- 褥瘡対策に関する診療計画書の書き方|まず「危険因子→看護計画」で考える
- まず確認|病院で使う現行様式は「診療計画書(1)(2)」の2枚です
- 危険因子の評価|「できない」「あり」が1つでもあれば看護計画へ進む
- 現在・過去の褥瘡|「今ある」と「既往」を分けて記載する
- 褥瘡の状態|褥瘡がある場合はDESIGN-R®2020で評価する
- 看護計画の書き方|危険因子と対策をつなげる
- PDF・Excel配布|危険因子から看護計画へ変換する補助メモ
- 診療計画書(2)|薬学的管理は「対応の必要なし」も明示する
- 栄養管理|GLIM基準による評価欄も確認する
- 再評価|公式欄と施設内の運用を分けて考える
- よくある書き方の失敗|計画がつながらないときの確認点
- 褥瘡診療計画書のよくある質問
- 次に確認すること
- 参考文献
- 著者情報
褥瘡対策に関する診療計画書の書き方|まず「危険因子→看護計画」で考える
褥瘡対策に関する診療計画書で最初に押さえたいのは、褥瘡があるかどうかだけで看護計画の要否を判断しないことです。厚生労働省の様式では、日常生活自立度が低い入院患者について危険因子を評価し、「できない」または「あり」が1つ以上の場合は看護計画を立案・実施する流れが示されています。
この記事では、病院で使用する厚生労働省の「褥瘡対策に関する診療計画書」をもとに、現在・過去の褥瘡、危険因子、DESIGN-R®2020、看護計画、薬学的管理、GLIMを含む栄養管理まで、各欄をどうつなげて書くかを整理します。
褥瘡予防そのものの評価・介入を整理したい場合は、褥瘡予防の基本フローをあわせて確認してください。
まず確認|病院で使う現行様式は「診療計画書(1)(2)」の2枚です
病院の入院基本料等で参照する褥瘡対策に関する診療計画書は、厚生労働省の「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別添6・別紙3で確認できます。
現行様式は、大きく次の2枚に分かれています。
| 様式 | 主な内容 | 記入時の中心 |
|---|---|---|
| 診療計画書(1) | 褥瘡の有無、危険因子、DESIGN-R®2020、褥瘡対策の診療計画 | 褥瘡リスクを把握し、看護計画へつなげる |
| 診療計画書(2) | 薬学的管理、栄養管理、GLIM基準による評価など | 薬剤・栄養面から継続管理の必要性を整理する |
※資料内の「別添6・別紙3 褥瘡対策に関する診療計画書(1)(2)」を参照してください。

危険因子の評価|「できない」「あり」が1つでもあれば看護計画へ進む
ここが、この計画書で最も迷いやすい部分です。厚生労働省の様式では、日常生活自立度が低い入院患者について、危険因子に「できない」または「あり」が1つ以上ある場合、看護計画を立案し実施することが示されています。
したがって、褥瘡が現在ない患者でも、危険因子に該当すれば「褥瘡なしだから計画不要」とはなりません。現在の褥瘡の有無と、褥瘡発生リスクに対する計画の要否は分けて考えます。
| 評価項目 | 公式様式での確認 | 計画につなげる視点 |
|---|---|---|
| ベッド上の基本的動作能力 | 自力体位変換が「できる / できない」 | 体位変換、除圧、体圧分散寝具 |
| イス上の基本的動作能力 | 坐位姿勢の保持・除圧が「できる / できない」 | 座位姿勢、除圧、車椅子調整 |
| 病的骨突出 | なし / あり | 支持面、局所への圧集中 |
| 関節拘縮 | なし / あり | 姿勢の偏り、除圧困難部位 |
| 栄養状態低下 | なし / あり | 栄養評価・栄養管理との連携 |
| 皮膚湿潤 | 多汗、尿失禁、便失禁などの有無 | 湿潤管理、失禁ケア、皮膚保護 |
| 皮膚の脆弱性 | 浮腫の有無 | 皮膚観察、外力軽減 |
| 皮膚の脆弱性 | スキン-テアの保有・既往の有無 | 摩擦・ずれへの対策、皮膚保護 |
実務上のポイント:公式欄では、まず「あり / なし」「できる / できない」を判定します。「食事摂取量6割」「仙骨部の湿潤が続く」「自発的な寝返りがない」などの具体的所見は、判定根拠や計画内容を共有するための補足情報として扱うと整理しやすくなります。
