リハ室の電子カルテ導入では5つの環境を先に整える
リハ室へ電子カルテを導入するときは、端末を配る前に「保管・充電・記録スペース・通信・管理ルール」の5つを整えることが重要です。リハビリテーション科では、訓練室だけでなく、病棟、ADL室、階段、カンファレンス室などへノートPCを持ち出すため、端末の所在不明、充電切れ、記録待ち、Wi-Fi不安定が起こりやすくなります。この記事では、リハ室で電子カルテを安全かつ滞りなく運用するために、導入前に決める順番と現場で起きやすい失敗を整理します。
この記事の結論
最初から機器を買いそろえるのではなく、①使用場所の確認、②端末の定位置化、③充電設計、④記録スペース整備、⑤返却・清拭ルールの順で決めると、導入後の混乱を減らしやすくなります。
リハ室の電子カルテ環境は5ステップで整える
導入準備は、家具や周辺機器の購入から始めるのではなく、実際の利用動線を確認してから必要な環境を決めます。

| 順番 | 確認すること | 決める内容 |
|---|---|---|
| 1 | PCを使う場所 | リハ室、病棟、ADL室、階段、ST室、カンファレンス室などを洗い出す |
| 2 | 保管と持ち出し | 端末番号、収納位置、持ち出し範囲、返却時刻を決める |
| 3 | 充電と電源 | 充電場所、通電方法、電源容量、配線方法を確認する |
| 4 | 記録スペース | 座位・立位入力席、モニター、周辺機器の配置を決める |
| 5 | 運用ルール | 返却、清拭、故障、紛失、予備機の扱いを統一する |
実際の現場では、端末台数よりも「どこで使い、どこへ戻すか」が曖昧なことで運用が崩れます。リハ科内だけで決められない電源、ネットワーク、セキュリティについては、施設管理部門や情報システム部門と分担して進めます。
電子カルテ導入直後は操作より環境面で困りやすい
リハ室で最初に問題になりやすいのは、電子カルテの操作方法よりも、PCをどこに置き、どこで充電し、どこで記録するかという環境面です。
紙カルテ時代に記録台やファイル棚として使っていた場所は、電子カルテ化後にはPC、電源、ネットワーク、モニター、周辺機器を含む作業エリアへ変わります。導入直後には、朝のPC争奪、充電切れ、マウスの紛失、返却場所のばらつき、終業前の記録渋滞などが起こりやすくなります。

| 困りごと | 起きやすい場面 | 導入前に決めること |
|---|---|---|
| 充電切れ | 午前・午後の連続使用後、病棟から戻った後 | 返却時刻、充電担当、予備機の使用条件 |
| 端末の所在不明 | 病棟、訓練室、カンファレンス室への置き忘れ | 端末番号、定位置、持ち出し範囲 |
| 記録渋滞 | 昼休み前、カンファレンス後、終業前 | 記録専用席、立位入力席、共有モニター |
| 通信不良 | 病棟の端、階段、屋外付近、個室 | 利用場所ごとのWi-Fi確認と代替手段 |
| 配線トラブル | デスク下、保管庫周囲、床面 | ケーブルトレー、タップ固定、清掃動線 |
ノートPCは保管・所在管理・清拭をセットにする
複数台のノートPCを運用する場合は、棚へ置くだけではなく、端末番号と収納位置を固定します。
特に20台以上になると、端末本体、ACアダプタ、マウス、変換アダプタ、清拭用品が増え、誰がどの端末を使っているのか分かりにくくなります。鍵付き保管庫を使用し、PC本体、収納場所、充電器の番号を一致させると、返却確認と棚卸がしやすくなります。
15.6インチのノートPCでは、画面サイズだけで保管庫を選ばず、本体の幅・奥行き・厚さ、電源コネクタの位置、ケーブルの曲げしろ、ACアダプタの収納場所まで確認します。通電したまま収納する場合は、メーカーの使用条件と保管庫内の放熱にも注意が必要です。
| 方法 | 向いている運用 | 注意点 |
|---|---|---|
| 一般的な棚 | 少数台を日中のみ管理する | 施錠、充電、定位置管理が不十分になりやすい |
| 鍵付き保管庫 | 複数台の所在と返却を管理する | 端末サイズ、収納台数、放熱、搬入経路の確認が必要 |
| 充電機能付き保管庫 | 保管と充電を一体化する | 電源容量、発熱、ケーブル配置を担当部門と確認する |
