- 結論:BRS は「共有の分類」、FMA は「変化を追う定量」です
- まず押さえる:BRS は「段階」、FMA は「点数」で見るものが違う
- BRS と FMA の違い(比較表)
- 使い分けの結論:この 3 つで決める(目的・頻度・説明相手)
- 臨床での使い方:同じ患者でも「出すべき情報」を変える
- 記録の書き方:SOAP/申し送り/報告書(コピペで使える例)
- 併用のおすすめ:BRS で共有し、FMA で“変化”を拾う(最小運用)
- 病期別:BRS と FMA のおすすめ頻度(回る運用の目安)
- 重要:BRS と FMA は「換算」しない(尺度が違う)
- 現場の詰まりどころ(解決の三段)
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手(このあと何をする?)
- 参考文献
- 著者情報
結論:BRS は「共有の分類」、FMA は「変化を追う定量」です
結論、Brunnstrom Stage( BRS )は回復段階を短時間でそろえるための分類、FMA( Fugl-Meyer Assessment )は麻痺の変化を点数で追跡する定量評価です。病棟の申し送り・チーム共有は BRS が速く、介入効果の説明や経時変化の根拠づけは FMA が強い――この役割分担で迷いが減ります。
このページは「どちらが正しいか」ではなく、目的に合わせて使い分け、必要なら併用して“回る運用”に固定するための比較記事です。採点の詳細は各論で確認できます。
まず押さえる:BRS は「段階」、FMA は「点数」で見るものが違う
BRS は、脳卒中後の運動回復を「共同運動 → 分離運動」という回復過程の段階として捉え、チーム内の共通言語にしやすいのが強みです。一方で段階( Stage )は粗いので、小さな改善(例:手関節の一部が増えた)は拾いにくいことがあります。
FMA は、反射・共同運動・分離運動などを領域別に点数化し、経時変化(どこが伸びたか)を説明しやすいのが強みです。時間はかかりますが、運用を工夫すると「回る」評価になります(例:上肢のみ/運動のみなど)。
BRS と FMA の違い(比較表)
迷いを減らすために、臨床で必要な列だけに絞って比較します。スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 観点 | BRS( Brunnstrom Stage ) | FMA( Fugl-Meyer Assessment ) |
|---|---|---|
| 出力 | 段階( Stage I–VI )で分類 | 点数(領域別の合計)で定量 |
| 強い目的 | 病棟共有/申し送り/回復段階の共通理解 | 介入効果の説明/経時変化の根拠/目標の微調整 |
| 拾える変化 | 大きな段階変化に強い | 小さな変化(どの領域が伸びたか)に強い |
| 運用負荷 | 低い(短時間で回しやすい) | 中〜高い(省略ルールで回す) |
| 説明のしやすさ | 専門職内で速い(共通言語) | カンファ・家族・報告書で強い(内訳が根拠) |
| 注意点 | 「 Stage が低い=介入できない」ではない | 合計点だけで終えると臨床判断に繋がらない |
使い分けの結論:この 3 つで決める(目的・頻度・説明相手)
選び方はシンプルで、①目的 ②再評価の頻度 ③説明する相手の 3 つで決めるとブレません。
- 目的:段階を共有したい → BRS / 介入効果を追いたい → FMA
- 頻度:毎週のルーチンで回す → BRS / 隔週〜月 1 でも価値が出る → FMA
- 説明相手:チーム内の共通言語 → BRS / カンファ・家族・報告書 → FMA(内訳が根拠)
臨床での使い方:同じ患者でも「出すべき情報」を変える
同じ患者でも、場面で「出すべき情報」が変わります。ここを切り分けると、評価がそのまま記録と介入に落ちます。
病棟の申し送り(スピード優先):BRS でそろえる
- 書き方の型:「BRS:上肢 ○/手 ○/下肢 ○。共同運動優位、分離は限定的。」
- 添えると強い所見:「随意性は出るが選択的制御が弱い」「代償が増えると崩れる」など
介入設計・経過(根拠優先):FMA の内訳で“伸びた場所”を示す
- 書き方の型:「FMA(運動):上肢 ○/ 66、下肢 ○/ 34。改善は手関節〜把持で顕著。ターゲットは手指の分離と協調。」
