【MMSE】ミニメンタルステート検査【11の評価項目と評価方法】

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認知症
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めて当サイトを閲覧して下さった方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです。

   

この記事は「MMSE」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるようにしたいと思います。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

【リハビリテーション専門職の転職サイト】

医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。

実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。

このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。

また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。

このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。

最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 

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MMSEとは

MMSE(Mini-Mental State Examination)は、改訂版長谷川式簡易知能評価スケールと並んで、認知機能評価として世界で最も広く使用されているスクリーニング検査になります。

MMSE は 1975 年に米国のフォルスタイン夫妻により発表され、2006 年には杉下らにより日本版の MMSE-J(Mini-Mental State Examination-Japanese)が作成されています。

MMSE は、評価項目から記憶や言語機能に重点を置いた検査となりますが、知覚運動や実行機能も一定の評価が可能な評価スケールとなっています。

評価項目

MMSE の評価項目は 11 のカテゴリーから構成されています。

  1. 時間の見当識
  2. 場所の見当識
  3. 即時想起(記銘)
  4. 注意と計算
  5. 遅延再生
  6. 物品呼称
  7. 文の復唱
  8. 聴覚的理解
  9. 読字
  10. 書字
  11. 描画

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)との大きな違いは、MMSE には呼称や復唱などの言語課題と描画課題(視覚構成機能)が含まれていることになります。

言語課題と描画課題の存在によって、評価の対象が記憶力だけに限定されず認知機能をより広範に捉えることが可能となり、MMSE は高次脳機能障害(失語や失認)の評価指標にもなります。

評価方法

MMSE の所要時間は 10 ~ 15 分程度となります。

質問者から出される問題に対し、口述か記述、図形模写のいずれかの方法で回答し、1 問につき正解なら 1 点、不正解なら 0 点とします。

制限時間は 1 問 10 秒で、返答がない場合は不正解とみなして次の問題へ移行します。

回答者が答えやすいように質問者が質問内容をアレンジしたり、ヒントを与えたりすることは NG となります。患者の不安を煽らないようにするため、「テスト」や「検査」という言葉の使用に注意する必要があります。

時間見当識

時間見当識は「年」「月」「日」「曜日」「季節」の 5 項目について各 1 点満点で評価を行います。

【年】

  • 回答方法は西暦と年号のどちらでも可とします。

【月】

  • 月の見当識が障害されることで季節感のズレに繋がる可能性があります。

【日】

  • 1 日でも間違っていたら不正解とします。
  • 長期入院、入所の人であれば、わずかなズレが大きな問題になる可能性は低いと考えられます。
  • しかし、現役で仕事をしていたり、社会性が高い人にとっての日にちの誤りは、大きな問題に繋がる可能性があります。
  • また、食品の管理(消費期限や賞味期限)にも関わる問題となります。

【曜日】

  • 曜日を間違えることは、ゴミ出しの日を間違えなどに繋がります。ゴミ出しに関する間違えは近隣住民とのトラブルにも繋がりかねないため注意が必要になります。
  • また、介護保険を利用してデイサービスを利用している人であれば、利用日の誤りにも繋がるかもしれません。

【季節】

  • 春夏秋冬以外の回答方法として、「梅雨」「初夏」といった表現でも正解とします。
  • 季節感のズレや気候に合わない服装をしないかなどを考える項目になります。

場所見当識

場所見当識では、都道府県や場所に関する 5 つの質問に回答してもらいます。5 項目について各 1 点満点(最大 5 点)で評価を行います。

【例】
①ここは何県ですか?
②ここは何市(町・村・区など)ですか?
③ここはどこですか?(施設や建物の名前など)
※回答が地名の場合、この施設の名前は何ですか?と質問を変える
④ここは何階ですか?
⑤ここは何地方ですか?(例:関東地方)
  • 「ここはどこですか?」への回答として正式名称までは答えられないことがありますが、通称や略称でも正答とします。
  • 場所見当識については、記憶障害により現在ではいる場所ではなく、出身地を答えることがあります。
  • 場所見当識が障害されている場合には、なぜ自分がそこにいるのかが分からず、不安や抑うつに繋がる可能性があります。

記銘力(即時想起)

新しいことを覚える能力(記銘力)を確認する項目になります。

質問者が言う 3 つの単語(例:犬、桜、電車)を回答者にも繰り返し答えてもらいます。3 つの単語を回答できるまで行いますが、6 回繰り返しても答えられない場合は終了とします。

言えた単語の数の個数 × 1 点(最大 3 点)で採点します。

作動記憶/短期記憶/計算能力

100 から 7 を繰り返し引き算するように指示します。

100 – 7 で「93」と正答することができたら「それから 7 を引くと?」と問い、質問者は計算した数字を言わないように注意します。

最大 5 回まで繰り返し、計算を間違えたり答えられなかったらその時点で終了となります。

正答数 × 1 点(最大 5 点)として採点します。


年齢、教育歴、職業歴の影響を受けやすい項目になります。

「なにを引くのか忘れた」場合には、短期記憶障害の影響を疑います。記憶の問題だけでなく、注意が持続せず繰り返しの計算が困難な場合もあります。

短期記憶(遅延再生)

