令和8年改定|運動器リハ上限緩和の対象と記録

制度・実務
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令和 8 年度改定|運動器リハ等の上限緩和対象を現場で確認する

令和 8 年度診療報酬改定では、疾患別リハビリテーション料の算定単位数上限が緩和される対象患者について、別表第九の三の考え方が見直されました。本記事では、運動器リハビリテーション料を算定する場面で迷いやすい「 6 単位超・ 9 単位までの判断」を、公式資料と疑義解釈をもとに整理します。

この記事で決めるのは、①どの入口で上限緩和対象に該当するか、②運動器リハで 9 単位を考えるときに何を確認するか、③増量した理由をどう記録するかです。点数表の全文解説ではなく、PT・OT・ST が現場で確認しやすい「対象確認→目的固定→記録」の型に絞ります。

結論:運動器リハは「どの入口で該当するか」を先に分けます

運動器リハビリテーション料で 6 単位超を考えるときは、「運動器だから一律に 9 単位まで」と読まないことが重要です。令和 8 年度改定では、別表第九の三のうち「早期歩行・ ADL 自立等を目的とする入院患者」の並びから、運動器リハビリテーション料(Ⅰ)が外れています。

一方で、疑義解釈その 2 では、回復期リハビリテーション病棟で運動器リハビリテーション料を算定する患者でも、別表第九の三のうち「脳血管疾患等の患者のうち発症日、手術日又は急性増悪の日から 60 日以内」に該当する場合は、1 日 9 単位を算定できると整理されています。つまり、実務では「運動器かどうか」より先に、該当する入口を確認するのが安全です。

このページで答えること/答えないこと

このページで答えるのは、別表第九の三に基づく上限緩和対象の確認、運動器リハで 9 単位を考える場面の読み方、増量時の記録の残し方です。特に、回復期病棟で運動器リハを算定している患者に対して、どの条件を見ればよいかを整理します。

一方で、離床を伴わないリハビリテーション、休日リハビリテーション加算、早期リハビリテーション加算、リハビリテーション総合計画評価料の細かな算定は本記事では深掘りしません。関連する論点は、本文中の内部リンクから各論へ進んでください。

公式差分:別表第九の三は「60 日以内の起点」と「対象の並び」が変わりました

最初に見るべき差分は 2 つです。1 つ目は、脳血管疾患等の患者について「発症後 60 日以内」から、「発症日、手術日又は急性増悪の日から 60 日以内」へ起点が明確化されたことです。2 つ目は、早期歩行・ ADL 自立等を目的とする入院患者の対象疾患別リハの並びから、運動器リハビリテーション料(Ⅰ)が外れたことです。

表:別表第九の三の主な差分(令和 8 年度改定時点)
論点 改定後の要点 現行からの変化 現場で確認すること
60 日以内の起点 脳血管疾患等の患者のうち、発症日、手術日又は急性増悪の日から 60 日以内 「発症後」だけでなく、手術日・急性増悪の日も起点として明確化 起点日、対象疾患との関連、60 日以内かを同じ欄で確認する。
早期歩行・ ADL 自立等の対象 心大血管(Ⅰ)、脳血管(Ⅰ)、廃用(Ⅰ)、呼吸(Ⅰ) 現行の並びにあった運動器(Ⅰ)が外れる 運動器リハでは、この入口だけで 9 単位対象と判断しない。
回復期等の患者 回復期リハ病棟入院料等を算定する患者。ただし運動器リハを算定するものを除く 運動器リハ算定患者は、この入口では対象外 別の入口、特に脳血管等 60 日以内に該当するかを確認する。

対象確認の 3 入口:どこで該当するかを先に決める

上限緩和対象を確認するときは、別表第九の三を「 3 つの入口」に分けると読み違えにくくなります。運動器リハで迷う場合も、まずどの入口に該当しているのかを明確にします。

