OMP(ワンミニッツプレセプター)とは?原著は5つのマイクロスキル
OMP(One-Minute Preceptor)は、臨床教育で学習者の考えを引き出し、根拠を確認してから、短く教え、具体的にフィードバックするための指導モデルです。原著のNeherらが示した基本は5つのマイクロスキルで、①考えを引き出す、②根拠を確認する、③一般原則を教える、④良かった点を強化する、⑤誤りを訂正する、の順に整理されます。[1]
本記事では、この原著5手順を中心に、PT/OT/STの臨床実習・新人指導で「何と問い、何を返すか」まで具体化します。あわせて、日本の医学教育で紹介される6つ目のマイクロスキルと、rehabilikunblogで実務上の締めとして提案する「次回行動」の位置づけも区別して整理します。
先に押さえるポイント:OMPの原著5手順では、第5は「次回行動を決める」ではなく「誤りを訂正する」です。「次回行動を1つ決める」は、継続指導につなげるための実務上の工夫として分けて考えます。
なお、「One-Minute」という名称から厳密に60秒以内で完了する手順と思われることがありますが、OMPは「60秒以内に5手順を終えたか」で判定する尺度ではありません。時間だけを短くするのではなく、指導者が先に答えを言いすぎず、学習者の考えと根拠を確認してから教えることが重要です。
OMPの5マイクロスキル|実際の問いかけと返し方
OMPを使うときは、まず原著の5マイクロスキルを軸にします。特に重要なのは、指導者がすぐ正解を伝えるのではなく、①考えを引き出す→②根拠を確認するを先に行うことです。そこから③〜⑤で、次の症例にも使える知識と具体的なフィードバックへつなげます。[1]

| 手順 | 役割 | 問いかけ・返し方の例 |
|---|---|---|
| ① 考えを引き出す | 学習者自身の判断・方針を明確にする | 「この場面で一番優先したいことは?」 「あなたはどう考えた?」 |
| ② 根拠を確認する | その判断に至った思考過程を確認する | 「そう考えた根拠は?」 「どの所見が決め手だった?」 |
| ③ 一般原則を教える | 今回だけでなく、別の症例にも応用できる考え方を伝える | 「このような場面では、まず○○を確認するのが基本です」 |
| ④ 良かった点を強化する | 次回も再現してほしい具体的な行動を伝える | 「○○を先に確認できたのは良かったです」 |
| ⑤ 誤りを訂正する | 誤解、不足していた判断材料、不適切だった行動を具体的に修正する | 「ここでは○○も確認する必要があります」 「次はこの部分を修正しましょう」 |
たとえば、歩行練習前の安全判断について相談されたとき、いきなり「血圧を確認して」と教えるのではなく、「何を一番確認したい?」「なぜそう考えた?」と学習者の判断材料を先に確認します。そのうえで不足している視点を教えると、単なる正解の伝達ではなく、どの情報から判断したかまで指導しやすくなります。
OMPは5ステップ?6ステップ?日本の医学教育では6つ目も示されています
原著NeherらのOMPは5マイクロスキルです。一方、文部科学省の「医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」では、1分間指導法(One Minute Preceptor Model)を6つのマイクロスキルとして紹介し、原著5手順に続いて⑥「更なる学修を勧める」を示しています。[1][5]
| 位置づけ | 内容 | 考え方 |
|---|---|---|
| 原著のOMP | ①考えを引き出す ②根拠を確認する ③一般原則を教える ④良かった点を強化する ⑤誤りを訂正する |
Neherらが示した5つのマイクロスキル |
| 医学教育モデル・コア・カリキュラム | ⑥ 更なる学修を勧める | 上記5つに続く6つ目として紹介されている |
したがって、「OMPは5つなのか6つなのか」と迷った場合は、原著は5つ、日本の医学教育モデル・コア・カリキュラムでは6つ目まで示されていると分けて理解すると整理しやすくなります。
なお、文部科学省の記載は医学教育を対象としたものです。本記事で示すPT/OT/STの問いかけ例は、OMPの基本構造をリハビリテーション領域の実習・新人教育へ応用した例であり、PT/OT/STに固有の公式手順を示すものではありません。
「次回行動を1つ決める」はOMP公式手順ではなく、実務上の締めとして使います
継続した実習・新人指導では、⑤で誤りを訂正して終えるだけでなく、次回に何を変えるかを1つ決めると振り返りやすくなります。ただし、これは原著OMPの第5マイクロスキルそのものではありません。
rehabilikunblogでの実務上の締め方
⑤で誤りを訂正したあと、必要に応じて「では次回は○○を1つ追加して確認しよう」と、次の行動を1つ決めます。
たとえば「歩行前の安全確認が不足していた」と伝えるだけで終わらせず、「次回は歩行開始前に、起立時の症状とバイタルの変化を確認してから進めよう」のように、次回に確認できる行動へ変換します。
この「次回行動」は、文部科学省が示す⑥「更なる学修を勧める」と重なる場面もありますが、同じものと固定する必要はありません。学習課題を調べてもらう場合もあれば、次回の患者対応で具体的な行動を試してもらう場合もあります。
PT・OT・STではどんな場面でOMPを使いやすい?
