理学療法士の生成 AI 活用ガイド
日々の業務を少しでも整理したい方は、働き方や優先順位の整え方もあわせて見直しておくと、AI の使いどころがはっきりします。 PT のキャリア総合ガイドを見る
生成 AI は、理学療法士の仕事を丸ごと代わる道具ではありません。ただ、公開情報や自分で整理したメモを下ごしらえする用途に限定すると、文献検索、英語論文の初読、学会抄録の章立て、院内発表スライドの骨子づくり、委員会資料のたたき台づくりなどを進めやすくなります。
一方で、医療・介護の現場では個人情報の扱いが最優先です。そのため本記事では、患者情報を入れずに、まず何から始めるかに絞って整理します。生成 AI は「考える前の重さ」を軽くする補助役として使い、最終判断は必ず人が行う前提で読み進めてください。
このシリーズで扱う生成 AI の使い方は、公開情報や抽象化したメモを整理する用途を前提としています。患者情報、施設名、日付、画像、録音など個人が推定できる情報は入力しません。生成 AI の出力は必ず原文・要項・一次情報で確認し、最終判断は執筆者が行います。
このページで決まること
このページは、理学療法士が生成 AI を安全に始める入口として読む親記事です。ここで決めるのは、「何に使えそうか」「何を入れないか」「最初にどの用途から試すか」「次にどの子記事を読むか」の 4 点です。
逆に、PubMed の具体的な検索式、英語論文の詳しい読み方、抄録本文の作り方、スライド作成の手順、院内ルールの詳細、カルテ・音声認識の高リスク判断までは、このページでは深掘りしません。各テーマは専用記事へ分けて、親記事では全体像を決める役割に絞ります。
やりたいこと別に次に読む記事
最初に全体像だけつかみたい方は、この表から自分に近い用途を選ぶと迷いにくくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| やりたいこと | 次に読む記事 | その記事で決まること |
|---|---|---|
| 文献を探したい | 文献検索を生成AIで効率化する方法 | PubMed を軸に検索語整理と読み順をどう決めるかがわかります。 |
| 英語論文を読みたい | 英語論文を生成AIで読む方法 | 翻訳、要点整理、原文確認の進め方がわかります。 |
| 学会抄録の下書きを作りたい | 学会抄録を生成AIで下書きする方法 | 章立て、文字数調整、確認の流れがわかります。 |
| 院内発表スライドを作りたい | 院内発表のスライドを生成AIで作る方法 | 骨子づくりからスライド化までの流れがわかります。 |
| 委員会資料や勉強会資料を作りたい | 委員会資料・勉強会資料を生成AIで作る方法 | 配布資料や説明資料の下書きの進め方がわかります。 |
| 院内導入のルールを整理したい | 生成 AI 導入の院内ルールをどう作るか | 用途区分、入力情報、端末、承認の考え方がわかります。 |
| カルテや音声認識の前に確認したい | 生成 AI とカルテ・音声認識で確認したいこと | 高リスク領域に入る前に何を確認すべきかがわかります。 |
この親記事では、「どれから読むべきか」を決めるところまでを担当し、各作業の詳しい進め方は子記事へ分けています。
生成 AI は理学療法士の何を楽にできるか
生成 AI が役立ちやすいのは、考えをまとめる前工程です。たとえば、文献検索の検索語整理、英語論文の大枠把握、学会抄録の章立て、院内発表スライドの見出し案、委員会資料の順番決めなどは、患者情報を使わずに進めやすい領域です。
反対に、患者情報を含む記録の丸投げや、AI の文章をそのまま正式文書に流用する使い方はおすすめできません。生成 AI は便利ですが、不正確な表現やもっともらしい誤りが混ざることがあります。まずは「整理」「要約」「下書き」までに使う意識が安全です。
なぜ今、理学療法士が生成 AI を知っておくべきか
理学療法士の業務には、考える時間を要する作業が多くあります。抄録の書き出し、英語論文の初読、院内発表の構成決め、教育資料の整理などは、内容そのものより「最初の 1 歩」が重くなりやすい場面です。生成 AI は、その最初の 1 歩を軽くしやすい点に価値があります。
医療福祉領域では慎重さが必要な一方、使いどころを限定すれば業務効率化につながります。使いこなすことを目標にする必要はありません。まずは安全な範囲で、小さく試してみることが大切です。
先に知っておきたい注意点
最初に押さえたいのは、匿名化して入れるより、原則として患者情報を入れないという考え方です。氏名、年齢、生年月日、住所、病院名、入退院日、地域名、画像、音声、珍しい経過など、個人が推定できる情報は入力しない方が安全です。
もう 1 つ大切なのは、使うサービスによってデータの扱いが異なることです。無料版・個人版と、組織で契約しているサービスを同じ感覚で扱わない方が無難です。導入前に、院内ルールと契約形態を確認しておきましょう。
生成 AI に入れてよい情報と避ける情報
まずは、次の基準で整理すると迷いにくくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 区分 | 具体例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 入れてよい情報 | 公開論文、公開ガイドライン、学会要項、自作の章立てメモ、一般的な発表テーマ | まずはこの範囲から始めると安全です。 |
| 慎重に扱う情報 | 施設内の一般資料、部署内テンプレ、院内向け教育スライド | 院内ルール、共有範囲、契約形態を確認してから使います。 |
| 入れない情報 | 氏名、年齢、生年月日、病院名、日付、画像、録音、希少症例の詳細、組み合わせで個人特定につながる情報 | 原則として入力しません。 |
迷ったときは、「公開情報かどうか」「個人が推定されないか」の 2 点で判断します。親記事の段階では安全側に倒して、患者情報は入力しない前提で統一するのがわかりやすいです。
