立ち上がりテスト(ロコモ度テスト)を“ブレなく”実施するコツ|手順・失敗判定・記録の要点
評価の精度は「手順の統一」で上がります。臨床の整理に迷ったら、ロードマップで俯瞰しておくと楽です。 臨床力を体系化するロードマップを見る
立ち上がりテストは、ロコモ度テスト(ロコモティブシンドローム リスク検査)の 3 要素のひとつで、座面の高さと片脚/両脚条件を変えながら「立てるか」をみる検査です。ポイントは「頑張り方の癖(反動・上体反り・手の押し)が混ざると、結果が別物になる」こと。この記事では、失敗判定を統一して再現性を上げるための実施手順・観察ポイント・記録のコツをまとめます。
結論として、①座面高さ(40/30/20/10 cm)と ②片脚→両脚の順番 ③“手を使わない・反動を最小” のルールを固定すれば、現場でもブレが出にくくなります。特に「上体を反らして勢いで立つ」「膝痛で代償が出る」「台高が足りない」の 3 つは、先に手当てしておくとスムーズです。
立ち上がりテストとは?(評価の意義)
立ち上がりテストは、下肢筋力(とくに膝伸展筋群)と立ち上がり動作の遂行能力を、座面の高さを変えて段階的に確認するテストです。ロコモ度テストでは、他の要素( 2 ステップテスト、GLFS-25)と組み合わせて、移動機能低下のリスク段階を捉える目的で用いられます。
臨床では、単に「できた/できない」ではなく、どの高さで、片脚か両脚か、どういう代償(反動・上体後方移動・膝内側痛など)が出たかをセットで残すと、介入(筋力・疼痛・動作学習)の狙いが立てやすくなります。
準備(環境・安全)
準備の時点で結果がブレます。まずは環境条件を固定します。
| 項目 | 標準 | ブレやすい例 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 座面高さ | 40/30/20/10 cm を用意 | 台高が曖昧 | メジャーで座面上面までを実測し、近い高さで統一 |
| 足位置 | 足底は床に接地、左右差を最小 | 足が後ろに入りすぎる | 脛が過度に前傾しない位置で揃え、記録に残す |
| 上肢 | 手を使わない(前方で組む等) | 座面を押す/膝を押す | 手の位置を統一し、触れたら無効試行 |
| 見守り | 転倒リスクに応じて側方~前方に配置 | 検者が引っ張る | 介助は「転倒回避のみ」。立ち上がり動作への加勢はしない |
中止・延期の目安(安全管理)
| 状況 | 判断 | 対応 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 強い疼痛(NRS が急上昇など) | 中止 | 疼痛評価へ切替(原因探索・荷重調整) | 部位・誘因・動作相を残す |
| ふらつきが強い/失神前駆 | 中止 | 座位保持→バイタル確認 | 症状と発生タイミング |
| 指示理解が不十分で危険 | 延期 | 別の安全な評価に変更 | 理由(注意・理解・安全) |
やり方(手順)|“失敗判定”を先に決める
運用で一番揉めるのは「成功か失敗か」です。先にルールを固定すると、チームで再現できます。
基本の流れ(おすすめ)
- 座面 40 cm(両脚)でウォームアップ(動作確認)
- 片脚条件:40 cm → 30 cm → 20 cm → 10 cm(可能な範囲で)
- 両脚条件:40 cm → 30 cm → 20 cm → 10 cm(可能な範囲で)
臨床では、いきなり低い台から始めるより、高い座面で手順を統一してから段階を下げる方が安全かつ観察しやすいです。
成功の目安(“できた”の定義)
- 手を使わずに立つ(座面・膝・手すりを押さない)
- 反動は最小(過度な“勢い”で誤魔化さない)
- 立位で一定時間(例:3 秒)ふらつきなく保持できる
失敗(無効)にする代表例
| 場面 | 無効にする例 | なぜダメ? | 修正の声かけ |
|---|---|---|---|
| 上肢 | 手で座面を押す/膝を押す | 上肢代償で下肢能力が不明 | 「手は触れない位置で」 |
| 反動 | 上体を大きく反らして勢いで立つ | 筋力ではなく“勢い”が主役 | 「一度止めてから、ゆっくり立つ」 |
| 足位置 | 足が極端に後方で有利にする | 条件が変わって比較できない | 「足の位置は揃えて固定」 |
| 保持 | 立てたが直後に崩れる | “立位保持”として不十分 | 「立ったら 3 秒止まる」 |
結果の読み方|ロコモ度の判定にどう使う?