充電は台数ではなく消費電力と電源系統で設計する
夜間充電を行う場合は、接続台数だけで判断せず、ACアダプタの定格、電源タップの容量、コンセントとブレーカーの系統を確認します。
例えば24台を運用する施設では、1つの電源タップへ集中させず、12台ずつなど複数系統へ分ける方法が候補になります。ただし、適切な分け方はPCの消費電力や建物の電気設備によって異なるため、「12台なら安全」と一律には判断できません。施設管理部門に端末と周辺機器の定格を提示し、使用可能な電源系統を確認します。
終業後だけ充電する運用では、タイマー付き電源タップも選択肢になります。通電時間は一律に決めず、端末メーカーの仕様、バッテリー残量、更新処理、保管庫内の温度を踏まえて設定します。自動更新が夜間に行われる端末では、シャットダウンや通電をリハ科だけで変更せず、情報システム部門へ確認してください。
| 項目 | 確認内容 | 相談先 |
|---|---|---|
| 消費電力 | PCとACアダプタの定格を台数分確認する | 情報システム部門、機器事業者 |
| 電源容量 | タップ、コンセント、ブレーカーの許容範囲を確認する | 施設管理部門 |
| 系統分散 | 同一系統へ負荷が集中していないか確認する | 施設管理部門 |
| 通電時間 | 充電時間と夜間更新の有無を確認する | 情報システム部門 |
| 放熱 | 保管庫内へ熱がこもらないか確認する | 機器事業者、施設管理部門 |
記録スペースは短時間入力と長時間作業を分ける
記録渋滞を減らすには、すべてのスタッフが同じ机を使うのではなく、短時間入力と長時間作業の場所を分けます。
実施記録や申し送り確認は数分で終わる一方、計画書、サマリー、評価入力には一定の作業時間が必要です。短時間の入力には立位でも使える記録ステーション、長時間の文書作成には椅子とモニターを備えた座位席を用意すると、限られたスペースを回しやすくなります。
昇降式デスクは必須ではありませんが、スタッフが集中する時間帯の補助席として有効です。壁面の寸法だけで机を選ばず、通路幅、扉の開閉、車椅子や歩行練習の動線、コンセント位置も確認します。
| 要素 | 役割 | 確認すること |
|---|---|---|
| 立位入力席 | 実施記録や短時間の確認 | スタッフが滞留して訓練動線をふさがないか |
| 座位入力席 | 計画書、サマリー、評価入力 | 椅子、画面の高さ、作業時間を確保できるか |
| 外部モニター | 複数画面や長文記録の視認性を補う | 電子カルテ端末への接続可否と情報表示範囲 |
| ケーブルトレー | 床置き配線を減らす | 昇降時にケーブルが引っ張られないか |
| 周辺機器置き場 | マウスや変換アダプタの紛失を防ぐ | 共有物と端末専用品を区別できるか |
Wi-Fiは実際に端末を使う場所で確認する
通信確認はリハ室だけで終えず、スタッフが電子カルテを閲覧・入力するすべての場所で行います。
確認候補は、病棟、ADL室、階段、ST室、カンファレンス室、個室、屋外歩行へ出る出入口付近です。同じ病棟内でも、壁、扉、医療機器、アクセスポイントとの距離によって通信状況が変わることがあります。
Wi-Fiが不安定な場所では、アクセスポイントの調整や増設を情報システム部門へ相談します。記録ステーションへ有線LANを残せる場合は、院内ネットワークの設計とセキュリティ方針に沿って、通信障害時の代替手段として検討します。
確認時のポイント:アンテナ表示だけで判断せず、電子カルテへのログイン、患者画面の表示、記録保存まで実際の業務操作で確認します。
端末管理は院内の安全管理方針に沿って確認する
電子カルテ端末の持ち出し、アプリ追加、USB利用、アカウント管理は、リハ科独自の判断で変更せず、院内の運用管理規程にそろえます。
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、医療情報を扱う情報システムについて、導入、運用、利用、保守、廃棄までを含めた安全管理が求められています。リハ科でも、端末の所在、持ち出し手順、アクセス権限、紛失時の報告先を確認する必要があります。
