GNRIの運用フローと判定のコツ【病棟・在宅】

栄養・嚥下
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GNRI運用プロトコル(目的と全体像)

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本記事は GNRI( Geriatric Nutritional Risk Index )を病棟・在宅でどう回すかに特化した運用マニュアルです。採血データの取得 → IBW 設定 → GNRI 算出 → リスク判定 → GLIM などの診断枠組みへの接続 → 介入と記録、という一連の流れを、チームで共有できるレベルまで具体化します。GNRI の定義・計算式の背景・エビデンスは、基礎編である「GNRI とは(計算式・解釈)」の記事を参照してください。

GNRI はスクリーニング指標であり、GNRI の点数そのものよりも「いつ測定し、結果をどう次の一手につなげるか」が重要です。本稿では、入退院時・定期フォロー・透析・在宅などのタイミングで 同じ手順・同じ記録様式を用いて GNRI を回し、GLIM などの診断と介入(食事・運動・疾病コントロール)へ橋渡しすることをゴールにします。

手順(病棟・在宅での標準フロー)

  1. 測定タイミングを決める:入退院時、長期入院では 1〜3 か月ごと、維持期や在宅では定期外来や訪問リハの節目など、施設として「いつ GNRI を測るか」をあらかじめ決めておきます。
  2. 採血・身体計測:Alb( g/dL )、身長、体重を取得し、浮腫・脱水・急性炎症の有無を身体所見や CRP などで必ず確認します。
  3. IBW を決める:院内標準を Lorentz または BMI 22 のいずれかに統一し、「どちらで求めた IBW か」をカルテ・リストに明記します。途中で方式を変えないことが経時比較の前提です。
  4. GNRI を算出:GNRI = 14.89 × Alb + 41.7 ×( 体重 / IBW )。体重 / IBW が 1 を超える場合は、1 を上限として計算します(肥満で過大評価されるのを防ぐため)。
  5. リスク判定:一般は 4 区分、透析では 92 を一つの実務目安にして「栄養リスクの有無と程度」をそろえた言葉で記録します。後述の判定表を、NST カンファレンスや回診で共有しておくと便利です。
  6. 診断へつなぐ:GNRI でリスクありと判定されたら、GLIM などの診断基準で表現型(体重減少・低 BMI・筋肉量低下)と原因(摂取不良・炎症)を評価し、低栄養の診断や重症度判定に進みます。
  7. 介入とモニタリング:食事強化、栄養補助食品、運動療法、疾病コントロールなどの介入プランに GNRI を組み込み、「介入前後の GNRI と機能指標(歩行・筋力など)」をセットで追跡します。
  8. チームで共有・記録:記録テンプレートを用いて、GNRI の値だけでなく「IBW 方式・浮腫の有無・次アクション」を明文化します。NST、リハ、看護、主治医で共通のシートを使うと、情報連携がスムーズです。

判定表(一般/透析)

GNRI のカットオフは研究により細かな違いがありますが、臨床では下記のような 4 区分を目安にすると運用しやすくなります。

GNRI の 4 段階判定(一般高齢入院・在宅患者の目安)
GNRI リスク 推奨される対応
> 98 なし 定期モニタ(食事量・体重・身体活動をフォロー)
92–98 食事支援や栄養相談を行いながら経過観察
82–<92 中等度 NST など多職種による栄養介入を検討
< 82 高度 積極的介入(経腸・静脈栄養も含めた集中的対応)
透析患者における GNRI の運用目安
GNRI 評価 対応のポイント
≥ 92 栄養リスクなし 現状維持を目標に、食事・体液管理・運動療法を継続
< 92 栄養リスクあり 摂取不足、炎症、体液過剰などの要因を整理し、GLIM 評価や詳細な栄養アセスメントへ進む

落とし穴(必ず押さえたいポイント)

  • Alb 単独で「栄養状態」を決めない:Alb は炎症・浮腫・脱水で大きく変動します。CRP や浮腫所見を確認し、「炎症マーカー」としての側面も意識して解釈します。
  • 体重 / IBW の 1 上限を忘れない:肥満の方で体重 / IBW > 1 のまま計算すると、GNRI が過大評価されリスクを見逃す原因になります。必ず 1 を上限として扱います。
  • IBW 方式の混在:Lorentz と BMI 22 が患者ごとに混在すると、経時変化の解釈が困難になります。施設としてどちらを標準とするか決め、カルテや様式に明記しましょう。
  • 在宅での体重測定のばらつき:家庭用体重計の機種・測定条件(服装・時間帯)がそろっていないと、小さな変化がノイズに埋もれます。測定条件を統一し、「○曜日の朝食前・同じ服装」などのルールを決めておくと安心です。
  • GNRI をゴールにしない:GNRI はスクリーニングであり、「GLIM などの診断」と「介入内容(食事・運動・疾病コントロール)」まで含めてセットで考えることで、初めて臨床的な意味を持ちます。

