疼痛評価スケールの使い分けガイド

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基礎的評価
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対象や場面で最適なスケールは変わります。本記事は、成人の自己申告から小児・認知症・神経障害性疼痛・生活影響までを 1 ページで俯瞰し、臨床で迷わない「使い分けの型」を提示します。評価は数字だけでなく、機能・活動・参加の変化とセットで記録しましょう。

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この記事の使い方

まずは「対象別のおすすめ」から読み、各セクションの注意点と記録テンプレに沿って運用します。既存の強さ評価の詳説は こちら(痛みの強さの評価) を参照してください。

慢性痛では、生活影響の把握と患者教育(ペーシング、セルフケア)が鍵です。PDAS(生活障害)や BPI(干渉)を組み合わせ、週次で小さな改善を可視化します。


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成人の自己申告:NRS / VAS / VRS の選び方

成人ではまず NRS(0~10)を標準とし、説明文(アンカー)と測定条件(安静・運動・夜間)を固定化します。研究的精度が必要、微小変化を拾いたい場合は VAS(10 cm)を、認知的負荷に配慮したい場合は VRS を選択します。いずれも同じ文言で繰り返し評価し、時系列で可視化します。

レビューでは NRS の順守性・応答性が高いことが報告されています。初診・再診・週次で「最強・現在・運動時」の 3 点取りにすると、カンファレンスでの合意形成がスムーズです。

小児:FPS-R と FLACC(非言語)

自己申告が可能な 3 歳以上は FPS-R(0・2・4・6・8・10)。表情イラストに過度な感情ラベリングをせず、短く一貫した説明で実施します。自己申告が難しい乳幼児や術後の一時的な評価では、行動観察の FLACC(顔・脚・活動・泣き・なだめ)を用います。

測定は「場面」とセットで。例:歩行後 5 分、母子分離直後、鎮痛投与 30 分後など。家族と共有しやすい図表での定点観測が有効です。

認知症:PAINAD / Abbey Pain Scale

言語化が難しい場合は観察尺度が第一選択です。PAINAD は「呼吸・発声・表情・身体言語・慰撫可能性」を 0~2 で採点、合計 0~10。Abbey は 6 項目を 0~3 で採点します。環境・ケア直後など評価タイミングを標準化し、複数職種で共有します。

「ゼロだから痛みなし」とは限りません。基礎疾患や行動の変化、睡眠・摂食の乱れも合わせて判断し、必要に応じて自己申告尺度や試験的介入(姿勢調整・温罨法・軽運動)とセットで再評価します。

神経障害性疼痛:DN4(スクリーニング)

しびれ・電撃痛・灼熱痛などが前景なら DN4 を用いてスクリーニングします(質問+触覚/ピンプリック所見)。スコア閾値で確定診断はできませんが、疑いの層別化と方針決定(神経診・薬物選択・運動戦略)に役立ちます。

DN4 は各国語で検証されています。臨床では「地図化(デルマトーム・皮神経)」「温冷・軽擦・伸張での増悪/寛解」も併記し、運動・日常負荷の調整と併走させます。

生活影響:BPI / PDAS の活用

BPI は「強度 + 生活干渉(歩行・仕事・睡眠・気分など)」を一体で把握でき、慢性痛の目標設定と教育に直結します。PDAS は生活障害のスクリーニングに有用で、10 点以上を目安に多面的介入を検討します。

評価は週次の定点観測が効果的です。「NRS 6 → 3、PDAS 18 → 9、歩行 200 m → 600 m」といった数値 + 行動の併記で、患者の自己効力感を高めましょう。

運用テンプレ(貼って使う項目)

  • 強さ:NRS(安静 / 運動 / 夜間)
  • 性状:刺す・灼熱・しびれ・締め付け など(複数可)
  • 部位:体表マップ(右/左・デルマトーム)
  • 生活影響:BPI または PDAS の合計と下位項目
  • 行動:歩行距離、階段段数、家事時間、睡眠時間
  • 教育・セルフケア:ペーシング、EIH(運動後の鎮痛)

参考文献

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