PC番号、保管位置、使用者、持ち出し先を把握できる方法を決め、定期的な棚卸につなげます。共有アカウントの使用可否、画面ロック、不要なアプリ、外部媒体、院外ネットワーク接続については、情報システム部門の指示に従ってください。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| アカウント | 個人アカウント、共有端末へのログイン方法、権限範囲 |
| 画面ロック | 離席時の操作、自動ロックまでの時間 |
| 持ち出し | 院内の持ち出し範囲、院外持ち出しの可否 |
| 外部媒体 | USBメモリ、外付け機器、私物機器の接続可否 |
| 紛失・故障 | 発見時の初動、報告先、代替端末の手配 |
| 棚卸 | 端末台帳の管理者、確認頻度、確認記録 |
返却・清拭・故障対応を一枚の運用表にまとめる
機器をそろえた後は、誰でも同じ方法で使い、返却し、清拭できるようにルールを一枚へまとめます。
療養病棟では、スタッフが病棟とリハ室を繰り返し移動し、端末の利用時間や返却時刻がずれやすくなります。詳細なマニュアルを作る前に、PC番号、定位置、返却時刻、清拭方法、故障時の連絡先、予備機の使用条件を簡潔に掲示する方が運用を開始しやすくなります。
| 項目 | 決める内容 | 運用例 |
|---|---|---|
| 端末番号 | 本体、収納位置、充電器を一致させる | PT01〜PT24 |
| 持ち出し | 利用できる場所と記録方法を決める | 病棟持ち出し時は所定の方法で所在を共有 |
| 返却時刻 | 終業前の確認時間を決める | 最終使用者が所定時刻までに保管庫へ戻す |
| 清拭 | 用品、対象部位、実施時点を決める | 院内指定の方法で返却時に清拭する |
| 故障時 | 使用中止の判断と報告先を決める | リハ科担当者と情報システム部門へ報告する |
| 予備機 | 使用条件と返却先を決める | 故障や充電切れなど所定の条件で使用する |
電子カルテ環境の問題が、相談相手の不在、教育不足、記録ルールの不統一など、職場環境全体の問題と重なっている場合は、職場環境を整理する無料チェックシートも活用できます。
よくある失敗は機器購入を先行させること
導入時によくある失敗は、利用動線や管理者を決める前に、保管庫、机、モニター、電源タップを購入することです。
| 失敗 | 起こる問題 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 保管庫だけ購入する | 端末番号と収納位置が一致せず、所在を追えない | 本体・収納場所・充電器を同じ番号で管理する |
| 充電台数だけで考える | 電源容量や発熱を確認できていない | 定格と電源系統を施設管理部門へ確認する |
| Wi-Fiをリハ室だけで確認する | 病棟や階段で記録を保存できない | 実際の利用場所でログインから保存まで試す |
| 記録席を一種類にする | 短時間入力と文書作成が競合する | 立位の短時間席と座位の長時間席を分ける |
| 口頭ルールで開始する | 返却、清拭、故障対応がスタッフごとに変わる | 最低限の運用表を掲示する |
| 導入後に見直さない | 小さな不具合が恒常的な負担になる | 開始1か月後にトラブルを集計して更新する |
導入1か月後に運用を再評価する
導入前に決めたルールは完成版ではなく、実際の利用状況に合わせて1か月後に見直します。
新人スタッフや非常勤スタッフでも迷わず運用できるかを確認すると、ルールの抜けを見つけやすくなります。問題が起きた人を注意するのではなく、置き場所、表示、充電時間、記録席の数など、環境側で修正できないか検討します。
| 確認項目 | 見る指標 | 見直し例 |
|---|---|---|
| 充電 | 充電切れの回数、朝に使用できない端末数 | 返却時刻、通電時間、予備機運用を修正する |
| 所在管理 | 置き忘れ、返却忘れ、所在確認に要した時間 | 端末番号や持ち出し表示を分かりやすくする |
| 記録待ち | 昼前・終業前に待っている人数 | 短時間入力席と長時間作業席を再配置する |
| 通信 | 接続切れ、保存失敗、再ログインの発生場所 | アクセスポイントや利用場所を再確認する |
