- ICF 修飾子( 0–4・ 8 / 9 )の決め方|基準軸を 1 本に固定してブレを止める
- 図版で全体像を確認| 5 分フロー
- まずは早見表| 0–4 と 8 / 9 を運用ルールで揃える
- 最初に決める 1 つだけ| 0–4 を何で判定するか(基準軸)
- 現場の詰まりどころ|点数はあるのに再現できないを防ぐ
- 8 と 9 の使い分け|情報不足と適用外を混ぜない
- Performance / Capacity を揃える|条件の書き方テンプレ
- 5 分で回す運用フロー|基準軸 → 条件 → 根拠 1 行
- よくある失敗( OK / NG )|詰まりどころはここ
- 記録テンプレ(コピペ用)|条件 → 結果 → 根拠
- よくある質問( FAQ )
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
ICF 修飾子( 0–4・ 8 / 9 )の決め方|基準軸を 1 本に固定してブレを止める
ICF の修飾子( qualifier )は、同じコードでも「どの程度できるか」を数値で揃えるための仕組みです。現場で点数がズレる主因は、0–4 を何で判定するか(距離/介助量/時間)が評価者ごとに違うことにあります。
本記事は、暗記よりも評価者間でブレない運用に焦点を当てます。基準軸を 1 本に固定し、8 / 9(情報不足/適用外)を混ぜないだけで、記録品質と再評価の比較可能性が上がります。
図版で全体像を確認| 5 分フロー
まずは図で全体手順を掴むと、本文の表とテンプレが読みやすくなります。院内で共有する場合は、判定の順番(基準軸 → 条件固定 → 修飾子判定)をこの図に合わせて統一すると運用が安定します。
まずは早見表| 0–4 と 8 / 9 を運用ルールで揃える
修飾子は「公式文言の暗記」より、施設内で同じものさしを共有できることが重要です。以下は PT が病棟・外来・在宅で使いやすい運用版です。
| 値 | 意味(運用の芯) | 判定の例(距離/介助量/時間) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 0 | 問題なし/支障なし | 距離:目標距離を安定して達成/介助量:見守り不要/時間:標準範囲で完了 | 条件(杖・場所・時間帯)を併記 |
| 1 | 軽度の問題 | 距離:達成できるが速度低下/介助量:声かけ 1 回程度/時間:軽度延長 | 境界なので根拠 1 行を必ず残す |
| 2 | 中等度の問題 | 距離:目標の半分程度で休憩/介助量:軽介助が必要/時間:明確に延長 | 「どの条件で可能か」を明示 |
| 3 | 重度の問題 | 距離:数 m で停止/介助量:中等度以上介助/時間:中断が多い | 安全管理(転倒リスク等)も記載 |
| 4 | 完全な問題 | 距離:実施不能/介助量:全介助でも成立困難/時間:開始不能 | 不能理由を 1 つに絞って記載 |
| 8 | 情報不足(未評価・欠損) | 評価機会がない、データ未取得、記録未回収 | 次回評価予定を一言添える |
| 9 | 適用外(対象活動なし) | 文化・役割・生活様式として対象外 | 対象外理由を短く明示 |
最初に決める 1 つだけ| 0–4 を何で判定するか(基準軸)
詰まりどころは、同じコードを「距離」「介助量」「時間」で混在判定してしまう点です。コード群ごとに基準軸を 1 本に固定すると、縦断比較が成立しやすくなります。
PT 領域では、移動は距離、ADL は介助量を主軸に置き、時間を補助指標にする運用が実装しやすいです。
| 領域(例) | 推奨の基準軸 | 補助で書くと強い情報 |
|---|---|---|
| 歩行・移動(屋内外) | 距離( m )+休憩要否 | 速度、段差、補助具、見守り |
| 起居・移乗 | 介助量(見守り/軽介助/中等度/全介助) | 手すり、ベッド高、疼痛 |
| セルフケア | 介助量 | 自助具、手順理解、疲労 |
| 外出・買い物など複合課題 | 距離(活動範囲)または介助量(同行要否) | 交通手段、時間帯、環境因子 |
現場の詰まりどころ|点数はあるのに再現できないを防ぐ
8 と 9 の使い分け|情報不足と適用外を混ぜない
評価していない項目に 9 を入れるのが最も多いエラーです。8 は情報不足、9 は適用外で役割が異なります。ここを混ぜると、再評価時に「改善か未評価か」を判別できません。
運用では、8 に「次回評価予定」、9 に「対象外理由」を 1 行添えるだけで、記録の解釈が安定します。
Performance / Capacity を揃える|条件の書き方テンプレ
同じ活動でも、普段の環境( Performance )と能力条件( Capacity )で点は変わります。主軸を施設で決めておくと、カルテの読みやすさが上がります。
実務では Performance 主体、必要時のみ Capacity 併記が回しやすいです。両方書く場合は、文章構造を固定して比較可能性を担保します。
| 区分 | テンプレ | 例 |
|---|---|---|
| Performance | 普段の環境(補助具/支援者/場所)+結果 | 屋内は T 字杖+見守りで 30 m 可 |
