股関節外旋六筋とは?6筋の名前・位置・順番
股関節外旋六筋とは、梨状筋・上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋・大腿方形筋・外閉鎖筋の6つの深層筋を指します。主に股関節外旋に関与しますが、股関節屈曲角度によって回旋作用が変化する筋もあります。また、筋の走行や筋線維構築から、股関節の動的安定性に寄与する可能性も考えられています。
この記事では、新人PT・OT向けに、外旋六筋の順番・起始停止・作用を一覧で整理します。さらに、骨性ランドマークを用いた位置の把握、触診の限界、殿部痛の初期評価、記録例まで解説します。
先に結論|外旋六筋の覚え方
後方に並ぶ5筋は、上から「梨→上→内→下→方」です。
梨状筋→上双子筋→内閉鎖筋→下双子筋→大腿方形筋の順に覚え、外閉鎖筋は閉鎖孔外面から大腿骨後方へ回り込む筋として別に整理します。
股関節外旋六筋の一覧
- 梨状筋:仙骨前面から大坐骨孔を通って大転子付近へ向かう
- 上双子筋:坐骨棘から内閉鎖筋腱に沿って走行する
- 内閉鎖筋:骨盤内から小坐骨孔を経由して大転子へ向かう
- 下双子筋:坐骨結節から内閉鎖筋腱に沿って走行する
- 大腿方形筋:坐骨結節から大腿骨近位部へ向かう幅広い筋
- 外閉鎖筋:閉鎖孔外面から大腿骨頸部後方を回り込む

外旋六筋の多くは大殿筋の深層に位置します。位置を覚えるときは、仙骨、坐骨棘、坐骨結節、大転子、閉鎖孔、転子窩を基準にすると理解しやすくなります。
股関節外旋六筋の起始停止・作用一覧
外旋六筋の起始停止は、骨盤側の起始と大腿骨近位部の停止を対応させると整理しやすくなります。特に上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋は、内閉鎖筋腱を中心とする解剖学的なまとまりとして理解することが重要です。
| 筋名 | 起始 | 停止 | 主な作用 |
|---|---|---|---|
| 梨状筋 | 仙骨前面など | 大転子上縁付近 | 主に外旋、屈曲位での外転。屈曲角度により回旋モーメントアームが変化 |
| 上双子筋 | 坐骨棘 | 内閉鎖筋腱とともに大転子内側面付近 | 主に外旋。内閉鎖筋と協働 |
| 内閉鎖筋 | 閉鎖膜内面、閉鎖孔周囲の骨盤面 | 大転子内側面付近 | 主に外旋。屈曲角度により外旋モーメントアームが変化 |
| 下双子筋 | 坐骨結節上部 | 内閉鎖筋腱とともに大転子内側面付近 | 主に外旋。内閉鎖筋と協働 |
| 大腿方形筋 | 坐骨結節外側縁 | 方形結節、転子間稜周囲 | 主に外旋。内転にも関与 |
| 外閉鎖筋 | 閉鎖膜外面、閉鎖孔周囲の骨外面 | 大腿骨転子窩 | 主に外旋。股関節安定化への関与も示唆される |
停止部の細かな範囲には、解剖学的な個人差や文献による記載差があります。上下双子筋と内閉鎖筋は腱が密接に関連するため、各筋を完全に独立した構造として覚えるよりも、共通する走行と付着部を理解すると臨床で応用しやすくなります。
位置関係で押さえたい3つの特徴
- 梨状筋:大坐骨孔を通過し、坐骨神経との位置関係が重要になる
- 上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋:内閉鎖筋腱を中心にまとまる。内閉鎖筋は小坐骨孔付近で走行方向が変化する
- 大腿方形筋・外閉鎖筋:股関節後下方や大腿骨頸部後方の解剖を理解する際に重要になる
股関節外旋六筋の順番と覚え方
外旋六筋の順番は、後方に並ぶ5筋を上から覚える方法が基本です。「梨→上→内→下→方」を覚え、外閉鎖筋を別に追加します。
後方から見た基本的な上下関係
梨 → 上 → 内 → 下 → 方
梨状筋 → 上双子筋 → 内閉鎖筋 → 下双子筋 → 大腿方形筋
上双子筋と下双子筋は、内閉鎖筋腱を上下から挟むように位置します。「上・内・下」を一つのまとまりとして覚えると、起始停止の理解にもつながります。
外閉鎖筋は閉鎖孔外面から起こり、大腿骨頸部の後方を回り込んで転子窩へ向かいます。後方の5筋と同じ上下の列に単純に当てはめないことがポイントです。
外旋六筋の作用は股関節肢位によって変わる
外旋六筋は主に股関節外旋に関与しますが、股関節の屈曲角度によって回旋モーメントアームが変化する筋と、外旋方向を維持する筋があります。すべての外旋六筋が屈曲位で内旋筋に変化するわけではありません。
