構成障害ドリル( OT )|模写・配置のズレを枠で整える
構成障害( visuoconstructive deficit )は、模写や組み立てで「配置」「比率」「回転」「省略/過剰」が崩れやすい状態です。現場で詰まりやすいのは、課題を増やしても改善が見えず、記録も比較できないまま「なんとなく練習」になってしまうこと。
この記事では、枠と基準線で条件を固定し、描く → 点検 → 修正を 1 セットにして回すドリル運用をまとめます。型が混ざりやすい場面は、先に 失行ドリル( OT ) の「混ぜない」考え方も併せて押さえると、見立てと共有が速くなります。
評価と練習がブレるときは、まず「進め方(型)」を先に固定すると迷いが減ります。
臨床の優先順位を 5 分で整理したい場合は、全体フローも一度確認しておくとスムーズです。
この記事でわかること
構成障害のドリルは、内容よりも「条件固定」と「点検の順番」で精度が上がります。結論としては、①枠と基準線で条件をそろえる、②描く → 点検 → 修正を 1 セット化する、③次回は 1 要素だけ変更して比較する、の 3 点です。
さらに、A4 の課題シート(初級→中級→分割→配置)を用意し、現場でそのまま回せる形にします。まずは 4 枚だけを「同条件で 2 回比較」して、崩れ方が再現するかを確認してください。
まず何が崩れているか( 30 秒チェック )
| 観察ポイント | よくある崩れ | ドリルの当て方 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 配置 | 右/左/上/下に偏る、中心がずれる | 枠+基準線 → 枠のみ → 配置課題 | 「どちらへ」ずれたか |
| 比率 | 縦長/横長、部分が大きすぎる/小さすぎる | 枠内で同サイズを徹底 | 全体か一部か |
| 回転 | 向きが変わる、斜めになる | 基準線で角度を点検 | 回転あり/なし |
| 省略/過剰 | 抜ける、描き足す、線が増える | 分割→統合で「どこで」起きるか確認 | 起きた箇所を 1 つ |
実施の型( 5 分で迷わない手順 )
構成障害のドリルは、課題を変えるより先に点検の順番を固定すると、自己修正が乗りやすくなります。以下の流れを毎回そろえてください。
| 順番 | やること | 見る点 | 声かけ例 |
|---|---|---|---|
| 1 | 描く( 1 回 ) | 開始位置、全体の置き方 | 「まずは一度だけ描いてみましょう」 |
| 2 | 点検( 1 回 ) | 基準線 → 角 → 辺 → 全体 | 「中心線と角の位置だけ見てみましょう」 |
| 3 | 修正( 1 回 ) | どこを直すか 1 点に絞る | 「いちばんズレた 1 か所だけ直します」 |
難易度設計は「 1 要素だけ」変える
構成障害は、同時に複数を変えると比較できません。次回は 1 要素だけを変更し、崩れ方の変化を見ます。
| 要素 | 初級 | 中級 | 上げ方 |
|---|---|---|---|
| 基準線 | あり | なし | 枠+基準線 → 枠のみ |
| 図形の複雑さ | 単純(家/L 字) | 複合(分割→統合) | パーツ数を 2 → 3 |
| 配置負荷 | 自由配置 | 指定配置 | 3 × 3 マスで位置指定 |
| 見本提示 | 近い/長め | 遠い/短め | 距離 or 時間を 1 つだけ調整 |
構成障害ドリルの PDF(課題シート)
以下の PDF は、構成障害のドリルを初級→中級→分割→配置の 4 枚にまとめた課題シートです。まずは同条件で 2 回実施し、崩れ方が再現するかを確認してから、次回に 1 要素だけ変更してください。
プレビューを表示する
記録の最小セット( 5 項目 )
記録は長く書かず、次回の調整が決まる最小項目だけで十分です。迷ったら「どこへズレたか」→「点検で直せたか」の順で残します。
| 項目 | 書き方 | 次回の打ち手 |
|---|---|---|
| 配置 | 右/左/上/下 のどちらへ | 基準線 or 配置課題へ |
| 比率 | 大/小、縦長/横長 | 枠内同サイズを徹底 |
| 回転 | あり/なし | 角と辺の点検を強化 |
| 省略/過剰 | 抜け/足し( 1 箇所 ) | 分割→統合で箇所特定 |
| 点検→修正 | できた/できない | 点検の順番を固定 |
現場の詰まりどころ
詰まりやすいのは、①見本を見ながら描いているのに「点検」が入らず、修正が乗らないこと、②難易度を一気に上げてしまい、どこが崩れているかが分からなくなることです。まずは枠+基準線で、配置と比率を固定して比較してください。
もう 1 つは、模写の“正解”を求めすぎて疲労が先に出ることです。点検は「中心線」→「角」→「辺」→「全体」の順に、短く 1 回で終える方が、現場では継続しやすくなります。
よくある失敗
| 失敗 | 理由 | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 課題を次々変える | 比較できない | 同条件で 2 回は比較 | 配置/比率 |
| 点検が長い | 疲労で質が落ちる | 点検は 1 回、順番固定 | 点検→修正 |
| 複数要素を同時に変更 | 何が効いたか不明 | 1 要素だけ変更 | 変更点 |
| 配置のズレを言語化しない | 共有できない | 右/左/上/下 を固定語で記録 | ズレ方向 |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まずどの課題から始めればいいですか?
初回は「枠+基準線(初級)」から始め、同条件で 2 回比較します。配置と比率が安定してきたら、次回に 1 要素だけ(例:基準線なし)変更します。
Q2. 点検で何を見ればいいですか?
点検は「中心線」→「角」→「辺」→「全体」の順に 1 回だけ行います。迷ったら「角の位置」と「左右差」だけに絞っても運用できます。
Q3. どこがズレているか本人が分かりません
最初は OT が「右/左/上/下」の方向だけ提示し、修正点を 1 つに絞ります。修正が乗ってきたら、本人の自己点検(指差し)へ移します。
Q4. 生活場面へどうつなげますか?
更衣の左右合わせ、整容の位置合わせ、物品配置(机上の定位置)など、「配置」と「比率」が必要な場面へ橋渡しします。次回は課題ではなく“場面”を 1 つだけ変えるのも有効です。
次の一手
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検(無料チェックシート):マイナビコメディカルの無料チェックシート
参考文献
- Cubelli R, Della Sala S. Constructional Apraxia. Cortex. 2018;104:127. DOI: 10.1016/j.cortex.2018.02.015 / PubMed: 29587996
- Gainotti G, Trojano L. Constructional apraxia. Handb Clin Neurol. 2018;151:331-348. DOI: 10.1016/B978-0-444-63622-5.00016-4 / PubMed: 29519467
- Russell C, Deidda C, Malhotra P, et al. A deficit of spatial remapping in constructional apraxia after right-hemisphere stroke. Brain. 2010;133(Pt 4):1239-1251. DOI: 10.1093/brain/awq052 / PubMed: 20375139
- Roncato S, Sartori G, Masterson J, Rumiati R. Constructional apraxia: An information processing analysis. Cogn Neuropsychol. 1987;4:113-129. DOI: 10.1080/02643298708252037
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

