療養病棟の ADL 区分|4 項目×0–6 点を“迷わず”付ける
療養病棟の ADL 区分は、患者さんの「介助量」を 4 項目それぞれ 0–6 点で評価し、合計点で 区分 1–3に落とし込みます。迷いやすいのは、できる時の最大能力ではなく、観察期間の「ふだんの介助」で点を選ぶ点です。本記事では、判断の順番を固定してスタッフ間のズレを減らします。
制度の全体像から確認したい方は、医療区分・ADL 区分(療養病棟)まとめを先に見ると、評価→記録→請求までの流れを一気に整理できます。
ADL 区分の全体像|4 項目を 0–6 点で評価する
ADL 区分は、4 項目(a–d)をそれぞれ 0–6 点で評価し、合計点(0–24 点)から区分 1–3 を決めます。項目は「ベッド上の動き」「移乗」「食事」「トイレ使用」です(経管・経静脈栄養は食事に含めます)。
点数が上がるほど介助量は重くなります。迷ったときは、体重(身体)を支える介助が必要か、本人の参加が 50% 以上かの 2 軸で分けると、採点の再現性が上がります。
| 記号 | 項目 | 評価の観点(要約) |
|---|---|---|
| a | ベッド上の可動性 | 寝返り/起き上がり/臥位での位置調整など |
| b | 移乗 | ベッド↔いす・車いすの移乗(便座・浴槽は除外) |
| c | 食事 | 食べる/飲む(経管・経静脈栄養も含む) |
| d | トイレの使用 | トイレ使用、後始末、おむつ交換、カテーテル・人工肛門管理、衣服の調整(移乗は除外) |
点数を決める手順|「介助の質」と「頻度」で固定する
採点は「うまくできた 1 回」ではなく、観察期間の代表値で決めます。ズレを減らすために、病棟内で判断順を統一します。
- その動作がそもそも無い日が続いたか(例:トイレ動作が無い)。
- 見守り(観察)だけで安全にできるか(声かけ・誘導中心)。
- 準備だけでできるか(物品配置など)。
- ボディタッチが必要か(手添え、方向づけ、軽い支え)。
- 体重(身体)を支える介助が必要か(四肢・体幹の重み支持)。
- 本人の参加が 50% 以上か未満か(主役が本人か介助者か)。
| 点 | 呼び方 | 選ぶ目安 | よくある迷いどころ |
|---|---|---|---|
| 0 | 自立 | 手助け/準備/観察が不要(または 1–2 回のみ) | 「たまに声かけ」レベルの扱いを病棟で統一する |
| 1 | 準備のみ | 物品配置などの準備が複数回必要 | 準備+見守りが恒常なら 2 点を検討 |
| 2 | 観察 | 見守り/励まし/誘導が複数回必要 | 触れる介助があるなら 3 点以上 |
| 3 | 部分的な援助 | 本人が 50% 以上実施。体重支持を伴わない援助が中心 | 体重支持が入るなら 4 点へ |
| 4 | 広範な援助 | 本人 50% 以上だが、体重支持を伴う援助が必要 | 介助者主導なら 5–6 点を検討 |
| 5 | 最大の援助 | 本人 50% 未満、体重支持を伴う援助が必要 | 参加がほぼ無い場合は 6 点へ |
| 6 | 全面依存 | 3 日間すべて全面援助、または動作が成立しない | 「実施なし」の扱いを事前に定義する |
合計点→区分 1–3|請求のズレを防ぐ要点
4 項目の合計点で ADL 区分を決めます。計算ミスや転記ミスは、評価表をテンプレ化して防ぐのが確実です。
| 合計点 | ADL 区分 | 目安 |
|---|---|---|
| 0–10 | 区分 1(軽度) | 見守り〜部分介助が中心 |
| 11–22 | 区分 2(中度) | 体重支持介助を含む場面が増える |
| 23–24 | 区分 3(重度) | 4 項目ほぼ全面介助に近い |
現場の詰まりどころ|ADL 区分がズレる “よくある失敗”
ズレの主因は知識不足よりも運用定義の不一致です。以下を病棟ルールとして固定すると、再評価や差し戻しを減らせます。
| 失敗パターン | 起こること | 回避策(運用固定) |
|---|---|---|
| “できた 1 回” で点を下げる | 合計点が過小評価され、区分がぶれる | 「観察期間の代表値で採点」と明文化する |
| 準備と観察を混同 | 1 点と 2 点が入れ替わる | 準備=物品配置、観察=安全確保の見守りで定義 |
| 体重支持の有無が曖昧 | 3 点と 4 点が揺れる | 重みを支える介助があれば 4 点以上で統一 |
| トイレ項目に移乗を含める | d 項目が不自然に重くなる | 移乗は b、d は使用・後始末・衣服調整を中心に評価 |
→ よくある失敗へ(ページ内)
→ 回避のチェックへ(ページ内)
関連:評価のハブ(運用の型)
回避の手順|「月初評価」と「日々の記録」を一本化する
月初(または入院・転棟時)の評価を起点に、日々の介助量記録とズレないように運用を固定します。以下のチェックを申し送りに組み込むと、点数の再現性が上がります。
- 4 項目ごとに、準備/観察/ボディタッチ/体重支持の有無を記録する
- 50% ルールを一言で残す(本人主導か介助者主導か)
- 実施なしの扱い(トイレ動作なし等)を病棟で統一する
- 合計点は様式で自動計算し、手計算を避ける
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
月初以外でも ADL 区分は見直しますか?
基本は月初(または入院・転棟時)を起点にします。介助量の代表値が変わった場合は、病棟で定めた再評価タイミングに沿って見直すと運用が安定します。
できる日とできない日が混在します。どの点を採用しますか?
最も多い介助量(代表値)を採用します。迷う場合は「体重支持の有無」と「本人 50% 以上か」で分岐すると判断しやすくなります。
経管栄養・経静脈栄養は食事項目に含みますか?
含みます。食事項目として扱い、準備・観察・介助量を他項目と同じ考え方で整理します。
トイレを使わずおむつ中心の場合、d 項目はどう見ますか?
d はトイレ使用だけでなく、おむつ交換、後始末、衣服調整、カテーテル・人工肛門管理を含みます。移乗は b 項目で評価します。
次の一手|運用を整えて、判断をラクにする
- 全体像を確認する:医療区分・ADL 区分(療養病棟)まとめ(親)
- すぐ実装する:評価のハブ(テンプレ・運用の型)
参考文献
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


