FIM 採点の迷いをなくす:運動と認知の 5 点

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ADL・QOL 評価
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FIM は 18 項目を 7 段階で判定し、実際に“している ADL”を数量化します。ところが臨床では 「 5 点」 の扱いで迷う場面が多く、運動と認知で考え方が異なることが混乱の原因になりがちです。本稿は、判定の軸と介助割合の見積もり、よくある 10 ケースを具体例で整理します。

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運動と認知の「 5 点 」は何が違う?

まず“ 5 点”の意味を正確に揃えます。運動=監視・促し(身体介助なし)認知= 10 %未満の介助です。同じ 5 点でも根拠が違いますので、ここを混同しないことが迷いを減らす第一歩です。歩行や更衣で口頭指示はあるが身体介助は不要なら運動 5、会話の適切性や問題解決で時折の助言がいるなら認知 5 の候補になります。

FIM は“している ADL”の観点で判定します。Barthel Index のような“できる ADL”系と併用すると、潜在能力と実行状況のギャップが見えやすくなります(併読:Barthel Index と FIM の違い・使い分け/基礎整理は FIM 総合ガイド)。

働き方に迷ったら「転職ガイド」もどうぞ

領域 5 点の定義 よくある臨床例
運動 監視・指示・促しのみ(身体介助なし) 整容で声かけ 2 回で完遂/監視下の歩行/段差での言語指示
認知 10 %未満の介助 会話の適切性への軽微な助言/段取りのヒント提示で自立

介助割合の見積もり方(4〜1 点の決め方)

介助割合は“工程×重み”で先にルール化しておくと、評価者間の一致度が上がります。例として食事は〈道具操作・口に運ぶ・嚥下〉を各 33 %、整容は 5 工程× 20 %といった具合です。できた合計が 60 %なら 3 点、 24 %なら 1 点相当になります。

判定は次の順番で迷いにくくなります。① 身体介助の有無で 6–7 か ≤5 を決める → ② 運動か認知かを区別し 5 点の定義を当てる → ③ 工程配点に基づき介助%を見積もる → ④ 記録は「工程・%・根拠・安全配慮」をセットで残す(監視や促しの具体内容を必ず添えます)。

つまずきやすい 10 ケース(判定と根拠)

以下は新人が迷いやすい代表例です。工程配点をあらかじめ共有しておくと、同じ事例でも点数の再現性が上がります。各例は“なぜその点数か”の根拠を短く添えています。院内ケースレビューのたたき台としてご活用ください。

※「最小介助= < 25 %」「中等度= 25–49 %」「最大= 50–74 %」「全介助= ≧ 75 %・ 2 人介助」を目安にします。

  1. シャワー温度の設定のみ介助 → 準備介入に相当で 運動 5
  2. 歩行は自立だが常時見守りが必要 → 運動 5(身体介助なし)。
  3. 立ち上がりで一瞬の接触介助 → 介助見積 ≈ 10–15 % → 4
  4. 整容 5 工程中 2 工程が全介助 → 実施 60 % → 3
  5. 表出は概ね適切、時折言い直し誘導 → 介入は軽微 → 認知 5
  6. 階段は手すり併用+言語指示で完遂 → 身体介助なし → 運動 5
  7. 食事の“口に運ぶ”が全介助、他は自立 → 実施 67 % → 3
  8. 浴槽またぎで 2 回の部分介助 → 見積 ≈ 20 % → 4
  9. 問題解決は段取り提示が必要 → 軽微な構成化支援 → 認知 5
  10. 記憶で常時プロンプトが必要 → 見積 30–60 % → 3〜2(割合で決定)。

迷わない判定フロー(現場貼り出し用)

下の 4 ステップをチームで共有すると、判定速度と再現性が上がります。病棟カンファレンスでは「工程配点」と「介助割合%」のメモを患者ごとに持ち回り、週次で見直す運用が効果的です。

また、FIM は横断的に使えるため、回復期では週次の方針確認、生活期では長期フォローに活用できます。BI と組み合わせると、潜在能力(できる)と実行状況(している)のズレが可視化されます。

① 身体介助の有無 → なし=6/7 or 運動 5、あり=4〜1

② 運動 5(監視・促し)か/認知 5( 10 %未満介助)かを区別

③ 工程配点で介助%を見積 → 4( < 25 %)/3( 25–49 %)/2( 50–74 %)/1( ≧ 75 %・ 2 人介助)

④ 記録は「工程×%・根拠・安全配慮・促し内容」をセットで残す

基礎の整理や使い分けは下記をご参照ください。すべて当ブログ内への同一タブ遷移です。院内教育では 3 本をセットで提示すると理解が早まります。

FIM(機能的自立度評価法)総合ガイド
Barthel Index と FIM の違い・使い分け

参考文献

  1. Granger CV, Hamilton BB, et al. Performance profiles of the Functional Independence Measure. Am J Phys Med Rehabil. 1993;72(2):84–9. PubMed / DOI.
  2. Shirley Ryan AbilityLab. Rehabilitation Measures Database: Functional Independence Measure (FIM). Web.
  3. Ministry of Health, Labour and Welfare. 令和 4 年度診療報酬改定の概要(FIM 活用に言及)。PDF.
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