医療保険リハと介護保険リハは併用できる?原則と例外
医療保険の疾患別リハビリテーションと介護保険の通所・訪問リハビリテーションは、同一疾患等に対して無条件に併用できるわけではありません。ただし、別施設への移行期には、一定の条件で併用が認められています。
判断するときは、介護保険リハの利用状況、同一疾患等かどうか、提供施設、利用開始月、標準的算定日数を分けて確認します。本記事では、令和8年度診療報酬改定を踏まえ、PT・OT・STが迷いやすい併用条件、月7単位と月13単位の違い、移行支援料、患者説明、情報提供、記録例を整理します。
| 状況 | 基本的な考え方 | 確認すること |
|---|---|---|
| 介護認定を受けている | 認定だけで医療保険リハが一律に終了するわけではない | 対象疾患、算定期間、サービス利用状況 |
| 同一疾患等で介護保険リハを開始する | 医療保険との給付調整が必要 | 利用開始日、提供施設、移行期の例外 |
| 別施設で介護保険リハを開始する | 利用開始月から翌々月まで条件付きで併用可能 | 実施日、単位数、記録要件 |
| 同一施設で移行する | 別施設を対象とする移行期の特例は適用しない | 施設の関係、利用開始日 |
| 手術・急性増悪等が生じた | 医療保険の疾患別リハを算定できる場合がある | 医学的必要性、対象疾患、算定要件 |
| 別疾患に対するリハが必要 | 同一疾患等に関する給付調整とは分けて判断する | 診断、対象疾患、医学的必要性 |
この表は実務上の確認事項を整理したもので、個別患者の算定可否を確定するものではありません。最終判断では、最新の給付調整通知と疾患別リハビリテーション料の算定要件を確認してください。
同一疾患でも併用できる条件|別施設への移行期
同一疾患等について医療保険の疾患別リハを実施した後、介護保険リハを開始した場合、原則として利用開始月の翌月以降は、同一疾患等に係る医療保険の疾患別リハビリテーション料を算定できません。
ただし、医療保険リハを実施する施設とは別の施設で介護保険リハを提供する場合、円滑な移行を目的として、利用開始月から翌々月まで条件付きで併用できる取扱いがあります。
移行期に確認する5つの条件
- 医療保険リハと介護保険リハを提供する施設が異なること
- 介護保険リハの利用開始日を確認すること
- 同一疾患等について、医療保険リハと介護保険リハを同日に実施しないこと
- 利用開始月の翌月・翌々月に算定する医療保険の疾患別リハは、それぞれ月7単位までとすること
- 介護保険リハの利用開始日を診療録と診療報酬明細書に記載すること
なお、移行期の特例が認められる場合でも、医療保険の疾患別リハビリテーション料そのものの算定要件を満たしている必要があります。
| 時期 | 医療保険リハの扱い | 確認事項 |
|---|---|---|
| 4月:利用開始月 | 条件付きで併用可能 | 介護保険リハと同日実施しない。月7単位の制限はこの月には適用されないが、医療保険側の算定要件は必要 |
| 5月:翌月 | 月7単位まで | 実施日、単位数、医学的必要性 |
| 6月:翌々月 | 月7単位まで | 移行完了に向けた調整 |
| 7月:翌々月を超えた後 | 移行期の併用特例は終了 | 手術・急性増悪等の例外に該当するか確認 |
重要なのは、月7単位の制限が適用されるのは利用開始月の翌月と翌々月であることです。利用開始月にも一律に月7単位の上限があると解釈しないよう注意してください。
同一施設の場合はどうなる?
