BMSとは?9種類・12採点欄・12〜60点で基本動作を評価
BMS(Basic Movement Scale/基本動作指標)は、寝返り・起き上がり・端座位保持など、生活の土台となる基本動作を評価するスケールです。上肢を使用するか、動作を毎回遂行できるかという視点から、各採点欄を1〜5点で評価します。
BMSが対象とする基本動作は9種類です。ただし、寝返り・起き上がり・足の踏み返しは、日常で多く使う実用側と、その反対方向である非実用側を分けて採点します。そのため、採点欄は合計12項目となり、総得点は12〜60点です。
臨床では合計点の増減だけを見るのではなく、低得点の動作、上肢支持の方法、失敗する場面、評価時の環境条件を記録します。同じ条件で再評価することで、介入による変化と環境条件による点数差を区別しやすくなります。

BMSを使う場面と評価の目的
BMSは、ADLの結果だけでは分かりにくい「基本動作のどこで詰まっているか」を整理したい場面で使用します。寝返り、起き上がり、立ち上がり、乗り移り、歩行などを構成する動作能力を分けて評価できるため、介入の優先順位を検討する材料になります。
たとえば歩行の得点が低い場合でも、歩行練習だけを増やせばよいとは限りません。立ち上がり、立位保持、足の踏み返し、乗り移りなどの得点と所見を確認すると、歩行を妨げている基本動作を絞り込みやすくなります。
BMSは一定の評価条件におけるCapacityを捉える指標です。病棟や自宅で実際に行っている動作、介助方法、環境設定などを評価する場合は、ADL評価や生活場面の観察と組み合わせて解釈します。
BMSの評価項目|9種類・12採点欄
BMSが対象とする基本動作は9種類ですが、方向を分けて評価する3動作があるため、採点欄は12項目になります。寝返り、起き上がり、足の踏み返しは、実用側と非実用側をそれぞれ採点します。
実用側とは、対象者が日常生活で最も多く使用する方向です。非実用側は、その反対方向を指します。単純に右側・左側で固定せず、対象者が普段どちらの方向を多く使っているかを確認して記録します。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| # | 採点項目 | 主な観察ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 寝返り(実用側) | 体幹回旋、上肢支持、下肢の使用、動作が止まる場面 |
| 2 | 寝返り(非実用側) | 実用側との差、回旋方向による動作方法、支持の必要性 |
| 3 | 起き上がり(実用側) | 肩甲帯と骨盤の連動、上肢支持、端座位までの安定性 |
| 4 | 起き上がり(非実用側) | 実用側との差、上肢支持、体幹の立ち直り、症状の有無 |
| 5 | 端座位保持 | 骨盤と体幹の安定、足部接地、上肢支持、姿勢の崩れ方 |
| 6 | 立ち上がり | 体幹前傾、殿部離床、下肢伸展、上肢支持、介助の必要性 |
| 7 | 立位保持 | 支持物の必要性、重心動揺、姿勢偏位、立位の安定性 |
| 8 | 着座 | 後方への重心移動、下肢の制動、上肢支持、着座時の安全性 |
| 9 | 乗り移り | 立ち上がり、方向転換、着座、支持物、介助が必要な場面 |
| 10 | 足の踏み返し(実用側) | ステップ反応、支持脚の安定性、足部の位置、転倒リスク |
| 11 | 足の踏み返し(非実用側) | 実用側との差、支持脚の安定性、ステップ方向、反応の遅れ |
| 12 | 歩行 | 補助具、上肢支持、介助量、歩行の安定性、疲労による変化 |
実用側・非実用側の決め方
寝返り、起き上がり、足の踏み返しは、実用側と非実用側を分けて採点します。実用側は、対象者が日常生活で最も多く行う方向です。麻痺側・非麻痺側や利き手側だけで機械的に決めるものではありません。
たとえば、ベッドの配置や手すりの位置によって、普段は右方向へ起き上がる対象者であれば、右方向が実用側になります。反対方向への起き上がりは非実用側として採点します。
- 初回評価:普段の生活動作や病室環境を確認して実用側を決める
- 再評価:前回と同じ方向を実用側として評価する
