Brunnstrom Stage と FMA の違い【比較・使い分け】(この記事の結論)
結論、 Brunnstrom Stage は「回復段階を短時間で共有する分類」、 FMA( Fugl-Meyer Assessment )は「麻痺の変化を数値で追跡する定量評価」です。病棟での情報共有や申し送りは Brunnstrom Stage が速く、介入の効果判定や目標の微調整には FMA が強い──この役割分担で迷いが減ります。
まず押さえる:分類( Stage )と定量( Score )は役割が違う
Brunnstrom Stage は、脳卒中後の運動回復を「段階( Stage )」として捉え、病棟内で同じイメージを共有しやすいのが強みです。一方で Stage は粗く、小さな改善(例:手関節の一部運動が増えた)を拾いにくいという弱点があります。
FMA は、運動麻痺を中心に項目ごとに点数化して経時変化を追えるのが強みです。運動領域は 0–100 点(上肢 66 点、下肢 34 点)として扱われることが多く、リハの介入で「何が伸びたか」を説明しやすくなります。
Brunnstrom Stage と FMA の違い(比較表)
| 比較軸 | Brunnstrom Stage | FMA | おすすめの使い方 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 役割 | 回復の「段階」を分類し、共有しやすい | 麻痺の「変化」を点数で追跡しやすい | 申し送り= Stage /効果判定= FMA | 分類と定量を混ぜて結論を急がない |
| 感度(変化の拾い方) | 大きな変化は捉えやすいが、小さな改善は拾いにくい | 小さな改善を項目単位で拾いやすい | 「伸ばしたい要素」があるほど FMA が有利 | FMA は項目の取り方を毎回揃える |
| 説明のしやすさ | 短い言葉で伝えやすい(チーム共有が速い) | 点数と内訳で根拠を示しやすい(報告に強い) | 家族説明やカンファは FMA の内訳が刺さる | 点数だけでなく「どの項目が変化したか」を言語化 |
| 臨床への直結 | 運動パターン(共同運動など)の把握に使いやすい | 関節ごとの随意性・協調性の変化を追いやすい | 介入の軸を決めるなら FMA の内訳が便利 | Stage =介入メニューの自動決定、にならないように |
| 運用コスト | 短時間で運用しやすい | 時間がかかりやすい(継続が課題) | 毎回フルが難しければ「上肢だけ」など運用を決める | 測れない週を作らず「短い運用」を先に決める |
使い分けの結論:この 3 つで決める(目的・頻度・説明相手)
選び方はシンプルで、①目的 ②再評価の頻度 ③説明する相手の 3 つで決めるとブレません。
- 目的:「段階を共有」なら Brunnstrom Stage /「介入効果を追う」なら FMA
- 頻度:毎週のルーチンで回すなら Stage /隔週〜月 1 でも価値が出るなら FMA
- 説明相手:チーム内の共通言語なら Stage /カンファ・家族・報告書なら FMA(内訳が根拠になる)
臨床での使い方:同じ患者でも「目的」で出力を変える
同じ患者でも、場面で「出すべき情報」が変わります。ここを切り分けると、評価がそのまま書類と介入に落ちます。
病棟の申し送り(スピード優先):Stage でそろえる
- 書き方の型:「 Brunnstrom Stage:上肢 ○/手指 ○/下肢 ○。共同運動優位、分離は限定的。」
- 一言で添えると強い所見:「随意性は出るが選択的制御が弱い」「代償が増えると崩れる」など
介入設計・経過(根拠優先):FMA の内訳で “伸びた場所” を示す
- 書き方の型:「 FMA(運動):上肢 ○/ 66、下肢 ○/ 34。改善は手関節と把持課題で顕著。ターゲットは手指の分離と協調。」
- 介入への接続:点数が伸びた項目=「効いた可能性が高い刺激」、伸びない項目=「戦略の見直し候補」
現場の詰まりどころ:よくある失敗と最短の修正
| 詰まりどころ | NG | OK | 記録の一言 |
|---|---|---|---|
| Stage だけで判断 | 「 Stage が低いからまだ早い」で介入が止まる | Stage は共有用、介入は課題と観察で決める | 「随意性は一部あり、環境設定で成功率が上がる」 |
| FMA を取るが活かせない | 合計点だけ書いて終了 | 伸びた項目・伸びない項目で方針を修正 | 「改善は近位、遠位は停滞。課題設定を再設計」 |
| 運用が続かない | 毎回フルを狙い、忙しくて中断 | 上肢のみ、運動のみ、など “短い運用” を固定 | 「運動項目のみ定期測定、隔週で実施」 |
| 患者説明がズレる | Stage で説明して伝わらない | FMA の内訳で「できることの増え方」を示す | 「手首の動きが増えたので、更衣が楽になる」 |
よくある質問
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Q1. 迷ったら結局どっちを取ればいい?
A. 迷ったら、チーム共有のために Stage を押さえつつ、経過を示したい部位(多くは上肢)だけでも FMA を定期的に取るのがおすすめです。 Stage で「今どの段階か」をそろえ、 FMA で「何が伸びたか」を説明すると、方針がブレにくくなります。
Q2. FMA は時間がかかります。最初から全部やるべき?
A. 最初からフルで回せないなら、運動のみ、上肢のみなど運用を固定した方が、結果としてデータが生きます。大事なのは「同じ運用で繰り返す」ことです。
Q3. Stage が上がらないのに、 ADL は良くなることがあるのはなぜ?
A. ADL は、運動回復だけでなく代償・環境調整・学習で伸びます。 Stage は回復段階の分類なので、 ADL の伸びと 1 対 1 で一致しないことがあります。こういうときは、 ADL の変化は別軸で評価し、麻痺の変化は FMA のような定量で追うと整理しやすいです。
Q4. 患者さんに “今どのくらい良くなったか” を伝えるなら?
A. 患者さんへの説明は、 Stage よりも FMA の内訳が伝わりやすいことが多いです。「手首の項目が伸びた」「把持が安定した」など、生活動作に結びつく言葉に翻訳して返すと納得感が上がります。
おわりに
Brunnstrom Stage と FMA は、どちらか一方が正解ではなく、共有( Stage )→介入→数値で再評価( FMA )→方針修正のリズムで回すと、評価がそのまま臨床判断に直結します。面談準備チェックと職場評価シート( A4 )で「学びやすい職場か」を整理したいときは、マイナビコメディカルのまとめ(ダウンロード)も活用してください。
参考文献
- Brunnstrom S. Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages. Phys Ther. 1966;46(4):357-375. doi:10.1093/ptj/46.4.357 / PubMed
- Fugl-Meyer AR, Jääskö L, Leyman I, Olsson S, Steglind S. The post-stroke hemiplegic patient. 1. a method for evaluation of physical performance. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13-31. PubMed
- Hiragami S, Inoue Y, Harada K. Minimal clinically important difference for the Fugl-Meyer assessment of the upper extremity in patients with stroke. J Phys Ther Sci. 2019;31(11):917-921. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

