FIM 5 点とは?運動・認知 5 点の違いと判定のコツ

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FIM 5 点とは?運動項目と認知項目 5 点の違い

FIM は 18 項目を 7 段階で判定し、実際に“している ADL”を数量化する指標です。その中でも 「FIM 5 点」 は、運動項目と認知項目で意味が異なるため、評価者間でブレやすいポイントです。本稿では FIM 運動項目 5 点・FIM 認知項目 5 点の定義と考え方を整理し、つまずきやすい代表例と 4〜1 点の介助割合の見積もり方までを 1 ページにまとめます。

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FIM は“している ADL”の観点で判定します。Barthel Index のような“できる ADL”系と併用すると、潜在能力と実行状況のギャップが見えやすくなります(併読:Barthel Index と FIM の違い・使い分け / 基礎整理は FIM(機能的自立度評価法)総合ガイド)。

FIM 5 点の全体像と 6 点との違い

FIM 5 点は「ほぼ自立だが、ごく軽度の介入が必要」なグレーゾーンを表します。運動項目では監視や口頭指示などの“準備・見守り”が前提であり、認知項目ではときどき助言やヒントが要るイメージです。FIM 6 点は「補装具などの条件付き自立」であり、監視や促しが不要な点が FIM 5 点との大きな違いです。

つまり、FIM 6 点は「条件付きの自立」FIM 5 点は「軽い介入が残る状態」として切り分けると、評価者間での解釈が揃いやすくなります。以下では FIM 運動項目 5 点と FIM 認知項目 5 点を個別に整理します。

FIM 運動項目 5 点の意味と臨床例

FIM 運動項目 5 点は「監視・促し・口頭指示のみで、身体介助は不要」な状態を指します。歩行や立ち上がり、更衣などで安全見守りや段差の声かけは必要でも、実際に体を支える・持ち上げるといった身体介助がなければ「運動 5 点」の候補です。「何かあったらすぐ支えられる距離で見守るが、ほとんど支えていない」というイメージになります。

よくある場面としては、整容で声かけ 1〜2 回で完遂するケース、病棟内歩行の常時見守り、階段昇降での言語指示のみなどが挙げられます。逆に、一瞬でも体を支える接触介助が反復して入るようであれば、介助割合を見積もって 4 点以下を検討します。

FIM 認知項目 5 点の意味と臨床例

FIM 認知項目 5 点は「介助量 10 % 未満」が目安です。会話の適切性や理解、問題解決に対して、ときどき助言やヒントを提示すれば自分で軌道修正できるような状態を想定します。介入はごく軽微であり、日常生活の大半は本人の力で成り立っている状況です。

例えば、会話でごく軽度の言い直し誘導が必要なケース、入浴手順の最初だけ段取りを提示すれば以降は自立して行えるケースなどが FIM 認知項目 5 点の代表例です。同じ 5 点でも 運動=監視・促し(身体介助なし)/認知= 10 % 未満の介助 という根拠が異なるため、ここを混同しないことが迷いを減らす第一歩になります。

※ “FIM 5 点” の定義差を簡潔に比較
領域 5 点の定義 よくある臨床例
運動 監視・指示・促しのみ(身体介助なし) 整容で声かけ 2 回で完遂/監視下の歩行/段差での言語指示
認知 介助量 10 % 未満 会話の適切性への軽微な助言/段取りのヒント提示で自立

介助割合の見積もり方(4〜1 点の決め方)

介助割合は“工程 × 重み”で先にルール化しておくと、評価者間の一致度が上がります。例として食事は〈道具操作・口に運ぶ・嚥下〉を各 33 %、整容は 5 工程 × 20 % といった具合です。できた合計が 60 % なら 3 点、24 % なら 1 点相当になります。

判定は次の順番で迷いにくくなります。① 身体介助の有無で 6–7 か ≤5 を決める → ② 運動か認知かを区別し FIM 5 点の定義を当てる → ③ 工程配点に基づき介助 % を見積もる → ④ 記録は「工程・ % ・根拠・安全配慮」をセットで残す(監視や促しの具体内容を必ず添えます)。

IADL の基礎整理は ADL と IADL の評価ガイド も併読ください。

つまずきやすい 10 ケース(判定と根拠)

以下は新人が迷いやすい代表例です。工程配点をあらかじめ共有しておくと、同じ事例でも点数の再現性が上がります。各例は“なぜその点数か”の根拠を短く添えています。院内ケースレビューのたたき台としてご活用ください。

