遠隔心リハは「技術は進んだが、算定ルールは慎重に確認する段階」です
遠隔心リハは、支援機器や有効性データの面では前進しています。一方で、心大血管疾患リハビリテーション料として在宅・遠隔でどこまで実施できるかは、制度上の確認が必要です。本記事では、PT・OT・ST向けに、遠隔心リハの現在地、現行制度とぶつかる点、現場で今から準備したい項目を整理します。

遠隔心リハの現在地は「薬事承認あり、保険算定は別確認」です
遠隔心リハを理解するうえで大切なのは、「機器が承認されたこと」と「診療報酬で算定できること」を分けて考えることです。
遠隔心臓リハビリを支援する医療機器プログラムは薬事承認され、在宅での運動実施をオンラインで支援する仕組みは具体化しています。ただし、現場で実施する場合は、心大血管疾患リハビリテーション料の施設基準、安全管理、監視体制、記録責任との整合を確認する必要があります。
臨床では「遠隔でできそうか」よりも、「誰を対象にするか」「異常時にどう対応するか」「診療録に何を残すか」が先に問われます。
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| 項目 | 現時点の整理 | 現場での見方 |
|---|---|---|
| 支援機器 | 薬事承認された機器がある | 技術面では具体化しているが、運用条件の確認が必要です。 |
| 有効性データ | 通院心リハとの比較データが示されている | 対象患者や実施条件を確認して解釈する必要があります。 |
| 保険算定 | 薬事承認とは別に確認が必要 | 心大血管疾患リハビリテーション料として一般化してよいかは慎重に扱います。 |
| 院内準備 | 今から進められる | 対象選定、緊急時対応、記録様式、患者教育は先に整備できます。 |
なぜ遠隔心リハは慎重に整理する必要があるのか
遠隔心リハが慎重に扱われる理由は、心大血管疾患リハビリテーションが安全管理を強く求められる領域だからです。
心リハでは、運動中の胸痛、息切れ、不整脈、血圧変動、疲労感などを確認しながら実施します。そのため、遠隔で運動を支援できるとしても、急変時に誰が判断し、誰へ連絡し、どの時点で中止するのかを先に決めておく必要があります。
現場感としては、遠隔心リハの導入で最初に詰まるのはICT操作ではありません。多くの場合、対象患者の線引き、異常時対応、記録責任、家族支援の有無が課題になります。
心大血管疾患リハ料と遠隔実施がぶつかりやすいポイント
心大血管疾患リハビリテーション料との関係では、「場所」「監視体制」「安全管理」「記録責任」が論点になります。
遠隔心リハを検討するときは、運動メニューを作る前に、制度上の前提と現場運用を照合することが重要です。特に、在宅患者に対して医療者がどのように監視し、急変時にどのように対応するかは、安易に省略できない部分です。
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| 論点 | 確認したいこと | 現場での注意点 |
|---|---|---|
| 実施場所 | 患者自宅をどう位置づけるか | 専用施設での実施を前提とする要件との整合を確認します。 |
| 監視体制 | 医師・療法士がどの範囲で監視するか | 画面越しの確認だけで十分かは、対象患者とリスクで変わります。 |
| 異常時対応 | 胸痛・息切れ・不整脈感が出た場合の流れ | 救急要請、家族連絡、主治医連絡の順番を決めておきます。 |
| 記録責任 | 遠隔で得たデータを誰が確認し、どこに残すか | 機器ログだけでなく、診療録に残す最小項目を決めます。 |
| 対象患者 | 低リスク患者から始めるか | 不安定狭心症、重度不整脈、自己管理困難例などは慎重に扱います。 |
心不全再入院予防継続管理料とは役割が違います
遠隔心リハと心不全再入院予防継続管理料は、どちらも心不全患者の退院後支援に関係しますが、主目的が異なります。
遠隔心リハは、運動療法の実施、負荷量、症状反応、安全管理が中心です。一方で、心不全再入院予防継続管理料は、再入院予防に向けた継続管理、自己管理支援、多職種連携が中心になります。
制度を読むときは、「運動療法をどう実施するか」と「再入院をどう予防するか」を分けると理解しやすくなります。心不全再入院予防継続管理料の要件は、心不全再入院予防継続管理料の記事で整理しています。
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| 比較項目 | 遠隔心リハ | 心不全再入院予防継続管理料 |
|---|---|---|
| 主目的 | 運動療法の継続と安全管理 | 再入院予防と継続支援 |
| 中心となる情報 | 心拍、血圧、症状、Borg、運動負荷 | 体重、浮腫、服薬、生活状況、受診行動 |
| 主な課題 | 監視体制、急変時対応、記録責任 | 多職種連携、自己管理支援、継続的な確認 |
| PT・OT・STの関わり | 運動耐容能、活動量、症状反応の確認 | 生活指導、再入院リスクの共有、セルフモニタリング支援 |
PT・OT・STが今から準備したい5つの項目
遠隔心リハは、制度化を待つだけではなく、現場の運用準備を先に進めておくことが大切です。
特に療法士は、運動負荷だけでなく、症状の拾い上げ、生活場面への落とし込み、患者教育、記録の標準化に関わります。制度が動いたときに慌てないためにも、次の5項目を整理しておくと導入判断がしやすくなります。
1.対象患者の線引きを決める
最初からすべての心リハ対象者を遠隔候補にしないことが重要です。病状が安定している、自己管理が可能、家族支援がある、通信環境が整っているなど、開始条件を明文化しておきます。
