回復期リハ病棟の PT 業務 Q&A 20 選|優先順位・病棟 ADL・退院支援

疾患別
記事内に広告が含まれています。

回復期リハ病棟の PT 業務は「優先順位」と「連携の型」で回ります

回復期で迷わない働き方|全体像を見る

回復期リハ病棟の PT 業務は、訓練だけでなく、病棟 ADL・カンファ・家族説明・退院支援まで“同時並行”になりやすいのが特徴です。本記事は「何を優先すべき?」「他職種と噛み合わない」「転倒が続く」など、現場でよくある悩みを Q&A 20 問にまとめました。

結論はシンプルです。回復期は安全(転倒・急変)→ 退院先の意思決定 → ADL の再現 → 訓練の質の順で優先すると回ります。迷ったら「今日の 1 番リスク」と「退院に直結する 1 つの課題」を先に決めましょう。

現場の詰まりどころ(回復期が回らない原因はここ)

忙しさの正体は「優先順位が固定されていない」「病棟 ADL の再現が取れていない」「情報が各所に散っている」の 3 つが多いです。まずは“型”を決めるだけで、業務が軽くなります。

回復期 PT 業務の詰まりどころと、最初の一手(現場で使う版)
詰まり 起きやすい理由 最初の一手( 10 分) 記録に残す一文
優先順位が決まらない “全部重要” に見える 今日の 1 番リスクを決める 本日の最優先は転倒予防
病棟と訓練が噛み合わない 条件(見守り・手順)が共有されない 病棟手順を 1 行で固定 トイレ移動は「見守り+右側介助」
転倒が続く 場面と予防が一致しない 転倒場面を 1 つ特定 夜間トイレで立ち上がり初動が危険
家族説明が難しい “できる/できない” だけになる 介助ポイントを 2 点に絞る 介助は「初動の手添え」と「方向の声かけ」
退院先が決まらない 判断材料が散らばる 判断軸を 3 つに固定 移動・排泄・認知の 3 軸で整理

回復期リハ病棟の PT 業務 Q&A 20 選

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

A. 優先順位と 1 日の回し方( 5 問)

Q1. 回復期の PT は、何を最優先に動けばいい?

結論:最優先は「安全(転倒・急変)→ 退院先の意思決定 → 病棟 ADL の再現」です。

理由:回復期は “訓練ができる” だけでは退院につながりません。事故を防ぎ、退院先の判断を進め、病棟で再現できる形に落とすのが成果に直結します。

今日やること:今日の 1 番リスク(転倒など)と、退院に直結する課題 1 つを先に決めます。

Q2. 1 日のスケジュールが崩れて回りません

結論:崩れる前提で、午前に “重い仕事” を寄せ、午後に “バッファ” を作ります。

理由:回復期はカンファ・家族対応・病棟イベントで割り込みが起きます。固定枠と余白がないと、全部が遅れます。

今日やること:午前に「高リスク患者」「新規評価」を寄せ、午後に 30 分の割り込み枠を確保します。

Q3. 新規評価の時間が取れないとき、何から見る?

結論:まずは「転倒リスク」「移動の介助量」「排泄動作」の 3 点です。

理由:この 3 点は退院先判断と事故予防に直結します。細かな機能評価は、優先度の高い意思決定が進んでからでも間に合います。

今日やること:移動・排泄の “現場動作” を 1 回見て、介助量と危険場面を 1 行で残します。

Q4. 受け持ちが増えると、個別性が崩れます

結論:個別性は “狙い” で担保し、手段は共通化して OK です。

理由:全員に別メニューは破綻します。狙い(何を変えるか)が個別なら、手段は似ていても臨床的には問題になりにくいです。

今日やること:各患者の狙いを 1 行で書き、訓練メニューは 3 パターン程度にまとめます。

Q5. 情報が散らばって、引き継ぎが辛いです

結論:引き継ぎは「できること」「危ないこと」「病棟手順」の 3 点に固定します。

理由:回復期の引き継ぎは “行動” に落ちているかが重要です。評価名より、具体的な手順が共有されると事故が減ります。

今日やること: 3 点をテンプレとして、各患者 1 行ずつで埋めます。

B. 病棟 ADL・連携の進め方( 5 問)

Q6. 訓練ではできるのに、病棟 ADL が上がりません

結論:原因は「環境」「手順」「監視レベル」がズレていることが多いです。

理由:訓練室は整った環境で、スタッフの注意も集中します。病棟は条件が変わるので、同じ手順で再現できる形に調整が必要です。

今日やること:病棟で 1 回だけ現場動作を見て、ズレた条件を 1 つ特定します(例:夜間、足元、声かけ)。

Q7. 看護・介護と “見守りの基準” が合いません

結論:基準は「危険場面」と「介助ポイント」の 2 点で具体化します。

理由:「見守りで」だけでは解釈が割れます。危険場面(いつ)と介助ポイント(どこを)を合わせると一致します。

今日やること:「立ち上がり初動」「方向転換」など危険場面を 1 つに絞り、介助ポイントを 2 点だけ書きます。

Q8. 病棟での “自立” をどのタイミングで許可する?

結論:許可は「再現性」と「リスク」の両方を満たした時点で段階的に進めます。

理由: 1 回できた、では事故が起きます。再現性(複数回)と、リスクがコントロールできる条件が揃うと安全です。

今日やること:許可条件を 2 つに固定します(例:立ち上がりは 5 回連続で安定、夜間は見守り継続)。

Q9. トイレ動作が伸びません。どこから詰める?