OMPは、学習者が何を考えているのか、その根拠を確認したい場面で使いやすい指導モデルです。特に、症例報告、評価結果の解釈、介入方針、安全判断など、答えだけでなく思考過程を確認したい場面と相性があります。
| 場面 | 最初の問い | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 症例報告 | 「この患者さんの優先課題は何だと思う?」 | そう考えた所見・情報を聞く |
| 評価結果の解釈 | 「この結果をどう解釈した?」 | どの評価結果を重く見たか確認する |
| 介入方針の相談 | 「今日は何を優先したい?」 | 目的と選択理由を確認する |
| 安全・リスク判断 | 「実施できると判断した理由は?」 | 確認したリスク情報と不足情報を整理する |
反対に、緊急性が高く安全確保を優先すべき場面では、学習者の考えを十分に引き出してから対応することに固執せず、指導者が必要な指示・介入を先に行います。OMPは安全確保より優先される手順ではありません。
OMPがうまく回らないとき|よくある4つの失敗と直し方
OMPでつまずきやすいのは、5手順を覚えていないことよりも、指導者が先に答える、質問が詰問になる、褒め方が抽象的、訂正内容を詰め込みすぎるといった会話上の崩れです。うまく進まないときは、言葉を増やすのではなく、どのマイクロスキルで崩れたかを確認します。
| よくある失敗 | 問題 | 立て直し方 |
|---|---|---|
| 指導者が先に答える | 学習者がどこまで理解していたか分からなくなる | 「まずあなたはどう考えた?」と①へ戻る |
| 「なぜ?」を繰り返して詰問になる | 正解当てになり、思考過程を話しにくくなる | 「何を根拠にした?」「どの所見を重く見た?」と材料を聞く |
| 「良かった」で終わる | 何を次回も続ければよいか分からない | 「○○を先に確認できた点が良かった」と行動で返す |
| 修正点を一度に伝えすぎる | 重要な誤りと軽微な修正が混ざる | 患者安全や判断への影響が大きい点から具体的に訂正する |
学習者が①で答えられない場合も、すぐに正解を教える必要はありません。「候補を2つにするとしたら?」「今ある情報で一番気になるのは?」のように問いを狭める方法があります。それでも判断材料が不足している場合は、必要な知識や確認項目を教え、③〜⑤へ切り替えます。
OMP・mini-CEX・EPAは何が違う?