Delpら(1999)は、4体の解剖学的標本を用いて股関節周囲筋の回旋モーメントアームを検討しました。梨状筋は屈曲0°で外旋方向、90°で内旋方向のモーメントアームを示しました。一方、内閉鎖筋は外旋方向のモーメントアームが減少し、大腿方形筋と外閉鎖筋は検討した条件で外旋方向を維持しました。
| 筋名 | 屈曲0° | 屈曲90° | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 梨状筋 | 外旋方向 | 内旋方向 | 屈曲により回旋モーメントアームの方向が変化 |
| 内閉鎖筋 | 外旋方向 | 外旋方向 | 屈曲位で外旋モーメントアームが減少 |
| 大腿方形筋 | 外旋方向 | 外旋方向 | 検討条件では外旋方向を維持 |
| 外閉鎖筋 | 外旋方向 | 外旋方向 | 検討条件では外旋方向を維持 |
※上表はDelpらの4体の標本における股関節回旋中間位の結果を簡略化したものです。上下双子筋は同研究の個別測定対象ではありません。回旋モーメントアームは筋の力学的作用を示す指標であり、筋活動量や実際の関節トルクを直接測定したものではありません。
外旋六筋は股関節の安定化にも関与する?
外旋六筋は股関節の深部を走行するため、回旋運動だけでなく、関節安定性への寄与も考えられています。
Parvareshら(2019)は、短外旋筋群の筋線維構築を調査しました。双子筋と閉鎖筋群を機能的なまとまりとして捉えると、生理学的筋横断面積と筋線維長の特徴から、関節回旋よりも安定化に適した役割を担う可能性が示唆されました。
Scagnettiら(2021)も、外旋六筋の筋構築を検討しています。これらは解剖学的・生体力学的な機能推定を支える研究ですが、個々の患者における動的安定性や特定筋の機能不全を直接診断できる根拠ではありません。
臨床では、外旋筋力の低下や股関節の不安定感だけで原因筋を決めず、疼痛、可動域、荷重動作、骨盤・体幹の制御を組み合わせて評価します。
外旋六筋の触診|ランドマークと限界
外旋六筋は大殿筋の深層に位置するため、体表から6筋すべてを明確に触り分けることは困難です。触診では個別筋の特定よりも、骨性ランドマークと症状部位の位置関係を把握することを優先します。
確認する骨性ランドマーク
- 大転子:股関節外側の基準点として確認する
- 仙骨外側部:梨状筋の走行を推定する基準とする
- 坐骨結節:大腿方形筋やハムストリングス近位部との位置関係を整理する
- 坐骨棘:上双子筋の起始を理解するための解剖学的指標。ただし、体表から容易に触知できる部位ではない
大転子の位置が曖昧な場合は、大転子の触診方法と評価での使い方を確認すると、股関節周囲のランドマークを整理しやすくなります。
圧痛だけで原因筋を特定しない
殿部深部に圧痛があっても、深層外旋筋群が症状の原因とは限りません。大殿筋、坐骨神経周囲組織、股関節、仙腸関節周囲など、複数の組織が関与する可能性があります。
触診では強い圧迫による症状誘発を避け、疼痛部位、股関節運動、抵抗運動、座位や歩行での症状変化を組み合わせます。しびれや放散痛が増悪する場合は、刺激を継続しないことが重要です。
外旋六筋を臨床で確認する初期評価フロー
外旋六筋の関与を考えるときは、疼痛部位→神経症状→股関節可動域→抵抗運動→機能動作の順に情報を整理します。以下は短時間で初期評価を組み立てるための例であり、特定の時間内に診断を確定する手順ではありません。
- 疼痛部位と経過:鼠径部、股関節外側、殿部深部、坐骨結節周囲のどこに症状があるか。発症時期、外傷歴、安静時痛、座位での変化も確認する
- 腰椎・神経症状:腰痛、下肢への放散痛、しびれ、筋力低下、感覚変化、腰椎運動による症状変化を確認する
- 股関節可動域:内旋・外旋を左右比較し、屈曲角度、骨盤固定条件、疼痛が出現する範囲を記録する
- 抵抗運動:外旋抵抗時の疼痛、筋出力、代償運動を確認する。ただし、個別筋を特定する検査ではない
- 機能動作:寝返り、立ち上がり、片脚支持、方向転換、歩行など、実施可能な動作で症状と運動の関係を確認する
初期評価後の判断
股関節内旋で殿部痛が再現されても、それだけで外旋六筋の短縮や過緊張とは判断できません。関節包、骨形態、股関節疾患、神経症状、疼痛による防御性収縮などを考慮し、複数の所見が一致するか確認します。
高齢者・療養病棟での評価
高齢者や活動性が低い患者では、標準的な筋力検査や片脚支持が難しい場合があります。その場合は、背臥位での下肢回旋位置、寝返り、起き上がり、端座位、移乗、立ち上がりなど、実施可能な動作から情報を集めます。