最初に試すならこの順番
最初は、患者情報を使わずに始めやすく、効果も実感しやすい用途から入るのがおすすめです。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 順番 | 用途 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 文献検索 | 公開情報だけで始めやすく、検索語整理の効果を感じやすいためです。 |
| 2 | 英語論文の初読 | 患者情報を使わず、翻訳と要点整理の補助として試しやすいためです。 |
| 3 | 学会抄録の章立て | 下書き用途に限定しやすく、AI の利点が見えやすいためです。 |
| 4 | 院内発表スライド・委員会資料 | 構成整理や見出し案づくりとして使うと実務に結びつきやすいためです。 |
高リスク領域へ進む前に、まずはここまでを安全に回せるようにすると、AI の使いどころがかなり見えやすくなります。
用途別におすすめの生成 AI
ChatGPT は、長文整理、章立て、要点抽出、資料の下書きに向きます。特に、複数ファイルを参照しながら整理したい作業と相性が良いです。
DeepL は、英語論文や海外資料をまず日本語で把握したいときの入口として使いやすいです。
NotebookLM は、論文や資料をソースに基づいて整理したいときに向きます。引用箇所に戻りながら読みたい作業と相性が良いです。
Gemini と Microsoft 365 Copilot は、スライドの骨子づくりやプレゼンの初稿づくりと相性が良いです。ただし、どちらも出力をそのまま完成版にせず、人が整える前提で使います。
現場の詰まりどころ
理学療法士が生成 AI に触れようとして止まりやすいのは、何を入れてよいのかわからない、どの AI を使えばよいのかわからない、出てきた文章をどこまで信用してよいのかわからないの 3 点です。ここをあいまいにしたまま触ると、不安だけが残って続きにくくなります。
最初は、公開情報だけを使う、用途を 1 つに絞る、AI の出力は下書きとして扱うの 3 つで十分です。たとえば「文献検索だけ」「英語論文の初読だけ」のように始めると、現場でも試しやすくなります。
よくある失敗
生成 AI を使い始めるときに起こりやすい失敗は、だいたい共通しています。便利そうだからいきなり患者情報を入れてしまうこと、AI の出力をそのまま正解として扱うこと、引用元や原文を確認しないこと、使っているサービスのデータ取り扱いを確認しないことです。
医療職では、速さよりも安全性と再確認の手順が大切です。生成 AI は、考える前の材料を整える補助役として使うと強い一方、責任まで代わってくれるわけではありません。だからこそ、まずは公開情報や抽象化メモに限定して、再確認の手順込みで運用するのが現実的です。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
理学療法士が生成 AI を使っても大丈夫ですか?
使い方を誤らなければ、業務の下ごしらえには役立ちます。大切なのは、患者情報を入れないことと、出力を必ず人が確認することです。まずは公開情報や自作メモの整理から始めると、安全に試しやすくなります。
患者情報を消せば入力しても大丈夫ですか?
親記事では、安全側に倒して原則入力しないと考えるのが無難です。個人が推定される要素は、単独ではなく組み合わせでも生じるため、「少し消したから大丈夫」とは言い切れません。
無料版でも使えますか?
使えることは多いですが、データの扱い、管理機能、組織向け保護はサービスや契約形態で異なります。無料版・個人版と、組織契約版を同じ前提で考えない方が安全です。
高リスク領域へ進む前に読むべき記事はありますか?
あります。まずは 生成 AI 導入の院内ルールをどう作るか を読み、そのうえで 生成 AI とカルテ・音声認識で確認したいこと に進むと判断しやすくなります。
次の一手
まずは、自分の業務の中で患者情報を使わずに試せる 1 場面を決めてください。文献検索、英語論文、学会抄録、院内発表スライドのどれか 1 つに絞ると、AI の使いどころが見えやすくなります。
次に読むなら、文献検索を生成AIで効率化する方法、生成 AI 導入の院内ルールをどう作るか、生成 AI とカルテ・音声認識で確認したいことの順がおすすめです。
参考文献
- 個人情報保護委員会.医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス.2026 年 4 月 5 日閲覧.
- 個人情報保護委員会,厚生労働省.「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に関する Q&A(事例集).2026 年 4 月 5 日閲覧.
- 厚生労働省.医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第 6.0 版.2026 年 4 月 5 日閲覧.
- OpenAI.ファイルアップロードに関する FAQ.2026 年 4 月 5 日閲覧.
- OpenAI.ChatGPT のプロジェクト.2026 年 4 月 5 日閲覧.
- Google.NotebookLM の詳細.2026 年 4 月 5 日閲覧.
- Google.Gemini in Google スライドを活用する.2026 年 4 月 5 日閲覧.
- DeepL.AI document translation: instant, accurate, secure.2026 年 4 月 5 日閲覧.
- Microsoft.PowerPoint の Copilot を使用して新しいプレゼンテーションを作成する.2026 年 4 月 5 日閲覧.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