現在・過去の褥瘡|「今ある」と「既往」を分けて記載する
診療計画書(1)では、褥瘡について「現在」と「過去」を分けて確認します。現在の褥瘡がある場合は、褥瘡発生日や部位を確認し、過去についても既往部位を記載します。
現在の褥瘡がない場合でも、過去に仙骨部や踵部などへ褥瘡を生じていた患者では、既往部位を共有しておくことで、その部位への圧集中や皮膚状態を意識した予防計画につなげやすくなります。
褥瘡の状態|褥瘡がある場合はDESIGN-R®2020で評価する
現在褥瘡を有する患者では、診療計画書(1)の「褥瘡を有する患者の状態の評価」を記載します。現行様式は、日本褥瘡学会のDESIGN-R®2020に対応しています。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| Depth | 深さ |
| Exudate | 滲出液 |
| Size | 大きさ |
| Inflammation / Infection | 炎症・感染 |
| Granulation | 肉芽形成 |
| Necrotic tissue | 壊死組織 |
| ポケット |
DESIGN-R®2020は、単に創の状態を文章で残すためではなく、同じ基準で褥瘡の状態と経過を評価するための尺度です。採点するときは、厚生労働省の計画書または日本褥瘡学会が公開している公式のDESIGN-R®2020を確認してください。
看護計画の書き方|危険因子と対策をつなげる
看護計画は、一般的な褥瘡予防策を並べるのではなく、その患者で「できない」「あり」と判定した危険因子に対応させると書きやすくなります。
厚生労働省の診療計画書(1)では、看護計画として主に圧迫・ずれ力の排除、スキンケア、栄養状態改善、リハビリテーションを整理できる構成になっています。
| 危険因子・所見 | 計画の方向 | 記載例 |
|---|---|---|
| 自力体位変換ができない | ベッド上の圧迫・ずれ対策 | 体圧分散寝具を使用し、皮膚所見と支持面を確認しながら体位変換方法・間隔を設定する |
| 坐位で除圧できない | イス上の圧迫・ずれ対策 | 座位姿勢とクッションを確認し、前滑りや局所への圧集中がみられる場合は再調整する |
| 皮膚湿潤あり | スキンケア | 失禁後の皮膚状態を確認し、洗浄・保護方法を統一する |
| 栄養状態低下あり | 栄養状態改善 | 栄養評価結果を確認し、必要時は管理栄養士を含めて栄養管理計画と連動する |
| 拘縮・姿勢保持困難あり | リハビリテーション | 体位・座位姿勢を評価し、除圧可能なポジショニングや姿勢調整方法を共有する |
なお、体位変換をすべての患者で一律に「2時間ごと」と記載するのではなく、皮膚状態、体動能力、支持面、姿勢、全身状態などを踏まえて個別に設定することが重要です。
PDF・Excel配布|危険因子から看護計画へ変換する補助メモ
ここまでの内容を実際の記入時に確認できるよう、「褥瘡対策に関する診療計画書|危険因子→看護計画 変換メモ」をPDFとExcelで用意しました。
この配布物は厚生労働省の正式様式の代用品ではありません。公式様式を記入するときに横へ置き、危険因子として確認した事実を、具体的な看護計画へ変換するための補助資料です。
危険因子の確認、観察した事実、計画につなげる視点、実施条件・頻度、再評価までを1枚で確認できます。褥瘡がある場合の状態確認や、薬学的管理・栄養管理を整理する欄も設けています。
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診療計画書(2)|薬学的管理は「対応の必要なし」も明示する
診療計画書(2)では、薬学的管理に関する事項を確認します。現行様式には、対応の必要がない場合を示す選択肢があり、必要な患者では褥瘡発症リスクへ影響する可能性がある薬剤の使用状況などを整理します。
つまり、この欄は何かを書き足すこと自体が目的ではありません。対応が不要なのか、薬剤面から確認・管理が必要なのかを明確に分けることがポイントです。
