生成AIで運動プログラム作成前に確認したいこと|理学療法士向け

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生成AIで運動プログラム作成前に確認したいこと

生成 AI を実務に取り入れるときは、技術だけでなく、学び方や優先順位の整え方も大切です。忙しい中で無理なく使いどころを整理したい方は、こちらも参考になります。 PT のキャリア総合ガイドを見る

生成 AI は、運動プログラムを丸ごと決める道具ではありません。ただ、目標の言語化、候補の整理、説明文のたたき台づくりのような前工程に限定すると、考え始めの重さを軽くしやすくなります。特に、自主トレ案や介入の方向性を考える前に、視点を広げる補助役として使うと相性が良いです。

一方で、運動プログラムは、対象者の病態、機能、痛み、疲労、禁忌、中止基準、環境条件によって変わります。そのため本記事では、患者情報を入れずに、一般論ベースでたたき台を整理するところまでに絞って考えます。結論から言うと、生成 AI は「決める人」ではなく「整理する補助役」として使うのが安全です。

このページの役割

このページは、理学療法士が生成 AI を使って運動プログラムのたたき台を考える前に、何を確認すべきかを整理する実務記事です。生成 AI 全体の入口や、まず何から始めるかの全体像は、理学療法士のための生成AI活用ガイドで先に整理しています。

本記事では、その総論の中でも高リスク寄りのテーマである運動プログラム立案に対象を絞ります。ここで答えるのは「 AI に任せてよい部分」「任せない部分」「入れてよい情報」「入れない情報」「たたき台を作る手順」です。個別患者に対する最適な処方を AI に決めさせることは、このページでは扱いません。

なぜ運動プログラム立案は慎重さが必要か

運動プログラムは、一般的な運動メニューの羅列では終わりません。目的設定、身体機能、痛み、バイタル、既往、疲労、転倒リスク、生活環境、継続可能性などを踏まえながら、強度、量、頻度、順番を調整する必要があります。ここを飛ばして「よさそうな運動」を並べるだけでは、実際の臨床にはつながりにくくなります。

さらに、運動プログラムは一見すると一般論で進めやすそうですが、実際には個別性が大きい領域です。だからこそ、生成 AI に向くのは一般論の整理候補の広げ方までであり、最終的な適否の判断や処方決定は人が担う必要があります。

生成AIが役立ちやすい場面

生成 AI が役立ちやすいのは、目標設定の言語化、介入候補の洗い出し、運動カテゴリの整理、自主トレ説明文の下書きなどです。たとえば、「下肢筋力向上」「立ち上がり改善」「活動量低下への対応」のような大きなテーマから、一般論としてどんな選択肢があり得るかを広げる用途には向いています。

一方で、個別の病態や禁忌を踏まえた最終決定、負荷量の確定、中止基準の判断は、生成 AI と相性がよくありません。ここは「候補を出す」と「採用を決める」を分けて考えると、かなり整理しやすくなります。

AIに任せてよい作業・任せない作業

まずは、生成 AI の役割をこのように区切って考えると迷いにくくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

運動プログラム立案で生成 AI に任せてよい作業・任せない作業
作業 生成 AI との相性 考え方
目標の言語化 高い 目的を 1 文に整理する補助として使いやすいです。
候補の洗い出し 高い 一般論としての介入候補を広げる用途に向きます。
説明文のたたき台 高い 自主トレ説明や配布文の下書きを短く整理しやすいです。
個別処方の決定 低い 患者ごとの状態や環境を踏まえた最終判断は人が行います。
禁忌・中止基準の判断 低い 安全管理に直結するため、 AI に任せる領域ではありません。
最終負荷量の決定 低い 強度、回数、頻度の最終決定は人が確認すべきです。

この表のポイントは、生成 AI を「プログラムを決める人」にしないことです。たたき台づくりには役立ちますが、処方責任まで代わってくれるわけではありません。

入れてよい情報・入れない情報

運動プログラムを考える場面では、つい症例情報を詳しく入れたくなりやすいですが、親記事と同じく安全側で整理した方が運用しやすくなります。

スマホでは表を横スクロールできます。

運動プログラム立案で生成 AI に入力する情報の考え方
区分 具体例 考え方
入れてよい情報 公開ガイドライン、公開論文、一般的な介入テーマ、自分で抽象化した目標メモ まずはこの範囲でたたき台を作ります。
慎重に扱う情報 部署内テンプレート、院内教育資料、施設内マニュアル 院内ルールと共有範囲を確認したうえで扱います。
入れない情報 氏名、年齢、生年月日、病院名、日付、画像、録音、希少症例の詳細、組み合わせで個人特定につながる情報 原則として入力しません。