- 記録:「実用側=右」のように方向を明記する
評価のたびに実用側が変わると、得点差が能力の変化なのか方向の違いなのか判断しにくくなります。経過を追う場合は、実用側と非実用側の定義をチーム内で共有してください。
BMSの採点基準|5〜1点の判断方法
BMSは、動作を遂行できるかだけでなく、上肢を使用するか、動作を毎回遂行できるかという視点で5段階評価します。
上肢を使用せず毎回遂行できれば5点、上肢を使用すると毎回遂行できれば3点です。動作を遂行できても再現性が低い場合は、それぞれ4点または2点となります。遂行できない場合は1点です。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 得点 | 採点基準 | 記録で補足する内容 |
|---|---|---|
| 5点 | 上肢を使用しなくても毎回できる | 動作方法、速度、ふらつき、症状など |
| 4点 | 上肢を使用しなくてもできるが、毎回ではない | 失敗した試行、疲労、注意、環境条件など |
| 3点 | 上肢を使用すると毎回できる | 使用した手すり、ベッド柵、支持面など |
| 2点 | 上肢を使用するとできるが、毎回ではない | 成功・失敗の条件、危険な場面、介助の有無など |
| 1点 | できない | 中止理由、必要な介助、代替して確認した所見など |
「上肢を使用する」の記録方法
上肢を使用したかどうかを判断する際は、手すり、ベッド柵、椅子の座面、杖、歩行器など、どの支持物をどのように使用したかを確認します。
同じ3点でも、軽く手を添える場合と、上肢で強く引き上げる場合では動作の特徴が異なります。採点だけでは違いが残らないため、支持物と使用方法を所見に追記してください。
「毎回できる」の判断で迷う場合
「毎回できる」とは、動作を行うたびに遂行できる状態を指します。同じ動作方法である必要はありませんが、成功と失敗が混在する場合は、毎回できるとは判断しません。
試行回数を独自に設定する場合は、公式の採点基準と施設内の運用ルールを分けて扱います。「同一条件で複数回確認する」という院内ルールを設ける場合は、試行回数や判定方法をチーム内で統一してください。
BMSの実施手順
BMSは、評価条件をそろえ、安全を確保したうえで12項目を採点します。合計点を算出したあと、低得点の動作と失敗場面を記録し、介入後も同じ条件で再評価します。
- 評価目的を決める:初回評価、経過確認、退院前評価など、今回の目的を明確にします。
- 安全を確認する:疼痛、バイタルサイン、荷重制限、転倒リスク、医師の指示などを確認します。
- 評価条件をそろえる:ベッド高、椅子高、手すり、靴、補助具、介助者の位置を決めます。
- 実用側を決める:寝返り、起き上がり、足の踏み返しについて、実用側と非実用側を確認します。
- 12項目を採点する:上肢使用の有無と、毎回遂行できるかを基準に1〜5点で評価します。
- 合計点を算出する:12項目を合計し、12〜60点で記録します。
- 低得点項目を特定する:介入の優先順位を考えるため、詰まりとなっている動作を確認します。
- 同じ条件で再評価する:条件を変更せず、介入後の得点と動作方法を比較します。
BMSの点数と臨床での解釈
BMSは、合計点が高いほど基本動作能力が高いことを示します。ただし、合計点だけでは、どの動作が改善したのか、どの動作が全体を制限しているのかまでは分かりません。
臨床では、合計点に加えて、各項目の得点分布を確認します。とくに低得点の項目、実用側と非実用側の差、上肢支持が必要な項目、成功と失敗が混在する項目が重要です。
- 1〜2点の項目:動作の遂行が難しい、または再現性が低い
- 3点の項目:上肢支持があれば安定して遂行できる
- 4点の項目:上肢支持なしで遂行できるが再現性に課題がある
- 5点の項目:上肢支持なしで毎回遂行できる
たとえば歩行が2点、立位保持が3点、足の踏み返しが2点であれば、歩行だけでなく、立位での支持戦略やステップ反応を含めて介入を検討します。
BMSと実際のADLが一致しない場合
BMSで高得点を得ても、病棟や自宅で同じ動作を行えているとは限りません。BMSは一定条件での基本動作能力を評価する一方、実際のADLには環境、介助方法、習慣、認知機能、恐怖心、補助具などが影響します。