| Capacity | 評価条件(最良条件/評価場面)+結果 | 平坦路・評価者見守りで 50 m 可 |
| 差の説明 | 差を生む要因(疲労/不安/環境)を 1 つ | 帰宅後は疲労で速度低下し休憩増加 |
5 分で回す運用フロー|基準軸 → 条件 → 根拠 1 行
最短手順は、①基準軸を決める ②条件を固定する ③根拠を 1 行で残す、の 3 点です。特に 1 と 2 の境界は根拠を残すほど再現性が上がります。
- 基準軸を 1 本選ぶ(距離/介助量/時間)
- 条件を固定する(補助具、場所、支援者、時間帯)
- 0–4を付ける(迷ったら安全側)
- 根拠 1 行を書く(距離・介助量・時間のどれかに必ず触れる)
- 未評価は 8、適用外は 9(理由を短く)
よくある失敗( OK / NG )|詰まりどころはここ
| 場面 | NG(起きがち) | OK(直し方) | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 0–4 の判定 | 距離判定と介助量判定が混在 | コード群ごとに基準軸を固定 | 距離/介助量/時間の採用軸を明記 |
| 8 / 9 | 未評価に 9 を付与 | 8=情報不足、9=適用外で分離 | 8 は次回予定、9 は対象外理由 |
| 縦断比較 | 補助具・場所が毎回違う | 条件を固定して追跡 | テンプレ文で記録構造を統一 |
| 多職種共有 | 点数のみで根拠不明 | 根拠 1 行を添える | 安全管理(転倒等)も一言追加 |
記録テンプレ(コピペ用)|条件 → 結果 → 根拠
- Performance:(場所)(補助具)(支援)で(距離/介助量/時間)→ 修飾子( 0–4 )
- Capacity:(評価条件)で(距離/介助量/時間)→ 修飾子( 0–4 )
- 根拠:(疲労/疼痛/不安/環境)により(差が出る要因)
- 8:本日評価なし(理由:__)。次回(__)で確認予定。
- 9:生活様式上 対象外(理由:__)。
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 「 1 と 2 」で迷うことが多いです。どう揃えればいい?
先に基準軸を 1 本に固定します(距離/介助量/時間)。次に「目標の半分で休憩」「軽介助が必要」など、境界条件を施設内で短文ルール化すると評価者間で揃いやすくなります。
Q2. 8 と 9 の違いは?
8 は情報不足(未評価・欠損)、9 は適用外(対象活動がない)です。8 は次回評価予定、9 は対象外理由を一言添える運用が有効です。
Q3. Performance と Capacity は両方書くべき?
日常支援に直結させるなら Performance 主体、能力変化を追う必要があるときのみ Capacity を併記する運用が実務的です。両方書く場合は条件の書式を固定してください。
Q4. 再評価の間隔はどれくらいが現実的?
病期・介入量に合わせて、急性期は短め、維持期は長めに設定します。重要なのは間隔そのものより、同条件で比較できる記録を維持することです。条件変更があった日は必ず明記してください。
次の一手
- 運用を整える:ICF の書き方・記載例(実務版)(全体像)
- 共有の型を作る:ICIDH と ICF の違い・読み替え方(すぐ実装)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ). Geneva: WHO; 2001. WHO 公式ページ
- Stucki G, Cieza A, Ewert T, et al. Application of the International Classification of Functioning, Disability and Health ( ICF ) in clinical practice. Disabil Rehabil. 2002;24(5):281-282. doi: 10.1080/09638280110105222. PubMed
- Stucki G. International Classification of Functioning, Disability, and Health ( ICF ): a promising framework and classification for rehabilitation medicine. Am J Phys Med Rehabil. 2005;84(10):733-740. doi: 10.1097/01.phm.0000179521.70639.83. PubMed
- Ustün TB, Chatterji S, Bickenbach J, Kostanjsek N, Schneider M. The International Classification of Functioning, Disability and Health: a new tool for understanding disability and health. Disabil Rehabil. 2003;25(11-12):565-571. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


