IDDSI は「測り方の標準化」で現場が回ります(結論)
IDDSI は、とろみを「感覚」ではなく同じ道具・同じ手順で判定して、チームの共通言語にする枠組みです。飲料はレベル 0〜 4 を中心に扱い、レベルごとに簡単なテストで確認します。
ポイントは、10 ml シリンジ+ 10 秒のフローテストを「温度・混和・経過時間」まで含めて固定することです。条件が揃えば、提供や訓練の説明が短くなり、再評価もブレません。IDDSI は飲料がレベル 0〜 4、食形態がレベル 3〜 7 という連続体で整理されます。
新人〜中堅がつまずきやすい「基準の統一」「申し送り」「止めどき」を 1 ページで整理しています。
IDDSI で「飲料」を判定する考え方(レベル 0〜 4)
IDDSI は嚥下調整の共通言語として、飲料・食形態をレベルで整理します。飲料はレベル 0(薄い)〜レベル 4(極めて濃い)が対象で、レベルごとに「流れ方」や「まとまり」を簡便に確認します。IDDSI の枠組み自体は公式に示されており、飲料がレベル 0〜 4 に位置づけられます。(iddsi.org)
現場では「とろみの段階名」より、判定が再現できるかが重要です。IDDSI のフローテストは、液体が嚥下時のボーラスとして流れる条件を想定した簡便テストとして整理されています。(iddsi.org)
準備する道具(まずは最小セット)
病棟での最小セットは、次の 3 点に絞ると回ります。
- 10 ml シリンジ(スリップチップ型など、目盛 0〜 10 ml が明確なもの)
- タイマー( 10 秒が測れれば OK )
- 記録用紙(テンプレ)(温度・混和・経過時間を残す)
シリンジは「同じ種類」を固定するのがおすすめです。フローテストではシリンジの規格(容量や筒の長さ)が結果に影響し得るため、同じ器具を継続して使う前提で運用します。(UCL Discovery)
IDDSI フローテストの手順( 10 秒・残留量で判定)
フローテストは「 10 ml を入れて 10 秒流す → 残った量で判定」というシンプルな流れです。最初に条件を固定してから測ります。
手順 1:条件を固定(ここが一番大事)
- 同じ飲料(同じ濃度調整)を用意する
- 温度を揃える(例:室温/冷温どちらかに統一)
- 混和手順を揃える(混ぜ方、回数、溶かしてから測るまでの待ち時間)
- 泡を減らす(泡が多いと誤差が出やすい)
手順 2: 10 秒流す
- シリンジの先端を指で押さえ、試料を 10 mlまで満たす
- シリンジを垂直に保持し、先端の指を離して同時にタイマー開始
- 10 秒で止め、シリンジ内に残った量(残留量: ml )を読む
手順 3:残留量でレベル判定(レベル 0〜 3)
研究・検証では、フローテストの分類は 10 秒後の残留量で整理されます(薄いほど残留が少ない)。例えば、残留量が「 1 ml 未満=レベル 0、 1〜 < 4 ml=レベル 1、 4〜 < 8 ml=レベル 2、 8〜 < 10 ml=レベル 3」といった区分が用いられています。(doi:10.1111/jtxs.12823)
一方、レベル 4(極めて濃い)はシリンジからほとんど流れないため、別テスト(フォークドリップ等)で確認する扱いになります。(ACPG)
| IDDSI 飲料レベル | 目安( 10 秒後の残留量) | 現場での言い換え | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| レベル 0 | 残留 < 1 ml | 水に近い | 誤嚥リスクがあるなら条件(姿勢・一口量・介助)も同時に固定 |
| レベル 1 | 残留 1 〜 < 4 ml | わずかにとろみ | 「温度・時間経過」でブレやすいので記録を残す |
| レベル 2 | 残留 4 〜 < 8 ml | 軽〜中等度 | 介助者が変わっても同じになるよう混和手順を固定 |
| レベル 3 | 残留 8 〜 < 10 ml | かなり濃い | 「飲める」より「残留・疲労」を観察してペース設計 |
※レベル 4 はシリンジから流れない前提で、別テストで確認する整理が示されています。(ACPG)
レベル 4 は「フローテストで無理に判定しない」
レベル 4 は非常に濃く、シリンジから流れない(またはほとんど流れない)領域です。ここをフローテストで「無理に数値化」しようとすると、泡・温度・個体差で判定が不安定になりがちです。
IDDSI の整理では、極めて濃い領域は別テスト(例:フォークドリップ等)で扱う考え方が示されています。(ACPG)
よくある失敗(ブレる原因)と対策
フローテストが揃わない原因の多くは、患者さんの変化ではなく条件の揺れです。ここを潰すだけで、結果が安定します。
| あるある | 何が起きる? | 対策(固定する項目) | 記録に残す |