BMSの得点と生活場面が一致しない場合は、次の点を確認します。
- 評価時と生活場面で、ベッドや椅子の高さが異なっていないか
- 手すりや補助具の位置が異なっていないか
- 介助者の方法や声かけが異なっていないか
- 疲労、疼痛、注意、恐怖心の影響がないか
- 評価で獲得した動作を生活場面で使用する機会があるか
安全管理と中止を検討する場面
BMSには立ち上がり、立位保持、足の踏み返し、歩行など、転倒リスクを伴う項目があります。採点を優先して無理に実施せず、対象者の状態と施設内の安全基準に従ってください。
- 強いめまい、胸部不快感、著明な息切れなどの自覚症状が出現した
- 血圧、脈拍、酸素飽和度などに著しい変化がみられた
- 疼痛や痙縮が増悪した
- 膝折れ、ふらつき、支持性低下などにより転倒の危険が高い
- 荷重制限や安静度を超える可能性がある
- 低血糖、低酸素、意識状態の変化などが疑われる
実施できない項目を無理に続ける必要はありません。中止した理由、安全確保に必要だった介助、観察できた範囲を記録し、必要に応じて医師や看護師などへ共有します。
BMSの記録例
BMSを経過評価に使用する場合は、合計点と項目別得点だけでなく、実用側、評価条件、上肢支持、失敗場面を記録します。
BMS:39 / 60点 実用側:右 内訳: 寝返り 実用側4/非実用側3 起き上がり 実用側3/非実用側2 端座位保持5 立ち上がり3 立位保持3 着座4 乗り移り3 足の踏み返し 実用側2/非実用側2 歩行5 条件: ベッド高45cm、椅子高40cm、靴着用 右手すり使用可、T字杖使用、左側から見守り 所見: 起き上がりは右ベッド柵を使用すると安定。 非実用側では体幹の立ち直りに時間を要する。 立ち上がり終盤で体幹が後方化。 踏み返しは両方向とも支持脚の安定性が低い。
再評価時は、前回と同じベッド高、椅子高、支持物、補助具、介助位置で実施します。条件を変更した場合は、得点とは別に変更内容を明記してください。
BMS評価でよくある失敗と対策
BMSは採点方法が簡潔な一方、評価条件や実用側の設定が統一されていないと、評価者間や再評価時に点数が変わりやすくなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| よくある失敗 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 9種類を9項目として合計する | 方向別に採点する3動作が含まれず、合計点が9〜45点になる | 寝返り・起き上がり・足の踏み返しを実用側と非実用側に分け、12項目で合計する |
| 実用側を記録しない | 再評価時に別方向を評価し、得点を比較できなくなる | 「実用側=右」のように方向を明記する |
| 合計点だけを共有する | どの動作が改善し、どの動作が制限となっているか分からない | 項目別得点、低得点項目、失敗場面を共有する |
| 評価条件が毎回異なる | 能力の変化と環境条件による変化を区別できない | ベッド高、椅子高、支持物、補助具、介助位置を記録する |
| 上肢支持の方法を記録しない | 同じ得点でも実際の動作方法が分からない | 使用した手すり、ベッド柵、杖、歩行器などを具体的に残す |
| 「毎回できる」の基準が評価者ごとに異なる | 5点と4点、3点と2点の判断がばらつく | 公式基準を確認し、必要に応じて施設内の確認方法を統一する |
動作が失敗する場面を整理する方法については、動作分析の基本フレームも参考にしてください。
BMS記録用紙(A4 PDF)
BMSの採点結果、実用側・非実用側、評価条件、所見を記録するためのA4版記録用紙です。初回評価と再評価で条件を比較できるように、ベッド高、椅子高、支持物、補助具なども記録してください。
記録用紙のプレビューを表示する
BMS自動計算ツール|12項目・合計12〜60点
12項目の得点を入力すると、合計点と最も低い項目を自動で表示します。寝返り、起き上がり、足の踏み返しは、実用側と非実用側を分けて入力してください。
自動計算ツールのプレビューを表示する
