オーラルディアドコキネシスの測定方法|5秒・6回/秒の基準

栄養・嚥下
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オーラルディアドコキネシスの基準値|いずれか6回/秒未満で低下

オーラルディアドコキネシス(ODK)は、「パ」「タ」「カ」をそれぞれ5秒間できるだけ速く反復し、1秒当たりの発音回数から舌・口唇の運動機能を評価する方法です。口腔機能低下症の評価では、3音のうちいずれか1つでも6回/秒未満であれば「舌口唇運動機能低下」に該当します。

ただし、6回/秒未満だからといって、それだけで口腔機能低下症や嚥下障害が確定するわけではありません。この記事では、5秒での測定方法、回/秒の計算、6回/秒未満の判定、2試行を行う場合の考え方、再評価で比較できる記録方法まで整理します。

オーラルディアドコキネシスの音節と判定基準
音節 主に評価する運動機能 測定時間 低下の判定
パ(/pa/) 口唇の運動機能 5秒 6回/秒未満
タ(/ta/) 舌前方の運動機能 5秒 6回/秒未満
カ(/ka/) 舌後方の運動機能 5秒 6回/秒未満

判定のポイント:「パ・タ・カすべてが6回/秒未満」である必要はありません。どれか1つでも6回/秒未満なら、口腔機能低下症の7つの下位症状のうち「舌口唇運動機能低下」に該当します。

オーラルディアドコキネシスの測定と判定の流れ。パ・タ・カを各5秒測定し、発音回数を5で割って回毎秒を算出し、いずれか1つでも6回毎秒未満か判定する
ODKは、パ・タ・カをそれぞれ5秒間測定し、1秒当たりの回数へ換算して6回/秒未満かを判定します。

オーラルディアドコキネシスの測定方法|5秒間の発音回数を数える

現在の口腔機能低下症の評価基準では、「パ」「タ」「カ」をそれぞれ5秒間反復し、5秒間の発音回数から1秒当たりの回数を求めます。義歯を使用している場合は、義歯を装着した状態で測定します。

  1. 測定条件を確認する:姿勢を整え、義歯装着者は義歯を装着します。再評価では可能な範囲で前回と同じ条件をそろえます。
  2. 課題を説明する:「パを、できるだけ速く繰り返してください」など、1音節ずつ課題を提示します。
  3. 5秒間測定する:「パ」を5秒間反復してもらい、合計発音回数を数えます。
  4. 「タ」「カ」も同様に測定する:音節を混ぜず、それぞれ独立して5秒間測定します。
  5. 1秒当たりへ換算する:5秒間の発音回数を5で割り、回/秒を算出します。
  6. 6回/秒未満か確認する:3音のうち1つでも6回/秒未満であれば、舌口唇運動機能低下に該当します。

測定時には「速さ」だけを求めると発音が崩れる場合があります。測定条件や指示方法が前回と大きく変わると経時比較しにくくなるため、再評価を行う場合は条件も記録しておくと判断しやすくなります。

回/秒の計算方法|5秒間の回数を5で割る

ODKの値は「5秒間の発音回数 ÷ 5」で求めます。例えば「パ」を5秒間に30回発音できた場合は6.0回/秒となり、6回/秒未満には該当しません。

5秒間の発音回数から回/秒を求める例
5秒間の発音回数 計算 1秒当たり 6回/秒未満
32回 32 ÷ 5 6.4回/秒 該当しない
30回 30 ÷ 5 6.0回/秒 該当しない
29回 29 ÷ 5 5.8回/秒 該当する
25回 25 ÷ 5 5.0回/秒 該当する

境界は「6回/秒未満」です。そのため、6.0回/秒は低下の基準には該当せず、5.8回/秒など6.0を下回った場合に該当します。

6回/秒未満で何が分かる?|舌口唇運動機能低下を判定する

ODKで6回/秒未満だった場合に判定できるのは「舌口唇運動機能低下への該当」であり、口腔機能低下症そのものや嚥下障害の確定ではありません。ここを分けて理解しておくことが重要です。

ODKで判定できること・単独では判定できないこと
区分 内容
ODKで判定すること パ・タ・カのいずれかが6回/秒未満かを確認し、「舌口唇運動機能低下」への該当を判定する
ODK単独では判定しないこと 口腔機能低下症そのものの診断、嚥下障害の有無・重症度、低値となった原因の確定

口腔機能低下症は、口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下、嚥下機能低下という7つの下位症状を評価し、3項目以上に該当した場合に診断されます。ODKはそのうち1項目を評価する検査です。

また、「カ」が低いから咽頭期嚥下障害がある、というようにODKの値だけから嚥下障害の部位や原因を直接推定することも避けます。むせ、湿性嗄声、食事中の変化など嚥下に関する所見がある場合は、別途嚥下機能を評価します。

2回測定して最大値を使うのは公式ルール?

