ABMS-2 と BMS の違い【比較・使い分け】

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ABMS-2 と BMS の違い【比較・使い分け】

結論から言うと、急性期の離床レベル共有は「 ABMS-2 」回復期〜退院前のボトルネック分解は「 BMS 」が迷いにくいです。どちらも“基本動作”を扱いますが、見る幅(項目の広さ)運用の目的(共有か、介入設計か)が違います。

全体像(基本動作評価の位置づけ/選び方の早見表)を先に確認したい場合は、基本動作評価ハブを起点にすると、親子構造で迷いが減ります。

結論:急性期は ABMS-2 /回復期〜在宅準備は BMS

ABMS-2 は、寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がり・立位保持の 5 項目 6 段階で採点し、合計(おおむね 5–30 点)で離床レベルを俯瞰しやすいのが強みです。ベッドサイドで短時間に“今どこまでできるか”を共有したい場面で効きます。

BMS は、起居〜移乗・踏み返し・歩行まで含む 9 項目 5 段階(合計 9–45 点)で整理し、低い項目(=詰まり)を特定して介入へ落とし込みやすい設計です。回復期以降の「どこが詰まって ADL が伸びないか」を分解するのに向きます。

まず押さえる違い:見る幅と“使いどころ”が違う

どちらも基本動作ですが、 ABMS-2 は最小限の 5 項目で早く共有する設計、 BMS は基本動作を広めに分解して介入へつなぐ設計です。よって「どっちが優れているか」ではなく、病期と目的で選びます。

  • ABMS-2 :急性期の離床可否・介助量の目安を、チームでそろえる
  • BMS :回復期〜退院前に、詰まりの動作を 1 つ決めて再評価を回す

比較表: ABMS-2 と BMS の違い(早見)

ポイントは「項目数」よりも、何を意思決定したいか(離床の段階か/介入の焦点か)です。

ABMS-2 と BMS の比較(目的・運用の違い)
比較軸 ABMS-2 BMS おすすめ場面 落とし穴(よくあるミス)
評価の目的 離床レベルの共有(今どこまで可能か) 詰まり動作の特定(どこを介入するか) 急性期= ABMS-2 /回復期〜退院前= BMS 目的が曖昧なまま両方やって“比較できない記録”になる
項目の幅 起居〜立位のコア( 5 項目 ) 起居・移乗・踏み返し・歩行まで( 9 項目 ) 移乗・歩行まで含めて詰まりを見たいなら BMS 歩行まで見たいのに ABMS-2 だけで結論を出す
採点の考え方 6 段階で段階到達を追いやすい 5 段階で“安定してできるか”も意識しやすい 日々の離床段階= ABMS-2 /再現性まで詰める= BMS 採点の線引きが人でズレる(条件統一不足)
強み 短時間でチームの共通言語になりやすい ボトルネックを 1 つに絞って介入設計しやすい 病棟回診・カンファで共有したい= ABMS-2 合計点だけ見て“どこが詰まりか”を飛ばす
記録の残し方 「段階+介助量+禁止の有無」を簡潔に 「条件(高さ・手すり等)+詰まり項目+再現性」を具体に 退院前の家族指導・再現テスト= BMS 体位・高さ・支持物を書かず、再評価で点数が動く

迷ったときの選び方: 1 分で決めるフロー

迷いは「目的の言語化」でほぼ解消します。まず“今決めたいこと”を 1 つに絞ります。

  1. 今決めたいのは、離床の段階(許可/介助量)ですか? → はい: ABMS-2
  2. 今決めたいのは、詰まり動作(どこを介入するか)ですか? → はい: BMS
  3. 退院前で、生活条件(家屋・介助者)に合わせて再現性を詰めたいですか? → はい: BMS
  4. 評価が乱立して比較できないですか? → まず 1 本化(急性期中心= ABMS-2 /回復期中心= BMS )

現場の詰まりどころ:点数が動く原因は“条件”と“線引き”

どちらのスケールでも、本人の能力変化だけでなく、ベッド高さ、手すり、靴、介助位置、声かけで点数が動きます。まず「標準条件」を決め、記録に条件を残すだけで再評価の信頼性が上がります。

線引きで迷うときは、介助量の定義と、代償(手すり・反動・勢い)をどこまで許容するかを先に決めるのがコツです。迷ったら同席評価(同じ場面を同じ条件で)で“判定の言語”をそろえると、チームのブレが一気に減ります。

運用のコツ:合計点より「次の 1 動作」を決める

比較記事で一番伝えたいのは、合計点で一喜一憂するより、次に上げる動作を 1 つ決めることです。 ABMS-2 は離床段階の共有に強いので「端座位→立位」などの段階目標を 1 つ決める、 BMS は詰まり動作が見えるので「起き上がりの前半」「着座の制動」など、介入の焦点を 1 つに絞るのが効きます。

再評価は、同じ条件で回すほど価値が上がります。評価→介入→再評価を“同じ条件で”回せる状態が作れた時点で、どちらのスケールも臨床で強い武器になります。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 急性期でも BMS を使っていいですか?

使えます。ただし急性期は「まず安全に離床できるか」の意思決定が多く、短時間で共有できる ABMS-2 が運用上は回りやすいです。急性期で BMS を使うなら、点数を追うよりも“条件統一(高さ・支持物・介助位置)”を先に固め、ブレを減らすことを優先すると失敗しにくいです。

Q2. どちらか 1 つに統一するなら、どう決めますか?

病棟の主戦場で決めます。離床判断・許可の共有が中心なら ABMS-2 、回復期〜退院前の介入設計が中心なら BMS です。統一の目的は「比較できる記録」を増やすことなので、まずは 1 本化して再評価の精度を上げるのが最短です。

Q3. 点数が上がったのに ADL が変わりません

スケールは“一定条件での能力”を反映しやすく、生活場面とはズレることがあります。点数上昇を ADL に移すには、家屋条件や介助者条件に合わせて、同じ手順で再現できるレベルまで落とし込み、危険場面(方向転換・着座の制動など)を先に潰すと変化が出やすいです。

おわりに

基本動作は、安全の確保 → 条件統一 → スケール記録 → 詰まりを 1 つだけ潰す → 再評価のリズムで回すと、短い期間でも変化が追いやすくなります。 ABMS-2 は「共有」、 BMS は「介入設計」に強い──この役割分担を意識すると、両者の使い分けは驚くほどシンプルになります。

参考文献

  1. Tanaka T, Hashimoto K, Kobayashi K, Abo M. Revised version of the Ability for Basic Movement Scale (ABMS II) as an early predictor of functioning related to activities of daily living in patients after stroke. J Rehabil Med. 2010. doi: 10.2340/16501977-0487 / PubMed: 20140415
  2. Basic Movement Scale(BMS)使用マニュアル(日本語). 配布 PDF

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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