|---|---|---|---|
| 温度が違う | 同じ濃度でも流れ方が変わる | 室温/冷温を決める | 液温(または提供形態) |
| 混ぜ方が人で違う | 溶け残り・ダマで誤差 | 混和回数・手順を統一 | 混和方法(回数・道具) |
| 作ってから時間が経つ | 増粘が進む/分離する | 測定タイミングを固定 | 調整後の経過時間 |
| 泡が多い | 残留量が多く見える | 泡を落としてから測る | 泡の有無(目視で OK ) |
| シリンジが違う | 筒の形状差で再現性低下 | 器具を固定(同型を使用) | 使用シリンジ(型番メモ) |
記録テンプレ(最小セット):これだけ残すと再現できます
記録は長くするほど続きません。以下の「最小セット」だけ残すと、別職種・別シフトでも再現しやすくなります。
| 項目 | 書き方(例) | 目的 |
|---|---|---|
| 試料 | お茶/水分補給ゼリー溶解液 など | 同一物を再現 |
| 温度 | 室温/冷/温(どれかに統一) | ブレ原因の封じ込め |
| 混和 | スプーン 30 回/シェイク 10 回 | 溶け残り対策 |
| 経過時間 | 調整後 2 分で測定 | 増粘・分離対策 |
| 結果 | 残留 5 ml → レベル 2 | 判定の共有 |
| 提供条件 | 姿勢 30°/一口量 5 ml/ペース 1 口 30 秒 | 安全に使うためのセット |
JDD2021(学会分類 2021)と併用するときの書き方
日本の現場では、嚥下調整食は学会分類 2021(JDD2021)で共有されていることが多いです。学会分類 2021 は「食事(コード 0〜 4)」と「とろみ( 3 段階)」の二本立てで整理されています。(学会サイト)
ここで迷いやすいのは、「IDDSI レベル」と「JDD2021 の段階」をどちらか一方だけで伝えてしまい、相手の運用と噛み合わないことです。おすすめは、申し送りを次の形式に固定することです。全体像(スクリーニング→計画→モニタリング)の整理は 栄養・嚥下ハブにまとめています。
- 書き方(例):IDDSI 飲料レベル 2(残留 5 ml)/JDD2021 とろみ:段階○(院内基準)
- セットで書く:温度(室温)+調整後 2 分で測定+一口量 5 ml+ペース
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. フローテストは毎回やるべきですか?
毎回フルで回すより、「新規導入」「製品変更」「混和者が変わる」「温度帯が変わる」タイミングで確認すると運用が続きます。日常は「同じ手順で作れているか」を記録の最小セットで監視すると十分です。
Q2. 残留量の境目( 4 ml や 8 ml )は厳密ですか?
境目付近は誤差が出やすいので、同じ器具・同じ条件での再現性を優先します。分類自体は残留量で整理されるため、境目では「もう一度測る」「条件を見直す」のが安全です。(doi:10.1111/jtxs.12823)
Q3. レベル 4 はどう確認しますか?
レベル 4 はシリンジから流れない前提の領域なので、フローテストで無理に判定せず、IDDSI が示す別テスト(フォークドリップ等)で「まとまり・流れ方」を確認する整理が推奨されています。(ACPG)
Q4. いちばん多い失敗は何ですか?
多いのは「温度」「混和」「経過時間」が人で違うことです。結果だけ共有しても再現できないので、最小セットの記録(温度・混和・経過時間)を同時に残すと、翌日以降も揃います。
次の一手(迷いを減らす導線)
参考文献
- Steele CM, et al. Validation of the IDDSI funnel for liquid flow testing. Journal of Texture Studies. 2024. doi: 10.1111/jtxs.12823
- Hanson B. Letter re: IDDSI Flow Test syringe specifications. 2019. UCL Discovery
- International Dysphagia Diet Standardisation Initiative (IDDSI). The IDDSI Standard / Framework. iddsi.org
- IDDSI. FAQ: What is the IDDSI Flow Test? iddsi.org
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021. 学会サイト
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