表示できない場合は、こちらから自動計算ツールを開いてください。
BMSの公式マニュアルと入手先
BMSの正式な採点基準、実用側・非実用側の考え方、各動作の評価方法については、配布元の使用マニュアルを確認してください。院内で使用する場合は、参照しているマニュアルの版を統一しておくと、評価者間の判断をそろえやすくなります。
BMSに関する研究を読む際の注意点
BMSでは、運動FIMとの関連や構成概念妥当性などが報告されています。一方、掲載している主要な研究は、主として大腿骨近位部骨折患者を対象としています。
そのため、脳卒中、廃用症候群、呼吸器疾患など、異なる対象者へ使用する場合は、研究結果をそのまま一般化せず、対象者の疾患、認知機能、安全性、生活環境などを含めて解釈してください。
BMS評価に関するよくある質問
各質問をタップすると回答が開きます。
Q1.BMSは9項目ですか、12項目ですか?
BMSが対象とする基本動作は9種類です。ただし、寝返り、起き上がり、足の踏み返しは、実用側と非実用側を分けて採点します。そのため、採点欄は12項目となり、合計点は12〜60点です。
Q2.実用側は麻痺していない側ですか?
実用側は、麻痺側・非麻痺側だけで決めるものではありません。対象者が日常生活で最も多く使用する方向を実用側とします。病室のベッド配置、手すりの位置、普段の動作方法などを確認して決めます。
Q3.「毎回できる」とは何回成功すればよいですか?
公式基準では、動作のたびに必ず遂行できる状態を「毎回できる」と考えます。特定の試行回数を施設内で設定する場合は、それを公式基準そのものとはせず、施設内の確認方法として区別してください。
Q4.評価にかかる時間はどのくらいですか?
所要時間は対象者の状態、安全確認、介助量、休憩の必要性によって異なります。転倒リスクや循環動態への配慮が必要な場合は、時間を優先せず、安全を確認しながら実施してください。
Q5.実施できない項目は1点にしてよいですか?
動作を遂行できない場合は1点となります。ただし、安静度、荷重制限、バイタルサイン、疼痛などの理由で安全に実施できなかった場合は、単純な能力低下と区別できるように中止理由も記録してください。
Q6.BMSの点数が上がってもADLが改善しないのはなぜですか?
BMSは一定条件での基本動作能力を評価します。実際のADLには、環境、介助方法、補助具、認知機能、習慣、恐怖心なども影響します。BMSの得点だけで判断せず、生活場面で獲得した動作を使用できているか確認してください。
BMS評価の次に確認するページ
BMSの採点方法を確認したあとは、評価目的に応じて基本動作評価全体の選び方や、ABMS-2との違いを整理します。
参考文献
- Toyama S, Sawada K, Ueshima K, et al. Changes in Basic Movement Ability and Activities of Daily Living After Hip Fractures: Correlation Between Basic Movement Scale and Motor-FIM Scores. Am J Phys Med Rehabil. 2018;97(5):316-322. PubMed / DOI
- Goto R, Toyama S, Sawada K, et al. The Usefulness of Basic Movement Scale in Hip Fracture Patients: Construct Validity from a Cross-Sectional Study. Am J Phys Med Rehabil. 2019;98(12):1099-1105. PubMed / DOI
- BMS使用マニュアル(日本語PDF)
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床で活用しやすい評価方法やプロトコルを発信しています。脳卒中や褥瘡・創傷ケアなどの領域で講師登壇経験があります。
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