栄養管理|GLIM基準による評価欄も確認する
診療計画書(2)の栄養管理では、対応の必要性や栄養管理計画書での対応を確認できるほか、GLIM基準による評価欄が設けられています。
GLIMでは、低栄養の診断において表現型基準と病因基準の双方を確認します。表現型では体重減少、低BMI、筋肉量減少、病因では食事摂取量減少・消化吸収能低下、疾病負荷・炎症などを評価します。
ここで重要なのは、危険因子欄の「栄養状態低下あり」と、栄養評価・栄養管理を別々に終わらせないことです。危険因子で栄養面の問題を認めた場合は、診療計画書(2)や栄養管理計画書へつなげ、必要な評価と介入を共有します。
再評価|公式欄と施設内の運用を分けて考える
褥瘡対策は、計画を書いた時点で完了ではありません。皮膚状態、褥瘡の状態、基本的動作能力、栄養状態、支持面などが変われば、計画そのものを見直す必要があります。
ただし、「再評価日」という独立した欄が診療計画書(1)にあるわけではありません。再評価時期やカンファレンス日などを補助メモ・看護記録・施設内の運用で管理している場合は、公式様式の項目と混同せず区別して運用してください。
よくある書き方の失敗|計画がつながらないときの確認点
褥瘡診療計画書では、チェック欄を埋めることよりも、危険因子の判定から具体的な対策へつながっているかを確認することが重要です。
- 褥瘡がないため計画不要とする:危険因子に「できない」「あり」があれば看護計画へ進みます。
- 公式の危険因子と独自の所見を混同する:まず公式項目を判定し、具体的所見は根拠・補足として記録します。
- 「除圧」「観察」だけで終わる:対象となる部位、方法、確認する所見まで具体化します。
- 体位変換間隔を全患者で固定する:患者の状態と支持面を踏まえて個別に設定します。
- 栄養状態低下にチェックして終了する:診療計画書(2)や栄養管理計画書と連動させます。
- DESIGN-R®2020の点数だけを残す:経時変化と、結果を受けて何を変更するかまで確認します。
褥瘡診療計画書のよくある質問
危険因子に「あり」が1つでもあれば看護計画を立てますか?
日常生活自立度が低い入院患者について、厚生労働省の様式では、基本的動作能力が「できない」または各危険因子が「あり」の項目が1つ以上ある場合に、看護計画を立案・実施することが示されています。
褥瘡がない患者でも看護計画は必要ですか?
褥瘡が現在ないことだけでは、計画不要とは判断できません。危険因子評価で「できない」「あり」に該当する項目があれば、発生予防のための看護計画へつなげます。
「栄養状態低下あり」にしたら、何を確認しますか?
危険因子欄だけで完結させず、診療計画書(2)の栄養管理欄や栄養管理計画書と連動させます。GLIM基準による評価では、体重減少、BMI、筋肉量、摂取量・消化吸収、疾病負荷・炎症などを必要に応じて確認します。
配布しているPDF・Excelを正式な診療計画書として使えますか?
正式様式の代わりにはなりません。PDF・Excelは、厚生労働省の診療計画書を記載するときに、危険因子から具体的な看護計画へ変換するための補助メモです。正式な様式は厚生労働省の現行資料を確認してください。
次に確認すること
危険因子から具体的な除圧方法や姿勢調整へ進む場合は、褥瘡予防のポジショニングで、ベッド上・座位での考え方を確認してください。
参考文献
- 厚生労働省. 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて. 令和8年度診療報酬改定関連通知. 別添6 別紙3 褥瘡対策に関する診療計画書(1)(2). 公式資料
- 一般社団法人 日本褥瘡学会. 褥瘡評価ツール 改定DESIGN-R®2020. 公式
- Cederholm T, Jensen GL, Correia MITD, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. PMID: 30181091
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