「聴覚言語記銘」の項目で覚えた 3 つの単語を回答してもらいます。単語が合っていれば答える順番は問いません。

答えが出てこない場合には、質問者が「1 つは動物(植物、乗り物)でしたね」 等のヒントを出すことができます。

ヒントの有無にかかわらず、正答することができれば単語 1 つにつき 1 点(最大 3 点)として採点します。


加齢の影響による記憶力の低下で 1 点減点されることは起こりうるといえますが、若年であるのにも関わらず減点される場合には短期記憶低下を疑う必要があります。

生活面での忘れっぽさだけでなく、忘れやすさに対してのストレス、不安を感じている可能性もあります。

即時想起を行ったことそのものを忘れている場合には、重度の記憶障害を疑う必要があります。

呼称

日常的に馴染みのある物品を提示し、その名称を回答してもらいます。

2 つの物品について順番に質問し、正解すると各 1 点(最大 2 点)となります。

正式名称ではなく通称でも正解とします。


喚語障害や錯語などの失語症状はないかを評価します。

言いたいことが言えずにストレスを感じていないか、「あれ、それ」などの代名詞での表出が増えていないかが評価のポイントになります。

上記が当てはまる場合には、視覚失認や意味性認知症の可能性があります。

復唱

質問者が文章を口頭で伝え、回答者にもその文章を声に出して繰り返してもらいます。

「例:みんなで力を合わせて食事の準備をします」

一度で正確に答えられたら 1 点、1 つでも単語を間違えたら不正解とします。

問題文を 2 回言うことはできず、評価は一度限りで行います。


難聴や注意力の低下で減点となることもあり、短期記憶障害も影響します。

明らかな音韻性錯語および復唱障害を認める場合には、進行性失語を疑います。

聴覚言語理解

3 段階の指示を出し、その指示を順番に実行してもらう項目になります。回答者が途中で混乱したり、指示に従うことができなかったりした場合には、その時点で終了となります。耳が聞こえにくい人の場合には、指示を繰り返すことは可能となります。

【例】
事前準備として机に 1 枚の紙を置いておきます。

指示①「右手で紙を持ってください」
指示②「半分に折りたたんでください」
指示③「机の上に置いてください」

1 段階ずつ正確に作業できれば 1 点ずつ加点し、3 つの指示を実行できた場合には 3 点となります。


復唱同様に、難聴や注意力低下、短期記憶障害が影響する項目になります。

「指示に従うことができない」ことについて、言語理解、短期記憶、注意機能の何が影響しているのかを検査結果や生活場面から予測します。

紙に書かれた文章を読んでもらい、記載されている指示内容を実行してもらいます。文章の読み方は音読、黙読のどちらでも問題ありません。

【例】 「目を閉じてください。」

指示通りの行動ができれば正解となります。実行することができなかったり、理解できない、字が読めない場合には不正解とします。


音読はできても、読解ができないことがあります。読解ができない場合には、書類上のやり取りやメモ書きの有用性が低くなることが予測されます。

新聞や読書などへの興味が薄れていないか、書類の処理に困難さを生じていないかについて問診する必要があります。

自発書字

回答者に作文をするためのお題を提示し、自由に書いてもらいます。その作文内容が文章として成立し、意味が理解できる内容であれば正解とします。

【例】
「ここ最近のご自分のお身体の調子について、短い文章を書いてみてください」

名前だけや名詞だけ、単語を羅列した場合など文章として理解困難な内容は不正解とします。


文字が思い出せない、書くのに時間がかかる、メモの取り間違いがある、などのエピソードが生じていないかを確認する必要があります。

パーキンソニズムによる書字障害を疑う必要もあります。錯書は進行性失語の可能性もあります。

構成能力(描画)

目の前の空間情報を把握した後に、再構成する能力を評価する項目になります。

具体的には、ある図形を見せられた後に、同じものを描く検査となり、一般的には「重なった 2 つの五角形」を模写する課題になります。

Q:上の図形を正確にそのまま書き写してください。

採点方法としては、それぞれ図形の角が 5 つ(五角形)であり、そのうち 1 カ所が交差していれば正解とします。

角が 5 つではない、線が閉じていない、2 つの図形が交差していない等の場合は不正解とします。


組み立て、組み合わせ、着衣などの困難さを生じていないかを評価する項目になります。

日常生活でいえば、運転などの空間把握が必要な作業が困難となりやすいか、道に迷いやすいかどうかの指標となります。

アルツハイマー型認知症よりもレビー小体型認知症で、障害の度合が強くなると報告されています。

カットオフ値

MMSE は 30 点満点の検査になります。カットオフ値といわれる認知症の疑いを判断する点数による評価基準は研究により異なっていますが、森らはカットオフ値を 24/23 点とした場合に感度 83 %、特異度 93 %であったことを報告しています。

以上のようにカットオフ値として、30 点満点中 23 点以下で認知障害の可能性が示唆されていますが、 「23 点以下=認知症」ではないということについては正しく理解する必要があります。

認知症の診断は医師による問診や画像検査などの結果から総合的に判断されるものであり、MMSE はそのための手段の 1 つであるということを忘れてはいけません。

また、点数が高い/低いという結果だけで被検者の能力を評価することもできません。検査時の様子や結果から、その人の生活をイメージすることで、ADL や IADLの評価の手がかりとなり、それが的確なケアや指導につながります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

こちらの記事では「MMSE」をキーワードに内容を構成させて頂きました。

MMSE の検査結果から中核症状(注意障害や記憶障害など)をとらえることは重要といえます。

しかし、点数だけをみて、「見当識の項目に減点があるから見当識障害がある」「遅延再生の項目が 0 点だから短期記憶障害がある」などと単純に評価するだけでは、ADL や IADL の改善には結びつきにくいと考えられます。各検査項目が実際の生活にどのようにかかわっているのか、またその人の生活にどのような支障を生じているのかをイメージすることが重要となります。

この記事を読むことで「MMSE」についての理解が深まり、認知症の評価およびリハビリテーションへの一助へとなれば幸いです。

参考文献

  1. 治田寛之.MMSE-J (精神状態短時間検査 日本版).リハビリナース.18(1),p37-39,2025.
  2. 荒川英樹.認知機能 (MMSE,HDS-R).JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION.33(9),p901-906,2024.
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