※「最小介助= < 25 %」「中等度= 25–49 %」「最大= 50–74 %」「全介助= ≧ 75 % ・ 2 人介助」を目安にします。

  1. シャワー温度の設定のみ介助 → 準備介入に相当で 運動 5
  2. 歩行は自立だが常時見守りが必要 → 運動 5(身体介助なし)。
  3. 立ち上がりで一瞬の接触介助 → 介助見積 ≈ 10–15 % → 4
  4. 整容 5 工程中 2 工程が全介助 → 実施 60 % → 3
  5. 表出は概ね適切、時折言い直し誘導 → 介入は軽微 → 認知 5
  6. 階段は手すり併用+言語指示で完遂 → 身体介助なし → 運動 5
  7. 食事の“口に運ぶ”が全介助、他は自立 → 実施 67 % → 3
  8. 浴槽またぎで 2 回の部分介助 → 見積 ≈ 20 % → 4
  9. 問題解決は段取り提示が必要 → 軽微な構成化支援 → 認知 5
  10. 記憶で常時プロンプトが必要 → 見積 30–60 % → 3〜2(割合で決定)。

迷わない判定フロー(現場貼り出し用)

下の 4 ステップをチームで共有すると、判定速度と再現性が上がります。病棟カンファレンスでは「工程配点」と「介助割合 % 」のメモを患者ごとに持ち回り、週次で見直す運用が効果的です。また、FIM は横断的に使えるため、回復期では週次の方針確認、生活期では長期フォローに活用できます。Barthel Index と組み合わせると、潜在能力(できる)と実行状況(している)のズレが可視化されます。

① 身体介助の有無 → なし=6/7 or 運動 5、あり=4〜1
② 運動 5(監視・促し)か/認知 5(10 % 未満介助)かを区別
③ 工程配点で介助 % を見積 → 4(< 25 %)/3(25–49 %)/2(50–74 %)/1(≧ 75 %・2 人介助)
④ 記録は「工程 × %・根拠・安全配慮・促し内容」をセットで残す

基礎の整理や他スケールとの使い分けは下記をご参照ください。すべて当ブログ内への同一タブ遷移です。院内教育では 3 本をセットで提示すると理解が早まります。

FIM(機能的自立度評価法)総合ガイド Barthel Index と FIM の違い・使い分け

おわりに

FIM を日常の ADL 評価に組み込むときは、「動作の観察 → 介助割合の推定 → スコア記録 → 方針の共有 → 経過の再評価」というリズムをチームで共通化しておくことが重要です。特に FIM 5 点は運動項目と認知項目で意味が異なるため、定義と工程配点をそろえておくことで、評価者間のブレを最小限にできます。

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よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

FIM 5 点とはどんな状態ですか?

FIM 5 点は、運動項目では「監視・促し・口頭指示のみで身体介助は不要」、認知項目では「介助量 10 % 未満」を意味します。いずれも「ほぼ自立だが、ごく軽度の介入が必要」なグレーゾーンであり、運動/認知で定義を分けて共有しておくことが重要です。

FIM 運動項目 5 点の具体例を教えてください。

代表的な例は、病棟内の常時見守り歩行、整容での声かけ 1〜2 回で完遂するケース、階段での言語指示のみでの昇降などです。実際に体を支える・持ち上げるといった身体介助が入る場合は 4 点以下を検討し、接触介助の頻度や時間を工程配点に落とし込んで判断します。

FIM 認知項目 5 点の具体例を教えてください。

会話の適切性に対して時々言い直しの誘導が必要だが概ね自立しているケースや、入浴動作で最初の段取り提示だけで以降は自立して行えるケースなどが挙げられます。介助量が 10 % 未満にとどまる範囲が FIM 認知項目 5 点の目安で、それを超えると 4 点以下を検討します。

4〜1 点の介助割合はどのように見積もれば良いですか?

工程をあらかじめ配点化し(例:食事=道具操作・口に運ぶ・嚥下=各 33 %)、そのうちどの工程をどの程度介助したかを積み上げる方法が有用です。介助割合が < 25 % なら 4 点、25–49 % なら 3 点、50–74 % なら 2 点、≧ 75 %・2 人介助なら 1 点といった目安をチームで共有しておくと、評価者間の一致度が高まりやすくなります。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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参考文献

  1. Granger CV, Hamilton BB, et al. Performance profiles of the Functional Independence Measure. Am J Phys Med Rehabil. 1993;72(2):84–9. PubMed / DOI.
  2. Shirley Ryan AbilityLab. Rehabilitation Measures Database: Functional Independence Measure (FIM). Web.
  3. Ministry of Health, Labour and Welfare. 令和 4 年度診療報酬改定の概要(FIM 活用に言及)。PDF.
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