別施設への移行期に認められる併用特例を、同一施設での移行にそのまま適用することはできません。
医療機関と介護保険事業所の関係が分かりにくい場合は、施設の実態と算定主体を確認し、医事担当者と判断を共有してください。
体験利用は正式な移行と区別する
給付調整通知には、一定の条件を満たす介護保険リハの体験利用について、医療保険から介護保険への正式な移行とみなさない取扱いがあります。
具体的には、目標設定等支援・管理料の算定から3月以内に、紹介された事業所で、医療保険リハと異なる日に、1月5日を超えない範囲で体験利用する場合などです。
ただし、令和8年度改定では関連する算定要件の見直しも行われています。体験利用を移行とみなさない条件については、最新の給付調整通知を確認してください。
月7単位と月13単位の違い
月7単位と月13単位は、どちらも医療保険の疾患別リハビリテーション料に関係しますが、制度上の位置づけが異なります。
| 項目 | 月7単位 | 月13単位 |
|---|---|---|
| 主な場面 | 別施設の介護保険リハへの移行期 | 標準的算定日数超過後の継続算定 |
| 制度上の位置づけ | 医療保険と介護保険の給付調整 | 疾患別リハビリテーション料の算定要件 |
| 対象期間 | 介護保険リハ利用開始月の翌月・翌々月 | 標準的算定日数超過後の対象期間 |
| 確認事項 | 別施設、利用開始日、実施日、単位数 | 対象患者、改善見込み、医学的必要性、算定区分 |
月7単位と月13単位は、独立した算定枠として単純に合算できるものではありません。両方の規定が関係する場合は、それぞれの適用条件を確認する必要があります。
標準的算定日数を超えた場合
| 区分 | 標準的算定日数 |
|---|---|
| 心大血管疾患リハ | 150日 |
| 脳血管疾患等リハ | 180日 |
| 廃用症候群リハ | 120日 |
| 運動器リハ | 150日 |
| 呼吸器リハ | 90日 |
標準的算定日数を超えた患者については、対象患者の状態や改善見込みなどによって算定条件が異なります。すべての患者が一律に月13単位で継続できるわけではありません。
標準的算定日数の起算日や超過後の算定条件については、標準的算定日数と月13単位の解説で詳しく整理しています。
介護保険リハビリテーション移行支援料500点の算定要件
介護保険リハビリテーション移行支援料は、対象となる維持期の疾患別リハを受けている患者について、介護保険リハへの移行を支援した場合に算定する診療報酬です。
令和8年度の医科診療報酬点数表では、B005-1-3「介護保険リハビリテーション移行支援料」は500点とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 500点 |
| 対象患者 | 対象となる維持期リハを受けている入院中以外の患者 |
| 対象となる疾患別リハ | 脳血管疾患等、廃用症候群、運動器の所定の維持期リハ |
| 患者同意 | 必要 |
| 連携 | 介護支援専門員等と連携し、ケアプラン作成を支援 |
| 移行完了 | 介護保険リハを開始し、医療保険の維持期リハを終了 |
| 算定回数 | 患者1人につき1回 |
単に介護保険サービスを紹介しただけでは算定できません。患者の同意、ケアマネジャー等との連携、ケアプラン作成支援、介護保険リハの開始、維持期リハの終了までを確認します。
算定前の確認項目
- 対象となる維持期リハの患者である
- 患者の同意を得ている
- 介護支援専門員等と連携している
- ケアプラン作成を支援している
- 介護保険リハの開始日を確認している
- 医療保険の維持期リハを終了している
- ケアプランの写しなど必要な記録を整備している
- 同一医療機関内での移行に該当しない
- 移行期の併用期間中ではない
移行期に医療保険リハと介護保険リハを併用している期間は、移行支援料を算定できません。また、同一医療機関内で維持期リハから介護保険リハへ移行した場合も算定対象外です。
診療報酬明細書には、介護保険リハの開始日と維持期リハの終了日を記載する必要があります。算定時は最新の通知と記載要領を確認してください。
医療保険から介護保険へ移行する5ステップ
実務では、介護認定の有無だけで判断せず、サービス利用状況、同一疾患等かどうか、提供施設、算定期間、医学的必要性を順番に確認します。
以下の図版は、PT・OT・STが医師、医事担当者、介護支援専門員と情報を共有するための独自の実務確認フローです。公式の算定判定フローではありません。

| ステップ | 確認すること | 実務対応 |
|---|---|---|
| 1 | 介護保険リハの利用状況 | 利用中のサービスと開始日を確認する |
| 2 | 同一疾患等かどうか | 医療保険リハの対象疾患と介護保険リハの目的を整理する |
| 3 | 同一施設か別施設か | 移行期の併用特例が適用されるか確認する |
| 4 | 移行開始月と算定期間 | 翌月・翌々月の月7単位、標準的算定日数を確認する |
| 5 | 医学的必要性と移行支援 | 医師の判断、患者同意、ケアマネ連携、記録を整える |
判断が分かれる場合は、療法士だけで算定可否を確定せず、医師・医事担当者と最新の給付調整通知を確認してください。
移行時の情報提供|ADL・リスク・生活目標をつなぐ
医療保険リハから介護保険リハへの移行では、評価点数だけでなく、生活場面で必要な支援を伝えることが重要です。
PT・OT・STは、医学的な評価結果を生活課題へ変換し、介護支援専門員や移行先の療法士と共有します。
| 項目 | 記載内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 疾患、発症・手術日、リハ実施期間 | 医学的背景と経過の共有 |