運動器リハ上限緩和における9単位判断の3入口(回復期等、脳血管等60日以内、早期歩行・ADL自立目的)
図:運動器リハ上限緩和は「運動器だから可/不可」ではなく、どの入口で該当するかを先に確認します。
表:上限緩和対象を確認する 3 入口(別表第九の三)
入口 対象の見方 運動器リハでの注意点 記録・確認欄
入口 1:回復期等 回復期リハ病棟入院料又は特定機能病院リハ病棟入院料を算定する患者 運動器リハビリテーション料を算定するものは除かれる。 病棟区分、算定している疾患別リハ料
入口 2:脳血管等 60 日以内 脳血管疾患等の患者で、発症日・手術日・急性増悪の日から 60 日以内 疑義解釈では、回復期病棟で運動器リハを算定する患者でも、この項目に該当すれば 1 日 9 単位を算定可と整理されている。 起点日、60 日以内、手術と対象疾患の関連
入口 3:早期歩行・ ADL 自立目的 入院中の病棟等で、早期歩行・ ADL 自立等を目的として対象の疾患別リハ(Ⅰ)を算定 改定後の並びに運動器(Ⅰ)は含まれない。運動器だけでこの入口に乗せない。 目的、対象疾患別リハ、病棟での実施状況

運動器リハで 9 単位を考えるときの判断

運動器リハで 9 単位を考える場面では、「運動器(Ⅰ)が外れたから全て不可」とも、「回復期だから常に可」とも読まないことが大切です。疑義解釈その 2 の問 68 では、回復期リハビリテーション病棟で運動器リハビリテーション料を算定する患者でも、脳血管疾患等の 60 日以内の項目に該当する場合、1 日 9 単位を算定できるとされています。

そのため、現場では「現在算定している疾患別リハ料」だけで止めず、患者の対象疾患、起点日、手術と対象疾患の関連、60 日以内かどうかを一緒に確認します。特に手術日を起点にする場合は、疑義解釈で「手術は対象疾患に関連する手術であること」と示されているため、起点の根拠を記録上も追えるようにしておくと説明しやすくなります。

表:運動器リハで 9 単位判断に迷うときの確認順
確認順 見ること OK に近い例 注意が必要な例
1 別表第九の三のどの入口か 脳血管等 60 日以内に該当 「回復期だから」「運動器だから」だけで判断する
2 起点日 発症日、対象疾患に関連する手術日、急性増悪の日が明確 手術日だけが残り、対象疾患との関連が不明
3 60 日以内か 起点日から 60 日以内で確認済み 転棟・転院で起点が曖昧になっている
4 増量の目的 歩行・移乗・ADL の段階目標が明確 単位数だけ増え、目的が記録に残っていない

PDF:上限緩和対象の確認と記録を 1 枚で残す

実務では、制度文を読み直すよりも「どの入口で該当したか」「起点日はいつか」「 9 単位にする目的は何か」を同じ紙面で確認できると、担当者間の判断がそろいやすくなります。下の PDF は、別表第九の三の 3 入口、運動器リハで迷う場面、記録の 3 点セットを A4 1 枚にまとめた確認シートです。

運動器リハ上限緩和の対象確認シート

印刷して、対象入口・起点日・増量目的・結果記録を 1 枚で確認できます。

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混同注意:上限緩和と「離床を伴わないリハ」は別論点です

上限緩和対象の確認と、離床を伴わないリハビリテーションの「特定の患者」判定は別論点です。疑義解釈その 2 では、ベッド上のみであっても、ポジショニング又は拘縮予防等を目的とした他動的訓練以外を行っている場合は、特定の患者に該当しない例が示されています。

逆に、ベッド上のみで、拘縮予防や褥瘡予防を目的とした他動的関節可動域訓練やポジショニングのみを行う場合は、特定の患者に該当し、100 分の 90 の点数による 2 単位までの算定対象と整理されています。上限緩和の記事内では混同防止にとどめ、詳しい対象・除外・摘要は離床なし 20 分リハ算定の記事で確認してください。

