退院前訪問指導料と退院時リハ指導料は「行くか」「渡すか」で分ける
制度や記録の運用だけでなく、働き方や職場選びも整理したい方へ
退院支援の運用は、個人の工夫だけでは安定しないことがあります。教育体制や相談しやすさも含めて整理したいときは、先に全体像を押さえておくと動きやすいです。
PT キャリアガイドを見る退院支援で迷いやすいのが、退院前訪問指導料と退院時リハビリテーション指導料の使い分けです。どちらも退院に向けた支援ですが、役割は同じではありません。現場では「似た点数」として覚えるより、患家へ行って環境を具体化するのか、退院日に患者・家族へ訓練や生活指導を渡すのかで分けると整理しやすくなります。
本記事では、B007 退院前訪問指導料と B006-3 退院時リハビリテーション指導料の違いを、対象患者・実施場所・算定タイミング・記録の 4 つで比較します。総論を別々に読み直すより、まず比較で全体像をつかみたい方に向けた記事です。
先に結論|訪問が必要なら退院前訪問、退院日に渡すなら退院時リハです
結論からいうと、家屋構造・生活動線・介護力を現地で見ないと退院後の生活が決めにくい場合は、退院前訪問指導料が主役です。一方、入院中のリハ内容を退院後の生活へつなげるために、退院日に患者・家族へ具体的な方法を渡す場合は、退院時リハビリテーション指導料が主役になります。
つまり、前者は現地確認を通じて退院後の環境を具体化する点数、後者は退院日に在宅での動作・生活の実行方法を落とし込む点数です。まず目的を分けると、請求だけでなく、誰が何を記録するかもぶれにくくなります。
まずは全体像|違いがわかる比較表
下の図版は、本文の比較軸を一枚で見返せるように整理した早見図です。最初に全体像をつかんでから本文の比較表へ進むと、違いが頭に入りやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 比較項目 | 退院前訪問指導料 | 退院時リハビリテーション指導料 | 実務での見分け方 |
|---|---|---|---|
| 区分・点数 | B007 ・ 580 点 | B006-3 ・ 300 点 | まずは役割差を覚え、点数差だけで決めない |
| 主な目的 | 患家を訪問し、退院後の在宅療養を具体化する | 退院日に、在宅での動作や生活の指導を患者・家族へ行う | 「見に行く」か「渡して定着させる」かで整理する |
| 実施場所 | 患家 | 退院時の患者・家族への指導場面 | 家を見ないと決められないなら前者が優先 |
| 対象患者 | 入院期間が 1 月を超えると見込まれる患者 | 入院中に疾患別リハ、A233、早期離床・リハ加算、A304 注 11 などを算定した患者 | 退院時リハは「入院患者なら誰でも」ではない |
| 算定タイミング | 実施日にかかわらず退院日に算定 | 退院日に 1 回に限り算定 | どちらも請求上は退院日に乗るため記録の切り分けが必要 |
| 回数 | 原則 1 回、要件を満たす場合は 2 回 | 退院日に 1 回 | 回数で迷うのは主に退院前訪問側 |
| 主な内容 | 家屋構造、介護力、生活動線、在宅療養上の指導 | 基本的動作能力・応用的動作能力・社会的適応能力の回復を図るための訓練等の指導 | 環境調整中心か、退院後の実行指導中心かで考える |
| 詰まりやすい点 | 1 回か 2 回か、訪問日と算定日の整理 | 対象患者の線引き、退院時共同指導料 2 との同日整理 | 迷う論点が違うので、院内の確認票も分ける |
退院前訪問指導料とは|現地を見て退院後の生活を具体化する点数です
退院前訪問指導料は、入院期間が 1 月を超えると見込まれる患者について、円滑な退院のために患家を訪問し、患者または家族等へ退院後の在宅療養上の指導を行った場合に算定する項目です。病棟内の評価だけでは決めきれない玄関段差、寝室位置、トイレまでの距離、介助スペース、家族の動き方を現地で確認しながら、退院後の形を具体化する役割があります。
実務では、単なる家屋見学ではなく、家を見たうえで何をどう変えるかまで言葉にするところが重要です。手すり設置やベッド配置の変更だけでなく、「誰がどこで見守るか」「夜間トイレをどう通すか」まで落とせると、訪問がそのまま退院後の生活設計につながります。
1 回算定と 2 回算定の違い