OMP、mini-CEX、EPAは臨床教育で併用できますが、役割は異なります。OMPは学習者の考えと根拠を引き出し、その場で教えるための会話の型として使い、直接観察による評価や「どこまで任せるか」の判断とは分けて考えます。
| 方法 | 中心となる問い | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| OMP | 「どう考えた?根拠は?」 | 判断・推論を確認し、その場で短く教える |
| mini-CEX | 「実際の患者対応で何ができていたか?」 | 患者対応を直接観察し、具体的にフィードバックする |
| EPA | 「この業務をどの程度の監督で任せられるか?」 | 業務を任せる範囲と監督の程度を考える |
たとえば患者対応をmini-CEXで直接観察したあと、学習者へ「なぜその評価を選んだ?」とOMPで思考過程を確認する、といった組み合わせもできます。どれか1つに統一するのではなく、観察したいのか、考えを聞きたいのか、任せ方を決めたいのかで使い分けます。
OMPの内容を記録するなら「公式様式」ではなく継続指導のメモとして残す
OMPには、本記事で使用を求めるような公式の「判断/根拠/次回行動」記録様式が定められているわけではありません。ただし、実習や新人教育を複数回つなげる場合は、何を確認し、何をフィードバックしたかを短く残しておくと次回の確認に使えます。
| 残す内容 | 例 |
|---|---|
| 学習者の判断 | 歩行前は転倒リスクの確認を優先すると判断 |
| 確認した根拠 | ふらつき、既往、環境条件を根拠として挙げた |
| 次回確認する行動 | 立位・歩行開始前の安全確認項目を再確認する |
これはOMPの公式採点・記録方法ではなく、rehabilikunblogで提案する継続指導のための簡潔な残し方です。施設や学校に指定の実習記録・評価様式がある場合は、そちらを優先してください。
よくある質問
Q1. OMPは本当に1分以内で行う必要がありますか?
A. 1分以内に5手順を完了できたかどうかで判定する方法ではありません。「One-Minute」という名称だけを時間制限として捉えず、学習者の考えと根拠を確認し、必要な教育とフィードバックへつなぐ構造を優先します。
Q2. OMPは5ステップと6ステップのどちらが正しいですか?
A. Neherらの原著は5マイクロスキルです。一方、文部科学省の医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)では、⑥「更なる学修を勧める」を加えた6つのマイクロスキルとして紹介されています。資料の位置づけを分けて理解してください。
Q3. 学習者が「分かりません」と答えた場合はどうしますか?
A. 「候補を2つにすると?」「どの情報が一番気になる?」など、問いの範囲を狭めて思考を引き出します。必要な知識自体が不足している場合は、答えを無理に引き出し続けず、一般原則や不足している知識を教える段階へ切り替えます。
Q4. OMPとmini-CEXはどう使い分けますか?
A. OMPは学習者の判断と根拠を会話で確認しながら教える方法、mini-CEXは実際の患者対応を直接観察してフィードバックする方法です。「考えを聞きたい」のか「実際の行動を見たい」のかで選ぶと整理しやすくなります。
次に読む記事
OMPだけでなく臨床実習・新人教育全体の方法を整理したい場合は、教育方法の役割をまとめた親記事から確認できます。実際の患者対応を直接観察してフィードバックしたい場合は、mini-CEXの記事へ進んでください。
- 全体像を確認する:臨床実習・新人教育ハブ
- 直接観察へ進む:mini-CEXのやり方|評価項目とフィードバック
参考文献
- Neher JO, Gordon KC, Meyer B, Stevens N. A five-step “microskills” model of clinical teaching. J Am Board Fam Pract. 1992;5(4):419-424. doi: 10.3122/jabfm.5.4.419
- Salerno SM, O’Malley PG, Pangaro LN, Wheeler GA, Moores LK, Jackson JL. Faculty development seminars based on the one-minute preceptor improve feedback in the ambulatory setting. J Gen Intern Med. 2002;17(10):779-787. doi: 10.1046/j.1525-1497.2002.11233.x
- Aagaard E, Teherani A, Irby DM. Effectiveness of the One-Minute Preceptor model for diagnosing the patient and the learner: proof of concept. Acad Med. 2004;79(1):42-49. doi: 10.1097/00001888-200401000-00010
- Gatewood E, De Gagne JC. The one-minute preceptor model: a systematic review. J Am Assoc Nurse Pract. 2019;31(1):46-57. doi: 10.1097/JXX.0000000000000099
- 文部科学省. 医学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版). 文部科学省資料. 参照 2026年9月1日.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