記録の型:9 単位判断は「入口・目的・結果」で残す

上限緩和を使う場合、長い文章よりも「どの入口で対象に該当したか」「何のために単位を増やしたか」「増やした分で何が変わったか」が追える記録が重要です。担当者が変わっても説明できるように、記録は 3 点セットに固定します。

表:上限緩和を説明しやすくする 3 点セット記録
残す項目 書き方の例 確認ポイント
対象の入口 「脳血管等 60 日以内に該当。起点:○月○日手術日」 入口と起点を同時に残す。
増量の目的 「歩行自立へ向け、病棟内歩行距離と移乗介助量の改善を目的」 目的は 1 〜 2 個に絞る。
結果 「歩行 80 m、方向転換時ふらつき軽減。移乗は軽介助から見守りへ」 数値 1 つ+所見 1 つで残す。

現場の詰まりどころ:迷う原因は「入口」と「起点」が混ざることです

現場で詰まりやすいのは、制度文そのものよりも、対象の入口と起点日の確認が混ざる場面です。特に、回復期病棟、運動器リハ、脳血管等 60 日以内、手術日を起点にするケースが重なると、担当者ごとに判断がぶれやすくなります。

  • よくある失敗 1:「回復期だから 9 単位」と短絡する → 入口 1 で運動器リハ算定患者が除かれる点を確認する。
  • よくある失敗 2:「運動器だから不可」と短絡する → 入口 2 の脳血管等 60 日以内に該当するか確認する。
  • よくある失敗 3:手術日を起点にする根拠が残らない → 対象疾患に関連する手術かを記録に残す。

回避手順 1:3 入口の表に戻る
回避手順 2:3 点セット記録に戻る
関連:令和 8 年改定リハ確定差分の早見を確認する

ここまで型をそろえても毎回同じところで詰まる場合は、書き方だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けている可能性もあります。

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よくある質問(FAQ)

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Q1. この記事は改定案ではなく確定情報ですか?

A. 令和 8 年度診療報酬改定の公式資料と疑義解釈その 2 をもとに、現時点で確認できる内容へ更新しています。今後、追加の疑義解釈や訂正通知が出た場合は、該当箇所を更新してください。

Q2. 回復期病棟で運動器リハを算定している患者は、1 日 9 単位を算定できますか?

A. 運動器リハを算定しているという理由だけでは判断できません。疑義解釈その 2 では、別表第九の三のうち「脳血管疾患等の患者のうち発症日、手術日又は急性増悪の日から 60 日以内」に該当する場合は、1 日 9 単位を算定できると整理されています。

Q3. 運動器リハビリテーション料(Ⅰ)は上限緩和対象から外れたのですか?

A. 「早期歩行・ ADL 自立等を目的とする入院患者」の並びからは、運動器リハビリテーション料(Ⅰ)が外れています。ただし、別の入口、たとえば脳血管等 60 日以内に該当するかは別に確認が必要です。

Q4. 手術日を起点にする場合、何を残せばよいですか?

A. 疑義解釈では、手術は対象疾患に関連する手術であることに留意するとされています。記録では、起点日だけでなく、対象疾患との関連が説明できるように残すと安全です。

Q5. 上限緩和と離床を伴わないリハは同じ話ですか?

A. 別論点です。上限緩和は 9 単位までの対象確認、離床を伴わないリハは「特定の患者」や 2 単位までの制限が関係します。両方が同じ患者で問題になることはありますが、判断表は分けて確認してください。

次の一手

まずは、①別表第九の三の 3 入口を確認する、②運動器リハで迷う症例は脳血管等 60 日以内の該当性を確認する、③記録を「入口・目的・結果」の 3 点セットにそろえる、の順で進めると実務に落とし込みやすくなります。


参考資料

  1. 厚生労働省.令和 8 年度診療報酬改定について.公式ページ
  2. 厚生労働省.令和 8 年度診療報酬改定 13. 重点的な対応が求められる分野(リハビリテーション関係).PDF
  3. 厚生労働省保険局医療課.疑義解釈資料の送付について(その 2).令和 8 年 4 月 1 日.PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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