共同偏視とは?向く方向・原因・脳卒中とけいれんの見方を解説

臨床手技・プロトコル
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共同偏視とは?|両眼が同じ方向へ偏った状態

共同偏視とは、左右の眼球がそろって同じ方向へ持続的に偏っている状態です。

典型的には、患者が正面を向いているはずなのに、両眼が右または左を向いたままになっている所見として気づきます。

共同偏視は脳梗塞・脳出血などの脳卒中でみられる重要な神経所見ですが、けいれん発作や脳幹病変などでも出現します。

ここで最も注意したいのは、

「眼が右を向いている=右脳病変」

のように、偏視方向だけから病変側を決めないことです。

大脳半球の破壊性病変、橋の水平注視系病変、けいれん発作では、偏視方向と病変・焦点との関係が異なることがあります。

そのためベッドサイドでは、

  • 両眼がそろって同じ方向へ偏っているか
  • 右・左のどちらを向いているか
  • 反対方向へ随意的に動かせるか
  • 片麻痺や意識変化を伴うか
  • けいれんや頭部偏倚を伴うか
  • 新しく出現した所見か

まで確認します。

急な意識変化と神経所見の見方は、意識レベル評価|JCS・GCS・ECSの使い分けでも整理しています。

共同偏視は病変側を向く?|原因によって方向が変わる

大脳半球の破壊性病変では病変側を向くことが多い一方、橋の水平注視系病変やけいれん発作では方向関係が異なります。

共同偏視の見方。大脳半球病変では病変側、橋病変では反対側、けいれん発作では発作焦点と反対側へ偏ることがある代表的パターンを比較した図
共同偏視は「向いている側=病変側」とは限りません。大脳半球病変・橋病変・けいれん発作で方向の意味が異なるため、麻痺・意識・瞳孔・発作所見まで合わせて判断します。
共同偏視の方向を考える代表的なパターン
背景 典型的な偏視方向 覚え方
大脳半球の破壊性病変 病変側を向くことが多い 病巣を見る
橋の水平注視系病変 病変と反対側へ偏ることがある 病巣側へ向きにくい
けいれん発作中 発作焦点と反対側への強制偏視を示すことがある 刺激性の偏視

たとえば、典型的な右大脳半球の急性破壊性病変では右共同偏視+左片麻痺という組み合わせがみられることがあります。

一方、左橋の水平共同注視系が障害されると左方向への共同注視が難しくなり、両眼が右へ偏って見えることがあります。

さらに、けいれん発作中には刺激性の眼球・頭部偏倚として発作焦点と反対側へ向く場合があります。

つまり、「向いている側=病変側」というルールをすべての共同偏視に当てはめないことが重要です。

原因別に共同偏視の方向を整理する

共同偏視を見つけたら、偏視方向だけではなく、麻痺・意識・脳幹症状・発作所見を組み合わせて原因を考えます。

大脳半球の脳卒中|病変側を向くことが多い

大脳半球の急性脳卒中では、眼球が病変側へ偏る共同偏視がみられることがあります。

水平眼球運動には前頭眼野を含む大脳皮質から脳幹へ向かうネットワークが関与しています。一側の大脳半球が障害されると、反対方向へ眼球を向ける作用が弱まり、眼球が病変側へ偏りやすくなります。

典型的には、

  • 右大脳半球病変:右共同偏視+左片麻痺
  • 左大脳半球病変:左共同偏視+右片麻痺

という組み合わせを認めることがあります。

右大脳半球の広範な脳卒中では左半側空間無視、左大脳半球では失語などを伴うこともあり、眼球だけではなく他の神経所見を同時に確認します。

ただし、大脳半球病変でも共同偏視を認めない症例や、まれに典型とは異なる方向へ偏る症例があります。共同偏視は局在診断の手がかりであり、絶対的な所見ではありません。

橋病変|大脳半球病変とは逆になることがある

橋の水平共同注視系が片側性に障害されると、病変側への共同注視が困難となり、安静眼位が病変と反対側へ偏ることがあります。

橋には、水平眼球運動に重要な傍正中橋網様体(PPRF)や外転神経核があります。

たとえば左側の水平注視系が障害されると、両眼を左へ向けることが難しくなり、右方偏視として観察されることがあります。

そのため典型的な理解としては、

大脳半球病変 → 病変側へ偏ることが多い
橋の水平注視系病変 → 病変と反対側へ偏ることがある

と整理できます。

ただし、橋病変でも病変部位や広がりによって眼位は一定ではありません。重症の橋病変では水平眼球運動そのものが大きく障害されることもあります。

めまい、複視、構音障害、顔面神経症状、失調などを伴う場合は、単純な大脳半球病変のルールだけで判断しません。

けいれん発作|発作中は刺激性の偏視を考える

けいれん発作中には、眼球運動に関係する大脳皮質の刺激によって、両眼や頭部が一方向へ強制的に偏ることがあります。

発作中の強制的な眼球・頭部偏倚では、発作焦点と反対方向を向くことがあります。

そのため、大脳半球の破壊性病変とは方向の意味が逆になる場合があります。

ただし、発作の時相やタイプによって方向関係は一定ではなく、発作後には異なる眼位を示すこともあります。

けいれんを疑う場合は、

  • 頭部も同じ方向へ強く向いているか
  • 顔面・上下肢の強直や間代運動があるか
  • 意識が変化しているか
  • 眼振を伴うか
  • 発作後に麻痺や意識障害が残っていないか

