心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準とは
心大血管疾患リハビリテーション料は、 H000 に位置づけられる疾患別リハビリテーション料です。急性心筋梗塞、狭心症、開心術後、大血管疾患、慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患など、循環器疾患に対するリハビリテーションを算定するための項目です。
この記事では、心大血管疾患リハビリテーション料 Ⅰ ・ Ⅱ の違いを、人員配置、緊急時対応体制、必要機器、届出様式の視点から整理します。 5 区分全体の位置づけから確認したい場合は、先に 疾患別リハビリテーション料とは? 5 区分・日数・単位 を読むと、 H000 の位置づけがつかみやすくなります。
心大血管疾患リハビリテーション料 Ⅰ ・ Ⅱ の違い
心大血管疾患リハビリテーション料は、 Ⅰ ・ Ⅱ で点数だけでなく、求められる体制が異なります。実務では「何点か」よりも、どの患者を対象に、どの人員で、どの緊急時体制と機器をそろえて実施するかを先に確認した方が迷いにくくなります。
特に心大血管リハは、他の疾患別リハと比べて、緊急時対応体制や運動負荷試験装置などの確認が重要です。 Ⅰ はより手厚い体制を前提とした区分、 Ⅱ は一部の対象患者や実施体制に応じて整理される区分として読み分けると理解しやすくなります。
まずは、Ⅰ ・ Ⅱ の区分、緊急時体制、機器・記録の 3 点をセットで見ると全体像をつかみやすくなります。届出実務では、点数だけで判断せず、区分に応じた安全管理体制まで確認することが重要です。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 区分 | 点数 | 対象患者の見方 | 人員・体制 | 届出で見るもの |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | 205 点 | 急性期・術後を含む心大血管疾患リハの中心区分として確認します。 | 循環器内科又は心臓血管外科の医師、心大血管リハ経験を有する医師、看護師・理学療法士などの配置、緊急時対応体制を確認します。 | 様式 41、様式 44 の 2、専用機能訓練室の平面図、機器一覧、緊急時体制の確認が中心です。 |
| Ⅱ | 125 点 | 一部疾患では、発症後又は手術後 1 月以上経過した患者が対象となる点に注意します。 | Ⅰ より簡略化された体制ですが、医師配置、経験を有する専従従事者、緊急時体制、必要機器の確認は必要です。 | 様式 41、様式 44 の 2、平面図、機器・記録管理の確認が必要です。 |
この表は、届出前の概要確認として使うものです。実際の届出では、施設基準通知、管轄厚生局の届出一覧、様式 41、様式 44 の 2、平面図をあわせて確認してください。特に心大血管リハでは、区分、対象患者、人員、緊急時体制、機器、記録をセットで見ることが重要です。
人員配置で確認したい医師・看護師・療法士の要件
心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準では、医師、看護師、理学療法士などの配置が重要です。様式 41 では、循環器内科又は心臓血管外科を担当する医師、心大血管疾患リハビリテーションの経験を有する医師、経験を有する専従従事者などを確認する構造になっています。
また、専任の非常勤医師、専従の非常勤看護師、専従の非常勤理学療法士を組み合わせる場合には、勤務日数や所定労働時間をもとに常勤換算して記載する場面があります。人数だけでなく、勤務時間帯、専従・専任、経験、常勤換算まで説明できるようにしておくことが大切です。
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| 確認項目 | 届出で見るもの | 院内で残したいもの |
|---|---|---|
| 医師 | 循環器内科又は心臓血管外科を担当する医師、心大血管リハ経験を有する医師 | 勤務表、担当医一覧、標榜診療科、経験・研修歴 |
| 看護師 | 心大血管リハに従事する看護師の配置、専従・非常勤・常勤換算 | 勤務表、配置表、担当時間、常勤換算メモ |
| 理学療法士 | 心大血管リハ経験を有する理学療法士の配置、専従・非常勤・常勤換算 | 勤務表、経験証明、担当患者一覧、研修修了一覧 |
| 作業療法士 | 必要に応じて、日常生活活動に関する訓練等の経験を有する職種として確認 | 担当内容、勤務表、記録様式 |
| 勤務態様 | 様式 44 の 2 で常勤・非常勤、専従・非専従、専任・非専任を確認 | 届出様式と実際の勤務表を突合できる管理表 |
リハ部門では、届出書類そのものを医事課が作成することも多いです。しかし、勤務表や実際の配置はリハ部門が把握しているため、様式 41 ・ 様式 44 の 2 と院内の勤務実態がずれないように確認することが重要です。
緊急時対応体制と必要機器