疼痛や可動域に加え、介助時の抵抗感、骨盤の代償、荷重差、動作中の表情や訴えを記録すると再評価につなげやすくなります。ただし、下肢の回旋位や介助時の抵抗感だけで筋短縮・筋緊張異常を断定しないことが重要です。
梨状筋と坐骨神経|殿部痛の評価で注意すること
梨状筋は坐骨神経との解剖学的位置関係が近く、殿部痛や下肢への放散症状を評価する際に重要です。ただし、殿部痛があることと梨状筋症候群であることは同義ではありません。
一般的に坐骨神経は梨状筋の下方を通過しますが、神経の分岐や筋との位置関係には解剖学的変異があります。また、坐骨神経は梨状筋以外の深殿部組織によっても絞扼される場合があります。
殿部痛で考慮する主な病態
| 鑑別対象 | 確認したい所見 |
|---|---|
| 腰椎由来の神経根症状 | 腰椎運動による症状変化、放散痛、感覚・筋力・反射の変化 |
| 股関節内病変 | 鼠径部痛、股関節可動域制限、荷重時痛 |
| 深殿部症候群 | 殿部深部痛、座位での増悪、坐骨神経領域の症状 |
| 仙腸関節周囲の疼痛 | 骨盤後方の疼痛、荷重や姿勢変化との関連 |
| ハムストリングス近位部の問題 | 坐骨結節周囲の疼痛、股関節屈曲や筋収縮による症状 |
| 筋・筋膜性疼痛 | 局所的な疼痛、筋活動や姿勢との関連 |
深殿部症候群は、腰椎椎間板病変以外の原因による深殿部での坐骨神経絞扼を含む概念です。病歴、身体所見、必要に応じた画像検査などを組み合わせて評価され、単一の圧痛所見や徒手検査だけで確定できるものではありません。
安全管理|早急な医学的評価が必要な徴候
進行する下肢筋力低下、新たな排尿・排便障害、会陰部の感覚異常、重度の外傷後疼痛、発熱を伴う強い疼痛などがある場合は、外旋六筋への徒手的介入を優先せず、速やかに医師へ報告・相談します。馬尾症候群などが疑われる場合は緊急評価が必要です。
外旋六筋の評価でよくある失敗と記録例
外旋六筋の臨床評価では、解剖学的な知識をそのまま原因診断に置き換えないことが重要です。特に、圧痛・可動域制限・筋力低下を単独で解釈すると、他の病態や代償運動を見落とす可能性があります。
| よくある失敗 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 殿部痛を梨状筋由来と決めつける | 腰椎、股関節、神経由来の症状を見落とす | 症状分布と神経学的所見を確認する |
| 内旋制限を外旋六筋の短縮と判断する | 骨性制限、関節包、疼痛の影響を考慮できない | 股関節肢位と骨盤固定条件をそろえて再評価する |
| 圧痛だけで原因筋を特定する | 深層筋の個別触診には限界がある | 可動域、抵抗運動、機能動作の所見を統合する |
| 外旋筋力だけで安定性を判断する | 荷重時の運動制御や体幹代償を把握できない | 実施可能な荷重動作も確認する |
| 左右差だけで異常と判断する | 既往、骨形態、疼痛、活動性の影響を考慮できない | 症状や生活動作への影響と照合する |
評価所見の記録例
記録では、確認できた事実と解釈を分け、測定肢位や症状再現条件を残します。以下は記載方法を示す架空の例です。
記録例|股関節後方組織の関与を疑う場合
O:右殿部深部に疼痛あり。股関節屈曲90°位、骨盤固定下で内旋ROMは右20°、左35°。右内旋終末域で殿部痛を再現。外旋抵抗運動では疼痛を認めず、筋出力に軽度左右差あり。腰椎自動運動では症状変化なし。
A:右股関節内旋終末域の疼痛と可動域左右差を認める。深層外旋筋群を含む後方組織の関与は考えられるが、現時点で原因組織の特定は困難。股関節内病変や関節包性制限なども鑑別が必要。
P:疼痛の推移、股関節肢位を統一したROM、神経学的所見、荷重動作での症状再現を継続評価する。必要に応じて医師と情報共有する。
「梨状筋短縮」「外旋六筋の過緊張」と断定する前に、どの肢位で、どの運動により、どの症状が再現されたかを明確にすると、介入後の変化を比較しやすくなります。
人工股関節全置換術後に確認したいこと
人工股関節全置換術(THA)後は、短外旋筋群が手術進入法によって処理・修復の対象となる場合があります。ただし、すべての術式で同じ組織が処理されるわけではありません。
評価時は、手術記録、進入法、修復の有無、術者からの指示、荷重条件、動作上の注意点を確認します。外旋六筋の位置関係だけから、脱臼リスクや運動制限を一律に判断しないことが重要です。
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FAQ|股関節外旋六筋のよくある質問
外旋六筋は上からどの順番ですか?