まで確認します。

眼球の向きだけから発作焦点を確定することはできません。

脳出血|出血部位によって眼位は異なる

脳出血でも眼位は病変部位によって異なります。

被殻出血では病変側への共同偏視が典型的な所見の1つです。一方、視床出血では下方偏倚や垂直方向の眼球運動異常など、大脳半球の典型的な水平共同偏視とは異なる眼所見がみられることがあります。

橋出血でも病変の範囲によって水平注視障害、眼位異常、縮瞳など複数の所見が組み合わさります。

そのため、「脳出血なら眼は必ずこの方向」と固定して覚えず、病変部位ごとの特徴と他の神経所見を組み合わせることが重要です。

共同偏視と共同注視麻痺の違い|「向いている」と「動かせない」を分ける

共同偏視と共同注視麻痺は関連しますが、同じ意味ではありません。

共同偏視と共同注視麻痺の違い
所見 何を見るか
共同偏視 安静時に両眼が一方向へ偏っているか
共同注視麻痺 両眼を特定方向へ一緒に動かせないか

たとえば安静時に両眼が右を向いていても、声かけや視標によって正中から左側へ眼球を動かせる場合があります。

一方、左方向への共同眼球運動そのものが困難であれば、左方共同注視麻痺を考えます。

NIHSSの「Best Gaze」でも、部分的な注視麻痺と、強制偏視または完全注視麻痺は区別して評価されます。

したがってベッドサイドでは、

「どちらを向いているか」+「反対方向へ動かせるか」

の2つを確認すると、共同偏視の情報量が増えます。

ただし、急性脳卒中が疑われる患者に対して評価者が専門的な前庭眼反射検査などを独自に追加するのではなく、施設の急変対応・神経学的評価手順に沿って対応します。

共同偏視を見つけたら何を確認する?|ベッドサイド評価の順番

共同偏視を認めたら、「右を向いている」「左を向いている」で終わらせず、新規性 → 方向 → 眼球運動 → 麻痺・意識 → 瞳孔 → 発作所見の順で確認します。

  1. 新規性:以前からある眼位か、新しく出現したか
  2. 方向:右・左、または上下方向の偏りがあるか
  3. 両眼性:左右の眼球がそろって同じ方向を向いているか
  4. 持続性:一時的か、持続しているか
  5. 随意眼球運動:正中や反対方向へ視線を移せるか
  6. 運動・感覚:顔面・上下肢に新しい左右差がないか
  7. 意識・高次脳機能:意識変化、失語、無視などがないか
  8. 瞳孔:瞳孔径・左右差・対光反射を確認する
  9. 発作所見:けいれん、頭部偏倚、眼振などを伴うか
  10. 全身状態:血圧、脈拍、SpO2などに変化がないか

とくに重要なのが、「共同偏視+新しい片麻痺」「共同偏視+意識変化」「共同偏視+けいれん」など、複数の所見の組み合わせです。

瞳孔径に左右差を認める場合は、瞳孔不同とは?|原因・何mmから?明所/暗所での見分け方で詳しく整理しています。

急性発症が疑われる場合は、病変部位を詳しく推測し続けるより、安全確保と速やかな共有を優先します。

新しい共同偏視で注意したい危険なサイン

新規に出現した共同偏視は急性中枢神経病変の手がかりとなるため、他の神経症状を伴う場合は迅速な医学的評価が必要です。

とくに注意したいのは、

  • 突然出現した共同偏視
  • 新しい片麻痺・感覚障害
  • 急な意識状態の低下
  • 失語・構音障害
  • 半側空間無視を疑う変化
  • 突然の強い頭痛
  • 嘔吐・強いめまい・失調
  • けいれん発作
  • 新しい瞳孔不同
  • 複視や明らかな眼球運動障害

などです。

これらを伴う場合には、脳梗塞・脳出血・けいれん・脳幹病変などを含めて評価します。

「共同偏視の向きから病巣を当てること」より、「新しい神経所見として異変を認識すること」を優先します。

リハ中に新しい共同偏視を見つけたら?

