L Testとは?評価方法・記録例・TUG/FACとの使い分け

評価
記事内に広告が含まれています。

L Testは「旋回と移乗を含む実用的な移動能力」をみる評価です

L Testは、歩行距離だけでなく、方向転換・立ち座り・移乗を含めた functional mobilityを時間でみる評価です。TUGより長い距離と複数回のturnを含むため、「まっすぐ歩ける」だけでは分かりにくい実用場面の移動能力を確認しやすい特徴があります。この記事では、L Testの使いどころ、測定条件、TUG・FACとの違い、記録例を臨床向けに整理します。

L Testは歩行自立度を段階づける評価ではありません。役割は、旋回と移乗を含む移動課題を、同じ条件で測定し、前後比較することです。歩行自立度を整理したい場合はFACの評価方法、短い移動課題との違いを確認したい場合はSPPBとTUGの違いもあわせて確認すると、評価の使い分けがしやすくなります。

L Testとは

L Testは、TUGをもとに改変されたfunctional mobility testで、20mの歩行、2回の移乗、4回の方向転換を含みます。短い直線歩行だけでは見えにくい、turningや方向変換を含む移動能力を捉えやすい評価です。

臨床では、「歩けるか」だけでなく、向きを変える、座る、立つ、再び歩き出すまでの一連の移動動作を確認したい場面で使いやすいです。特に、TUGでは大きな問題が出にくい高機能帯や、在宅復帰前の実用的な移動能力を確認したい症例では、L Testの方が課題を拾いやすいことがあります。

L Testが向く場面

L Testが向くのは、歩行自体はある程度可能だが、方向転換や移乗を含めた実用的な移動能力を確認したい場面です。歩行速度だけでは安全性の判断が難しい症例、turnでふらつく症例、在宅復帰前に屋内移動の実用性を確認したい症例で使いやすいです。

療養病棟や回復期の現場では、直線歩行は安定していても、方向転換や着座前の位置合わせで介助量が増えることがあります。L Testでは、タイムだけでなく、どの場面で減速・停止・ふらつきが出るかを同時に記録すると、介入方針に結びつけやすくなります。

表1.L Testが向く場面と記録で残したい視点
場面 L Testが役立つ理由 先に確認したいこと 記録例
高機能帯の再評価 TUGでは差が出にくい症例でも変化を拾いやすい 補助具、靴、椅子条件 直線歩行は安定、turnで減速あり
脳卒中後の歩行評価 turningを含めたmobilityを確認しやすい 麻痺側turn、注意分配、見守り範囲 左回りで歩幅低下と一時停止あり
在宅復帰前 実生活に近い移動の流れを確認しやすい 立ち座り、狭い方向転換、疲労 移乗後の再加速に時間を要す
外来・通所の経過追跡 時間変化と質的所見をあわせて残しやすい コース設定、スタート条件、声かけ量 前回比5秒短縮、turnのふらつき減少

スマホでは表を横スクロールできます。

測定方法と条件固定のコツ

L Testは、L字型のコースで実施し、歩行・方向転換・移乗を含む一連の動作にかかった時間を測定します。重要なのは、毎回同じ条件で比較できるようにすることです。

椅子の高さ、補助具、靴、開始姿勢、turn方向の指示が変わると、測定値の意味も変わります。実務では、椅子条件・補助具・コース・指示文を固定しておくと、前後比較の信頼性が高くなります。

表2.L Test測定時に固定したい条件
条件 固定する理由 記録例
椅子 立ち座り時間に影響する 同一椅子、肘掛けなし
補助具 歩行速度と安全性に影響する T字杖使用、条件同一
歩幅やturn時の安定性に影響する リハビリ靴で実施
指示文 急ぐ程度や開始動作に影響する 通常速度で実施
turn方向 麻痺側・非麻痺側で結果が変わる 左回りで実施

スマホでは表を横スクロールできます。

L Testの見方と解釈

L Testは基本的に所要時間で解釈します。時間が短いほど、旋回と移乗を含む移動能力は高い方向と考えやすいですが、臨床ではタイム単独で判断しないことが重要です。

同じ30秒でも、turnで止まる症例と、着座前の位置合わせに時間がかかる症例では、介入の焦点が異なります。L Testでは、どこで時間を使っているかを記録することで、単なる評価から介入につながる評価になります。

表3.L Testを解釈するときの実務ポイント
見る視点 実務での意味 注意点 記録例
総時間 実用的な移動能力の全体像を把握しやすい 課題の内訳は見えにくい 28.4秒
turnの質 方向転換時の安全性が分かる タイムだけでは課題が埋もれやすい 左turnで2歩追加あり
移乗の質 立ち座りや位置合わせの安定性が分かる 椅子条件で変わりやすい 着座前の位置合わせに時間を要す
前後比較 経時的な変化を追いやすい 条件固定が必要 前回比5.1秒短縮、条件同一

スマホでは表を横スクロールできます。

FAC・TUG・L Testの使い分けを比較した図版
FACは歩行自立度、TUGは短い移動課題、L Testは旋回と移乗を含む実用的な移動能力をみる評価です。

TUG・FACとの違い

L Test、TUG、FACは、いずれも歩行や移動に関係する評価ですが、主役にしているものが異なります。FACは歩行自立度を段階で共有する評価、TUGは起立・歩行・方向転換・着座を短いタスクでみる評価です。

