人員基準欠如減算の特例はいつ使える?結論は「1割以内・突発的・採用活動あり」
人員基準欠如減算の特例は、突発的で想定が困難な事情により一時的な人員欠如が生じた場合に、条件を満たせば減算の適用が最大3か月猶予される取扱いです。この記事では、介護事業所・施設の管理者、事務担当者、リハ職向けに、対象になる欠員、対象外になる欠員、記録に残すべき内容を実務目線で整理します。
この記事で答えること・答えないこと
この記事では、人員基準欠如減算の特例を「現場で使えるか判断する」ことに絞って解説します。
- 答えること:特例の対象、対象外、3か月猶予の考え方、記録・報告で残す内容
- 答えないこと:介護報酬改定全体の解説、各サービスごとの全加算一覧、転職・採用サイト比較
制度全体の流れを先に確認したい場合は、介護の給料は2026年6月に上がる?条件と確認点もあわせて確認してください。
まず押さえる結論
人員基準欠如減算の特例は、欠員が出れば自動で使えるものではありません。実務では、次の4点を最初に確認します。
- 突発的で想定が困難な事情による欠員か
- 人員欠如が基準から1割以内か
- 公共職業安定所、ナースセンター、福祉人材センター等を活用して採用活動をしているか
- 残った職員に過度な負担が生じないよう労働時間管理・体制整備をしているか
臨床現場では「人が足りない」という感覚だけで動くと、後から説明しにくくなります。欠員が出た日、職種、必要員数との差、採用活動の開始日を月単位で残すことが重要です。
対象になりやすいサービス
この特例は、主に通所・多機能・入所・居住系サービスを対象に整理されています。
対象サービスの例として、通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院などが示されています。
ただし、実際の扱いはサービス種別や指定権者の運用で確認が必要です。自施設が対象かどうかは、最新の通知・Q&Aと自治体資料で確認してください。
基本ルールと特例の違い
特例を判断するときは、まず「介護・看護職員の欠如」と「ケアマネジャーの欠如」を分けて考えます。
特に重要なのは、介護・看護職員が基準から1割を超えて減少している場合は、特例の対象外とされている点です。

スマホでは表を横スクロールできます。
| 場面 | 通常の考え方 | 特例の考え方 |
|---|---|---|
| 介護・看護職員が1割超で欠如 | 減算対象になり得る | 特例の対象外 |
| 介護・看護職員が1割以内で欠如 | 翌々月から減算となる場合がある | 条件を満たせば最大3か月猶予 |
| ケアマネジャー欠如 | 翌々月から減算となる場合がある | 条件を満たせば最大3か月猶予 |
特例の条件は4つで整理する
特例の条件は、欠員理由、欠如幅、採用活動、労務管理の4つで整理すると実務に落とし込みやすくなります。
| 確認項目 | 実務で見ること | 残したい記録 |
|---|---|---|
| 欠員理由 | 突発的で想定困難な事情か | 退職日、不在開始日、体調不良等の概要 |
| 欠如幅 | 基準から1割以内の不足か | 必要員数、配置数、不足人数、計算日 |
| 採用活動 | 公共職業安定所等を活用しているか | 求人申込日、求人票、面接状況、採用結果 |
| 労務管理 | 残った職員に過度な負担がないか | シフト調整、残業管理、応援体制、業務分担 |
やむを得ない事情に当たりやすい例
やむを得ない事情は、単なる慢性的な人手不足ではなく、突発的で事業所が予見しにくい事情として説明できることが重要です。
例としては、職員や家族の突発的な体調不良等により1か月を超える不在が見込まれる場合、自己都合による急な離職等が複数重なった場合などが考えられます。
一方で、「以前から人が足りなかった」「採用活動をしていなかった」「勤務負担が増えているのに記録がない」という状態では、説明が難しくなります。
最大3か月猶予の見方
最大3か月猶予は、欠員発生月から翌々月までを一つの単位として管理すると分かりやすくなります。
| 時期 | 確認すること | 記録すること |
|---|---|---|
| 欠員発生月 | 職種、日付、欠員理由、欠如幅を確認する | 欠員発生日、必要員数との差、初動対応 |
| 翌月 | 採用活動と勤務体制の調整状況を確認する | 求人票、面接状況、シフト調整、残業管理 |
| 翌々月 | 補充状況と特例継続の可否を確認する | 採用結果、補充日、配置改善後の状況 |
「3か月あるから後で対応する」ではなく、欠員発生月から採用活動と記録を始めることが大切です。