リハ中にこれまでなかった共同偏視が出現した場合は、そのまま運動・離床を継続せず、状態を再確認します。

確認したいのは、

  • 最後に眼位が正常だった時刻
  • 共同偏視に気づいた時刻
  • 意識状態の変化
  • 新しい片麻痺・感覚障害
  • 発話・理解の変化
  • 頭痛・嘔吐・めまい
  • けいれん・頭部偏倚
  • 瞳孔不同
  • 血圧・脈拍など全身状態の変化

です。

脳卒中が疑われる場合には発症時刻や最終健常確認時刻が治療判断に関わるため、「いつから異常か」だけでなく、「最後に正常だったのはいつか」を確認して共有することが重要です。

急性脳卒中や発作などが疑われる場合には、リハの再開判断よりも院内の急変対応手順に沿った共有を優先します。

共同偏視は「方向+動かせるか+随伴所見」で記録する

記録では「共同偏視あり」だけで終わらせず、方向、眼球運動、随伴する神経所見、前回からの変化を具体的に残します。

記録したいのは、

  • 観察時刻
  • 共同偏視の方向
  • 左右の眼球がそろっているか
  • 正中・反対方向へ随意的に動かせるか
  • 瞳孔径・対光反射
  • 意識状態
  • 運動・感覚の左右差
  • 失語・無視などの所見
  • けいれん所見
  • 前回との変化

などです。

たとえば、

「安静座位、両眼は右方へ持続偏倚。視標追視で左方への共同注視困難。左上下肢に新規運動低下あり。JCS 1。瞳孔径R/L 3/3mm、対光反射両側あり。前回評価時に偏視なし」

のように記録すると、「右共同偏視あり」とだけ書くより、異変の内容を共有しやすくなります。

共同偏視では「方向」だけでなく、「反対側へ動かせるか」「何を伴っているか」「新しい変化か」まで残すことが再評価につながります。

共同偏視で避けたい4つの思い込み

共同偏視で避けたい判断
思い込み 実際の考え方
右共同偏視=必ず右脳病変 大脳半球では典型的だが、橋病変や発作では方向関係が異なる
共同偏視=脳梗塞 脳出血、けいれん、脳幹病変などでもみられる
眼が向く方向だけ見ればよい 反対方向へ動かせるか、麻痺・意識・瞳孔なども確認する
病変部位を当てることが最優先 新規神経所見では急変認識と迅速な共有を優先する

共同偏視では、「どちらを向いているか」だけでなく、「なぜその方向を向いている可能性があるのか」を他の神経所見と組み合わせて考えます。

共同偏視のよくある質問

共同偏視とは簡単にいうと何ですか?

左右の眼球がそろって同じ方向へ偏っている状態です。脳梗塞・脳出血などの脳卒中、けいれん、脳幹病変などでみられることがあります。

共同偏視は病変側を向きますか?

大脳半球の破壊性病変では病変側を向くことが多いです。一方、橋の水平注視系病変では病変と反対側へ偏ることがあり、けいれん発作でも方向関係が異なります。偏視方向だけで病変側は確定できません。

右共同偏視ならどちらの脳が悪いですか?

大脳半球の急性破壊性病変であれば、右大脳半球病変を考える手がかりになります。ただし、左側の橋水平注視系病変や発作性病態などでも右方偏視が起こり得るため、麻痺・意識・眼球運動などを組み合わせます。

共同偏視と片麻痺の方向はどうなりますか?

典型的な大脳半球病変では、眼球は病変側を向き、片麻痺は反対側に出ることがあります。たとえば右共同偏視と左片麻痺の組み合わせです。ただし、橋病変などではこの関係が当てはまらないことがあります。

共同偏視とけいれんは関係ありますか?

あります。発作中に眼球や頭部が一方向へ強制的に偏ることがあります。発作中の刺激性偏視では発作焦点と反対方向を向くことがありますが、眼球偏倚だけから発作焦点を確定することはできません。

共同偏視と共同注視麻痺は同じですか?

同じではありません。共同偏視は安静時に両眼が一方向へ偏っている状態、共同注視麻痺は両眼を特定方向へ一緒に動かせない状態です。両者が同時にみられることはあります。

共同偏視があれば脳卒中ですか?

共同偏視は脳卒中の重要な神経所見ですが、けいれんやその他の中枢神経病変でもみられます。急に出現し、片麻痺・失語・意識変化などを伴う場合には脳卒中を含めて速やかな評価が必要です。

リハ中に共同偏視を見つけたらどうしますか?

新規出現であれば運動・離床をそのまま継続せず、意識、片麻痺、瞳孔、発話、けいれん所見、バイタルサインなどを確認し、院内手順に沿って医師・看護師へ速やかに共有します。

まとめ|共同偏視は「向いている側」だけで病変側を決めない

共同偏視とは、左右の眼球がそろって同じ方向へ偏る神経所見です。

大脳半球の破壊性病変では病変側を向くことが多い一方、橋の水平注視系病変では反対側へ偏ることがあり、けいれん発作でも方向関係が異なります。

したがって、

「右共同偏視=右脳病変」

と単純に決めないことが重要です。

共同偏視を見つけたら、病変側を当てることよりも、

新規性 → 偏視方向 → 両眼性 → 反対方向へ動かせるか → 麻痺・感覚 → 意識・高次脳機能 → 瞳孔 → けいれん → 前回との変化

の順で評価します。

そして記録では「共同偏視あり」だけで終わらせず、偏視方向・反対方向への眼球運動・随伴する神経所見・前回との差まで具体的に残します。

新たな共同偏視を認めた場合は、局在診断を続けることより、急性脳卒中やけいれんなどの可能性を認識し、安全確保と迅速な共有を優先します。

参考文献

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