2.運動中止基準を患者に伝える
胸痛、強い息切れ、めまい、冷汗、動悸、普段と違う疲労感が出た場合に、患者自身が運動を止められるようにします。遠隔では、患者のセルフモニタリングが安全管理の一部になります。
3.異常時対応フローを作る
異常時に患者、家族、療法士、医師、救急がどう動くかを決めます。連絡先だけでなく、「どの症状なら運動中止」「どの症状なら救急要請」まで具体化しておくと、現場で迷いにくくなります。
4.記録様式を統一する
遠隔では、データが多くなるほど記録が散らばりやすくなります。運動時間、負荷量、心拍、血圧、症状、Borg、回復までの時間など、診療録に残す最小項目を決めておきます。
5.多職種の役割分担を決める
遠隔心リハは、PTだけで完結しません。医師、看護師、臨床工学技士、地域連携、訪問看護、家族を含めて、誰が説明し、誰が確認し、誰が異常時に判断するかを整理します。
遠隔心リハ導入前の5分チェックフロー
遠隔心リハを検討するときは、次の順番で確認すると、制度面と安全面の抜けを減らせます。
- 対象患者を確認する:病状が安定しているか、自己管理できるか、家族支援があるかを確認します。
- 中止基準を確認する:胸痛、息切れ、動悸、めまい、冷汗などの対応を患者に説明します。
- 監視体制を確認する:誰が画面・データ・症状を確認するかを決めます。
- 異常時対応を確認する:連絡順、救急要請基準、主治医への報告方法を決めます。
- 記録項目を確認する:診療録に残す情報と、機器ログの扱いを統一します。
新人PTでは、運動処方の内容に目が向きやすいですが、遠隔心リハでは「止める判断」と「報告する判断」を先に確認しておくことが大切です。
現場で詰まりやすいポイント
遠隔心リハは、新しい機器やオンライン実施に注目されやすい一方で、実際に詰まりやすいのは日常的な運用です。
対象患者、同意説明、家族支援、異常時対応、記録先、データ確認の担当が曖昧なままでは、制度が整っても現場では回りません。先に小さく運用ルールを作っておくことが、将来の導入準備になります。
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| 詰まりどころ | 起きやすい理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 対象患者が広すぎる | 除外基準が決まっていない | 低リスク患者から開始し、対象外条件を文章化します。 |
| 中止判断が遅れる | 患者が症状を我慢してしまう | 中止すべき症状を事前に説明し、練習します。 |
| 記録が散らばる | 機器ログと診療録が別管理になる | 診療録に残す最小項目を固定します。 |
| 家族支援が不十分 | 同居者の役割が決まっていない | 付き添いが必要なケースを事前に線引きします。 |
| 多職種連携が曖昧 | 誰が判断するか決まっていない | 医師、看護師、療法士の確認範囲を明確にします。 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
遠隔心リハは今すぐ心大血管疾患リハビリテーション料として算定できますか?
薬事承認された支援機器があることと、心大血管疾患リハビリテーション料として算定できることは別です。現時点では、遠隔実施を一般化して算定できると断定せず、施設基準、疑義解釈、地方厚生局への確認を含めて慎重に扱う必要があります。
機器が承認されていれば、保険診療で使えるという意味ですか?
いいえ。薬事承認は医療機器としての承認であり、保険適用や診療報酬上の算定ルールとは別に確認が必要です。
オンライン診療の仕組みで遠隔心リハを代用できますか?
診察や指導の一部をオンラインで行うことと、心大血管疾患リハビリテーション料として運動療法を実施することは分けて考える必要があります。監視体制、安全管理、記録責任の整理が必要です。
PT・OT・STは今の段階で何を準備すればよいですか?
対象患者の線引き、中止基準、異常時対応、記録様式、多職種の役割分担を整えることです。制度が動いたときに対応しやすい施設は、この土台が先に整っています。
通院心リハの完全な代わりとして考えてよいですか?
現時点では、完全な置き換えとして考えるより、対象患者を絞って補完的に考える方が安全です。急変リスク、自己管理能力、家族支援、通信環境を確認する必要があります。
次の一手
遠隔心リハは、今すぐ算定可否だけで判断するより、制度が動いたときに院内で安全に回せるかを先に整えるテーマです。関連する制度や評価もあわせて確認しておくと、退院後支援の設計がしやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省.中央社会保険医療協議会 総会資料 個別事項について.情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーション.厚生労働省資料
- 厚生労働省.特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて.令和8年3月5日.厚生労働省通知
- PMDA.プログラム医療機器の製造販売承認品目一覧.PMDA承認品目一覧
- 株式会社リモハブ.遠隔心臓リハビリを支援する医療機器プログラム「リモハブ CR U」薬事承認取得のご報告.株式会社リモハブ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・制度・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食嚥下、診療報酬制度