結論:まずは “移動” と “ズボン操作” を分けて詰めます。

理由:トイレは要素が多く、どこがボトルネックか不明だと介入が散ります。分解すると、最短で改善点が見えます。

今日やること:移動(入口まで)とズボン操作を別々に観察し、介助が増える瞬間を 1 つ特定します。

Q10. 情報共有(カンファ)で何を話せばいい?

結論:「退院先」「必要介助」「リスク」の 3 点を先に出します。

理由:回復期カンファは意思決定の場です。評価の羅列より、決めたいことに直結する情報が求められます。

今日やること:話す順番を固定し、各 1 行で要点を作ってから参加します。

C. 転倒・リスク対応( 5 問)

Q11. 転倒が続く患者、まず何を確認する?

結論:まず「転倒場面」「直前の行動」「環境」の 3 点です。

理由:転倒は “能力” だけでなく “状況” が絡みます。場面を特定しないと、対策が空回りします。

今日やること:転倒が起きる場面を 1 つに絞り、同じ状況を再現せずに予防策だけ先に入れます。

Q12. 夜間トイレで転びます。どう対策する?

結論:夜間は “動作能力” より “環境と手順” で事故が減ります。

理由:眠気・暗さ・焦りでリスクが上がります。照明、動線、見守りの条件を固定する方が現実的です。

今日やること:照明(足元灯)、履物、ベッド周囲の配置を点検し、見守り条件を 1 行で共有します。

Q13. 高次脳機能の影響で危険行動が出ます

結論:危険行動は “起きる条件” を特定し、環境調整と声かけを先に入れます。

理由:注意・遂行の問題は「理解できない」ではなく「状況で破綻」しやすいです。条件を潰す方が安全です。

今日やること:危険行動が出るタイミングを 1 つ特定し、声かけフレーズを 1 つに固定します。

Q14. “できるのに危ない” をどう記録・共有する?

結論:「できる動作」と「危ない場面」を分けて書きます。

理由:能力とリスクが混ざると、判断が割れます。場面と条件を明確にすると、病棟対応が揃います。

今日やること:「日中は見守りで可能、夜間は声かけが必要」など、条件付きで書きます。

Q15. リスクを下げつつ、自立も進めたいです

結論:自立は “段階” で進めます。まずは危険場面だけ見守りを残します。

理由:全てを一気に自立化すると事故が増えます。危険な部分だけを残すと、ADL は進みやすいです。

今日やること:自立化したい動作を分解し、危険な 1 工程だけ見守り条件を残します。

D. 退院支援・家族説明( 5 問)

Q16. 退院先はいつ頃から具体化すべき?

結論:入棟後は早めに “仮の退院先” を置き、評価で更新していくのが現実的です。

理由:退院先は突然決めると遅れます。仮置きして、必要条件(介助量・環境・支援)を埋める方がスムーズです。

今日やること:仮の退院先(自宅か施設)を置き、必要条件を 3 つ書き出します。

Q17. 退院先判断で、 PT が押さえるべき視点は?

結論:基本は「移動」「排泄」「認知・注意」の 3 軸です。

理由:この 3 軸は介護負担と事故リスクに直結します。ここが揃うと、他の ADL も組み立てやすくなります。

今日やること: 3 軸を各 1 行で要約し、現状と課題を並べます。

Q18. 家族説明で揉めないために、何を言語化する?

結論:「現状」「必要介助」「危険場面」「練習すべきこと」を分けて伝えます。

理由:曖昧に伝えると期待がズレます。分けると、家族の理解と意思決定が進みます。

今日やること:危険場面を 1 つだけ具体化し、家族が取る行動(声かけ・立ち位置)を 1 つ決めます。

Q19. 退院前の自主トレは、何をどう出す?

結論:自主トレは “目的” と “禁忌” をセットで、数を絞って出します。

理由:多いとやりません。危ない動きが混ざると事故になります。目的と禁忌が明確な 2〜 3 種が現実的です。

今日やること:自主トレを 2 種に絞り、「回数」「やめどき」を 1 行で書きます。

Q20. 退院前に PT がまとめるべき情報は?

結論:「できること」「必要介助」「リスク」「家族への依頼」「次の課題」の 5 点で OK です。

理由:退院前は情報が散らかりやすいですが、項目を固定すれば漏れが減ります。連携文書や口頭説明にも転用できます。

今日やること: 5 点を見出しとして並べ、各 1 行で埋めてから必要な詳細を足します。

今日から回復期が回る “型” 3 点

  1. 優先順位を固定:安全 → 退院判断 → 病棟 ADL の再現
  2. 病棟手順を 1 行化:危険場面と介助ポイントを明確にする
  3. 退院判断は 3 軸:移動・排泄・認知を毎週更新する

おわりに

回復期の PT 業務は、訓練の質を上げる前に安全の確保 → 情報の整理 → 病棟 ADL の再現 → 退院支援の順で整えると回ります。まずは「今日の 1 番リスク」と「退院に直結する 1 つの課題」を先に決めて、チームで同じ方向を向ける状態を作ってみてください。

働き方や教育体制の悩みが強いときは、面談準備チェックと職場評価シートも使える マイナビコメディカルのダウンロード から整理しておくと、次の一手が決まりやすくなります。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

タイトルとURLをコピーしました