迷ったときは、「公開情報かどうか」「個人が推定されないか」の 2 点で判断します。運動プログラムは個別性が高いからこそ、導入初期は一般論ベースに限定した方が安全です。

たたき台を作る 4 ステップ

運動プログラムに生成 AI を使うなら、いきなり「メニューを作って」と頼むより、次の 4 ステップで進めた方がぶれにくくなります。

1.目的を 1 文にする

最初に決めるのは、「何を改善したいのか」です。たとえば「立ち上がり動作を安定させたい」「活動量低下に対応したい」のように、目的を 1 文にすると、その後の候補整理が進めやすくなります。

2.一般論で候補を広げる

次に、その目的に対して一般論として考えられる介入候補を広げます。ここは生成 AI と相性がよく、運動カテゴリや説明の切り口を整理してもらう用途に向きます。

3.人が適否を絞る

候補が出たら、対象者の状態、環境、リスク、継続可能性を踏まえて、人が適否を絞ります。この段階で初めて、候補が実際の臨床に合うかどうかを見ます。

4.実施前に再確認する

最後に、禁忌、中止基準、負荷量、説明方法、記録方法を見直します。生成 AI の役割はここで終わりで、実施に移す前の最終確認は人が行います。

現場の詰まりどころ

このテーマで止まりやすいのは、どこまで AI に任せてよいのかわからない一般論と個別処方の境目があいまいになる安全管理の確認が後回しになるの 3 点です。ここがあいまいなままだと、使い始める前に不安が大きくなるか、逆に便利さだけで進みやすくなります。

こうした詰まりどころには、目的だけを整理する一般論ベースの候補出しにとどめる最後は人が絞るの 3 つを先に固定すると対応しやすくなります。高リスク領域なので、院内での扱いは生成 AI 導入の院内ルールをどう作るかもあわせて確認しておくと判断しやすくなります。

よくある失敗

よくある失敗は、 AI に個別患者向けの運動処方をそのまま決めさせようとすることです。これをすると、禁忌や中止基準、疲労や疼痛の反応、環境条件などの大事な判断が抜けやすくなります。生成 AI は、あくまで前工程の整理役として使う方が安全です。

もう 1 つ多いのは、症例情報を詳しく入れて精度を上げようとしてしまうことです。しかし、精度を上げたい気持ちと安全性は別問題です。導入初期は、個別症例を離れて一般論の整理に限定した方が、運用のぶれを減らしやすくなります。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

生成 AI に運動プログラムをそのまま作らせてもよいですか?

おすすめしません。生成 AI は、目標整理や候補の洗い出しには向きますが、個別処方の決定や最終負荷量の判断は人が行う必要があります。

自主トレの説明文づくりには使えますか?

一般論としての説明文のたたき台を作る用途には向いています。ただし、対象者向けに使う前に、内容の妥当性とわかりやすさは人が見直した方が安全です。

患者情報を少し消せば入力してもよいですか?

親記事と同じく、原則として入力しない前提で考える方が無難です。個人が推定される情報は、単独ではなく組み合わせでも生じるためです。

最初に試すなら、どこに生成 AI を使うのがよいですか?

目的の言語化、候補の整理、説明文のたたき台づくりが始めやすいです。個別処方や禁忌判断のような高リスク部分は後回しにした方が現実的です。

このテーマは院内ルールも確認した方がよいですか?

はい。運動プログラム立案は高リスク寄りのテーマなので、契約形態、共有範囲、使ってよい情報の範囲は、院内ルールと照らして確認しておく方が安全です。

次の一手

このテーマで最初に試すなら、まずは患者情報を使わずに、一般論ベースで目標と候補を整理するところから始めるのがおすすめです。いきなり個別の処方を決めようとするより、 AI の役割を前工程に限定した方が、使いどころが見えやすくなります。

次に読むなら、生成 AI 導入の院内ルールをどう作るか生成 AI とカルテ・音声認識で確認したいことをあわせて確認すると、高リスク領域の線引きがしやすくなります。


参考文献

  1. 個人情報保護委員会.医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス.2026 年 4 月 6 日閲覧.
  2. 個人情報保護委員会,厚生労働省.「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に関する Q&A(事例集).2026 年 4 月 6 日閲覧.
  3. 厚生労働省.医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版.2026 年 4 月 6 日閲覧.
  4. OpenAI.データコントロールに関する FAQ.2026 年 4 月 6 日閲覧.
  5. OpenAI.File Uploads FAQ.2026 年 4 月 6 日閲覧.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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