誤嚥性肺炎の対応プロトコル(PT)|予兆→10分スクリーニング→初期対応→予防バンドル

栄養・嚥下
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結論:誤嚥性肺炎は「予兆 → 判定 → 次アクション」を順番固定すると迷いません

臨床の流れを整えつつ、働き方も一緒に整理したい方へ PT キャリアガイドを見る ※ 内部リンクは同一タブで開きます

最終更新:2026 年 1 月 14 日

誤嚥性肺炎は「検査を増やす」より先に、毎日回る観察と言語化を揃えると初動が速くなります。本ページは PT が現場で使えるように、予兆の拾い方 → スクリーニングで止める / 進む → 初期対応と赤旗の順番を 1 枚に整理します。

ポイントは「その場の印象」で決めないことです。時間軸(昨日との違い)体位・覚醒・呼吸をセットにして、所見 → 介入 → 再評価を 1 行で残すとチーム共有が崩れません。全体像(兄弟記事の一覧)は 誤嚥性肺炎 PT 実務ハブ にまとめています。

この記事の使い方

まずは次章の「 3 ステップ」を読んで、自施設の標準順番として採用してください。誤嚥性肺炎は単発評価だと抜けやすいため、観察・判定・初期対応の順を固定するだけで実装が進みます。

次に「予兆チェック表」と「よくある失敗」をそのまま病棟・在宅の記録に落とし込みます。最後に「次の一手」から、予兆(観察テンプレ)/スクリーニング/予防バンドルの詳細へ進むと最短です。

初期対応フロー: 3 ステップ(観察 → 判定 → 次アクション)

  1. ステップ 1:予兆を拾う(「何が変わったか」を 10 秒で言語化)
  2. ステップ 2:スクリーニングで「安全に進む / 止める」を決める(単独判定を避ける)
  3. ステップ 3:初期対応と予防を「やりっぱなし」にしない(赤旗と再評価の予約をセットにする)

ステップ 1:予兆を拾う(“変化” を短く残す)

高齢者の肺炎は、発熱や白血球増多が目立たず、食思不振・傾眠・せん妄・活動低下のような非特異的サインから始まることがあります。そこで PT は「数値」「所見」「体位」をセットで観察し、昨日との差を 1 行にまとめて共有します。

誤嚥性肺炎の「予兆」観察テンプレ(成人高齢者・運用版)
観察カテゴリ 見るポイント(例) 記録の型( 1 行 ) 次アクション
呼吸 呼吸数の微増、努力呼吸、 SpO2 のじわ低下、湿性咳嗽 / 痰増加 「端座位で RR 18→24、 SpO2 96→92(室内気)、湿性咳あり」 体位調整 → 介入前後で再評価
声・嚥下 湿性嗄声、嚥下後の咳、食事量低下、むせの増減 「食後に湿声+咳増、排痰後も湿声残る」 スクリーニングへ(ステップ 2 )
覚醒・活動 昼間傾眠、せん妄、起居動作の低下、転倒 / ふらつき増 「午後から傾眠、起立でふらつき増、歩行量 ↓」 離床量の微調整+再評価
口腔・水分 口腔乾燥、舌苔、義歯不適合、脱水所見、唾液粘稠 「乾燥強く舌苔あり、唾液粘稠、口腔ケア後に声が改善」 口腔ケアの質 / タイミングを統一
体位・環境 夜間の上体挙上が崩れる、頸部伸展位、食後すぐ臥位 「睡眠時 HU 0° 多く、朝に湿性咳が強い」 睡眠体位と食後体位を固定

ステップ 2:スクリーニングで “進む / 止める” を決める

誤嚥由来かどうかは、予兆だけでは確定しにくいことがあります。ここで重要なのは、単独テストで白黒を付けないことです。 RSST ・少量水のテスト・咳反射の所見などを束ねて、「安全に継続できる」か「一旦止めて相談する」かの意思決定に使います。

判定が難しいときは「陰性でも追う」を前提に、観察期限(例: 24–72 時間)と再評価項目( RR 、 SpO2 、湿声、痰、食事量)を予約しておくと、見落としが減ります。

