Brief-BESTestのやり方・採点【完全ガイド】

評価
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Brief-BESTest とは?(目的と使いどころ)

Brief-BESTest は、6 つの姿勢制御システム(バイオメカニクス/安定限界・垂直性/予測的姿勢調整/反応的姿勢制御/感覚指向性/動的歩行)から代表タスクを抽出した短縮版 BESTest です。各項目 0〜3 点で採点し、合計 24 点で機能水準を判定します(うち 2 項目は左右別採点)。外来・通所・病棟でのスクリーニングと再評価に使いやすく、日本語の Brief-BESTest 評価用紙で やり方と採点を標準化したいときに有用です。

本記事では Brief-BESTest のやり方・採点・カットオフ値を、10 分前後で実施できるよう現場仕様で整理します。バランス評価全体の位置づけは 評価ハブ もあわせて確認してください。

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構成と採点(やり方の全体像)

Brief-BESTest は 6 セクションの代表タスクで構成し、各タスクを 0=重度障害/1=中等度/2=軽度/3=正常の 4 段階で採点します。再現性のため、補助具・介助の有無、路面条件、フォーム厚、歩行距離などを必ず記録し、日本語版評価用紙のメモ欄も活用すると便利です。

Brief-BESTest の 6 セクションとタスク(0–3 点/計 24 点)
セクション タスク 要点
I. バイオメカニクス 股関節筋力(Hip strength) 股外転筋力の保持(MMT 準拠)。代償(体幹側屈・回旋)なしで目標位を保持。
II. 安定限界/垂直性 前方リーチ(Functional reach) 踵を離さず最大前方到達距離を測定。ふらつき・一歩出の有無も所見化。
III. 予測的姿勢調整 片脚立位(右/左を各採点) 上限 30 秒を目安に保持。反対足接地・支持物使用は減点。左右を別々に採点
IV. 反応的姿勢制御 補償ステップ(側方:右/左を各採点) 外乱に対する即時ステップと体幹制御。二歩以上や把持は減点。左右を別々に採点
V. 感覚指向性 フォーム立位・閉眼 中等度フォーム(約 10 cm)上で閉眼。上限 30 秒、逸脱の有無を確認。
VI. 動的歩行 Get Up and Go(TUG) 椅子⇄3 m 往復+着座を計時。速度・方向転換・安全性を評価。

準備物と安全管理(中止基準)

  • フォーム(厚さ約 10 cm の中密度)、安定椅子、ストップウォッチ、メジャー、歩行路(3〜6 m)、床テープ。
  • 見守り位置はやや後側方。補助具は常用のみ使用可(種類・設定を記録)。
  • 中止基準:胸痛・強い息切れ・失神前駆・血圧異常・著明なふらつき/失調・疼痛増悪。

実施手順(現場で使える逐次プロトコル)

  1. 全体方針:各タスクの合格基準(3 点)を先に提示。デモ+口頭指示で統一。
  2. I:股外転筋力は MMT 準拠。代償(体幹側屈・回旋)の有無を重視。
  3. II:前方リーチは踵接地のまま、最大到達距離をメジャーで測定。
  4. III:片脚立位は左右各 1〜2 試行。最大保持時間を記録(上限 30 秒)。
  5. IV:側方外乱に対する補償ステップを右・左で評価(支え無しの回復を最優先)。
  6. V:フォーム上・閉眼で 30 秒上限。逸脱・把持・ステップの有無を確認。
  7. VI:TUG は椅子背もたれから開始し、立つ→3 m 往復→着座まで計時。方向転換の安定性も所見化。

採点・判定(0〜24 点/カットオフ値と変化量)

  • パーキンソン病: < 11 / 24 で転倒リスクの目安(前向き予測の妥当性報告)。
  • 地域在住高齢者: 転倒リスクの提案カットは12.5 / 24(運用上は ≤12/24 を目安)。
  • MDC95 高齢者で ≈ 4.1 点(測定誤差超の最小変化の目安)。

カットオフ値は集団依存です。施設データ・既往歴・補助具使用と併せて解釈し、2〜4 週で再評価を推奨します。

解釈と次のアクション(所見→介入)

  • ボトルネック特定:最低得点のセクションに直結した訓練へ(例:側方ステップ反応/片脚立位/フォーム立位)。
  • 束での評価:Mini-BESTest・FGA・FSST・6MWT などと併用し、バランス〜持久性を一望化。
  • ゴール設計:MDC を超える変化(≈4 点)や、転倒既往の減少、TUG の短縮など機能横断で判定。

記録テンプレ(コピペ用)

【Brief-BESTest】合計 __/24 点
I 股関節筋力 __/II 前方リーチ __/III 片脚立位(右 __ 秒/左 __ 秒)
IV 補償ステップ(右 __ /左 __ )/V フォーム閉眼 __ 秒/VI TUG __.__ 秒
- 補助具:無・有(種類:____)/介助:無・有
所見:____(例:側方外乱で二歩以上、フォーム閉眼で体幹揺れ大)
介入:____(例:側方ステップ練習、片脚立位・股外転筋強化、頭部運動下歩行)