| ADL | BI、FIM、歩行、移乗、排泄、更衣 | 生活場面で必要な介助量の把握 |
| 医学的リスク | 転倒、疼痛、血圧、呼吸、嚥下など | 安全な介入と相談条件の共有 |
| 生活課題 | 家事、買い物、外出、家屋環境 | 活動・参加目標の設定 |
| 本人・家族の希望 | 生活目標、通所・訪問の希望、介助負担 | 本人中心の支援計画 |
| 移行情報 | 介護保険リハ開始予定日、医療保険リハ終了予定日 | サービス開始と算定管理 |
ADL評価については、情報提供に使用する様式と算定要件を確認してください。BIとFIMは評価方法が異なるため、点数を単純に換算したり、無条件に代替したりしないことが重要です。
患者説明|「リハビリ終了」ではなく生活期への移行を伝える
介護保険リハへの移行を説明するときは、制度上の制約だけでなく、今後どのような生活を目指すのかを共有します。
長期間外来リハを利用している患者では、医療機関への安心感が強く、移行に不安を感じる場合があります。制度の説明と本人の希望を組み合わせることが大切です。
| 場面 | 説明例 |
|---|---|
| 移行の必要性 | 「これまでの病院でのリハビリに加えて、今後の生活に必要な動作や活動を続ける方法を一緒に考えます」 |
| 介護保険サービスの紹介 | 「通所リハや訪問リハでは、歩行や家事など、生活の中で困っていることを目標にできます」 |
| 併用について | 「医療保険と介護保険のリハビリを同じ疾患で利用する場合は、期間や施設によって条件が異なります」 |
| 本人希望の確認 | 「今後、特にできるようになりたい生活動作は何ですか」 |
これらは患者説明の例文です。実際には、医学的必要性、サービス提供体制、自己負担、本人・家族の意向を踏まえて説明してください。
具体例|外来運動器リハから通所リハへ移行する場合
以下は制度の確認方法を示す架空症例です。実在患者の記録ではありません。
右人工膝関節全置換術後の患者が、外来で運動器リハビリテーションを継続している場面を想定します。
疼痛と可動域制限は改善し、屋内歩行は自立しています。一方、屋外歩行、買い物、活動量維持に課題があり、介護保険の通所リハ利用を検討しています。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 評価 | 右TKA術後。屋内歩行自立。屋外歩行は杖使用で見守りを要する。買い物再開と活動量維持が主課題。 |
| 移行検討 | 運動器リハの算定期間と医学的必要性を確認。本人は通所リハで屋外歩行練習を継続することを希望。 |
| 制度確認 | 介護保険リハ開始予定日、提供施設、医療保険リハ終了予定日を医師・医事担当者と共有。 |
| 情報提供 | 歩行能力、疼痛、転倒リスク、生活目標、介助方法を通所リハ担当者へ共有。 |
| 再評価 | 通所リハ開始後の歩行能力、外出頻度、活動量、本人満足度を確認する方針。 |
この症例で重要なのは、生活課題が中心になったことだけを理由に医療保険リハを終了しないことです。医学的必要性、算定要件、本人希望、移行先の支援体制を総合的に確認します。
よくある質問
医療保険リハと介護保険リハは同じ疾患でも併用できますか?
原則として給付調整が必要ですが、別施設への移行期など、一定条件下で併用できる場合があります。利用開始月から翌々月までの取扱い、実施日、月7単位の制限などを確認してください。
介護保険の認定を受けたら医療保険リハは終了ですか?
介護認定だけで一律に終了するわけではありません。対象疾患、医学的必要性、標準的算定日数、介護保険リハの利用状況を確認します。
月7単位と月13単位は合算できますか?
月7単位は移行期の給付調整、月13単位は標準的算定日数超過後の継続算定に関する取扱いです。別々の枠として単純に合算できるものではありません。
介護保険リハビリテーション移行支援料は紹介だけで算定できますか?
紹介だけでは算定できません。対象患者であること、患者同意、介護支援専門員等との連携、ケアプラン作成支援、介護保険リハの開始、維持期リハの終了などを確認します。
別疾患で医療保険リハが必要になった場合はどうなりますか?
同一疾患等に対する給付調整とは分けて判断します。手術・急性増悪等を含め、対象疾患、医学的必要性、疾患別リハの算定要件を確認してください。
次の一手
医療保険リハと介護保険リハの併用・移行条件を確認したら、次は対象となる疾患別リハの算定条件を整理しましょう。
- 疾患別リハビリテーション料の5区分:対象疾患と算定区分の全体像を確認する
- 標準的算定日数と月13単位:算定期間と超過後の取扱いを詳しく確認する
参考文献
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定について. 2026.
- 厚生労働省. 令和8年度医科診療報酬点数表. 2026.
- 厚生労働省. 医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等についての一部改正について. 2020.
- 厚生労働省. 令和8年度診療報酬改定説明資料等について. 2026.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
2022年4月にrehabilikun blogを開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験を経て、現在は療養病院に勤務しています。
脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、PT・OT・STが臨床で活用できる評価、実務手順、制度情報を発信しています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