| 清拭 | 用品切れ、実施忘れ、方法のばらつき | 用品の定位置と実施時点を見直す |
| 周辺機器 | マウスやアダプタの紛失数 | 端末専用品と共有用品を区別する |
導入前チェックリスト
導入前は、保管、充電、記録、通信、配線、清拭、管理の7領域を確認します。

| 分類 | 確認項目 | チェック |
|---|---|---|
| 利用場所 | 電子カルテを閲覧・入力する場所を洗い出した | □ |
| 保管 | PC台数分の定位置と施錠方法を決めた | □ |
| 所在管理 | 端末番号、持ち出し方法、棚卸担当者を決めた | □ |
| 充電 | 消費電力、電源系統、通電方法を担当部門と確認した | □ |
| 記録 | 短時間入力と長時間作業の場所を確保した | □ |
| 通信 | 病棟、ADL室、階段などで実際の操作を確認した | □ |
| 配線 | タップとケーブルを床置きにしない配置を決めた | □ |
| 清拭 | 院内指定の清拭用品、方法、実施時点を確認した | □ |
| 故障・紛失 | 使用中止の判断、報告先、予備機の扱いを決めた | □ |
| 再評価 | 導入1か月後の見直し日と担当者を決めた | □ |
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
リハ室の電子カルテ導入で最初に決めることは何ですか?
最初に決めるのは、PCを使用する場所と保管場所です。利用場所を洗い出した後に、端末番号、持ち出し範囲、返却時刻、充電、記録スペースの順で具体化します。家具や周辺機器の購入を先行させると、実際の動線に合わない可能性があります。
ノートPCは立てて保管しても大丈夫ですか?
端末メーカーの保管条件を満たし、1台ずつ仕切られ、排気口やコネクタを圧迫しない方法であれば候補になります。通電中に収納する場合は、ケーブルの折れ、ACアダプタの密集、保管庫内の温度にも注意します。
夜間に複数台を充電しても大丈夫ですか?
台数だけでは判断できません。PCとACアダプタの定格、電源タップの容量、コンセントとブレーカーの系統、保管庫の放熱を確認する必要があります。施設管理部門と情報システム部門へ確認し、必要に応じて電源系統を分けます。
リハ室に昇降デスクは必要ですか?
必須ではありません。ただし、実施記録などの短時間入力と、サマリーなどの長時間作業が同じ席へ集中している場合は、立位入力席を追加することで記録待ちを減らせる可能性があります。
Wi-Fiはリハ室だけ確認すればよいですか?
リハ室だけでは不十分です。病棟、ADL室、階段、ST室、カンファレンス室など、実際に端末を使う場所で、ログイン、患者画面の表示、記録保存まで確認します。
導入後はいつ見直せばよいですか?
まずは導入1か月後を目安に、充電切れ、返却忘れ、記録待ち、通信不良、周辺機器の紛失を確認します。その後も端末台数、配置、スタッフ構成が変わった時点で見直します。
次の一手
リハ室の電子カルテ環境を整えるときは、まず使用場所、PC台数、保管場所、充電方法、記録スペースを一覧にし、リハ科内で決めることと、情報システム部門・施設管理部門へ確認することを分けましょう。
制度や院内運用を含めた関連情報は、制度・実務の記事一覧から確認できます。
電子カルテ上の実施記録や時刻入力を整理する場合は、リハビリ1単位の開始・終了時刻と記録方法をご覧ください。
参考文献
- 厚生労働省. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン. 2026年確認.
- 厚生労働省. 医療分野のサイバーセキュリティ対策について. 2026年確認.
- 厚生労働省. 医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト. 2025.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリテーションの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハビリテーション、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