よくあるミスと対策

  • 左右の二重計上漏れ:片脚立位・補償ステップは右・左を各採点して合計に含める。
  • 路面・用具の不統一:フォーム厚・歩行距離・椅子高を固定。再評価も同一条件で。
  • 安全配慮不足:やや後側方の見守り位置、介助要否の即時判断、ハーネス検討。

Brief vs Mini vs FGA:使い分け

  • Brief-BESTest:所要短・6 システム横断。スクリーニングと再評価に。
  • Mini-BESTest:動的バランスの深掘り(14 項目)。介入設計のボトルネック抽出に。
  • FGA:動的歩行の課題抽出(速度変化・方向転換・頭部運動・狭路・階段)。

現場の詰まりどころ

  • 「時間がかかるから省略」問題:6 セクションを一気にやろうとして途中で中断されると、得点の解釈が難しくなります。「I〜III を先に」「IV〜VI は歩行訓練とセット」のように、リハ単位の流れに組み込んでおくと運用が安定します。
  • フォームや椅子の条件ブレ:日によって椅子の高さ・フォームの硬さが変わると、カットオフ値や MDC を使った判定がぼやけます。病棟・通所ともに「Brief-BESTest 用セット」を決めておくと再現性が高まります。
  • 得点だけを追う運用:合計点の変化だけを見てしまうと、どのシステムが改善したのか分かりません。最低得点セクションに〇印を付ける/次回評価で同じ箇所を見比べるなど、「ボトルネックメモ」をルーチン化するのがおすすめです。
  • 他スケールとの役割かぶり:Mini-BESTest・FGA・FSST をすでに運用している施設では、「Brief-BESTest を増やす意味は?」とスタッフから疑問が出がちです。「短時間スクリーニングと定期フォロー」「他スケールの事前仕分け」という役割を最初に共有しておくと導入がスムーズです。

おわりに

Brief-BESTest は、BESTest のエッセンスを短時間で押さえつつ、「どの姿勢制御システムが詰まっているか」を俯瞰できるツールです。臨床のリズムとしては、安全確認 → Brief-BESTest で全体像把握 → 重点セクションの訓練 → 2〜4 週後の再評価というサイクルを回せると、介入の説得力がぐっと増します。

転倒予防や歩行自立のアウトカムは、単一スケールだけでは説明しきれないことが多くあります。Brief-BESTest と Mini-BESTest・FGA・FSST・6MWT などを組み合わせて、「評価からゴール設計まで一貫したストーリー」を作っておくと、カンファレンスや家族説明でも共有しやすくなります。ご自身の担当症例で、まず 1〜2 例からテンプレ的に導入してみてください。

参考文献

  1. Padgett PK, Jacobs JV, Kasser SL. Is the BESTest at Its Best? A Suggested Brief Version. Phys Ther. 2012;92(9):1197–1207. DOI: 10.2522/ptj.20120302
  2. RehabMeasures|Brief-BESTest 概要・採点要点(更新 2013). sralab.org
  3. Duncan RP, Leddy AL, et al. Comparative utility of BESTest, mini-BESTest, brief-BESTest for predicting falls in PD. Phys Ther. 2013;93(4):542–550.
  4. Marques A, Almeida S, et al. Brief-BESTest in community-dwelling older adults(cut-off 12.5/24). Arch Phys Med Rehabil. 2016;97(7):112–124.
  5. Huang M, Miller K, et al. Psychometric properties of Brief-BESTest in chronic stroke. Physiother Res Int. 2017;22(1):e1645.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Brief-BESTest のカットオフ値はどのように使えばよいですか?

代表的には、パーキンソン病で < 11 / 24、地域在住高齢者で 12.5 / 24(運用上は ≤12/24) などが転倒リスクの目安として報告されています。ただし、カットオフ値は母集団や測定条件に依存するため、「境界値だから即ハイリスク」とは言い切れません。転倒既往・歩行自立度・補助具の有無・他のバランス指標と組み合わせて、リスク層別化の目安として用いるのが安全です。

Brief-BESTest と Mini-BESTest はどう使い分ければよいですか?

Brief-BESTest は 6 セクション・24 点で所要時間が短く、スクリーニングと定期フォローに向いています。一方、Mini-BESTest は 14 項目・28 点で、動的バランスをより細かく見られるため、介入ターゲットの深掘りに適しています。初回評価で Brief-BESTest で全体像を掴み、問題が大きい症例では Mini-BESTest や FGA で詳細評価へ進む、といった二段階運用が現実的です。

Brief-BESTest の日本語評価用紙はどう整備すればよいですか?

原著や既存の英語版フォームを参照しつつ、施設で使用する用語(例:介助レベル・補助具名)に合わせて日本語の評価用紙を作成するのがおすすめです。股関節筋力・前方リーチ・片脚立位・補償ステップ・フォーム立位・TUG のそれぞれで、採点基準(0〜3 点)と条件(椅子高・フォーム厚・距離など)を明記しておくと、新人スタッフでも同じ基準で運用しやすくなります。

Brief-BESTest を行う際の安全面での注意点はありますか?

フォーム立位や補償ステップでは、ふらつきや誤ったステップにより転倒リスクが高まります。必ず やや後側方のポジションで見守り、必要に応じて介助に切り替えられる体勢を確保してください。また、胸痛・息切れ増悪・失神前駆・著明な失調などが出現した場合は中止し、バイタル確認や医師への報告を優先します。

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