- 介入への接続:伸びた領域=効いた可能性が高い刺激/伸びない領域=戦略見直し候補
FMA の具体的な運用・採点の注意点は、各論( FMA のやり方と採点 )で確認してください。
記録の書き方:SOAP/申し送り/報告書(コピペで使える例)
同じ評価でも、場面ごとに「出すべき情報」が違います。BRS は共有を速くし、FMA は変化の根拠になります。
申し送り(スピード優先)
- BRS:上肢 ○/手 ○/下肢 ○。共同運動優位、分離は限定的。
- 補足:代償が増えると選択的制御が崩れやすい。更衣時に上肢の参加は部分的。
SOAP(介入の接続を明確にする)
- S:「手首が少し動く感じが増えた。更衣で引っかかる」
- O:BRS:上肢 ○/手 ○。FMA(上肢・運動):○/ 66。改善は手関節〜把持の一部。疲労で代償増加。
- A:共同運動優位は継続。把持の安定性が上がり、実用参加が増える可能性。停滞点は手指の分離と協調。
- P:次週までに「手指分離+協調」を課題化(短時間反復+生活場面へ転移)。隔週で FMA(上肢)再評価。
報告書(根拠+変化+次の方針)
- 現状:BRS:上肢 ○/手 ○。共同運動優位で分離は一部。
- 変化:FMA(上肢・運動):○→○(期間:○週)。改善は手関節〜把持で目立つ。
- 解釈:上肢参加の増加が見込める一方、手指の分離と協調が制限となっている。
- 方針:手指分離の課題練習と ADL への転移を優先。月 1 で FMA を再評価して停滞点を更新する。
併用のおすすめ:BRS で共有し、FMA で“変化”を拾う(最小運用)
迷ったら、共有( BRS )→ 介入 → 再評価( FMA )→ 方針修正のリズムにすると崩れにくいです。現場で回すなら、最初からフルを狙わず「省略ルール」を固定します。
| タイミング | BRS | FMA | 記録の要点 |
|---|---|---|---|
| 初回(ベース) | 上肢/手/下肢を判定 | まずは運動領域(必要なら上肢のみ) | 「条件(姿勢・装具・介助)」を固定して残す |
| 週次 | ルーチンで共有 | 隔週〜月 1(上肢のみでも可) | FMA は「伸びた領域 1 つ」を必ず書く |
| 方針変更前 | 段階の変化を確認 | 内訳で“停滞点”を特定 | 停滞点に対して介入仮説を 1 行で置く |
病期別:BRS と FMA のおすすめ頻度(回る運用の目安)
「理想」よりも「継続できる頻度」を優先します。スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 病期 | BRS(共有) | FMA(変化) | 運用のコツ |
|---|---|---|---|
| 急性期 | 入院直後〜 1 週は高頻度(例:2〜3 回/週) | 初回ベースライン+必要時(例:週 1 まで) | まずは「共有の軸」を揃える。FMA は上肢のみ/運動のみでも可。 |
| 回復期 | 週 1(ルーチン化) | 隔週〜月 1 | FMA は「伸びた領域 1 つ」を必ず記録し、介入仮説に接続する。 |
| 生活期 | 月 1〜(変化が出た時の確認) | 月 1〜 2 か月に 1 回 | 変化が小さくなるので、FMA で「停滞点」を拾って方針修正の根拠にする。 |
重要:BRS と FMA は「換算」しない(尺度が違う)
BRS は段階の分類、FMA は点数の定量で、尺度がそもそも違います。そのため「BRS が ○ なら FMA は ○」のような相互変換(換算)はしません。変換の発想よりも、BRS=共有の軸/FMA=変化の軸として併用する方が臨床判断が安定します。
現場の詰まりどころ(解決の三段)
現場の詰まりどころ(解決の三段)
よくある失敗へ(ページ内)
回避の手順(チェック)へ(ページ内)
関連:上肢機能評価ハブ(使い分け・比較表)
よくある失敗(起きやすい順)
- Stage だけで判断:「 Stage が低いからまだ早い」で介入が止まる( BRS は共有用、介入は課題と観察で決める)
- FMA を取るが活かせない:合計点だけ書いて終了(“伸びた領域/伸びない領域”で方針を修正する)
- 運用が続かない:毎回フルを狙って忙しくて中断(上肢のみ/運動のみ等の省略ルールを固定)
- 患者説明がズレる:BRS で説明して伝わらない( FMA の内訳を生活動作の言葉に翻訳して返す)