ステップ 3:初期対応と予防を “やりっぱなし” にしない(赤旗+再評価を固定)

ステップ 1–2 で「流れ」が見えたら、次はその場の介入再評価(ビフォー / アフター)を 1 セットにします。最低限は「同じ体位で、声・ RR ・ SpO2 を 1 回ずつ」です。これだけで、チームにとって“有用な情報”になります。

また、予防は単発(口腔だけ / 離床だけ)だと抜け漏れが起きます。体位・口腔・活動・呼吸・水分 / 栄養を毎日回る形(バンドル)で固定したい方は、チェック表と運用のコツを 誤嚥性肺炎 予防バンドル(毎日回すチェック) にまとめています(親は「順番」、子は「実装テンプレ」で役割分担します)。

現場の詰まりどころ:よくある失敗と回避策

初期対応で起きやすい失敗(成人高齢者・運用版)
よくある失敗 なぜ起きる? 回避策(最短) 記録ポイント
発熱がないので様子見が長い 高齢者肺炎の非典型を見落とす 「昨日との差」を 1 行で残し、時間軸で追う RR、 SpO2、湿声、食事量、覚醒
むせなし=誤嚥なしと判断 サイレント誤嚥の前提が抜ける 単独判定をやめ、所見を束ねて「止める / 進む」を決める 湿声、呼吸変化、介入前後の差
介入はしたが再評価がない 忙しく「やりっぱなし」になる 再評価を「その場 1 回」だけ固定(例:声・ RR ・ SpO2 ビフォー / アフターを同じ体位で
口腔・体位・活動がバラバラ 単発対応で抜け漏れが出る 要素を束ね、未達が続くところだけ改善する 未達要素の連続回数

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 「誤嚥性肺炎っぽい」と感じたとき、まず何を共有しますか?

まずは「昨日との差」を 1 行で共有します。例: RR 、 SpO2、湿声、食事量、覚醒、体位(睡眠時の上体挙上など)です。数値+所見+体位が揃うと、看護・医師・ ST と同じ言語で会話しやすくなります。

Q2. むせがないのに湿声があります。どう扱いますか?

むせの有無だけで判断しないのが安全です。湿声、呼吸変化、 SpO2 のじわ低下などを束ねて「安全に進む / 止める」を決め、必要ならスクリーニングを組み合わせます。陰性でも追う前提で観察期限を決めると見落としが減ります。

Q3. 予防は何から始めればいいですか?

最初は「体位」と「口腔」を固定し、次に「活動」と「呼吸」を微増させるのが実装しやすい順番です。毎日回るチェック表(バンドル)に落とすと、チーム負担を増やさずに継続できます。

Q4. どのタイミングで ST や医師へ相談しますか?

予兆が増えている、スクリーニング所見が陽性 / 疑陽性、 SpO2 低下や努力呼吸が強い、食事量が落ち続けるなど「悪化の流れ」が見えるときは早めに相談します。緊急性が疑われる場合は施設ルールに従って速やかに共有してください。

次の一手

参考文献

  1. Neill S, Dean N. Aspiration pneumonia and pneumonitis: a spectrum of infectious/noninfectious diseases affecting the lung. Curr Opin Infect Dis. 2019;32(2):152-157. doi: 10.1097/QCO.0000000000000524. PubMed
  2. Faverio P, Aliberti S, Bellelli G, et al. The management of community-acquired pneumonia in the elderly. Eur J Intern Med. 2014;25(4):312-319. doi: 10.1016/j.ejim.2013.12.001. PubMed
  3. Metlay JP, Waterer GW, Long AC, et al. Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America. Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(7):e45-e67. doi: 10.1164/rccm.201908-1581ST. PubMed
  4. van der Maarel-Wierink CD, Vanobbergen JNO, Bronkhorst EM, Schols JMGA, de Baat C. Risk factors for aspiration pneumonia in frail older people: a systematic literature review. J Am Med Dir Assoc. 2011;12(5):344-354. doi: 10.1016/j.jamda.2010.12.099. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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