心大血管疾患リハビリテーション料で特に重要なのが、緊急時対応体制と必要機器です。様式 41 では、救命救急入院料や特定集中治療室管理料の届出状況、緊急手術・血管造影検査が行える体制、連携保険医療機関名、酸素供給装置、心電図モニター装置、救急カート、除細動器、トレッドミル又はエルゴメータ、血圧計、運動負荷試験装置などを確認する構造になっています。
緊急時対応体制を連携保険医療機関で確保している場合は、連携先の名称を記載します。また、緊急手術・血管造影検査が行える体制とは、心大血管リハ実施時に使用可能な手術室・血管造影室があり、緊急時に対応可能な職員が配置されている体制を指します。機器は「ある」だけでなく、どこにあり、誰が使い、点検状況をどう残すかまで整理しておくと実務が安定します。
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| 確認項目 | 見るポイント | 院内で残したいもの |
|---|---|---|
| 緊急手術体制 | 緊急時に手術室を使用できる体制があるか | 院内体制表、連絡フロー、対応可能時間 |
| 血管造影検査 | 緊急時に血管造影室を使用できる体制があるか | 対応部署、担当職員、連絡方法 |
| 連携医療機関 | 院外で緊急時体制を確保する場合の連携先 | 連携保険医療機関名、確認記録、連携フロー |
| 救急対応機器 | 酸素供給装置、心電図モニター装置、救急カート、除細動器など | 機器一覧、設置場所、点検記録 |
| 運動負荷試験装置 | 保険医療機関内に備えているか | 設置場所、使用ルール、保守点検記録 |
心大血管リハでは、リスク管理が施設基準の理解に直結します。特に、緊急時体制と機器の確認は、届出のためだけでなく、運動療法の安全管理そのものにも関係します。
届出で確認したい様式 41 ・ 様式 44 の 2 ・ 平面図
心大血管疾患リハビリテーション料の届出では、様式 41、様式 44 の 2、専用の機能訓練室の平面図などを確認します。地方厚生局の届出一覧では、心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)(Ⅱ)に、別添 2、様式 41、様式 44 の 2 が紐づいています。
また、届出は提出して終わりではありません。保険医療機関側で写しを保管し、職員の異動、勤務時間の変更、機器の更新、連携医療機関の変更があったときに、届出時の内容と現場運用がずれていないかを確認できる状態にしておく必要があります。
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| 確認項目 | 届出で見るもの | 院内で残したいもの |
|---|---|---|
| 届出区分 | 別添 2、様式 41 | 届出控え、受理状況、算定区分一覧 |
| 従事者 | 様式 44 の 2 | 勤務表、職種別一覧、経験・研修歴 |
| 専用施設 | 専用機能訓練室の平面図 | 面積、室名、使用時間帯、他リハとの併用状況 |
| 機器 | 様式 41 の器械・器具欄 | 機器台帳、設置場所、点検記録 |
| 緊急時体制 | 様式 41 の緊急時体制欄 | 院内フロー、連携医療機関名、連絡手順 |
| 記録管理 | 医師指示、運動処方、実施時間、訓練内容 | 一元管理台帳、カンファレンス記録、記録様式 |
様式 41 では、医師の指示、運動処方、実施時間、訓練内容、担当者などのリハ記録を患者ごとに一元管理し、常時閲覧できることも確認点になります。心リハでは、評価・運動処方・実施記録・リスク管理を別々に置くと後から説明しにくくなるため、院内の記録導線を先に整えておくことが大切です。
対象患者で迷いやすい場面
心大血管疾患リハビリテーション料では、対象患者の整理も重要です。急性心筋梗塞、狭心症、開心術後、 TAVI 後、大血管疾患などは、急性発症・術後の流れで比較的整理しやすい一方、慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患、肺高血圧症では、呼吸循環機能低下や日常生活能力低下の程度を確認する必要があります。
慢性心不全では、左室駆出率、最高酸素摂取量、 BNP、 NT-proBNP などの指標が関係します。ただし、施設基準記事では数値を暗記するより、対象患者として説明できる評価・記録がそろっているかを確認する方が実務的です。心不全患者のリハ評価を臨床に落とす場合は、心不全リハ評価ミニマムセット もあわせて確認してください。
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| 対象の例 | 確認したいこと | 記録で残したいこと |
|---|---|---|
| 急性心筋梗塞・狭心症 | 発症時期、治療経過、運動療法の適応 | 発症日、治療内容、リスク評価、医師指示 |
| 開心術後・ TAVI 後 | 術後経過、循環動態、離床状況 | 手術日、合併症、離床進行、運動処方 |