報告・届出前に確認したいこと
特例を使う場合は、指定権者への報告や所定様式の確認が必要になるため、自治体資料を必ず確認します。
実務では、次の内容を先にそろえておくと確認が進めやすくなります。
- 事業所名・サービス種別
- 欠員となった職種
- 人員欠如の発生月
- やむを得ない事情の概要
- 職員確保に向けた取組
- 求人票など採用活動を示す資料
- 過去の特例届出状況
地域密着型サービスでは市町村、居宅・施設系サービスでは都道府県など、報告先が異なる場合があります。自施設の指定権者を確認してから動くのが安全です。
記録に残すべき実務メモ
この特例で最も重要なのは、後から説明できる記録を残すことです。
記録は長文である必要はありません。欠員理由、必要員数との差、採用活動、勤務負担への対応を、月ごとに追える形にしておきます。
| 項目 | 記録例 | 目的 |
|---|---|---|
| 欠員理由 | ○月○日、職員Aが急な退職。代替職員の確保が必要。 | 突発性を説明する |
| 欠如幅 | 必要員数○名に対し配置○名。不足は1割以内。 | 対象可否を確認する |
| 採用活動 | ○月○日、ハローワークへ求人申込み。求人票を保管。 | 職員確保の努力を示す |
| 労務管理 | 残業時間を週次確認。応援体制を調整。 | 過度な負担を避ける |
現場で起こりやすい失敗
現場で多い失敗は、制度を知らないことよりも、初動の記録が残っていないことです。
| 場面 | NG | 改善策 |
|---|---|---|
| 欠員確認 | 「人が足りない」で止まる | 必要員数との差を数値で確認する |
| 採用活動 | 口頭相談だけで記録がない | 求人申込日、求人票、面接状況を残す |
| 勤務調整 | 残った職員に負担を上乗せする | 残業、応援、業務分担を記録する |
| 報告 | 月末にまとめて思い出す | 欠員発生月から様式・報告先を確認する |
欠員発生時の5分フロー
欠員が出たら、まずは次の5ステップで確認すると動きが止まりにくくなります。
- 欠員が出た職種、日付、理由を確認する
- 必要員数との差を計算し、1割以内か1割超かを分ける
- 公共職業安定所、ナースセンター、福祉人材センター等への求人申込みを確認する
- 残った職員の勤務負担、残業、応援体制を確認する
- 指定権者への報告様式、期限、添付資料を確認する
療養病棟や介護施設では、欠員の影響がケアの質や記録業務に直結します。制度対応だけでなく、現場の安全と勤務負担を同時に確認する視点が必要です。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
人員基準欠如減算の特例は、欠員が出れば自動で使えますか?
いいえ。突発的で想定が困難な事情による欠員であること、基準から1割以内の欠如であること、採用活動や労務管理の取組を行っていることが必要です。
介護・看護職員が1割を超えて足りない場合も対象ですか?
対象外です。介護・看護職員が基準から1割を超えて減少している場合は、特例の対象外として整理されています。
慢性的な人手不足でも特例の対象になりますか?
原則として、慢性的な採用難だけでは説明が難しいです。突発的で想定が困難な事情により、一時的に人員不足が生じたことを説明できる必要があります。
採用活動は何をしていればよいですか?
公共職業安定所、都道府県ナースセンター、福祉人材センター等を活用した求人申込みが重要です。民間紹介業者を使う場合も、適正な事業者の利用状況を確認しておくと説明しやすくなります。
報告先はどこですか?
サービス種別によって異なります。地域密着型サービスでは市町村、居宅・施設系サービスでは都道府県などが想定されるため、自施設の指定権者と自治体資料を確認してください。
次の一手
人員基準欠如減算の特例は、制度名を知るだけでは不十分です。欠員発生時に、必要員数との差、採用活動、労務管理、報告様式をすぐ確認できるようにしておきましょう。
参考文献
- 厚生労働省. やむを得ない事情における人員欠如に係る特例的な取扱い(報告). 第255回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3. 2026.
- 厚生労働省. 介護保険最新情報 Vol.1502. 令和8年5月8日.
- 厚生労働省. 社会保障審議会(介護給付費分科会).
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下