記録テンプレ(そのまま転記可)

GNRI を施設全体で運用する際は、下記のようなリスト形式のテンプレートを共有しておくと便利です。NST ラウンドやリハカンファレンスで、そのまま参照・更新できます。

GNRI 記録テンプレ(1 名分の記入例)
日付 Alb( g/dL ) 身長( m / cm ) 体重( kg ) IBW 方式 IBW( kg ) 体重 / IBW(※1 上限) GNRI 判定 次アクション
2025-10-05 3.4 1.60 / 160 48.0 BMI 22 56.3 0.85 14.89×3.4+41.7×0.85 中等度リスク GLIM 評価と NST 介入を依頼
                      

現場の詰まりどころ

  • 「誰が」「いつ」計算するかが決まっていない:採血結果が出ても GNRI を誰も計算せず、カルテにも残らないケースがよくあります。入院時サマリー作成時や NST ラウンド前など、担当とタイミングを明確に決めると運用が安定します。
  • リハ職が数字だけ見て終わってしまう:GNRI が低いことは認識していても、具体的な運動処方や負荷設定に結びついていないパターンです。GNRI が低い患者では、体重・筋力・持久力の変化をセットで追う意識を持ちましょう。
  • 透析と一般病棟でカットオフが混同される:透析チームは 92 を基準にしているのに、一般病棟スタッフは 98 を基準に話していると、リスクの有無に対する認識がずれてしまいます。職種横断で「この患者群ではどの基準を使うか」を先に共有しておくことが重要です。
  • 急性増悪時に GNRI を鵜呑みにする:感染などで Alb が一時的に低下している局面では、GNRI も一時的に悪化します。経過の中での位置づけ(増悪前・退院前など)とセットで評価し、「どのタイミングの GNRI をベースラインとみなすか」を話し合っておくと判断しやすくなります。

おわりに

GNRI は、数値自体はシンプルですが「測定タイミング・IBW の決め方・チームでの共有方法」が揃っていないと、現場での一貫した運用につながりません。本記事をもとに、自施設のフローや記録様式を整え、GLIM や機能評価と組み合わせて低栄養リスクを早期に拾い上げていきましょう。

また、栄養リスクが高い患者ほど、退院後の生活や通院体制、リハ継続の仕方も含めた「多職種カンファレンス」の質が重要になります。働き方を見直すときの抜け漏れ防止に、見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック( A4・5 分)と職場評価シート( A4 )を無料公開していますので、必要に応じて活用してください(ダウンロードはこちら)。

GNRI の位置づけや他ツールとの比較、スクリーニング全体の設計は下記の記事も参考になります。

GNRI とは(計算式・解釈・エビデンス)MNA-SF・MUST・GNRI の違いと使い分け低栄養スクリーニングの運用プロトコル栄養・嚥下ハブ(評価・プロトコルの一覧)

参考文献

  1. Bouillanne O, et al. Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777–783. doi: 10.1093/ajcn/82.4.777
  2. Cereda E, et al. Nutritional status in older persons: GNRI and clinical outcomes. Br J Nutr. 2009;102(6):958–965.
  3. GLIM Update 2025. Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) criteria: update on diagnosis and severity classification. JPEN. 2025. doi: 10.1002/jpen.2756
  4. 加藤明彦ほか. 慢性透析患者における低栄養の評価法. 透析会誌. 2019;52(6):319–.

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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よくある質問

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Q. GNRI はどのくらいの頻度で評価するのがよいですか?

A. 急性期では入院時と退院前、長期入院では 1〜3 か月ごとの定期評価が一つの目安です。在宅や維持期では、定期外来やケアマネ・リハのモニタリング時など、プランの見直しタイミングに合わせて評価すると、介入内容との関係が追いやすくなります。

Q. 身長が正確に測れない場合はどうすればよいですか?

A. 脊柱変形や拘縮で立位測定が難しい場合、過去の身長記録や家族からの聴取、座高などから推定する方法があります。いずれにしても「推定値であること」を記録に明記し、同じ推定方法を用いて経時変化を追うことが重要です。

Q. GNRI が低い患者さんに運動療法を行っても大丈夫でしょうか?

A. 低栄養リスクが高いからといって、必ずしも運動療法を中止する必要はありません。むしろ、適切な栄養補給と組み合わせた低〜中等度の運動は、筋量・筋力の維持向上に役立ちます。ただし貧血や心不全、感染のコントロール状況を確認し、バイタルと症状を見ながら強度や頻度を個別に調整してください。

Q. GLIM 評価や筋肉量測定ができない環境でも GNRI を使う意味はありますか?

A. はい、あります。GLIM や精密な筋肉量測定ができない場合でも、GNRI をルーチン化することで「誰が見ても低栄養リスクが高いと分かる共通言語」を持てます。そのうえで、体重変化や握力、歩行距離など身近な指標と組み合わせることで、介入の優先順位づけや経過観察に十分役立ちます。

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