ロコモ度テストでは、立ち上がりテストは「どの条件で立てるか」を指標にして、他のテストと合わせてリスク段階を判断します。研究では、立ち上がりテスト(例:40 cm 片脚、20 cm 両脚)を含む指標が、移動機能低下(例:立ち上がり反復や歩行速度)と関連していることが示されています。
臨床での実用的な読み方としては、次の 2 つをセットで残すのがおすすめです。
- 到達レベル:最高到達(例:片脚 40 cm 可、片脚 30 cm 不可/両脚 20 cm 可)
- 代償の質:反動の有無、膝痛、体幹後方移動、立位保持の安定性
記録(テンプレ)|“比較できる”メモの残し方
次回再評価で比較できるように、台高・脚条件・成功/失敗・代償を 1 行で残します。
| 条件 | 結果 | 代償・所見 | 次の介入仮説 |
|---|---|---|---|
| 片脚 40 cm | 可 | 軽い反動あり、立位 3 秒保持可 | 反動低減→動作学習+筋力 |
| 片脚 30 cm | 不可 | 膝前面痛で荷重回避 | 疼痛要因評価+荷重調整 |
| 両脚 20 cm | 可 | 体幹後方移動が強い | 重心移動練習+足位置統一 |
現場の詰まりどころ|“台高がない”“身長差で不利”“膝痛が出る”
台高が足りないとき
理想は 10 cm 刻みですが、現場では難しいことも多いです。まずは測って高さを明記し、「次回も同じ条件で再現する」ことを優先します。台高が揃わない場合は、40 cm と 20 cm の 2 点だけでも固定すると、介入前後の変化が追いやすくなります。
身長差で“得・損”が出るとき
体格(特に身長)によって、同じ台高でも難易度が変わる可能性が指摘されています。だからこそ、比較は同一人物内(前後比較)と、条件の固定(足位置・反動・手の位置)が重要です。
膝痛が出るとき
膝前面痛・内側痛が強いと、筋力より疼痛で結果が決まります。その場合は「できない」を筋力低下と断定せず、痛みの出る動作相(離殿~伸展、立位保持)を記録して、疼痛要因と荷重の工夫(足位置、速度、支持の検討)に繋げます。
よくある質問(FAQ)
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Q1. 「反動」はどこまで許容しますか?
A. 反動を大きく使うと、下肢筋力より“勢い”が主役になります。臨床では「一度止めてから立つ」「上体を反らしすぎない」をルール化し、反動が強い試行は無効(再試行)にするとチームでブレにくいです。
Q2. 立てたけど、すぐ座り込みそうなときは成功?
A. 立位で安定して保持できない場合、動作の完遂としては不十分です。一定時間(例:3 秒)の保持を成功条件に含めると、再現性が上がります。
Q3. 手が少し触れた程度でも失敗にしますか?
A. 触れ方によりますが、「支えになった」時点で下肢能力が不明になります。“触れたら無効”で運用すると、記録と比較が簡単です。
Q4. 椅子ではなくベッド端座位でも実施できますか?
A. 可能ですが、座面の沈み込みや高さが一定でないと難易度が変わります。やむを得ない場合は、座面高さ(実測)と沈み込みの有無を記録し、次回も同条件で再現することを優先してください。
おわりに|「条件固定→段階刺激→記録→再評価」で迷いを減らす
立ち上がりテストは、条件(台高・脚条件・手の扱い)を固定できるほど、結果が介入に直結します。まずは「環境セット→反動と上肢代償の排除→段階を下げる→代償も含めて記録→再評価」というリズムで運用してみてください。
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参考文献
- Japanese Orthopaedic Association. Locomotive Syndrome(ロコモ度テストの概要・手順資料). 公式 PDF
- Yoshimura N, et al. Association between new indices in the locomotive syndrome risk test and decline in mobility: third survey of the ROAD study. J Orthop Sci. 2015;20:896-905. doi:10.1007/s00776-015-0741-5
- Seichi A, et al. Development of a screening tool for risk of locomotive syndrome in the elderly: the 25-question Geriatric Locomotive Function Scale. J Orthop Sci. 2012;17(2):163-172. doi:10.1007/s00776-011-0193-5
- Yamada K, et al. Reference values for the locomotive syndrome risk test quantifying mobility of 8681 adults aged 20-89 years. J Orthop Sci. 2020;25(6):1084-1092. doi:10.1016/j.jos.2020.01.011
- Miyamoto R, et al. Stand-up test overestimates the decline of locomotor function in taller people and underestimates it in shorter individuals. J Orthop Sci. 2019. PubMed Central
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