退院前訪問指導料は原則 1 回ですが、入院後早期(入院後 14 日以内)に退院に向けた訪問指導の必要性を認めて訪問し、さらに在宅療養に向けた最終調整を目的として再度訪問した場合に限り、退院日に 2 回分を算定できます。ここが曖昧だと、現場では「早めに見に行ったけれど請求整理ができない」という止まり方をしやすいです。
そのため、退院前訪問側ではいつ行ったかだけでなく、なぜ早期訪問が必要だったか、最終調整で何を確定したかをセットで残すと運用が安定します。算定要件や 2 回算定の条件を詳しく確認したい場合は、退院前訪問指導料の算定要件と必要書類も先に押さえておくとつながりやすいです。
退院時リハ指導料とは|退院日に実行できる形で渡す点数です
退院時リハビリテーション指導料は、患者の退院時に、当該患者または家族等へ、退院後の在宅での基本的動作能力、応用的動作能力、社会的適応能力の回復を図るための訓練等について必要な指導を行った場合に算定する項目です。ポイントは、病棟で実施していたリハ内容を、退院後に家で再現できる言葉へ変換して渡すことにあります。
また、2026 年改定では対象患者が明確化され、当該保険医療機関での入院中に、疾患別リハビリテーション料等を算定した患者に限定されました。つまり、「入院患者だから広く算定できる」ではなく、入院中に一定のリハ関連点数を算定していたかが入口になります。
何を渡すと使いやすいか
退院時リハビリテーション指導料で止まりやすいのは、対象患者の判定よりも、何を患者へ渡すかが院内でそろっていないことです。実務では、長い説明文よりも、起居・移乗・歩行・トイレ・入浴・家族介助・注意点を 1 枚に圧縮した方が、退院後に見返されやすくなります。
そのため、退院時リハ側では「説明した」より、患者・家族が家で実行できる形で残したかが大切です。退院日に渡す内容は、院内で定型化しておくと運用のぶれを減らしやすくなります。
どう使い分けるか|迷ったら 3 つの質問で決めます
使い分けで迷ったときは、次の 3 つの質問で考えると整理しやすくなります。① 家を見ないと決められないか、② 退院日に患者・家族へ具体的な行動として渡す必要があるか、③ 両方必要なら役割を分けて残せるかの順です。
たとえば、玄関段差、居室配置、トイレ動線、家族の介助位置など、現地確認が前提なら退院前訪問指導料の優先度が上がります。一方で、すでに環境はおおむね固まっており、退院日に「どの動作をどう行うか」「家族はどこを介助するか」を渡すことが主目的なら、退院時リハビリテーション指導料の意味が大きくなります。
| 場面 | 主に考えたい点数 | 理由 |
|---|---|---|
| 玄関段差やトイレ動線を見ないと退院可否が決めにくい | 退院前訪問指導料 | 環境確認が主役だから |
| 退院日に起居・移乗・歩行・家族介助を 1 枚にして渡したい | 退院時リハビリテーション指導料 | 実行指導が主役だから |
| 家屋確認も必要で、退院日に患者向け指導も必要 | 両者の役割を分けて整理 | 現地評価と退院時指導は目的が異なるため |
| 在宅側と共同で説明し、文書共有まで含めたい | 退院時共同指導料 2 の整理も必要 | 共同説明の論点が別にあるため |
いちばん混乱しやすいのは「どちらも退院日に乗る」ことです
この 2 つが混乱しやすい理由は、どちらも請求上は退院日が軸になることです。退院前訪問指導料は、指導の実施日にかかわらず退院日に算定します。退院時リハビリテーション指導料も、退院日に 1 回に限り算定します。そのため、実施の中身を分けずに運用すると、「何をもってどちらを算定したのか」が曖昧になりやすいです。
ここで大切なのは、退院前訪問は現地確認と在宅療養上の指導、退院時リハは退院日に渡した訓練・生活指導として記録を分けることです。同日に点数名が並ぶかより先に、各記録の主語と目的が分かれているかを確認すると、請求と診療録のずれを減らしやすくなります。
退院時共同指導料 2 と混同しやすい点
退院時リハビリテーション指導料は、入院中の保険医療機関の PT / OT / ST が退院時共同指導料 2 側の指導等を行った場合、同一日に別に算定できない整理があります。つまり、退院日に何を誰が説明したかを分けないと、リハ指導と共同指導の境界が曖昧になります。
一方で、退院前訪問指導料の論点は、共同説明よりも訪問の必要性、1 回か 2 回か、最終的に何を調整したかです。似た退院支援でも、詰まるポイントが違うと覚えておくと整理しやすくなります。