「2試行して最大値を採用する」ことは、現在の口腔機能低下症におけるODKの公式な必須条件ではありません。日本歯科医学会の令和8年3月資料では、パ・タ・カそれぞれについて5秒間の発音回数を測定し、1秒当たりの回数を求めることが示されていますが、ODKの項目には「2回実施」「最大値を採用」という指定はありません。

一方、臨床や研究では、練習効果や測定誤差を考慮して複数回測定する運用が行われることがあります。再評価目的で2試行以上を行う場合は、何回測ったか、どの値を採用したかを施設内で統一し、そのルールを記録しておくことが重要です。

整理すると

  • 公式の判定条件:各音節を5秒間測定し、1秒当たりの回数を算出する
  • 公式の低下基準:パ・タ・カのいずれかが6回/秒未満
  • 任意の実務運用:複数試行、最大値採用、録音確認などは、採用する場合に条件を明記する

ODKの記録方法|数値と測定条件を一緒に残す

記録では、パ・タ・カそれぞれの「5秒間の発音回数」と「回/秒」を残すのが基本です。再評価で比較する場合は、姿勢、義歯、追加試行の有無などの条件も併記すると、数値の変化が測定条件によるものか判断しやすくなります。

ODKで記録しておきたい項目
区分 記録内容
公式評価に必要な値 パ・タ・カそれぞれの5秒間発音回数、回/秒、6回/秒未満への該当
測定条件 測定日、姿勢、義歯装着の有無など
任意の追加記録 追加試行の値、採用ルール、明瞭性、リズム、息継ぎなど

ODK記録シート|Excel・PDF

ODKの公式評価部分と、再評価時の条件を分けて記録できるシートを作成しました。Excel版は5秒間の発音回数から回/秒と判定を記録しやすい形式、PDF版は印刷して手書きで使用できるA4記録用紙です。

2試行・最大値採用を公式ルールとして固定せず、必要に応じて追加試行や施設内運用を記録できる構成にしています。

※この記録シートは臨床での記録を補助するための独自様式です。口腔機能低下症の公式記録用紙そのものではありません。

ODK測定で迷いやすいポイント

前回と値が大きく違う場合は、機能変化だけでなく測定条件の違いも確認します。特に、測定時間、義歯、課題理解、カウント方法などが異なると、単純比較が難しくなります。

ODK測定で確認したいポイント
迷いやすい場面 確認すること
前回より大きく低下した 5秒測定で統一されているか、義歯や姿勢など前回との条件差がないかを確認する
1回目と2回目で差が大きい 課題理解、練習効果、疲労、カウント誤差を確認し、複数試行を行った事実を記録する
速いが発音が崩れる 回数だけでなく、明瞭性やリズムも補助所見として記録する
数えるのが難しい 使用可能な環境であれば専用機器や録音など、後から確認できる方法を検討する
実施そのものが難しい 課題理解、口腔・顎の疼痛、全身状態などを確認し、無理に数値化しない

6回/秒未満だったら次に何を見るか

基準を下回った場合は、まず「舌口唇運動機能低下」として整理し、ODKだけで原因を決めないことが重要です。口腔機能低下症を評価する目的であれば、口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力、舌圧、咀嚼機能、嚥下機能など、ほかの下位症状も合わせて確認します。

口腔機能評価全体の組み立ては、口腔機能評価の全体像で整理しています。

一方、むせ、湿性嗄声、食事中の呼吸状態の変化、食後の残留感など、嚥下障害を疑う情報がある場合は、ODKの値から嚥下障害を推定するのではなく、嚥下評価の進め方に沿って追加評価を検討します。

オーラルディアドコキネシスのよくある質問

5秒と10秒では、どちらで測ればよいですか?

現在の口腔機能低下症の評価基準に沿って判定する場合は、パ・タ・カをそれぞれ5秒間測定します。研究や施設内で別の測定時間を採用している場合は、そのプロトコルとして区別し、再評価では同じ測定条件を用います。

6回/秒ちょうどは低下に該当しますか?

該当しません。基準は6回/秒未満です。6.0回/秒は基準未満ではなく、5.8回/秒など6.0を下回る場合に舌口唇運動機能低下へ該当します。

パ・タ・カの1つだけが6回/秒未満でも低下ですか?

はい。3音すべてが低値である必要はなく、いずれか1つでも6回/秒未満であれば「舌口唇運動機能低下」に該当します。ただし、それだけで口腔機能低下症そのものが確定するわけではありません。

2回測った場合は高い方を使いますか?

現在の口腔機能低下症のODK項目には、2試行や最大値採用という必須指定はありません。複数回測定する施設運用を採用する場合は、試行回数と採用方法をあらかじめ統一し、再評価でも同じルールを使用してください。

義歯は外して測定しますか?

いいえ。口腔機能低下症の評価では、義歯装着者は義歯を装着した状態で測定します。再評価でも義歯装着条件をそろえておくと比較しやすくなります。

「パタカ」と続けて発音しても同じ評価になりますか?

口腔機能低下症の舌口唇運動機能評価では、「パ」「タ」「カ」をそれぞれ独立して反復し、各音節の回数を測定します。「パタカ」の系列反復は同じ測定条件ではないため、混在させず課題を区別して記録します。

参考文献

  1. 日本歯科医学会. 口腔機能低下症に関する基本的な考え方. 令和8年3月. 日本歯科医学会
  2. 日本老年歯科医学会. 「口腔機能低下症」を診断しましょう. 2026年6月2日更新. 日本老年歯科医学会
  3. Minakuchi S, Tsuga K, Ikebe K, et al. Oral hypofunction in the older population: Position paper of the Japanese Society of Gerodontology in 2016. Gerodontology. 2018;35(4):317-324. doi: 10.1111/ger.12347
  4. Hara S, Miura H, Yamasaki K. Oral diadochokinesis among Japanese aged over 55 years: analysis of standard values. Nippon Ronen Igakkai Zasshi. 2013;50(2):258-263. doi: 10.3143/geriatrics.50.258
  5. Gadesmann M, Miller N. Reliability of speech diadochokinetic test measurement. Int J Lang Commun Disord. 2008;43(1):41-54. doi: 10.1080/13682820701234444

著者情報

rehabilikun プロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、臨床で確認したい実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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