歩行速度 4m・6m・10m の違い【比較】現場で迷わない使い分け
歩行速度の評価で迷いやすいのは、「どの距離で測るか」と「距離が変わった記録をどう扱うか」です。結論は、距離の優劣を決めることではなく、スペース・目的・継続性で選び、同一条件で追跡することです。
本記事は、 4 m / 6 m / 10 m の違いを比較表で整理し、病棟・外来・通所・訪問での使い分け、距離変更時の記録ルール、よくある失敗まで実務ベースでまとめます。
結論|距離選択は「スペース × 目的 × 継続性」で決める
4 m / 6 m / 10 m のどれを使っても、歩行速度という指標自体の価値は変わりません。差が出るのは、どの現場で再現しやすいかと、何を見たい評価なのかです。
まずは施設で運用しやすい距離を固定し、助走・減速・合図・補助具条件をそろえて継続測定することが、もっとも実務的で再現性の高い使い方です。
4 m / 6 m / 10 m の違いを比較する
表は横にスクロールできます(スマホ対応)。
| 距離 | 向いている場面 | 強み | 注意点 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|---|
| 4 m | 病棟・狭いスペース・安全重視 | 短時間で回しやすい | 加速/減速の影響を受けやすい | 助走・減速を確保し、開始判定を統一 |
| 6 m | 病棟〜外来の中間運用 | 実務と再現性のバランスが良い | 施設ごとの運用差が出やすい | 施設標準として固定し、追跡を優先 |
| 10 m | 外来・通所・研究寄り運用 | 標準化しやすく比較しやすい | スペースと時間の確保が必要 | 10MWT 手順を文書化しスタッフで共有 |
現場別の選び方|病棟・外来・通所・訪問
病棟では安全性と実施率を優先し、 4 m 〜 6 m を固定すると運用しやすくなります。外来・通所でスペースが確保できるなら、 10 m を含めることで快適/最速の差や経時変化を整理しやすくなります。
訪問では環境差が大きいため、距離だけでなく床・靴・補助具の条件固定が重要です。どの距離を選ぶ場合も、同一患者は同一条件で追跡することを最優先にします。
距離を変えたときのルール|同列比較しない
4 m で追っていた患者を途中で 6 m に変えた場合、数値を同じ系列に並べると誤解釈が起きます。距離変更は測定条件の変更なので、変更日を境にトラックを分けるのが原則です。
記録には「距離」「助走・減速」「歩行条件( comfortable / fast )」「補助具」を必ず残し、読み返したときに条件差が一目で分かる形にします。
| 場面 | NG | OK | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 4 m → 6 m に変更 | 同じ折れ線で連続比較する | 変更日で系列を分ける | 「2026-02-10 から 6 m 系列開始」 |
| 補助具を変更 | 補助具条件を記載しない | 補助具を明記して別条件として扱う | 「T 字杖あり(AFO あり)」 |
| 歩行条件の混在 | 快適/最速を混在させる | comfortable と fast を分けて記録 | 「comfortable 0.62 / fast 0.74 m/s」 |
現場の詰まりどころ|比較が崩れるのはこの 3 つ
比較記事で最も多い失敗は、距離ではなく比較軸の不統一です。距離だけ合わせても、開始判定や補助具条件が揺れると別データになります。
よくある失敗|距離比較でズレるポイント
| 項目 | NG | OK | 対策 |
|---|---|---|---|
| 開始判定 | 合図と同時に計時 | 足が計測線を越えた瞬間から計時 | 開始ルールを文書化して統一 |
| 助走・減速 | 距離ごとに助走条件が違う | 各距離で同じ考え方で確保 | 床マーキングを固定化 |
| 補助具 | 杖あり/なしを混在比較 | 同一条件で比較する | 補助具欄を必須入力にする |
| 速度条件 | comfortable と fast を混在 | 別々に記録して比較 | 記録様式を 2 段で分ける |
よくある質問( FAQ )
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Q1. 4 m と 10 m は、どちらが正しいですか?
A. どちらも正しいです。正解は施設のスペース・目的・運用体制に合う距離を固定して使うことです。距離の優劣より、同じ条件で追跡できるかを優先してください。
Q2. 6 m は中途半端ですか?
A. いいえ。病棟〜外来の実務では、 6 m は安全性と再現性のバランスが取りやすい選択です。チーム内で標準化しやすいなら有効です。
Q3. 途中で距離を変えたデータは捨てるべきですか?
A. 捨てる必要はありません。ただし同列比較せず、距離変更日を境に別系列として管理してください。記録に条件変更を明記すれば臨床判断に使えます。
Q4. 比較記事と総論記事はどう使い分けますか?
A. 比較記事は「どの距離を採用するか」の意思決定に使い、総論記事は「どう測ってどう解釈するか」の運用に使います。現場導入では両者をセットで確認するのが効率的です。
次の一手
- 運用を整える:評価ハブで全体像を確認する(全体像)
- 共有の型を作る:10MWT の実装手順をチームでそろえる(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Perry J, Garrett M, Gronley JK, Mulroy SJ. Classification of walking handicap in the stroke population. Stroke. 1995;26(6):982-989. doi: 10.1161/01.STR.26.6.982
- Perera S, Mody SH, Woodman RC, Studenski SA. Meaningful change and responsiveness in common physical performance measures in older adults. J Am Geriatr Soc. 2006;54(5):743-749. PubMed
- Studenski S, Perera S, Patel K, et al. Gait speed and survival in older adults. JAMA. 2011;305(1):50-58. doi: 10.1001/jama.2010.1923(PubMed)
- Fritz S, Lusardi M. White paper: “walking speed: the sixth vital sign”. J Geriatr Phys Ther. 2009;32(2):46-49. doi: 10.1519/00139143-200932020-00002(PubMed)
- Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 consensus update on sarcopenia diagnosis and treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307.e2. doi: 10.1016/j.jamda.2019.12.012(PubMed)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