回避の手順(チェック)|この 5 つだけ固定すると回ります
- 目的:共有( BRS )か、変化( FMA )かを先に決める
- 条件:姿勢・装具・介助・環境を固定して書く
- 頻度:BRS は週次、FMA は隔週〜月 1 など“回る頻度”に落とす
- FMA の書き方:合計点だけで終えず「伸びた領域 1 つ」を必ず残す
- 次の一手:停滞領域に対して介入仮説を 1 行で置く(次回の観察が揃う)
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 迷ったら結局どっちを取ればいい?
A. 迷ったら、BRS で段階をそろえつつ、上肢だけでも FMA を定期的に取るのがおすすめです。BRS で「今どの段階か」を共有し、FMA で「何が伸びたか」を説明すると方針がブレにくくなります。
Q2. FMA は時間がかかります。最初から全部やるべき?
A. フルで回せないなら、運動のみ/上肢のみなど省略ルールを固定した方が、結果としてデータが生きます。大事なのは「同じ運用で繰り返す」ことです。
Q3. BRS が上がらないのに ADL は良くなることがあるのはなぜ?
A. ADL は、運動回復だけでなく代償・環境調整・学習でも伸びます。BRS は回復段階の分類なので、ADL の伸びと 1 対 1 で一致しないことがあります。こういうときは、ADL の変化は別軸で評価し、麻痺の変化は FMA のような定量で追うと整理しやすいです。
Q4. 患者さんに「どのくらい良くなったか」を伝えるなら?
A. 説明は BRS よりも、FMA の内訳が伝わりやすいことが多いです。「手首の動きが増えた」「把持が安定した」など、生活動作に結びつく言葉に翻訳して返すと納得感が上がります。
Q5. BRS と FMA を「換算」して評価していい?
A. いいえ。BRS は段階(分類)、FMA は点数(定量)で尺度が違うため、相互変換はしません。BRS は共有の軸、FMA は変化の軸として併用すると判断が安定します。
Q6. FMA を短縮したいとき、どこまで省略していい?
A. 現場で回すなら、まず「上肢のみ」や「運動のみ」に固定して継続するのがおすすめです。重要なのは、同じルールで繰り返して経時変化を比較できる状態にすることです。
次の一手(このあと何をする?)
- 運用を整える:評価ハブ(全体像と最短導線)
- 共有の型を作る:上肢機能評価ハブ(使い分け・比較表)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Brunnstrom S. Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages. Phys Ther. 1966;46(4):357-375. doi: 10.1093/ptj/46.4.357 / PubMed
- Fugl-Meyer AR, Jääskö L, Leyman I, Olsson S, Steglind S. The post-stroke hemiplegic patient. 1. a method for evaluation of physical performance. Scand J Rehabil Med. 1975;7(1):13-31. PubMed
- Hiragami S, Inoue Y, Harada K. Minimal clinically important difference for the Fugl-Meyer assessment of the upper extremity in convalescent stroke patients with moderate to severe hemiparesis. J Phys Ther Sci. 2019;31(11):917-921. doi: 10.1589/jpts.31.917 / PubMed
- University of Gothenburg. Fugl-Meyer Assessment( protocols and instruction videos ). Official page
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


