労で悪化する
歩行練習の量を増やすほど終盤でフォームが崩れ、転倒リスクが上がるケースです。まず移動手段(補助具・介助)を固定し、歩行は短時間の “ 質の良い反復 ” に切り替えます。休息を計画に組み込み、転倒リスクが高い日は歩行より移乗・立位の安全を優先すると、生活動線が安定します。
ケース 3:SARA 21 点以上|歩行固執から「生活動線の最適化」へ切り替えた例
屋内での歩行練習を続けていましたが、疲労後に崩れが強くなり、転倒リスクが上がっていました。本人は「歩けなくなるのが怖い」ため、歩行へのこだわりが強い状況です。
ここで方針を “ 歩行をやめる ” ではなく、“ 歩行の役割を変える ” に切り替えます。移動は車椅子を中心に固定し、歩行は 目的を限定(洗面・トイレ移乗など)して短時間のみ実施。介助位置と合図を固定し、転倒ゼロを最優先にします。
結果として、生活動線の不安が減り、疲労の反動も減少。歩行練習の量は減っても、安全に立てる場面と移乗の再現性が上がったことで、家族指導と在宅運用が安定しました。重症帯では “ 歩行距離 ” よりも、生活の中での安全な成功体験を積むことが前進になります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1.SARA の点数だけで歩行自立を判断して良いですか?
A.点数は重症度の目安になりますが、歩行の安全性は環境・注意・疲労の影響も大きいです。「どの場面で崩れるか(直線/方向転換/屋外/疲労後)」を必ずセットで観察し、条件(補助具・介助・環境)を具体化して判断します。
Q2.独歩 8 点以下などの cut-off は、そのまま使って良いですか?
A.そのまま “ 判定値 ” にするのではなく、参考目安として使います。報告の対象は脳卒中性運動失調なので、脊髄小脳変性症などに機械的に当てはめるのは避け、崩れる場面や生活環境と併用して解釈します。
Q3.スコアが変わらないのに歩行が良くなりました。どう解釈しますか?
A.歩行は “ 安全性と再現性 ” の改善が先に出ることがあります。方向転換で崩れなくなった、疲労後もフォームが保てるなど、場面別の崩れ方が減っていれば前進です。スコアは長期の変化として追い、短期は場面別の指標で評価します。
Q4.重症( 21 点以上 )では歩行をあきらめるべきですか?
A.“ 歩行そのもの ” より、生活動線の安全(転倒ゼロ)を最優先に考えます。立位・歩行は目的と条件を限定し、移動手段(車椅子等)を含めた最適解を作るのが臨床的に有効です。必要な場面で安全に立てること自体が大きな価値になります。
次の一手
- 全体像を固定する:運動失調ハブで位置づけを確認する
- 評価から介入へつなげる:運動失調リハの進め方(評価 → 介入フロー)を読む
参考文献
- Schmitz-Hübsch T, du Montcel ST, Baliko L, et al. Scale for the Assessment and Rating of Ataxia: Development of a New Clinical Scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. DOI
- Kim BR, Lim JH, Lee SA, et al. Usefulness of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia ( SARA ) in Ataxic Stroke Patients. Ann Rehabil Med. 2011;35(6):772-780. DOI
- Yamauchi K, Kumagae K, Goto K, et al. Predictive Validity of the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia for Medium-Term Functional Status in Acute Ataxic Stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2021;30(4):105631. DOI
- Scale for Assessment and Rating of Ataxia. Shirley Ryan AbilityLab Rehabilitation Measures Database. 公式解説
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


