令和 8 年改定案|運動器リハ等「上限緩和の対象患者」見直しを現場で読む
「これまでの議論の整理(案)」では、運動器リハビリテーション料等について、適切な算定を推進する観点から、算定単位数の上限が緩和される対象患者を見直す方向性が示されています。
現場としては、対象が変わるほど「誰に 6 単位超を使うか」が揺れます。本記事は、点数や要件が未確定な段階でも準備できるように、対象選定・運用・記録を「損しにくい型」に落として整理します。
算定の議論が動くほど、運用は「誰に・何を・どれだけ」を揃えるほど強いです。型づくりの全体像はこちら。
PT キャリアガイドを見る(運用の型を整える)結論:鍵は「対象の優先順位」と「6 単位超の目的」を固定すること
上限緩和の対象が見直される局面では、“なんとなく増やす”運用が一番危険です。まずは、対象の優先順位と、6 単位超を使う目的(何をどこまで上げるか)を固定し、記録は短く強い型に揃えるのが近道です。
結果として、平日・休日や担当者が変わってもブレにくくなり、説明責任にも耐えやすくなります。
「対象患者の見直し」が入ると何が起きる?
対象が変わると、現場は次の 3 つが揺れます。
- 対象選定:誰に上限緩和を適用するか(優先順位)
- メニュー設計:増やした単位で何を伸ばすか(目的の明確化)
- 記録:増量の根拠と、反応・結果の示し方
対策はシンプルで、上限緩和を「患者ごとに目的化」して、増やした分のアウトカムが追える形に寄せます。
対象選定の型:上限緩和を “投資する患者” を絞る
運用で強いのは「上限緩和が効きやすい患者」を絞り、目的に集中投下することです。院内で 1 枚に落とすなら、次の 4 観点が扱いやすいです。
| 観点 | 見るポイント | 例 | 記録で残す一言 |
|---|---|---|---|
| 回復余地 | 今週〜 2 週で伸びる要素が明確か | 起立・移乗・歩行の段階が上がりそう | 「今週の到達目標(段階)」 |
| 阻害因子 | 痛み・循環・認知などで詰まっていないか | 疼痛コントロール、起立時 BP 低下 | 「詰まりの要因と対策」 |
| 安全性 | 増量しても中止が増えない設計か | 中止基準、観察項目が揃っている | 「中止基準と再開条件」 |
| 連続性 | 平日・休日で同じ目標に繋がるか | 金曜に休日目標を明記して引き継ぐ | 「引き継ぎ事項(1 行)」 |
増やした単位で何をする?:メニューを「目的別」に固定する
単位数を増やすときほど、メニューは増やさず目的別パッケージに寄せたほうが回ります。
| 目的 | やること(最小セット) | 数値 1 つ | 所見 1 つ |
|---|---|---|---|
| 歩行自立に近づける | 立位耐久+歩行量+転倒要因の修正 | 歩行距離 | ふらつき・休息で回復 |
| 移乗・ADL を上げる | 移乗練習+更衣/トイレの課題場面 | 介助量(見守り等) | 代償動作の減少 |
| 疼痛で詰まるのを外す | 疼痛評価+負荷調整+自主練指導 | NRS | 動作時痛の変化 |
同じリハ領域の論点として、訓練内容に応じた評価の議論もセットで押さえると読み違えにくいです:訓練内容に応じた評価の見直し(Ⅲ-4-(4))
記録の型:上限緩和を “短く強く” 残す 3 点セット
増量は「増やした理由」と「増やした分で何が変わったか」が追える形が強いです。記録は次の 3 点に固定すると揉めにくくなります。
| 残す項目 | 書き方(例) | ポイント |
|---|---|---|
| 増量の目的 | 「歩行自立へ:段階を 1 つ上げるため」 | 目的が 1 つだと強い |
| 介入内容(パッケージ) | 「立位耐久→歩行量→転倒要因修正」 | 羅列より “枠” を固定 |
| 結果(数値 1 + 所見 1) | 「歩行 60 m、ふらつき減、休息で回復良好」 | 短くても追える形 |
現場の詰まりどころ/よくある失敗(先に潰すと回る)
失敗 1:対象が広がって、結局 “薄く配る”
対象を絞らないと、増やした単位が成果につながりにくいです。優先順位を決めて集中投下が基本です。
失敗 2:増やした理由が曖昧で、説明が苦しい
目的を 1 つに固定し、目的別パッケージで介入内容を揃えるとブレません。
失敗 3:記録がバラバラで、増量の効果が追えない
3 点セット(目的・パッケージ・結果)に揃えると追いやすくなります。院内で運用を整えるときは、抜け漏れ防止の資料があると進めやすいです。マイナビコメディカルの資料で整理する
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. これは確定情報ですか?
A. 現時点は「これまでの議論の整理(案)」の段階で、点数や具体要件は今後の議論で具体化されます。まずは、対象選定・目的・記録の型を揃える準備が有効です。
Q2. 6 単位超は “多いほど良い” ですか?
A. 量を増やすほど成果が出るとは限りません。目的を 1 つに固定し、目的別パッケージで介入を揃えるほうが回りやすいです。
Q3. 記録が増えそうで不安です
A. 長文より、3 点セット(目的・介入枠・結果)で “追える” 形に揃えるほうが手間が減ります。
次の一手(この順でやる)
おすすめは、①対象の優先順位を 1 枚化 → ②目的別パッケージを決める → ③ 3 点セット記録に統一、の順です。シリーズで読むと全体像も掴みやすくなります。
参考資料
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