後方から見た基本的な上下関係は、梨状筋→上双子筋→内閉鎖筋→下双子筋→大腿方形筋です。外閉鎖筋は閉鎖孔外面から大腿骨後方へ回り込むため、別に覚えると整理しやすくなります。
梨状筋は股関節屈曲90°で内旋筋になりますか?
Delpら(1999)の解剖学的研究では、梨状筋の回旋モーメントアームが屈曲0°では外旋方向、90°では内旋方向を示しました。ただし、これは特定の標本・測定条件で得られた力学的結果であり、すべての患者で内旋筋として機能すると断定できるものではありません。
外旋六筋を個別に触診できますか?
大殿筋の深層にあるため、6筋すべてを体表から明確に触り分けることは困難です。骨性ランドマーク、疼痛部位、可動域、抵抗運動、機能動作を組み合わせて評価します。
股関節内旋制限は外旋六筋の短縮が原因ですか?
外旋六筋を含む後方組織が関与する可能性はありますが、関節包、骨形態、疼痛、変形性股関節症、骨盤代償なども影響します。内旋制限だけで原因を特定することはできません。
殿部痛があれば梨状筋症候群ですか?
殿部痛だけでは判断できません。腰椎由来の神経症状、股関節疾患、仙腸関節周囲の問題、深殿部での坐骨神経絞扼、筋・筋膜性疼痛などを考慮します。
次の一手
外旋六筋の名称・起始停止・作用を確認したら、骨性ランドマークと実際の評価動作を関連づけてみましょう。まずは大転子の位置を確認し、股関節の内旋・外旋を骨盤固定下で比較することから始めると整理しやすくなります。
触診を深めたい方:大転子の触診方法|場所・評価での使い方で、股関節周囲のランドマークを確認できます。
解剖を体系的に復習したい方:解剖ライブラリから、骨・筋・神経の位置関係をまとめて確認できます。
参考文献
- Scagnetti IA, Jadeski LC, Brown SHM. Deep external rotator muscles of the hip: an anatomical and architectural study. Eur J Anat. 2021;25(1):49-55. 原著論文
- Parvaresh KC, et al. Architecture of the short external rotator muscles of the hip. BMC Musculoskelet Disord. 2019;20:611. PubMed Central
- Delp SL, Hess WE, Hungerford DS, Jones LC. Variation of rotation moment arms with hip flexion. J Biomech. 1999;32(5):493-501. PubMed
- Aung HH, et al. Anatomical study of the obturator internus, gemelli and quadratus femoris muscles with special reference to their innervation. Anat Rec. 2001;263(1):41-52. PubMed
- Kawaguchi Y, et al. Functional and clinical anatomy of the obturator externus muscle. Surg Radiol Anat. 2021;43:1491-1498. PubMed Central
- Miyachi R, et al. Change in muscle thickness during exercise to stabilize the hip joint against a load in the ventral direction of the femoral head. J Phys Ther Sci. 2019;31(11):929-933. PubMed Central
- Carro LP, et al. Deep gluteal space problems: piriformis syndrome, ischiofemoral impingement and sciatic nerve release. Muscles Ligaments Tendons J. 2016;6(3):384-396. PubMed Central
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
療養病院での臨床経験をもとに、理学療法・リハビリテーション領域の評価、臨床判断、記録に役立つ情報を発信しています。新人から中堅のPT・OT・STが、解剖学的知識を実際の臨床場面に結びつけられるよう、評価の考え方を整理しています。
保有資格:脳卒中認定理学療法士、褥瘡・創傷ケア認定理学療法士、登録理学療法士、3学会合同呼吸療法認定士、福祉住環境コーディネーター2級。
記事内容は公開された研究論文や専門資料を参考に作成しています。実際の評価・介入では、患者の状態、施設の運用、主治医の指示などを優先してください。
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