これに対してL Testは、より長い距離、複数回のturn、2回の移乗を含めて、実用的な移動能力をみる評価です。つまり、FACは「どこまで自立したか」、TUGは「短い移動タスクをどれくらいで行えるか」、L Testは「旋回と移乗を含む移動をどれくらい実用的に行えるか」をみる評価と整理できます。

表4.FAC・TUG・L Testの使い分け
評価 主な目的 強み 向く記録
FAC 歩行自立度の共有 介助量を段階でそろえやすい 見守り、介助、自立の整理
TUG 短い移動タスクの時間評価 手軽で導入しやすい 起立、歩行、turn、着座の全体像
L Test 旋回と移乗を含む実用的な移動能力の評価 高機能帯やturningの課題を拾いやすい 複数回のturn、移乗、実用場面の移動

スマホでは表を横スクロールできます。

L Testでよくある失敗

L Testでよくある失敗は、タイムだけを記録して、質的所見を残さないことです。L Testの価値は、単なる時間測定ではなく、turnや移乗のどこで詰まるかを拾える点にあります。

もう1つの失敗は、測定条件をそろえずに前後比較することです。距離やturn数が多いぶん、補助具、椅子、靴、指示文の影響を受けやすくなります。前回と今回を比較する場合は、条件をそろえたうえで、タイムに加えて「turn」「移乗」「再加速」の所見を1行で残すと臨床判断につながりやすくなります。

表5.L Testでよくある失敗と回避策
よくある失敗 なぜ困るか 回避策 記録例
タイムだけ残す どこが課題か分からない turn・移乗の所見を一言添える 右turnで減速、着座前2歩調整あり
条件をそろえない 前後比較の意味がぶれる 椅子・補助具・指示文を固定する 同椅子、T字杖、同コースで実施
FACと役割が混ざる 自立度と移動の質が混同される FACは自立度、L Testは実用mobilityと分ける FAC4、L Testではturnに課題
TUGの延長だけで解釈する L Testの特徴が活きにくい 複数回turnと移乗を主役に見る TUG良好でもL Testではturn低下あり

スマホでは表を横スクロールできます。

L Testの記録例

L Testは、測定値・条件・質的所見をセットで記録すると、再評価や多職種共有に使いやすくなります。特に、条件が変わるとタイムの意味も変わるため、前後比較をする場合は「同条件で実施したか」を必ず残しておきます。

表6.L Testの記録例
記録項目 記録例
測定値 L Test 32.6秒
条件 T字杖使用、通常速度、同一椅子、同一コース
質的所見 左turnで歩幅低下、着座前に2歩調整あり
解釈 直線歩行よりも方向転換と着座前の位置合わせに課題あり
次の介入 方向転換練習、椅子への接近・位置合わせ練習を追加

スマホでは表を横スクロールできます。

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

L Testはどんな人に向いていますか?

歩行自体はある程度可能だが、方向転換や移乗を含めた実用的な移動能力を確認したい人に向いています。高機能帯、在宅復帰前、外来や通所での再評価とも相性が良いです。

TUGがあればL Testは不要ですか?

必ず不要とはいえません。TUGは短い移動課題を手軽に評価できますが、L Testはより長い距離、複数回のturn、2回の移乗を含むため、高機能帯やturningの課題を拾いやすいです。

L Testは脳卒中でも使えますか?

使えます。脳卒中患者を対象に、turning abilityをみる簡便な検査として報告されており、信頼性・妥当性に関する研究もあります。

何秒変われば意味がありますか?

脳卒中患者を対象とした研究では、4秒以上の変化がperformanceの改善・低下を示す目安として報告されています。ただし、対象者や測定条件で意味は変わるため、条件固定した前後比較として使うのが安全です。

FACと一緒に使ってもよいですか?

はい。FACで歩行自立度を整理し、L Testで旋回や移乗を含む実用的な移動能力を深掘りする使い方は相性が良いです。自立度と移動の質を分けて考えると、記録も再評価も整理しやすくなります。

次の一手

L Testを測って終わりにしないためには、条件を固定する、turnと移乗の所見を残す、次の介入に変えるという流れが重要です。歩行評価で迷う場合は、まず「自立度をみたいのか」「短い移動課題をみたいのか」「旋回を含む実用的な移動能力をみたいのか」を分けて考えると、評価選択が整理しやすくなります。


参考文献

  1. Deathe AB, Miller WC. The L Test of Functional Mobility: measurement properties of a modified version of the Timed “Up & Go” Test designed for people with lower-limb amputations. Phys Ther. 2005;85(7):626-635. PubMed
  2. Kim JS, Chu DY, Jeon HS. Reliability and validity of the L test in participants with stroke. Physiotherapy. 2015;101(2). PubMed
  3. Ng SSM, Tse MMY, Chen P, Lam TPS, Yeung THT, Liu TW, So BCL. Assessing the Turning Ability during Walking in People with Stroke Using L Test. Int J Environ Res Public Health. 2023;20(4):3618. DOI: 10.3390/ijerph20043618

著者情報

rehabilikunのプロフィール画像

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