GCS( Glasgow Coma Scale )の評価方法| E ・ V ・ M を最短で揃えて記録する
GCS は、意識障害の重症度を E(開眼)・ V(言語)・ M(運動)の 3 要素で共有する評価です。ポイントは 「合計点」より「内訳( E / V / M )」を残し、刺激条件と体位を揃えて経時変化を追うこと。本記事では、現場で迷いがちな 最短手順と 評価不能(挿管・鎮静・失語など)の書き方を、すぐ使える形にまとめます。
なお、意識評価の全体像( JCS / GCS / ECS の使い分けと観察項目)は 意識レベル評価の総論 にまとめています。
GCS の基本| 3 要素とスコアの考え方
GCS は、 E(最大 4 点)、 V(最大 5 点)、 M(最大 6 点)を評価し、合計は 3〜 15 点です。記録は GCS 12( E3 V4 M5 )のように、合計+内訳で残すと比較が安定します。
評価のコツは「その人の best response(最良反応)」を採用することです。左右差がある場合は、運動反応は “より良い側” を基本にしつつ、左右差は別途所見として残すとチームで解釈が揃いやすくなります。
評価前の 30 秒|条件をそろえる(ぶれを減らす)
GCS がぶれる最大要因は、刺激条件・声量・体位・鎮静や疼痛など “前提” の不一致です。急変対応では「正確さ」より「見逃しを減らす順番」が優先なので、評価前に条件をそろえてから短時間で判定します。
最低限の前提(例):呼吸( SpO₂ ・努力呼吸)/循環(脈・血圧)/体温/低血糖の可能性/鎮静・鎮痛薬/聴力・失語・麻痺/挿管・気管切開( V が評価不能になり得る)
手順| E → V → M を “同条件・短時間” で
手順は E → V → Mの順で、呼名 → 大声 → 刺激の段階を固定します。各段階を長引かせず、反応が 持続するか(刺激を止めても保てるか)まで観察します。
刺激の選び方は施設 SOP を優先し、患者さんの状態(術後・骨折・皮膚脆弱など)に配慮します。評価のたびに刺激部位や強さが変わると、改善/悪化の解釈が崩れるため、刺激条件を記録して固定します。
| 順番 | やること | 観察ポイント | 記録に残す要素 |
|---|---|---|---|
| 1 ) E(開眼) | 自発開眼 → 呼名 → 大声 → 刺激の順で確認 | 開眼の有無と “きっかけ” | 声量、刺激の種類・部位・時間 |
| 2 ) V(言語) | 簡単な質問(氏名・場所など)と会話のつながり | 見当識、会話の一貫性、発語の可否 | 失語疑い/鎮静/挿管など “障壁” の有無 |
| 3 ) M(運動) | 指示 → 反応が乏しければ刺激で反応を確認 | 指示に従うか、逃避・局在などの反応 | 左右差、拘縮・麻痺、評価部位 |
| 4 ) 再評価 | 同体位・同刺激で反復(時刻をそろえる) | 改善/悪化の方向性 | 時刻、同条件であること |
記録の型|合計点より “内訳” と “評価不能( NT )” を残す
合計点だけを書くと、変化の理由( E が落ちたのか、 M が落ちたのか)が追えません。基本は E / V / M の内訳を残し、刺激条件と体位を併記して “同条件比較” を可能にします。
挿管・気管切開などで V が評価不能な場合は、無理に 1 点として合計を作らず、 V=NT( not testable )のように “評価不能” を明示し、 E と M の推移を追う方が情報損失を減らせます。
| 場面 | 記録例 | 比較のポイント |
|---|---|---|
| 基本形 | GCS 12( E3 V4 M5 )。呼名 1 回で開眼。指示は遅延。 | 声量、遅延の程度、体位 |
| 挿管・発語不能 | GCS( E2 V=NT M4 )。挿管中。刺激条件を固定して再評価。 | NT の理由、 E と M の推移 |
| 左右差がある | GCS 10( E2 V3 M5 )。右>左で反応良好。左右差を別記。 | 左右差の方向と変化 |
よくある失敗|ぶれを減らす OK / NG
| NG(起きがち) | なぜ問題? | OK(修正) |
|---|---|---|
| 合計点だけを書く | どの要素が変化したか追えない | 合計+内訳( E / V / M )をセットで記録 |
| 刺激条件が毎回ちがう | 改善/悪化と条件差が混ざる | 同体位・同刺激・短時間で段階化し、条件を記録 |
| 挿管なのに合計点を作る | 重症度を過大評価しやすい | V=NT を明示し、 E と M の推移で共有する |
よくある質問(FAQ)
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GCS は合計点だけで運用しても良いですか?
おすすめしません。合計点だけだと変化の “中身” が消えます。基本は E / V / M の内訳を残し、刺激条件と体位をそろえて再評価すると、申し送りと経時比較が安定します。
挿管中(気管切開含む)で V が取れません。どう書きますか?
無理に 1 点として合計点を作らず、 V=NT( not testable )のように評価不能を明示します。 E と M は評価できるため、 E と M の推移(同条件)で変化を追うのが実務的です。
鎮静や失語が疑わしいとき、どう注意しますか?
鎮静・鎮痛や失語は V と M の解釈を大きく左右します。評価前提(薬剤、コミュニケーション障壁)を明記し、可能なら同条件で繰り返し評価して “傾向” を共有すると誤解が減ります。
参考文献
- Teasdale G, Jennett B. Assessment of coma and impaired consciousness. A practical scale. Lancet. 1974;2(7872):81-84. doi:10.1016/S0140-6736(74)91639-0. PubMed
- Jain S, Iverson LM. Glasgow Coma Scale. In: StatPearls. StatPearls Publishing; Updated 2023. NCBI Bookshelf
- Glasgow Coma Scale. What is GCS? Official site
- Glasgow Coma Scale. FAQ( intubation / tracheostomy と NT の扱い). Official FAQ
おわりに
GCS は「安全の確保 → 段階刺激 → E / V / M の内訳記録 → 同条件で再評価」のリズムを固定すると、急変対応の申し送りが安定します。合計点に寄せすぎず、内訳と評価不能( NT )を明示して “比較できる記録” に整えていきましょう。
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