| 慢性心不全 | 呼吸循環機能低下、 ADL 低下、再入院リスク | LVEF、 BNP、 NT-proBNP、運動耐容能、 ADL |
| 末梢動脈閉塞性疾患 | 歩行能力、虚血症状、運動療法の適応 | 歩行距離、症状、 ABI 等の検査、医師指示 |
| 肺高血圧症 | 呼吸循環機能、運動耐容能、増悪リスク | 症状、運動負荷、酸素化、リスク管理記録 |
対象患者の整理は、算定だけでなく安全管理にも関わります。心大血管リハでは、疾患名だけでなく、運動療法を行う医学的理由、リスク評価、医師指示、実施内容がつながっていることが重要です。
現場の詰まりどころ
心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準は、通知や様式を読めば理解できるように見えて、実際には人員、緊急時体制、機器、記録、カンファレンスがつながっていないと詰まりやすくなります。
よくある失敗は、Ⅰ ・ Ⅱ を点数だけで判断してしまうことです。心大血管リハでは、点数差よりも、その区分を支える安全管理体制を院内で説明できるかが重要です。
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| 場面 | NG | OK |
|---|---|---|
| 区分選択 | 点数だけで Ⅰ ・ Ⅱ を見る | 対象患者、緊急時体制、人員、機器までセットで見る |
| 緊急時体制 | 院内に何となく対応できる体制があると考える | 院内又は連携医療機関の体制を明文化する |
| 機器管理 | 機器があるかだけ確認する | 設置場所、点検状況、使用ルールまで台帳化する |
| 記録管理 | 医師指示、運動処方、実施記録が分散する | 患者ごとに一元管理し、常時閲覧できる形にする |
| カンファレンス | 開催実績だけで済ませる | 関係職種の参加、検討内容、方針変更を記録に残す |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
心大血管疾患リハビリテーション料 Ⅰ ・ Ⅱ は何が違いますか?
点数だけでなく、対象患者、人員配置、緊急時対応体制、必要機器、届出書類の確認が異なります。 Ⅰ はより手厚い体制を前提とした区分、 Ⅱ は対象患者や実施体制に応じて整理される区分として、届出前に様式 41 と様式 44 の 2 を確認します。
緊急時対応体制は院内で必ず確保する必要がありますか?
緊急時に備える体制を連携保険医療機関で確保している場合は、連携保険医療機関名を記載します。院内だけで考えるのではなく、緊急手術・血管造影検査が可能な体制をどこで確保しているかを説明できるようにしておくことが重要です。
運動負荷試験装置はリハ室に置く必要がありますか?
様式 41 の記載上の注意では、運動負荷試験装置は当該保険医療機関内に備えていればよいとされています。リハ室内かどうかだけでなく、設置場所、使用ルール、点検記録を確認できる状態にしておくと実務上わかりやすくなります。
遠隔心リハや心不全再入院予防継続管理料とは何が違いますか?
心大血管疾患リハビリテーション料は、 H000 本体の疾患別リハ料です。遠隔心リハは遠隔実施・保険収載の論点、心不全再入院予防継続管理料は継続管理の制度です。まず H000 の施設基準を押さえたうえで、関連制度を確認すると混線しにくくなります。
次の一手
疾患別リハ全体の中で H000 の位置づけを確認したい場合は、疾患別リハビリテーション料とは? 5 区分・日数・単位 を先に読むと、心大血管・脳血管・廃用・運動器・呼吸器の違いを整理しやすくなります。
心不全患者の評価・運動耐容能・ ADL を臨床に落とす場合は、心不全リハ評価ミニマムセット が続きます。遠隔実施の制度論点を確認したい場合は、遠隔心リハは保険収載される? もあわせて確認してください。
心不全の継続管理まで制度として整理したい場合は、心不全再入院予防継続管理料とは? が関連します。施設基準全体の抜け漏れを横断で見直したい場合は、施設基準ハブ| PT が関わる要件・記録・委員会を最短で整理 からたどると回遊しやすくなります。
運用を整えても回しにくさが残る場合は、教育体制や記録文化も点検候補です。環境の詰まりを見直す無料チェックシート もあわせて使えます。
参考文献
- 厚生労働省.令和 8 年度診療報酬改定について.
- 関東信越厚生局.特掲診療料の届出一覧(令和 8 年度診療報酬改定).
- 九州厚生局.様式 41 心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)(Ⅱ)の施設基準に係る届出書添付書類.
- PT-OT-ST.NET.H000 心大血管疾患リハビリテーション料|令和 8 年診療報酬改定情報.
- PT-OT-ST.NET.心大血管疾患リハビリテーション(Ⅰ)(Ⅱ)の施設基準に係る届出書添付書類.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