現場の詰まりどころ|点数の違いより「運用の主語」が混ざることです
この比較で現場が止まりやすいのは、点数名の暗記不足より、誰が何をした記録なのかが混ざることです。退院前訪問指導料は「家を見て調整した内容」、退院時リハビリテーション指導料は「退院日に患者・家族へ渡した内容」が主語です。ここを分けないと、どちらも“退院支援をした”だけの記録になってしまいます。
まずは、訪問記録は環境・動線・介護力、退院時リハ記録は動作・介助・注意点と役割を固定すると運用しやすくなります。院内の確認票や申し送りでも、この主語の違いを共有しておくと請求と説明のズレを減らしやすくなります。
よくある失敗
スマホでは表を横スクロールできます。
| よくある失敗 | 何が問題か | 直し方 |
|---|---|---|
| どちらも「退院支援」で一括にしてしまう | 記録の主語が曖昧になる | 現地確認と退院時指導で目的を分ける |
| 退院時リハを「入院患者なら誰でも」と考える | 対象患者の線引きで誤りやすい | 入院中の算定点数を先に確認する |
| 退院前訪問の早期訪問を行ったが整理していない | 1 回か 2 回かの説明が弱くなる | 早期訪問の必要性と最終調整内容を分けて残す |
| 退院日に説明した内容が長文で患者向けでない | 実行されにくい | 起居・移乗・歩行・介助・注意点へ圧縮する |
| 退院時共同指導料 2 との境界が曖昧 | 同日整理や摘要対応で詰まりやすい | 参加職種と説明場面を退院前に固定する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
どちらも退院日に算定するなら、違いは何ですか?
違いは日付ではなく目的です。退院前訪問指導料は患家を訪問して在宅療養を具体化する点数で、退院時リハビリテーション指導料は退院日に患者・家族へ訓練や生活指導を渡す点数です。請求日が同じでも、役割は同じではありません。
退院前訪問指導料は家を見に行くだけでも算定できますか?
家を見に行くだけではなく、退院後の在宅療養上の指導まで含めて整理する方が実務では安全です。現地確認を通じて、何が課題で、どう調整し、家族へ何を説明したかまで残すと運用しやすくなります。
退院時リハビリテーション指導料は誰にでも使えますか?
使えません。2026 年改定では、当該保険医療機関での入院中に、疾患別リハビリテーション料等を算定した患者に対象が限定されました。まずは入院中の算定点数を確認する必要があります。
退院前訪問指導料の 2 回算定は、どんなときですか?
入院後早期に訪問の必要性を認めて訪問し、さらに在宅療養に向けた最終調整を目的として再度訪問した場合です。早く行ったから自動的に 2 回になるのではなく、早期訪問の必要性と最終調整の位置づけが重要です。
退院時共同指導料 2 といちばん混同しやすいのはどちらですか?
実務では退院時リハビリテーション指導料です。特に、入院中の保険医療機関の PT / OT / ST が退院時共同指導料 2 側の指導等を行った場合の同日整理で詰まりやすいため、参加職種と説明場面を先に決めておくとぶれにくくなります。
次の一手
この比較を起点にすると、退院支援項目を役割ごとに整理しやすくなります。続けて読むなら、次の 3 本がつながりやすいです。
参考情報
- 厚生労働省. 別紙 1-1 医科診療報酬点数表. B006-3 退院時リハビリテーション指導料、B007 退院前訪問指導料. 公式 PDF
- 厚生労働省. 保医発0327第5号 令和 8 年 3 月 27 日. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について. 公式 PDF
- 厚生労働省. 4. 包括期・慢性期入院医療. 回復期リハビリテーション病棟入院料等における退院前訪問指導料の取扱いの見直し. 公式 PDF
- rehabilikun blog|退院前訪問指導料の算定要件と必要書類
- rehabilikun blog|退院時リハ指導料【2026 改定】対象患者・算定要件
- rehabilikun blog|退院時リハビリテーション指導料の指導書の作り方
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


